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緑の魔法使い(NL)
余裕のある彼氏(2)
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ルーチェが上に跨って乗る。下着越しから生々しい感触が伝わり、ルーチェに緊張が走り、クレイジーの腰がびくっと揺れた。
「……っ」
「……だ、大丈夫? おも、くない?」
「……それは、大丈夫……(いや、これやばいかも……)」
布越しだが、確かに性器同士が重なっている。ルーチェの存在を感じる。クレイジーが固唾を呑み、ルーチェは緊張が解けないまま彼を見下ろす。
「え、っと……このまま動けばいいんだよね?」
「ん。……ゆっくりでいいから」
「ごめん。した、したことないから、下手だと思うけど……」
ルーチェが今まで見てきた売り物のAVを思い出していく。確か素股のやつもあったはず。思い出せー。確か……、……こうだっけ? 擦るように動き出すと――クレイジーとルーチェがひゅっと息を呑んだ。
(わぁーー……やばー……)
(……)
(気持ちい……あれ)
「……ルーチェ?」
「あ、ご、ごめん、……なんか、変な、感じして……」
「……」
「う、動くね……」
ルーチェの止まった腰が再び動き出す。そして、気づいてしまった。揺れるたびに当たるクレイジーの熱。存在。当たる度に、自分にまでやってくる刺激。感じてしまうと、体に力が入り、アソコが熱くなってくる。これが快楽なのかは、ルーチェにはわからない。もしかしたら違うのかもしれない。だから、わからないから、恥ずかしいから、感じるものをぐっと堪えて、感じてないように振る舞おうと、とにかくクレイジーを気持ちよくさせたら良いのだと、自分なりにルーチェが腰を揺らす。
それを眺めるクレイジーが思う。何。この子。すごいエロい顔してる。何これ。ずっと見てられる。AVより全然興奮する。誰だ。この子。あ、俺の彼女か。頑張る彼女は非常に艷やかだ。これ挿れたらどうなんだろ。痛いって泣くかな。もっとって乱れるかな。ルーチェは意外と子供っぽいから素直に感情が出てくる。どうなんだろ。感じて、乱れて、我を忘れたルーチェを見てみたい。
「……ルーチェ、ちょっとたんま」
「へ……?(なんか駄目だったかな……?)」
「ちょっと、一回、逆」
「え? 何? ごめん。あの、ど、どーゆーこと?」
クレイジーが起き上がり、ルーチェを押し倒した。
「んっ」
唇が優しく触れ合う。体が密着する。クレイジーがルーチェを抱きしめ、舌を絡ませれば、気分がおかしくなってきた。キスしているだけで、とても気持ち良くなってくる。強張って小さくなってたルーチェの体が脱力してくる。クレイジーの舌が熱い。アソコも熱い。胸がときめいてしまう。
クレイジーも、ルーチェも、互いのことしか見えなくなってしまう。
(頭……ぼうっと……する……)
(ルーチェ)
肌に唇が触れる。
(ルーチェ)
「あっ」
思わず声が出た。
クレイジーの指が、ルーチェの下着越しからラインをなぞるように這わせてきたから。
「や、ちょっとまっ……あ、あたしっ……んっ」
「ここ?」
「んっ、く、クレイジー君、あたしは……い、い、いいから……」
「痛かったら言って」
「やっ!」
クレイジーの指が下着の中で出っ張った箇所に優しく触れる。今までの経験から円を描くように、形に沿ってゆっくり動かしていけば、ルーチェの吐息が徐々に乱れてきた。
「ん……んん……」
(やばい。超可愛いんだけど。声エロ過ぎない? すげえドキドキする。てかめっちゃ体震えてる。怖いかな。でも勃起してるみたいだし、気持ちいいとは思うんだよな)
「う……あ……はあ……あ……ん……」
(AVより全然ルーチェの方が興奮する。つーかルーチェ、こんなに可愛かったっけ? すげえそそられるし、息とか、声とか、顔とか、こんなルーチェ見た事ないというか、やべえ、頭ぐっちゃぐちゃになってきた。ルーチェエロ過ぎて止まんない。可愛い。やばい。ルーチェ。好き。挿れたい。好き。指だけでも……)
「ん……やっ……ぁっ……~~っ、や、ぁ、……あっっ!」
(え?)
