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緑の魔法使い(NL)

見えなくても愛して(2)

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「……クレイジー君?」
「やりたいことあるんだけど」
「ん、……なーに?」
「目隠しのやつ、してほしい」
「……」
「あの、ね」

 クレイジーがベッドから下り、鞄からコンドームと――アダルト用アイマスクと、拘束リボンを取り出したのを見て、ルーチェが思わず笑ってしまう。

「あー、やっぱりそうだ。す、好きだったんだ。当たってたな。へへ!」
「いや、嫌いな奴いないって。やっぱ、彼女の自由奪ってすんのとか、めちゃくちゃ興奮するし」

 それを聞いたルーチェがきょとんとした。

「え? それ、あたしがつけるの?」
「……俺がつけてどうすんの?」
「え、あたしがさ、触ってとか……」
「逆。逆」
「……えー」
「つまらない顔しない」
「クレイジー君の方が絶対似合ってる」
「俺はぴーちゃんの方が似合ってると思うなー?」

 クレイジーがベッドに戻り、アイマスクをルーチェに被せる。

「目閉じて」
「……あたしがするの?」
「(あ、無理。見上げてくるの可愛い。もうやだ。尊い)やだ?」
「……今度クレイジー君もし、して、ほしい」
「……持ってるから今度ね」
「……え、自分のあるの?」
「結構前にそういうの好きな彼女がいて……」
「え、クレイジー君が目隠しってことはクレイジー君が下でその子は上ってことってことはそれは一体どんなプレイをし……」
「目隠しの魔法ーー!!」
「わわわっ」
(なんでこういう話に興味持つんだよ!)

 ルーチェがそっとアイマスクに触れる。つやつやしている。触り心地がいい。ふむ。やはり売り場に出したのは間違いではなかったようだ。これはいい。

「普段用に使えそうだね!」
「いや、これは駄目」
「触り心地がいいよ!」
(楽しんでんなー。気に入ったみたいで良かった、良かった。……さてと)

 クレイジーが鼻を甘噛みすると、ルーチェの肩がぎょっと上がった。

「わっ!」
「どう?」
「び、びっくりした。ど、どーこからく、来るのか、わからないから」
「そうそう。感覚敏感になるよね。こことか」
「わっ」
「こことか」
「あははっ! ちょっ!」
「てい」
「ふひひっ! や、やめて! ふひひっ!」
「次はどこ行こうかなー。てい」
「あはは! ……あっ、こ、声……あ、ごめん……」
「あー、そうねー。夜だからちょい抑えめでー」
(わくわくしてテンション上がってた。気をつけないと)
(この間覚えた防音魔法つけてるから本当は平気なんだけど)

 クレイジーの口角が上がり、ルーチェに囁く。

「あんまり騒いでると聞こえちゃうから、ごめんね」
「……ごめんなさい」
「ううん、母さん来てないってことは平気なんでしょ。今から気をつけよ」
「うん。気をつける」

 ルーチェが腕を伸ばし、クレイジーの体に触れると、よたよたと近付き、抱きついた。おっと、大変だ。急な出来事にクレイジーのクレイジーがクレイジーなことになっている。しかし見えないルーチェには当たってることしかわからない。

(この子やっぱり温かい……。目を隠してると余計筋肉の感じとかわかりやすいな。すごいな。鍛えてるのかな)
(うぉぉおお……やべえー……! 今すぐ中に突っ込んでめちゃくちゃにしてぇー!)
(あっ、ぎゅってされた。ふひひ! ……安心する)
(はぁーー。可愛いーー。たまんねぇーー。はぁ。待て。俺。すぅ。頑張れ。俺。はぁ。ここまでの信頼関係を絶対に崩すな。すぅ、はぁ。いい匂い。好き。ちゅっ)
(ひゃっ、キスされた)
(よし、頑張れ。俺、頑張れ)

 ルーチェの耳に優しく囁く。

「両手、縛っていい?」
「……縛ったら、さ、触れなくなるよ? 楽しい?」
「(うん! めちゃくちゃ楽しい!)……怖い?」
「……ちょっと」
「あんま虐めないから」
「……ん」

 ルーチェが両手を差し出してくる。クレイジーが唾を呑み、その両手首にリボンを結び、ルーチェに訊いた。

「痛くない?」
「痛くないけど……なんか、解けない」
「うん。でしょ」
「……研究したの?」
「男の子はこういうの好きなんだっぴ」
「努力の矛先……」

 クレイジーがルーチェから離れた。ルーチェがきょとんとする。気配はする。ここらへんにいそうではある。だけど、両手を伸ばしても空振る。あれ、どこだ? ここら辺? と思って右を向けば――左から鼓膜に息を吹かれた。

(わっ)

 声が出そうになって、慌てて口を押さえる。

(びっくりして声出そうになった。気をつけないと)
(あ、警戒モード入った)

 自由を奪われたルーチェ。

(いや、やっぱ、普通に興奮する)
(ここら辺?)
(あー、捜してる捜してる。……やっばー。すごー……。可愛い……)
「クレイジー君?」

 脇腹に触れる。

「わっ、ふふっ、びっくり、した」

 首にキスする。

「わっ」

 舌で耳を舐める。

「……んっ」
(ルーチェ、耳弱いもんな)

 以前、二人で参加したダンスコンテストで感じやすいからイヤリングすると痛いんだよねーって笑って言っていた。

(ちょっと虐めてもいいかな)

 舌をねじ込み、あえて舐める音を鼓膜に届ける。ルーチェの背筋がきゅ、と伸びた。

「んっ」

 水滴の音が響く。

「んんっ……くっ……」
(まじで天使。……はあー……。無理……)
「っ」

 ルーチェが身を固めた。クレイジーに押し倒された。両腕を頭の上に固定される。

(なんか、これ……)

 唇を重ねられながら、思う。

(ドキドキする……)

 クレイジーの吐息が近くで聞こえる。クレイジーが抱きしめてくる。あ、寝間着のチャック触った。あ、下に下ろされた。あ、なんか、ジーって、音が、わざとかな。あえて音を聞かせてる気がする。あ、なんか、見られてる気がする。恥ずかしい。やっぱり、ブラジャーするべきだったかな。でも寝る前だから外して正解だよね? あ、めくられた。何も出来ない。クレイジーの存在を吐息が当たる肌で感じる。キャミソールの中に手を入れられ、なぞるように触れられる。ルーチェの体が少し揺れた。クレイジーが耳に囁いた。

「ルーチェ」

 その瞬間、ルーチェの心臓が狂ったように高鳴った。今までにない現象に、ルーチェが自分自身に混乱する。ただ、いつもの前戯と同じく胸を触られているだけ。けれど、手がどのように移動してどのように触ってくるかが想像できない。不安や、恐怖や、羞恥が、熱が体を駆り立て、自然と力が入っていく。耳にクレイジーの少し浅くなった呼吸の音が聞こえる。心臓が跳ねている。ルーチェが震える息を大きく吐いた。クレイジーの唇が胸に来た。ルーチェが体を伸ばす。舌で舐められる。鳥肌が立った。固くなった乳首は舌で転がされる。ルーチェが声を我慢した。それを見て、クレイジーがクスッと笑って、また舐める。ルーチェが深く息を吸って吐いた。クレイジーの口が離れた。ルーチェから声を出した。

「あの……」
「ん?」
「まだ、やるの?」
「……やだ?」
「……や、ではない……けど」
「ん」
「なんか……ちょっと、不思議な、感覚で……」
「なら、もうちょっと続けていい?」
「……クレイジー君が、そうしたい、なら……んちゅっ……」

 見えないところから唇を塞がれた。舌が入ってくる。手が肌をなぞる。その感覚にぞくぞくする。指が肌をなぞる。ルーチェの足の先がぴんと伸びた。非常に感じやすくなっている。クレイジーは、自分がにやけてしまうのがわかった。でも、我慢出来ない。こんなに嗜虐心を煽られたのは久しぶりだ。