ルーチェの腰が一瞬ビクッ! と痙攣した。
「……」
呼吸の乱れたルーチェが一気に脱力し、顔を真っ赤にさせ、顔を腕で隠した。
「……」
クレイジーがきょとんとした。あ、もしかしてイッた? 触ってみる。あ、濡れてる。あ、イッたわ。これ。
「……」
いつまで隠れてんの? 何。この子。可愛すぎない? 俺の彼女、可愛すぎない? クレイジーが真っ赤に染まった耳にキスをすると、ルーチェがビクッ、と肩を揺らした。再び強張る体を優しく抱きしめ、何度も何度もキスを繰り返す。
「……ルーチェっぴ」
「……」
「イけた?」
「……い、今の、イった、の?」
「え」
「……や……あの……」
腕から覗かれた顔は、見たことがないほど赤い。
「わか、んない……」
泣きそうなルーチェの顔に、焦りと、興奮と、嗜虐心と、愛おしさでいっぱいになり、クレイジーがその頭をよしよしよしよしと撫でた。顔中に沢山キスをして、ぎゅっと抱きしめて、またその背中をよしよしよしよしと撫で、抱きしめ潰されたルーチェがようやくホッと安心する。クレイジーは思わぬ自体にまさかと思って聞いてみる。
「ね、一応聞いとくんだけど……したこと、あるよね?」
「……ないってば」
「や、一人で」
「……ないよ」
「え」
「そんな余裕ない。い、生きてるだけで、いっぱいいっぱいだもん」
「……AVとか、見て、興奮しないの?」
「……ぬ、濡れる、時もあるけど……下着替えて……おしまい」
(なっ)
それは、予想してなかった。だって、女の子って、みんなオナニーしてるじゃん。
(……これは……)
クレイジーの奥底で、良くない欲が――ぞくりと駆け巡る。所有欲、征服欲、……支配欲。男として女に爪痕を残してやろうという醜い欲望。
真っ白なルーチェを、このまま自分の手で穢してしまいたい。
そっとルーチェの耳にキスをすれば、ルーチェの肩が再び揺れた。
「っ」
「……続き、していい?」
「……」
「ね、しよ? ……俺っち、まだ気持ちくなってないっぴー」
「……ん……」
「じゃ……」
「……へっ……?」
ルーチェがはっとした。クレイジーの手が服の外からブラジャーのホックを外したのだ。
「わっ! ちょっ! クレイジー君!」
手が服の中に入ってくる。
「ちょ、ちょっと、まっ……」
「……待つの?」
クレイジーの両手がルーチェの脇腹で止まり、笑みを浮かべながら見つめられる。
「いいよ」
「っ」
「……ルーチェっぴ、セックスって、下半身だけじゃないっぴよー」
肌をなぞられ、体がぴくりと反応してしまう。
「全部でするもんだから」
焦るな。これは駆け引きだ。奇策だ。押して駄目なら引いてみろ。
「服、脱がなくていいから……中だけ、脱いでくんない?」
「……」
「触りたい」
「……ち、小さい、から……」
「気にしないって」
「でも、あの、きょ、巨乳、好きだよね?」
「ルーチェ、……予行練習」
「……」
「これも練習。……ね?」
「……ん……」
しばらく渋ったが、ルーチェが服の中に腕を引っ込ませ、もぞもぞ動かし、ブラジャーを取って、ベッドの端に置いた。……水色か。
クレイジーが首筋に唇を押し付け、小さな声で聞く。
「もういい?」
「……いいよ」
「ん。ありがとう」
服を脱がさず、再び手だけを服の中に潜らせ、上になぞっていく。ルーチェの体がびくりと揺れた。ブラジャーの跡がつく肌に触れ、その線を伝い、柔らかい皮膚に触れる。これがルーチェの胸。
(ルーチェのおっぱい)
男も女も胸を好む者が多い。愛しい人の胸に初めて触れた瞬間、クレイジーの股間にグッと力が入った。手で優しく包み込み、優しく揉むと、ルーチェが深呼吸をしながら大人しくなった。服の上から鼻を押し付けてみる。ルーチェは動かない。ルーチェの汗の匂いがして、完全に硬くなってるそれが外に飛び出したいと叫んでいる。しかし、ここでがっつくのはナンセンス。じっくりやろう。相手はルーチェだ。じっくり胸を揉む。柔らかい。ルーチェの呼吸は安定している。乳首に触れた。ルーチェの身が硬くなった。指で弾いた。ルーチェが息を呑んだ。つまんでみた。ルーチェが悶えた。
「あっ……やっ……あ……んっ……!」
(やべえ。これ、癖になりそう。なんだろう。俺、なんでこんなに興奮してるんだろう)
女の子のおっぱいは初めてじゃない。これより小さいのもあった。大きいのもあった。しかし今回が一番興奮してる。胸の大きさではなく、ルーチェの胸というだけで、興奮が止まらない。ああ、服を脱がせて上から見たい。……それは本番に取っておくことにしよう。楽しみはいくつあってもいい。
クレイジーが服の上から胸に唇を押し当て、ぶるるるる、と震わせた。ルーチェの体が驚きで跳ねる。
「ひゃっ! ……ちょっと、もう!」
「んひひひ!」
頭をスリスリさせる。
「やー、やっぱおっぱいは正義……」
「……すけべ」
(……今の言い方、すげー可愛かったんですけど……)
「……ね、もっと声、聞かせて」
「……それは、はずいから……んぅっ」
優しく、それでもって強引に、尚且紳士的に触れていく。クレイジーの中で沢山の奇策がひらめいていく。どう触ったら、ルーチェが安心するか。どうしたらルーチェが快楽に夢中になるか。どうしたら――彼氏のことで、頭がいっぱいになるのか。
これは本能的な問題だろうか。
この子が欲しい。
奥底から求めてる。
ルーチェを自分だけのものにしてしまいたい。
「っ、はぁ、……ん、んん……」
「ルーチェ。……まじで、やばい。ほんとに、好き。……エロいし、……可愛すぎるし……」
「……お世辞……?」
「……お世辞なら、こんなに興奮しないと思うけど」
「……お世辞でも嬉しい」
「……」
「……ありがとう」
「……お世辞じゃないから」
「んっ」
「まじで興奮してるよ」
余裕がなくなってきた。
「彼女っぴが振り回すから。……悪い女っぴ」
「……あ、あたし、なんか、した……?」
「……キスしよ」
「あ、うん。……ん……」
全部柔らかい。全部温かい。下半身が熱い。キスをしながらクレイジーが下着を下ろした。ルーチェがぎょっとして、唇を離し、そこに注目する。性器は既にギンギンに硬くなり、上を向いている。ルーチェが視線を上に上げた。クレイジーと目が合った。
「……」
「……素股ならいいんでしょ?」
「……うん」