 今からこの子にどんな悪戯をしてやろうか。

 クレイジーがまた離れた。ルーチェの肌が寒くなる。

「……クレイジー、くん?」

 下を下ろされた。下着だけが残される。

「わっ、ちょっ……」

 クレイジーがルーチェの足を左右に広げた。

「わっ! ちょっ! ちょっと、待った!」
(あ、……濡れてる。感じてくれてたんだ)
「く、クレイジー君、あの……」
(あー……いいわー……)
「あっ、あの、あ、あの?」

 クレイジーに尻を持ち上げられ、濡れたそこへ鼻を押し付けられる。

「っ! ちょっ、ちょっと、それは、ちょっ、ま、待った……」

 待たない。舌を口から出す。

「あっ、ま、まって……それ……」

 下着越しから舐められる。

「あっ……あっ……あっ……」

 舌が触れるたびに熱と粘着性のある水滴がつき、更に下着に染みができていく。

「あっ……♡ あっ……♡ あっ……♡」
(匂い濃いな。あー……やば。癖になりそう……)
「んっ♡ ……んんっ♡ ……んぅ……♡」
(あ、声がエロくなってきた。いいじゃん。感じてんの? 気持ちいい?)
「あっ、まっ♡ ひぃっ!」

 吸われる。

「んん♡!」

 また舐められる。

「ふぅ……うぅ……♡!」
(まだ駄目)
「ふぇっ……! や、ぁっ!」

 弱いところを重点的に舌が突いてくる。生暖かい熱がつく度に、動く度に、中からとろけたものが溢れて出てしまうのを感じる。

(だめ……声……出ちゃう……!)
(あー……びしょ濡れ……。最高……♡)
「ユア……ン……くんっ……!」
(イクの?)
「あっ!!」

 ――絶頂した。

「~~んっ……」

 中で痙攣が起きてるのを下着越しから感じる。その光景がエロくて仕方ない。クレイジーが深く息を吐き、体を起こした。

(……あ……頭……ぼーっとして……なんか……どうしよう……)

 絶頂したばかりの脳はまだ正常に戻らない。本心ばかりが頭によぎる。

(……ユアン君、今日、なんでこんなに喋らないんだろう……。なんか……寂しい……)
(いやー……やべえ……。今日もすげー興奮してる……)

 既に汁だらけの熱にゴムを被せ、ルーチェの下着の隙間から入れ込んでみせた。突然の行動にルーチェが驚き、腿が揺れた。クレイジーの脈打つ熱が、下着の隙間から入ってる気がする。

「な、なに、してるの?」
(あーーー素股もいいーーー……)
「あた、当たってる、けど、あの……」

 濡れる割れ目に沿ってクレイジーが熱を動かす。状況がわからず、ルーチェは混乱する。

「く、クレイジー、くん?」
(ルーチェの、股、いい。……ああ、挿れたい……)
(すごい、擦ってくるけど……これ……いつ入ってくるんだろう……)

 見えないから、タイミングが掴めない。

(そろそろ目隠し、外して、ほしい……)
(はぁー……ぬるぬるしてる……。あーー……もういいかな……)
(ユアン君の、顔、見たい……)
(あ、もう、いいや)
「あっ」

 ルーチェの腰が引いた。しかし抱き寄せられた。予告もなしにクレイジーが急に入ってきた。きつい。ルーチェの体が震え出す。

「あっ、ちょ、あ、クレイジー、くん」
(ルーチェの声、いい)
「あ、入って……」

 ギチギチと音を鳴らしながら入っていく。ルーチェが息を止める。クレイジーも一度動きを止め、小刻みに動き、開いてきたら、更に中に入る。

「あぅ……」
(全部入った)
「……く、クレイジーくん、あの……」

 クレイジーが黙ったまま動き出した。

「あっ♡」

 奥に向かって突かれる感覚。

「やっ、あっ、ちょ、ちょっと、あっ、ま、クレイジー、くん!」
(気持ちいい、ルーチェ、声、いい、ルーチェの中、熱くて、狭くて、やばすぎ。気持ちいい、やばい。止まんねえ)
「はっ、はっ……ま、って、クレイジー、くん、ってば……!」
(ルーチェの声、いい。まじで、好き……)
「や、やだ。クレイジー君、まって、ねえ……」
(ルーチェ、ルーチェ……ルーチェっ……!)
「あっ、待って、ま……ユアン君!!!」
「っ」

 クレイジーがはっとした。さっきまで気持ちよさそうにしていた彼女の姿はなく、アイマスクを濡らす水滴は快楽から来たものではなく、ただ、体を震わせ、怯え、泣いている。

(あっ……)

 クレイジーが慌ててルーチェの目隠しを取った。濡れた茶色の瞳が開かれれば、青ざめる緑の目と目が合う。

「ルーチェ」
「……ぐすっ……んっ……」
「ご、ごめん。ちょ、ごめん。やりすぎた」
「……ごめ……」
「いや、俺が、まじ……」

 ルーチェの両手首に結んだ紐を解けば、ルーチェがクレイジーの両頬に手を当て、額を重ね合わせ、自ら唇を重ねてきた。喜びから胸が小さく鳴ったが、それどころではない。ルーチェが落ち着くまで唇を重ね、頬に唇を押し付け、背中を叩き、肩を撫で、その間もルーチェが確認するようにクレイジーを濡れた瞳で見つめてくるので、絶対に目を逸らさず、ルーチェと見つめ合い続ける。

「……怖かった?」
「……ユアン君じゃ、ない、男の人が、い、いる、気が、して……ぜっ、……全然、しゃ、しゃべ……ら、っ、ないし」
「あーーーー本当ごめん。虐めすぎた。まじごめん」
「んっ」
「大丈夫。本当に、俺しかいないから」
(ユアン君……)
「ごめん。調子に乗った。本当、ごめん」
(あ……)

 クレイジーが胸で抱えるようにルーチェを抱きしめると、ルーチェの視界がクレイジーだけとなり、彼の体温や温もりを身をもって感じる。安心すると、また涙が頬を濡らす。震える体をクレイジーが大切に抱きしめ、頭にキスをしてくる。しつこいくらいの謝罪の言葉が聞こえ――ちゃんと、クレイジーであることが確認できた。確認が認識となると――だんだん気分が落ち着いていき――気がつけば、繋がったままお互い抱きしめあっていた。

(……あったかい……)
「ルーチェ、本当にごめん。怖い思いさせようとか、本当に、そんな気はなくて」
「……あたし、も、ごめん」
「や、ルーチェは悪くない。俺が調子に乗っただけで」
「……」
「悪戯が過ぎた。ごめん。まじで、俺しかいないし、何も怖くないから」
(……ユアン君だ)

 抱きしめてくる手も、優しい声も、温もりも。

(見えたら……急に安心した……)
「……大丈夫?」
「……うん。もう、お、落ち着いた、から……」
「……本当は?」
「……大丈夫だよ」

 ルーチェが再びクレイジーの頬に手を添え、唇を重ねる。見つめると、やはりいつものクレイジーがいる。

「何もみ、見えなくて、ちょっと、怖くなっちゃった、だけだから」
「……」
「あっ、ふふっ、ユアン君」

 ルーチェの濡れた頬にキスの雨を落とす。その他、鼻を押し付け、頭を撫で、やっぱりキスをする。ルーチェが笑いながら思った。なんだか犬みたい。

「ふふっ、大丈夫だから」
「大丈夫じゃない」
「あ……ふふっ」
「怒って」
「……あたしが、こ、怖がっちゃっただ、だけ、だから」
「いや、良くない。怒っていい。思いきり」
「……Mだ」
「Mでいい」
「……でも、た、楽しくなっちゃっ……」
「いや、ルーチェ、本当に良くない。ルーチェに我慢してほしくないから、ちゃんと怒って」
「……んー……じゃあ……」

 ルーチェがクレイジーの頭を撫でた。

「あまり怖がらせ、せないでね」

 優しい手でぽんぽん。

「はい、仲直り」
「……」
「……おしまい」
「……」
「あっ」

 クレイジーがまたルーチェを強く抱きしめた。その温もりにルーチェがほっとし、クスクス笑いだした。クレイジーがルーチェの頬に頬を摺り寄せた。笑顔のルーチェがいて、クレイジーの胸も安堵する。