「挿れないから。……信じて」
「……また、上行く?」
「や、このまま、……足開いて?」
「……足、開くの?」
「うん。そっちの方が嬉しい」
「……ん……」
ルーチェが自ら左右に足を開いてくれた。広がる割れ目の形に、クレイジーが唾を飲んだ。コンドームをつけようとしたが、それよりも早くルーチェに触れたかった。避妊を覚悟して、近付き、下着越しから当てがい、ゆっくり擦り出す。ルーチェが動きに合わせて呼吸する。AVではないリアルな現実に頭がおかしくなりそうになる。ルーチェのことで狂ってしまうと思った。こんなにも興奮するのはホルモンの関係か。何でもいい。気持ちよくなりたい。解放されたい。
中に絶対挿れないように気を付ける。しかし、本能が誘惑する。ちょっとくらいなら大丈夫だって。ルーチェに子供が出来たらどうする? ピル飲ませときゃ大丈夫だって。でももしものことがあったら? もちろん責任を取る。籍を入れたって良い。じゃあ魔法使いを諦めるのか? いいよ。ルーチェと家族になれるなら色んなものを犠牲にしてきた夢なんて諦める。この生まれつき持った頭脳で奇策を考え就職でも何でもしてやる。でもルーチェは? ルーチェはどうなる? 魔法使いになる為に泣くほど努力して吃音だってADHDだって負けないと言ってるこの子の努力はどうなる? 欲に負けるな。互いに避妊は大事だ。十分に気を付けて性器を擦らせる。これは予行練習。疑似セックスだ。それがまた興奮してしまう。ルーチェが声を抑える。ふと、クレイジーがルーチェの両手を握り締めた。ルーチェがクレイジーを見た。クレイジーがルーチェを見つめる。両者共に息が乱れる。彼を見ていると呼びたくなって、ルーチェが息を吸う。だが一瞬、躊躇う。クレイジーが息を乱す。綺麗な緑の目が自分を見つめて来る。やっぱり言いたくなって、どもらないように気を付けて、ルーチェがゆっくりと口を動かした。
「……ユアン君……」
「っ」
クレイジーが体を倒し、ルーチェの体を強く抱き、さらに腰を揺らし始める。
「ひゃっ」
「~~っ、……っ、なんで……」
「やっ、まって……はや……!」
「なんで、そういうこと言うかな……っ」
「く、くれいじーくん、ごめ……」
「ユアンでいい!」
「ふぇっ、あ、く、あ、ゆあん、くっ……あっ」
「好き、ルーチェ、まじで好き、本当に好き」
「っ……っ……っ……♡」
「好き、まじ、結婚したい、好き、ずっと、一緒に、いたい、ルーチェ、好き、好き、好きっ」
「っ、っ、っ、っ……♡」
「あっ、イクっ、いっ、っ、ちょ、あっ」
「やっ……♡」
「っ!」
――っ。
「……っはぁ、……はっ……」
「……」
ルーチェはへそ辺りに、何か、生温かいものが吐き出されたのを感じた。クレイジーが起き上がり、二人の視線がルーチェのお腹へと移動する。白濁色の液体がついていた。
「……」
ルーチェがチラッと、クレイジーを見た。その光景が、――彼氏の精液がついて、どうしていいかわからない困ってる顔のルーチェが――とてつもない色気を放っていて、クレイジーの息子が再び元気になった。
「っ」
「……あの……ふ、拭いて、大丈夫?」
「……あ、……じっとしてて」
「あ、はい」
クレイジーがティッシュを引っ張り念入りに拭いていく。ルーチェが開いた足をそろそろと閉じ、その際に改めて確認する。……なるほど。ブラジャーも水色だったから……水色パンツか……。
「……服についてないから、安心して」
「……ん、うん」
「……ルーチェ」
体を起こす。
「もう一回、していい?」
「……あれ、また……勃ってる?」
「……ん。なんか……収まんない」
クレイジーがルーチェの額にキスをし、頬にキスをし、耳にキスをし、囁く。
「ね、もう一回呼んで」
「え?」
「ユアンって、もう一回、呼んで」
「あ、……えっと、……ユアン、くん……んっ……」
唇が重なる。
「……ふぅ……」
(これまじで破壊力やべー。止まんない。また興奮してきた……)
「ちゅっ」
「あっ」
「ね、……していい?」
まだルーチェに触れてたい。
「もう一回、素股で」
「……いいよ」
「……ありがと」
ルーチェの額にキスをする。
「好き。ルーチェ」
「……ん……ありがとう」
「……まって、次はちゃんとゴム、つける、から。はあ、……うし」
「……次は、あの……、……どうする?」
「ん? 次? ……んふふ、どうしよっか。……そうだなぁ。次は……じゃあ」
クレイジーが唇を舐め、再びルーチェに押し倒した。
――目を覚ますと、クレイジーは唖然とした。時間は夜の20時。既に腕の中にルーチェの姿はなく、テーブルに残された置手紙。
『気持ち良さそうに寝てたので帰ります。いっぱい休んでね。AVありがとう』
(やった。これ、やったわ)
クレイジーが部屋の隅で膝を抱えてかなり沈む。
(ちょっとだけ二人で寝るつもりだったのに)
(起きたらイチャイチャしながら自転車で駅まで送ろうと思ってたのに)
(送ってくれてありがとう。ユアン君。大好きだよ。ちゅっ。なんて、されたかもしれないのに)
「ユアーン! ご飯出来たぞー! 起きろー!」
(ああ、最悪……最悪……チャット入れとこ……)
クレイジーが歩きながらチャットを入れる。
<今起きた。
<一人で帰らせてごめん。
(……返事来ない)
やったわ。これやったわ。
(返事来ない……)
「ユアン、遅いぞ! 早く座れ!」
「あははは!」
「セイン、テレビばっか見てないでお前も動け!」
「ありがとう。兄ちゃん」
「ほら、ユアンもご飯運べー」
(返事来ない……。返事来ない……)
「どうしたー? ユアン。あ、もしかして……ルーチーに振られちゃった感じー!?」
「……」
「え、まじ?」
「は?」
「え?」
「嘘だろ」
「ユアン」
クレイジーが顔を上げた。エリスが立っている。
「お前、ルーチェちゃんに何した?」
「……や……あの……」
「さっきね、会ったんだよ。母さんが帰ってきた時に丁度玄関でばったりとね」
「……」
「お前なんで寝てたんだい?」
「いや……あの……返事……」
「あー! もしかしてユアン、ルーチーとヤッちゃって自分だけ寝ちゃった感じぃー!? なんちゃってー!」
クレイジーがスマートフォンを落とした。兄達が全員クレイジーを見た。――こいつ、やらかしやがった!