 俺がいないと駄目なんじゃない。
 俺が、この子がいないと駄目なんだ。

 大切に抱きしめる。大切に撫でる。大切にキスをする。体に触れあえば、性欲のまま動いてしまったさっきの自分を殴りたいという後ろめたさが強くなる。それを消し飛ばすように、ルーチェの体を撫で続け、キスをする。

「ふふっ、ユアン君、あっ、んふふ! ね、も……あっ……大丈夫だから……」
「……優しすぎ」
「んふふっ。……ユアン君はこういうとこで、ま、真面目、だよね」
「好きな女泣かせたんだからこうなるって」
「……」
「……今日、もう、やめよ」
「あっ、まっ」
「え」

 中に入ったそれを抜こうとすれば、ルーチェが抱きついて止めた。

「待って」
「ルーチェ」
「続き、したい」
「……」
「……萎えちゃった?」
「……嫌じゃないの?」
「さっき、あの、み、見えなかったから……ちゃんと、ユアン君のこと、み、みて、したいなって……」
(……あー、もう……)

 優しく優しく彼女の頭を撫でながら、顔を覗き込む。

「今止めとかないと、俺、いつ止まるかわかんないよ」
「……が、がんば、り、ます……」
「……少しでも嫌って思ったら、言って」
「……もう大丈夫。いっ、い、っぱい、抱きしめてくれたから」
「ルーチェ。……我慢しないで。いや、あー、提案したのは俺だけど……なるべく、その、……俺の前では……甘えてほしいっつーか……」
「……あのね、そうやって、……あたし、なんかを、た、大切にして、くれてるの、すごくわかるから……嬉しいんだ」
「大切だもん」
「ふふっ。……次はちゃんとか、顔、見て……したい」
「……ん、じゃ……顔見ながら……続き、しよっか」
「……ユアン君」

 ルーチェがクレイジーに抱きついたまま、耳元で、明瞭な言葉で囁いた。

「キス、して?」

 有無を言わず、クレイジーがルーチェと唇を重ねた。瞼を閉じず、ルーチェがクレイジーを見つめる。緑の目も、自分を見ている。唇が離れると、頬に押し付けられる。だからルーチェも唇を寄せる。腰がゆっくりと動き出す。中の物が上下に動き始めた。ルーチェの腰が一瞬揺れ、しばらく時間がかかったが、感度が戻ってきて、感じてくる快楽から声が出そうになり、また濡れてくる感覚を覚える。クレイジーも滑りが良くなり、動きが滑らかになっていく。青ざめていた顔がだんだん赤く染まっていき、また、息が荒くなっていき、音が響く。ローションと愛液が混ざり合い、呼吸を乱し、聞こえるたびにまた興奮してしまう。肉棒が擦れる。あまりの快楽にルーチェが再び達した。しかし、再び熱が動き出す。ルーチェが息を呑んだ。先程クレイジーに言われたことを思い出した。クレイジーの顔を見つめる。クレイジーは既にルーチェの顔を見ている。目が外せなくなる。お互いの目を見れば、目隠しをされた時より興奮が訪れた。クレイジーの息が浅くなった。我慢できなくなったように腰を早く動かし始めた。ルーチェが目を見開いた。感じやすいポイントにクレイジーの熱が当たった。ルーチェもどうにかなりそうになった。しかし、理性を飛ばしたのはクレイジーだった。止まらない。ルーチェの腰を掴み、深く入った。

「「っ」」

 ――その瞬間、同時に果てた。

 ルーチェがクレイジーを見つめる。クレイジーが眉間に皺を寄せ、恥ずかしそうな、苦しそうな、堪えるような顔で射精している姿が見え――その姿が、なんとも――愛らしいと思ってしまった。

「……っ……」

 クレイジーが震わせた息を吐いた。その姿にルーチェが見惚れた。クレイジーの額から汗が滴った。ルーチェの肌に落ちた。翡翠色の目が開けられる。その視線は自分に向けられる。

 一度、抜かれた。ルーチェの腰が一瞬ビクビクビクッ、と震えるところを見て、またクレイジーの熱が元気になった。コンドームを付け直し、ルーチェの体を起こさせ、自分の上に乗らせた。ねじこむ。