「お前ぇー!!」
「中は駄目だって何度も言っただろーがー!」
「ちがっ! 中には出してねーって!」
「やったのかい! お前!」
「や! 母さん! そうじゃなくて!」
「え? まじでやったの? え? お前、ルーチーと、え? は? まじ?」
「兄ちゃん! 余計なこと言うなよ!」
「歯ァ食いしばりな!」
「母さん!」
「やめろって! 俺の仕事増やすなよ!」
「よーしよし! 全員落ちつけ!」
「あーーーめんどくせーーー!!」
「ユアン、おま、まじでルーチーとヤッたの!? や、まじ、ちょっ……お前さあ!」
「いや、あの、えっと、あの、だから……」
クレイジーのスマートフォンが音を鳴らした。全員がはっとしてスマートフォンを見た。クレイジーが慌ててスマートフォンを拾い上げてタップした。ルーチェとのチャットに繋がった。
>全然大丈夫だよー(*´∀`*)
>帰りに本屋に寄って魔法書買ったんだ。今度見せるね(本)
>今日は本当にありがとう。ゆっくり休んでね(お花)
(あ、好き)
5兄弟全員が油断した後、クレイジーの頭にエリスの必殺フライパン落としが降りかかり、クレイジーが白目を剥いて気絶した。
「っ」
「男が寝てるんじゃないよ。次はちゃんと送り届けな。いいね!」
「「ユアーン!!」」
今日もクレイジーな一家は賑やかな夜を過ごす。
――一方、
「……ルーチェ」
「はい。なんでしょう。ミランダ様」
「お前、今日何かあったかい?」
「えっ?」
「キスマー」
「え!?」
「ああ、ただの痣だったよ」
ミランダがにやにやしながらルーチェの肩を叩く。
「恋愛も良いけど、勉強もその倍やるんだよ」
「……はい」
(まじでこの人に隠し事出来ねえ……)
「ゴムしたんだろうね?」
「……あの、素股……」
「え?」
「す……また……です……。毛の処理……し、し、してなかったので……」
「……」
「向こうも、それでいいって……」
「……お前、あの坊やに感謝するんだよ」
「あ、それは、はい……」
(苦労するねぇ。坊や)
夜が更ければまた朝が始まる。今日も魔法学校に二人が足を向ける。ルーチェが駅から下りる。眠くて欠伸をする。スマートフォンで時間割を確認すれば、忘れものに気付き、がっくりと肩を落とす。
(やばい……。宿題のプリント忘れた……)
「おっはよー! ルーチェっぴー!」
「っ!」
後ろから元気よく抱きしめられ、ルーチェが息を呑んだ。振り返ると、昨日の真剣な雰囲気とは全く違う、いつもの軽そうな彼がいる。
「あれ? どしたの? なんか顔暗くね?」
「しゅ、宿題のプリント、忘れて……」
「あっははー! 今日の準備朝やったんでしょ! もー! しょうがない子だっぴー!」
「はあ……」
「俺っちも職員室行って一緒に謝ろっかー?」
「それはい……」
クレイジーの手がルーチェの肩を掴み、抱き寄せた。
(ふぇっ)
(危な)
もう少しでルーチェの肩に電信柱が当たってた。クレイジーの目がルーチェを見下ろす。どこも怪我してなさそう。そしてまたいつもの笑顔に戻る。
「ルーチェっぴ! 学校まで一緒に行こー?」
「……」
(ん?)
クレイジーがきょとんとする。――ルーチェの顔が真っ赤に染まり、眉を下げ、照れた顔を隠すように俯いている。そそられる。クレイジーが唾を呑んだ。ルーチェがゆっくりと深呼吸した。大きな手が小さな手を優しく掴む。
「……行こ」
「……うん」
手を繋いで、ゆっくり歩く。
「……今日はバイトだっけ?」
「……うん。そう」
「……帰りさ、あの、送るから」
「……あ、でも、あの、クレイジー君も、あの、バイト……」
「や、通り道だし」
「あ、そ、そっか」
「「……」」
「「あ」」
「「え?」」
「あ、どうぞ」
「あ、ルーチェっぴから」
「あ、いや」
「あ、じゃあ……えっと……昨日、帰れた?」
「あ……うん。大丈夫」
「や」
「あ」
「まじ……ごめん」
「あ、や、う、ううん。……ゆっくり寝れた?」
「あ、もう、うん」
「あ」
「ほんと、ありがとう」
「あ、いえいえ」
「次は、あの、ちゃんと……送るから」
「……ご、ごめんね、昨日」
「え、何が?」
「や、ちゃんと……出来なくて」
「あ、いや、別に、あの、出来る時でいいから。別に、焦ってするもんじゃないし」
「あ、う、うん」
「出来る時に、あの、また、……してもいい?」
「……」
「……」
「……えっとー……ちゃんと、準備しておくね……」
「……あと、さ……」
「……うん」
「……昨日、……本当にお世辞じゃないから」
「……」
「まじで可愛いと思ってるし、……ちゃんと、好きだから。ルーチェのこと」
「……」
「……まだ、別れる気とかないから。……そのつもりで」
「……ん、うん」
「……」
「……あ、りがとう」
手に、少しだけ力がこもる。
「あたしも、もうちょっと、……い、一緒にいたい……かな」
(あ、もう結婚する。まじで結婚する。可愛すぎる。やばい。大好き)
クレイジーが顔を上げて、前を見て歩く。俯くこの子を俺が誘導しないと。俺がこの子を守るんだ。早く魔法使いになって、収入を安定させて、ルーチェも魔法使いになって、そしたら、――ちゃんとプロポーズしよう。
それまで、この手を繋いで誘導できる男になろう。ルーチェが安心して、頼れるような、かっこよくて、自慢したくなるような、余裕のある彼氏になろう。
今日もユアンは、余裕のあるクレイジーな笑みを浮かべて、ルーチェを見る。
「昼どーする?」
「……んー、図書室、行く」
「勉強しながら一緒に食べよ」
「あ、わかった」
「文法でわかんないとこある?」
「あー、あのねー」
愛の芽はまだ小さい。しかし、確実に成長しているそれは、いずれ大きな花となる。手を握り締めた二人は、お互いの夢のために、ヤミー魔術学校に向かってゆっくりと歩いて行く。
余裕のある彼氏 END
「……っ」
「……だ、大丈夫? おも、くない?」
「……それは、大丈夫……(いや、これやばいかも……)」
布越しだが、確かに性器同士が重なっている。ルーチェの存在を感じる。クレイジーが固唾を呑み、ルーチェは緊張が解けないまま彼を見下ろす。
「え、っと……このまま動けばいいんだよね?」
「ん。……ゆっくりでいいから」
「ごめん。した、したことないから、下手だと思うけど……」
ルーチェが今まで見てきた売り物のAVを思い出していく。確か素股のやつもあったはず。思い出せー。確か……、……こうだっけ? 擦るように動き出すと――クレイジーとルーチェがひゅっと息を呑んだ。
(わぁーー……やばー……)
(……)
(気持ちい……あれ)
「……ルーチェ?」
「あ、ご、ごめん、……なんか、変な、感じして……」
「……」
「う、動くね……」
ルーチェの止まった腰が再び動き出す。そして、気づいてしまった。揺れるたびに当たるクレイジーの熱。存在。当たる度に、自分にまでやってくる刺激。感じてしまうと、体に力が入り、アソコが熱くなってくる。これが快楽なのかは、ルーチェにはわからない。もしかしたら違うのかもしれない。だから、わからないから、恥ずかしいから、感じるものをぐっと堪えて、感じてないように振る舞おうと、とにかくクレイジーを気持ちよくさせたら良いのだと、自分なりにルーチェが腰を揺らす。
それを眺めるクレイジーが思う。何。この子。すごいエロい顔してる。何これ。ずっと見てられる。AVより全然興奮する。誰だ。この子。あ、俺の彼女か。頑張る彼女は非常に艷やかだ。これ挿れたらどうなんだろ。痛いって泣くかな。もっとって乱れるかな。ルーチェは意外と子供っぽいから素直に感情が出てくる。どうなんだろ。感じて、乱れて、我を忘れたルーチェを見てみたい。
「……ルーチェ、ちょっとたんま」
「へ……?(なんか駄目だったかな……?)」
「ちょっと、一回、逆」
「え? 何? ごめん。あの、ど、どーゆーこと?」
クレイジーが起き上がり、ルーチェを押し倒した。
「んっ」
唇が優しく触れ合う。体が密着する。クレイジーがルーチェを抱きしめ、舌を絡ませれば、気分がおかしくなってきた。キスしているだけで、とても気持ち良くなってくる。強張って小さくなってたルーチェの体が脱力してくる。クレイジーの舌が熱い。アソコも熱い。胸がときめいてしまう。
クレイジーも、ルーチェも、互いのことしか見えなくなってしまう。
(頭……ぼうっと……する……)
(ルーチェ)
肌に唇が触れる。
(ルーチェ)
「あっ」
思わず声が出た。
クレイジーの指が、ルーチェの下着越しからラインをなぞるように這わせてきたから。
「や、ちょっとまっ……あ、あたしっ……んっ」
「ここ?」
「んっ、く、クレイジー君、あたしは……い、い、いいから……」
「痛かったら言って」
「やっ!」
クレイジーの指が下着の中で出っ張った箇所に優しく触れる。今までの経験から円を描くように、形に沿ってゆっくり動かしていけば、ルーチェの吐息が徐々に乱れてきた。
「ん……んん……」
(やばい。超可愛いんだけど。声エロ過ぎない? すげえドキドキする。てかめっちゃ体震えてる。怖いかな。でも勃起してるみたいだし、気持ちいいとは思うんだよな)
「う……あ……はあ……あ……ん……」
(AVより全然ルーチェの方が興奮する。つーかルーチェ、こんなに可愛かったっけ? すげえそそられるし、息とか、声とか、顔とか、こんなルーチェ見た事ないというか、やべえ、頭ぐっちゃぐちゃになってきた。ルーチェエロ過ぎて止まんない。可愛い。やばい。ルーチェ。好き。挿れたい。好き。指だけでも……)
「ん……やっ……ぁっ……~~っ、や、ぁ、……あっっ!」
(え?)
ルーチェの腰が一瞬ビクッ! と痙攣した。
「……」
呼吸の乱れたルーチェが一気に脱力し、顔を真っ赤にさせ、顔を腕で隠した。
「……」
クレイジーがきょとんとした。あ、もしかしてイッた? 触ってみる。あ、濡れてる。あ、イッたわ。これ。
「……」
いつまで隠れてんの? 何。この子。可愛すぎない? 俺の彼女、可愛すぎない? クレイジーが真っ赤に染まった耳にキスをすると、ルーチェがビクッ、と肩を揺らした。再び強張る体を優しく抱きしめ、何度も何度もキスを繰り返す。
「……ルーチェっぴ」
「……」
「イけた?」
「……い、今の、イった、の?」
「え」
「……や……あの……」
腕から覗かれた顔は、見たことがないほど赤い。
「わか、んない……」
泣きそうなルーチェの顔に、焦りと、興奮と、嗜虐心と、愛おしさでいっぱいになり、クレイジーがその頭をよしよしよしよしと撫でた。顔中に沢山キスをして、ぎゅっと抱きしめて、またその背中をよしよしよしよしと撫で、抱きしめ潰されたルーチェがようやくホッと安心する。クレイジーは思わぬ自体にまさかと思って聞いてみる。
「ね、一応聞いとくんだけど……したこと、あるよね?」
「……ないってば」
「や、一人で」
「……ないよ」
「え」
「そんな余裕ない。い、生きてるだけで、いっぱいいっぱいだもん」
「……AVとか、見て、興奮しないの?」
「……ぬ、濡れる、時もあるけど……下着替えて……おしまい」
(なっ)