「あっ」

 入ったら、同じ運動が繰り返される。下から巨大なもので突き上げられ、逃げ道がない。ルーチェの理性が崩壊しかける。それも、座った形でクレイジーから抱きしめられ、拘束されたような感覚に、どうしても体に興奮が起きてしまう。クレイジーの顔を見ていたくて、彼の肩を抱きつつ、額を重ね合わせる。クレイジーも目を逸らさない。唇が重ねられる。ルーチェも受け入れる。下から突き上げられる。ルーチェはまた果てそうになり、堪え、しかしまた突かれてやはり絶頂してしまった。締め付けられた感触でクレイジーも絶頂してしまう。少し中が緩まると、抜かないまま動き出す。ルーチェが驚いて小さく悲鳴を上げた。でもクレイジーは止まらなかった。

(声、出ちゃう……)

 ルーチェが口を押さえた。

 声、出ちゃう。だめ。でちゃう。あっ、で、でちゃう。だめ、でちゃう。また、あっ、気持ちいい。だめなのに。でちゃう。声が、あっ、はずかしい、聞かれちゃう。声、我慢しないと。あっ、だめ。ユアン君、やめて。我慢、できなくなっちゃう。また、あっ、声が、あっ、おかしくなりそう。

「あっ♡! あっ♡! あっ♡! あっ♡!」
「ルーチェ、防音魔法かけてるから、声出しても平気だよ」
「えっ!? な、に? も、もう一回……あっ♡!」
「俺の声聞こえる? ルーチェ」
「気持ちいい♡! ユアン君、き、気持ちいい♡!!」
「うん。俺も、すげー、気持ちいい……」
「あっ♡! そこっ、あっ、だめぇっ! 声でちゃうからぁ♡!!」
「いいよ。出して。どうせ俺意外聞こえてないんだから」
「あ、気持ちいい……♡ ゆあん、くん……♡ そこ、イイ……♡」
「ゴリゴリ……言ってんね」
「んぅ……♡! イクッ、あっ……♡!」
「あーーー……」
「っっ……♡ ~~っ……♡! ……っ……~~……っっ♡♡」

 また締め付けられる。気持ちいい。コンドームを取り替えなきゃ。ルーチェが離してくれない。理性はもう存在しない。愛しい女を抱いてることしか頭にない。クレイジーが再び動き出した。

「やっ、も、もう、無理……!」

 肉がぶつかり合う音が響く。

「ゆ、ユアン、くん……♡!」
「ルーチェ、好き……」
「イク、イク、イク、また♡ イク、イッちゃう……♡!」
「いいよ。何回でも。いくらでも」
「あ、はやっ、あ、ゆあん、くんっ、やだっ、ゆあ……ぁっ……♡!!」
「もっと呼んで。ルーチェ。……もっと、乱れて」

 こんな気持ち今まで存在しなかった。
 無我夢中で、我を忘れるほどの欲情だなんて。

「……っ……ルーチェ」
「あっ♡ はぁ♡ ユアン君……♡」
「ルーチェ……」

 その言葉は、突然彼女の頭に明確に入った。

「愛してる。ルーチェ」

 意識が朦朧とし、安心する体温に身を委ねる。ぐったりした体を抱きながら、クレイジーがその頭を撫で、囁いた。

「……寝よっか」
「……ん……」
「……まだ一緒にいてくれる?」
「……うん……」

 クレイジーは確かに聞いた。

「ユアン君なら……いいよ……」

 意識を失ったルーチェを見て、その姿がとても愛おしくて、クレイジーは何度目かわからないキスを、ルーチェの顔いっぱいに繰り返しつけていった。


(*'ω'*)


(……あれ……あたし……)

 ぼんやりとルーチェの意識が戻る。

(あ……そうだ……。ユアン君の……部屋に泊まってて……目隠しされて……怖くなって、泣いちゃって……)

 瞼を上げる。

(……あ)

 ――自分を腕枕するクレイジーが、頬に唇を寄せていた。

「……ユアン……くん……?」
「……起きちゃった?」
「うん。なんか……覚めちゃった」

 見上げると、上半身裸のクレイジーが手を伸ばし、ルーチェの頬を撫でてきた。温かい手が触れると、とても安心する。すごい。彼は、やはりミランダ様のようだ。ぼうっと目をとろかせると、クレイジーが思わず笑った。