それは、予想してなかった。だって、女の子って、みんなオナニーしてるじゃん。
(……これは……)
クレイジーの奥底で、良くない欲が――ぞくりと駆け巡る。所有欲、征服欲、……支配欲。男として女に爪痕を残してやろうという醜い欲望。
真っ白なルーチェを、このまま自分の手で穢してしまいたい。
そっとルーチェの耳にキスをすれば、ルーチェの肩が再び揺れた。
「っ」
「……続き、していい?」
「……」
「ね、しよ? ……俺っち、まだ気持ちくなってないっぴー」
「……ん……」
「じゃ……」
「……へっ……?」
ルーチェがはっとした。クレイジーの手が服の外からブラジャーのホックを外したのだ。
「わっ! ちょっ! クレイジー君!」
手が服の中に入ってくる。
「ちょ、ちょっと、まっ……」
「……待つの?」
クレイジーの両手がルーチェの脇腹で止まり、笑みを浮かべながら見つめられる。
「いいよ」
「っ」
「……ルーチェっぴ、セックスって、下半身だけじゃないっぴよー」
肌をなぞられ、体がぴくりと反応してしまう。
「全部でするもんだから」
焦るな。これは駆け引きだ。奇策だ。押して駄目なら引いてみろ。
「服、脱がなくていいから……中だけ、脱いでくんない?」
「……」
「触りたい」
「……ち、小さい、から……」
「気にしないって」
「でも、あの、きょ、巨乳、好きだよね?」
「ルーチェ、……予行練習」
「……」
「これも練習。……ね?」
「……ん……」
しばらく渋ったが、ルーチェが服の中に腕を引っ込ませ、もぞもぞ動かし、ブラジャーを取って、ベッドの端に置いた。……水色か。
クレイジーが首筋に唇を押し付け、小さな声で聞く。
「もういい?」
「……いいよ」
「ん。ありがとう」
服を脱がさず、再び手だけを服の中に潜らせ、上になぞっていく。ルーチェの体がびくりと揺れた。ブラジャーの跡がつく肌に触れ、その線を伝い、柔らかい皮膚に触れる。これがルーチェの胸。
(ルーチェのおっぱい)
男も女も胸を好む者が多い。愛しい人の胸に初めて触れた瞬間、クレイジーの股間にグッと力が入った。手で優しく包み込み、優しく揉むと、ルーチェが深呼吸をしながら大人しくなった。服の上から鼻を押し付けてみる。ルーチェは動かない。ルーチェの汗の匂いがして、完全に硬くなってるそれが外に飛び出したいと叫んでいる。しかし、ここでがっつくのはナンセンス。じっくりやろう。相手はルーチェだ。じっくり胸を揉む。柔らかい。ルーチェの呼吸は安定している。乳首に触れた。ルーチェの身が硬くなった。指で弾いた。ルーチェが息を呑んだ。つまんでみた。ルーチェが悶えた。
「あっ……やっ……あ……んっ……!」
(やべえ。これ、癖になりそう。なんだろう。俺、なんでこんなに興奮してるんだろう)
女の子のおっぱいは初めてじゃない。これより小さいのもあった。大きいのもあった。しかし今回が一番興奮してる。胸の大きさではなく、ルーチェの胸というだけで、興奮が止まらない。ああ、服を脱がせて上から見たい。……それは本番に取っておくことにしよう。楽しみはいくつあってもいい。
クレイジーが服の上から胸に唇を押し当て、ぶるるるる、と震わせた。ルーチェの体が驚きで跳ねる。
「ひゃっ! ……ちょっと、もう!」
「んひひひ!」
頭をスリスリさせる。
「やー、やっぱおっぱいは正義……」
「……すけべ」
(……今の言い方、すげー可愛かったんですけど……)
「……ね、もっと声、聞かせて」
「……それは、はずいから……んぅっ」
優しく、それでもって強引に、尚且紳士的に触れていく。クレイジーの中で沢山の奇策がひらめいていく。どう触ったら、ルーチェが安心するか。どうしたらルーチェが快楽に夢中になるか。どうしたら――彼氏のことで、頭がいっぱいになるのか。
これは本能的な問題だろうか。
この子が欲しい。
奥底から求めてる。
ルーチェを自分だけのものにしてしまいたい。
「っ、はぁ、……ん、んん……」
「ルーチェ。……まじで、やばい。ほんとに、好き。……エロいし、……可愛すぎるし……」
「……お世辞……?」
「……お世辞なら、こんなに興奮しないと思うけど」
「……お世辞でも嬉しい」
「……」
「……ありがとう」
「……お世辞じゃないから」
「んっ」
「まじで興奮してるよ」
余裕がなくなってきた。
「彼女っぴが振り回すから。……悪い女っぴ」
「……あ、あたし、なんか、した……?」
「……キスしよ」
「あ、うん。……ん……」
全部柔らかい。全部温かい。下半身が熱い。キスをしながらクレイジーが下着を下ろした。ルーチェがぎょっとして、唇を離し、そこに注目する。性器は既にギンギンに硬くなり、上を向いている。ルーチェが視線を上に上げた。クレイジーと目が合った。
「……」
「……素股ならいいんでしょ?」
「……うん」
「挿れないから。……信じて」
「……また、上行く?」
「や、このまま、……足開いて?」
「……足、開くの?」
「うん。そっちの方が嬉しい」
「……ん……」
ルーチェが自ら左右に足を開いてくれた。広がる割れ目の形に、クレイジーが唾を飲んだ。コンドームをつけようとしたが、それよりも早くルーチェに触れたかった。避妊を覚悟して、近付き、下着越しから当てがい、ゆっくり擦り出す。ルーチェが動きに合わせて呼吸する。AVではないリアルな現実に頭がおかしくなりそうになる。ルーチェのことで狂ってしまうと思った。こんなにも興奮するのはホルモンの関係か。何でもいい。気持ちよくなりたい。解放されたい。
中に絶対挿れないように気を付ける。しかし、本能が誘惑する。ちょっとくらいなら大丈夫だって。ルーチェに子供が出来たらどうする? ピル飲ませときゃ大丈夫だって。でももしものことがあったら? もちろん責任を取る。籍を入れたって良い。じゃあ魔法使いを諦めるのか? いいよ。ルーチェと家族になれるなら色んなものを犠牲にしてきた夢なんて諦める。この生まれつき持った頭脳で奇策を考え就職でも何でもしてやる。でもルーチェは? ルーチェはどうなる? 魔法使いになる為に泣くほど努力して吃音だってADHDだって負けないと言ってるこの子の努力はどうなる? 欲に負けるな。互いに避妊は大事だ。十分に気を付けて性器を擦らせる。これは予行練習。疑似セックスだ。それがまた興奮してしまう。ルーチェが声を抑える。ふと、クレイジーがルーチェの両手を握り締めた。ルーチェがクレイジーを見た。クレイジーがルーチェを見つめる。両者共に息が乱れる。彼を見ていると呼びたくなって、ルーチェが息を吸う。だが一瞬、躊躇う。クレイジーが息を乱す。綺麗な緑の目が自分を見つめて来る。やっぱり言いたくなって、どもらないように気を付けて、ルーチェがゆっくりと口を動かした。
「……ユアン君……」
「っ」
クレイジーが体を倒し、ルーチェの体を強く抱き、さらに腰を揺らし始める。
「ひゃっ」
「~~っ、……っ、なんで……」
「やっ、まって……はや……!」
「なんで、そういうこと言うかな……っ」
「く、くれいじーくん、ごめ……」
「ユアンでいい!」
「ふぇっ、あ、く、あ、ゆあん、くっ……あっ」
「好き、ルーチェ、まじで好き、本当に好き」
「っ……っ……っ……♡」
「好き、まじ、結婚したい、好き、ずっと、一緒に、いたい、ルーチェ、好き、好き、好きっ」
「っ、っ、っ、っ……♡」
「あっ、イクっ、いっ、っ、ちょ、あっ」
「やっ……♡」
「っ!」
――っ。
「……っはぁ、……はっ……」
「……」
ルーチェはへそ辺りに、何か、生温かいものが吐き出されたのを感じた。クレイジーが起き上がり、二人の視線がルーチェのお腹へと移動する。白濁色の液体がついていた。
「……」
ルーチェがチラッと、クレイジーを見た。その光景が、――彼氏の精液がついて、どうしていいかわからない困ってる顔のルーチェが――とてつもない色気を放っていて、クレイジーの息子が再び元気になった。
「っ」
「……あの……ふ、拭いて、大丈夫?」
「……あ、……じっとしてて」
「あ、はい」
クレイジーがティッシュを引っ張り念入りに拭いていく。ルーチェが開いた足をそろそろと閉じ、その際に改めて確認する。……なるほど。ブラジャーも水色だったから……水色パンツか……。
「……服についてないから、安心して」
「……ん、うん」
「……ルーチェ」
体を起こす。
「もう一回、していい?」
「……あれ、また……勃ってる?」
「……ん。なんか……収まんない」
クレイジーがルーチェの額にキスをし、頬にキスをし、耳にキスをし、囁く。
「ね、もう一回呼んで」
「え?」
「ユアンって、もう一回、呼んで」
「あ、……えっと、……ユアン、くん……んっ……」
唇が重なる。
「……ふぅ……」
(これまじで破壊力やべー。止まんない。また興奮してきた……)
「ちゅっ」
「あっ」
「ね、……していい?」
まだルーチェに触れてたい。
「もう一回、素股で」
「……いいよ」
「……ありがと」
ルーチェの額にキスをする。
「好き。ルーチェ」
「……ん……ありがとう」
「……まって、次はちゃんとゴム、つける、から。はあ、……うし」
「……次は、あの……、……どうする?」
「ん? 次? ……んふふ、どうしよっか。……そうだなぁ。次は……じゃあ」
クレイジーが唇を舐め、再びルーチェに押し倒した。
――目を覚ますと、クレイジーは唖然とした。時間は夜の20時。既に腕の中にルーチェの姿はなく、テーブルに残された置手紙。
『気持ち良さそうに寝てたので帰ります。いっぱい休んでね。AVありがとう』
(やった。これ、やったわ)
クレイジーが部屋の隅で膝を抱えてかなり沈む。
(ちょっとだけ二人で寝るつもりだったのに)
(起きたらイチャイチャしながら自転車で駅まで送ろうと思ってたのに)
(送ってくれてありがとう。ユアン君。大好きだよ。ちゅっ。なんて、されたかもしれないのに)
「ユアーン! ご飯出来たぞー! 起きろー!」
(ああ、最悪……最悪……チャット入れとこ……)
クレイジーが歩きながらチャットを入れる。
<今起きた。
<一人で帰らせてごめん。
(……返事来ない)
やったわ。これやったわ。
(返事来ない……)
「ユアン、遅いぞ! 早く座れ!」
「あははは!」
「セイン、テレビばっか見てないでお前も動け!」
「ありがとう。兄ちゃん」
「ほら、ユアンもご飯運べー」
(返事来ない……。返事来ない……)
「どうしたー? ユアン。あ、もしかして……ルーチーに振られちゃった感じー!?」
「……」
「え、まじ?」
「は?」
「え?」
「嘘だろ」
「ユアン」
クレイジーが顔を上げた。エリスが立っている。
「お前、ルーチェちゃんに何した?」
「……や……あの……」
「さっきね、会ったんだよ。母さんが帰ってきた時に丁度玄関でばったりとね」
「……」
「お前なんで寝てたんだい?」
「いや……あの……返事……」
「あー! もしかしてユアン、ルーチーとヤッちゃって自分だけ寝ちゃった感じぃー!? なんちゃってー!」
クレイジーがスマートフォンを落とした。兄達が全員クレイジーを見た。――こいつ、やらかしやがった!