「ぴーちゃん。まだ寝てていいよ」
「……目隠しつ、使おうかな」
「それは駄目」
「……なんで?」
「可愛い彼女っぴの寝顔が見られなくなるから」
「気にしてるの?」
「大反省中」
「うふふっ。も、もういいのに」
「……まじごめん。怖かったっしょ」
「や、あたしが、あの、ほ、本当に、び、び、びっくりしちゃった、だけだから」
「……感覚が鋭くなるからな。やっぱ」
「うん。次は、もっと頑張る」
「いや、しばらくやめとこ」
「え、でも、ユアン君の番がまだだよ?」
「……あー、そういう?」
「結構楽しみ」
「なになに? ルーチェっぴ、俺っちが目隠しして何もできなくなった姿に興味ある感じ? 嫌な趣味をお持ちだっぴなー?」
「うふふ!」
「……」
「……あっ」

 またクレイジーからキスをされた。ルーチェの頬は既に緩んでいる。

「……んふふ」
「もう寝たら? まだ日も昇ってないみたいだし」
「くっついていい?」
「ん」
「ふふっ! ……あったかい」
(……温かい……)

 抱きしめたら温もりが伝わって心が安らぐ。クレイジーがクスクス笑うルーチェを堪能していると、ルーチェから声をかけてきた。

「……あのね」
「ん?」
「なんか、さっきね、えっと、……あの……、……してる、時のね、ユアン君、今日なんか、す、す、すごく、……か、可愛かった」
「……可愛かった?」
「そのー……い、……ってる時の顔が、なんか……いいなーって、思った」
「やだ、ちょっとー。どこ見てんのよー。えっちっちー」
「何それ! んふふふふっ!」
「……好きって思った?」
「……あ、でも……今日は……」

 ルーチェの笑みに、クレイジーが目を奪われる。

「……やっぱり、ユアン君以外の人とは……触れ合いたくないって、思った、かな」
「……」
「あたしが、その、あ、えっと、ゆ、ゆ、ユアン君以外、知らないっていうのも、あるんだけど、あ、あはは……」
「俺も、ルーチェ以外興味ない」
「……」
「嫌なことは嫌って言ってくれていいし、めちゃくちゃ甘えてほしい」
「……うん。ありがとう」

 ルーチェが軽く笑い、クレイジーの胸に寄り添った。

「……このまま寝ていい……?」
「ん。いいよ」
「腕、痺れたでしょ」
「別に?」
「嘘だ。ふふっ」
「……俺がしたかったから、いいの」
「……ありがとう。や、優しく、してくれて」
「なんで? ルーチェこそ、いつも側にいてくれてありがとう。……今日はまじで嫌われたと思ったけど」
「……ユアン君も、嫌なことは嫌って言ってね?」
「あ、うん。俺っちはね、正直じゃないと生きていけないから」
「あと、その、あ、あたしも……ユアン君に甘えてほしい」
「……」
「……答えられるか、わからないけど」
(……。……。……天使……)
「ね、寝るね!」

 ルーチェがクレイジーの胸に顔を隠した。

「お、お休みなさい!」
「……ん。お休み」

 優しく抱きしめて、キスを送る。ルーチェが一瞬緊張した。しかし、優しく背中を撫でてくる手に、やはり力が抜けてくる。

(やっぱり、この子優しいな……。すごく大切にしてくれてるの、あたしでもわかる)
(大好き。ルーチェ)
(泣いちゃったけど、でもやっぱりユアン君がいると安心する)

 これは、

(好きってことなのかな……)

 答えはわからない。けれど、確かにその温もりに安心した自分がいて、ルーチェの瞼が自然と下りていき、数秒経てば、寝息を立てていた。

 そんなルーチェを見つめ、クレイジーも無意識のうちに瞼が下りていき、そのまま深い眠りについた。

 安心しきった顔で夢の底へと落ちていく。
 眠る二人の距離が離れることはない。






 見えなくても愛して END
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