「お前ぇー!!」
「中は駄目だって何度も言っただろーがー!」
「ちがっ! 中には出してねーって!」
「やったのかい! お前!」
「や! 母さん! そうじゃなくて!」
「え? まじでやったの? え? お前、ルーチーと、え? は? まじ?」
「兄ちゃん! 余計なこと言うなよ!」
「歯ァ食いしばりな!」
「母さん!」
「やめろって! 俺の仕事増やすなよ!」
「よーしよし! 全員落ちつけ!」
「あーーーめんどくせーーー!!」
「ユアン、おま、まじでルーチーとヤッたの!? や、まじ、ちょっ……お前さあ!」
「いや、あの、えっと、あの、だから……」
クレイジーのスマートフォンが音を鳴らした。全員がはっとしてスマートフォンを見た。クレイジーが慌ててスマートフォンを拾い上げてタップした。ルーチェとのチャットに繋がった。
>全然大丈夫だよー(*´∀`*)
>帰りに本屋に寄って魔法書買ったんだ。今度見せるね(本)
>今日は本当にありがとう。ゆっくり休んでね(お花)
(あ、好き)
5兄弟全員が油断した後、クレイジーの頭にエリスの必殺フライパン落としが降りかかり、クレイジーが白目を剥いて気絶した。
「っ」
「男が寝てるんじゃないよ。次はちゃんと送り届けな。いいね!」
「「ユアーン!!」」
今日もクレイジーな一家は賑やかな夜を過ごす。
――一方、
「……ルーチェ」
「はい。なんでしょう。ミランダ様」
「お前、今日何かあったかい?」
「えっ?」
「キスマー」
「え!?」
「ああ、ただの痣だったよ」
ミランダがにやにやしながらルーチェの肩を叩く。
「恋愛も良いけど、勉強もその倍やるんだよ」
「……はい」
(まじでこの人に隠し事出来ねえ……)
「ゴムしたんだろうね?」
「……あの、素股……」
「え?」
「す……また……です……。毛の処理……し、し、してなかったので……」
「……」
「向こうも、それでいいって……」
「……お前、あの坊やに感謝するんだよ」
「あ、それは、はい……」
(苦労するねぇ。坊や)
夜が更ければまた朝が始まる。今日も魔法学校に二人が足を向ける。ルーチェが駅から下りる。眠くて欠伸をする。スマートフォンで時間割を確認すれば、忘れものに気付き、がっくりと肩を落とす。
(やばい……。宿題のプリント忘れた……)
「おっはよー! ルーチェっぴー!」
「っ!」
後ろから元気よく抱きしめられ、ルーチェが息を呑んだ。振り返ると、昨日の真剣な雰囲気とは全く違う、いつもの軽そうな彼がいる。
「あれ? どしたの? なんか顔暗くね?」
「しゅ、宿題のプリント、忘れて……」
「あっははー! 今日の準備朝やったんでしょ! もー! しょうがない子だっぴー!」
「はあ……」
「俺っちも職員室行って一緒に謝ろっかー?」
「それはい……」
クレイジーの手がルーチェの肩を掴み、抱き寄せた。
(ふぇっ)
(危な)
もう少しでルーチェの肩に電信柱が当たってた。クレイジーの目がルーチェを見下ろす。どこも怪我してなさそう。そしてまたいつもの笑顔に戻る。
「ルーチェっぴ! 学校まで一緒に行こー?」
「……」
(ん?)
クレイジーがきょとんとする。――ルーチェの顔が真っ赤に染まり、眉を下げ、照れた顔を隠すように俯いている。そそられる。クレイジーが唾を呑んだ。ルーチェがゆっくりと深呼吸した。大きな手が小さな手を優しく掴む。
「……行こ」
「……うん」
手を繋いで、ゆっくり歩く。
「……今日はバイトだっけ?」
「……うん。そう」
「……帰りさ、あの、送るから」
「……あ、でも、あの、クレイジー君も、あの、バイト……」
「や、通り道だし」
「あ、そ、そっか」
「「……」」
「「あ」」
「「え?」」
「あ、どうぞ」
「あ、ルーチェっぴから」
「あ、いや」
「あ、じゃあ……えっと……昨日、帰れた?」
「あ……うん。大丈夫」
「や」
「あ」
「まじ……ごめん」
「あ、や、う、ううん。……ゆっくり寝れた?」
「あ、もう、うん」
「あ」
「ほんと、ありがとう」
「あ、いえいえ」
「次は、あの、ちゃんと……送るから」
「……ご、ごめんね、昨日」
「え、何が?」
「や、ちゃんと……出来なくて」
「あ、いや、別に、あの、出来る時でいいから。別に、焦ってするもんじゃないし」
「あ、う、うん」
「出来る時に、あの、また、……してもいい?」
「……」
「……」
「……えっとー……ちゃんと、準備しておくね……」
「……あと、さ……」
「……うん」
「……昨日、……本当にお世辞じゃないから」
「……」
「まじで可愛いと思ってるし、……ちゃんと、好きだから。ルーチェのこと」
「……」
「……まだ、別れる気とかないから。……そのつもりで」
「……ん、うん」
「……」
「……あ、りがとう」
手に、少しだけ力がこもる。
「あたしも、もうちょっと、……い、一緒にいたい……かな」
(あ、もう結婚する。まじで結婚する。可愛すぎる。やばい。大好き)
クレイジーが顔を上げて、前を見て歩く。俯くこの子を俺が誘導しないと。俺がこの子を守るんだ。早く魔法使いになって、収入を安定させて、ルーチェも魔法使いになって、そしたら、――ちゃんとプロポーズしよう。
それまで、この手を繋いで誘導できる男になろう。ルーチェが安心して、頼れるような、かっこよくて、自慢したくなるような、余裕のある彼氏になろう。
今日もユアンは、余裕のあるクレイジーな笑みを浮かべて、ルーチェを見る。
「昼どーする?」
「……んー、図書室、行く」
「勉強しながら一緒に食べよ」
「あ、わかった」
「文法でわかんないとこある?」
「あー、あのねー」
愛の芽はまだ小さい。しかし、確実に成長しているそれは、いずれ大きな花となる。手を握り締めた二人は、お互いの夢のために、ヤミー魔術学校に向かってゆっくりと歩いて行く。
余裕のある彼氏 END
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