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メニー

思春期姉妹の春話(1)

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 メニーがまたあたしの好きな人と付き合い始めた。




 テリーが遠くから見つめる。手を繋ぐ彼とメニー。幸せそうな背中に、ぐっと唇を噛んで、窓に背を向ける。あたしと彼には縁がなかったんだ。そう思い込むことで、やり過ごした。

 そして、しばらく経った頃、親友のニクスから聞くのだ。

「メニー、彼と別れたんだって。テリー、チャンスじゃない?」
「……やだわ。ニクス。あたし、もう新しい恋へ走り出してるのよ」

 別れた彼女の姉なんて嫌でしょ。付き合う前なら、ともかく。

「メニーを選んだ男なんかに、興味ないわ」

 昔からそうだった。血が繋がってないのに、好みは似るらしい。テリーが好きになった人に義妹のメニーが告白され、メニーはそれを受け入れ、恋人になっていた。

 リトルルビィとメニーの会話を密かに聞いたことがある。

 メニーって、もうキスしてるの?
 してないよ。
 でも、前まで彼氏いたよね?
 うん。怖いって言ったら、みんなやめてくれたの。それで、しばらく付き合って、相性が合わないねって言って、円満で別れるの。だから、みんな、今ではお友達なんだ。

 盗み聞きなんてするつもりはなかった。けれど、聞いてしまった。テリーの胸にはまた鬱憤が溜まっていく。なんでメニーなの。あたしなら、喜んでキスをするのに。

 確かにメニーは美しい。かわいいし、美人だし、人見知りだけど、一度話してしまえば親しくなるまで時間はかからない。メニーの笑顔は独り占めしたくなる。でも、でもね、どうしてメニーなの。

(リオン先輩)

 誰にも言ってない相手。大学生の彼。

(リオン先輩)
(あなただけは……)

 遠くから、ずっと遠くから、彼がサークルの活動で励む姿を見つめる。誰もいない教室から。

(……リオン先輩)


 それでも、テリーの想いは叶わない。


「リオン先輩、高等部のメニーさんと付き合ってるんですって!」
「メニーさんですって!?」
「ちょっと、メニーさんなら、敵わないじゃない!」
「美男美女。ああ、私達なんて所詮その程度よね……」
「温かく見守りましょう」
「ぐすっ……! リオンさまぁああ!」

 クラスメイトの会話を聞いて、テリーの頭は白くなった。誰にも言わなかった。ずっと見つめていた。声なんてかけれなかった。誰かと付き合うとは思ってた。メニー以外であれば、まだこの心はただの失恋の傷だけで済んだ。

 また、メニーと付き合った。

 また、あたしの好きな人が、妹に奪われた。


「……あ、テリー、すごいよ。見てごらん。リトルルビィがチックコックにとんでもない技を投稿して……」

 その瞬間、テリーが地面に倒れた。

「テリー!?」

 ニクスが慌てた顔をしたのを最後に、テリーの意識がなくなった。


(*'ω'*)


 目が覚めると保健室だった。白いカーテンに囲まれ、ベッドに横になっている。目の前には、会いたくない人物。

「……お姉ちゃん?」

 メニーが微笑み、テリーの顔を覗き込んだ。

「大丈夫? 気分はどう?」
「……」
「びっくりしたよ。ニクスちゃんが血相を変えて、お姉ちゃんが倒れちゃったって言うんだもん」
「……」
「水飲む?」
「いらない」

 目を逸らす。

「授業は?」
「お姉ちゃんが心配だからって言ったら、一時間だけならっていいよって、先生が許可してくれた」

(……ビッチが)

「戻りなさい」
「もう少しいるよ」
「大丈夫。多分、寝不足で貧血になったのよ」 
「そっか」
「戻りなさい」
「ここにいる」

 テリーがメニーに背中を向けた。

「気分が悪いの。だから、今日は早退する」
「……そっか」
「もう大丈夫よ。……戻って」
「サリア呼ぼうか?」
「いらないって言ってるでしょ!」

 メニーがきょとんとし、テリーがシーツを握りしめた。

「……早く出てって」
「……」
「気分悪いの。……放っといて」
「……わかった」

 メニーが立ち上がった。

「また後でね。お姉ちゃん」

 メニーが密閉空間から出ていく。保健室の扉が開けられ、閉められた。

「……」
「早退とかなんとかするのかい?」

 変わった保健室のクラブ先生がカーテンを開けた。

「だったら担任に言っておくよ。ソフィア先生だっけ? とかなんとか。どうする? すぐに帰るかい?」
「……しばらく休んだら帰ります」
「了解。とかなんとか」

 カーテンがまた閉められる。一人になれば、シーツを握りしめる手に力が込められた。

(メニー)

 憎い。

(メニー)

 恨めしい。

(メニー……!)


 だけど、嫌いになれない。


(……くそ……)

 嫌いなわけじゃない。ただ、メニーが何を考えているのか、わからないだけ。

(……ちくしょう……)

 わかってる。うまくいかない恋愛を、メニーのせいにしていることなんて。

(でも、誰かのせいにしないと、胸が張り裂けそう)

 メニーのせいにするなんて。

(メニーは悪くない。わかってる)

 でも、メニーのことを考えたら、イライラする。

(……やっぱり、しばらく距離を置こう。……たぶん、それがお互いにとっていいわ)

 会わなければイライラしない。家では普通だもの。

(……大学生になったら、一人暮らししよう。それまで、我慢すればいい……)

 テリーがまた瞼を閉じた。


(*'ω'*)


 その日の夜、贅沢な自分の部屋で、スマートフォンの中に保存していたリオンの隠し撮りのアルバムを消していく。

 一瞬でもいい。その目に自分を映してほしかった。愛してるよ、と言ってほしかった。

 けれど、彼が愛してるのは自分ではなく、妹のメニー。

(……ああ……)

 なんでうまくいかないのだろう。

(あたしがメニーだったらよかったのに)

 目を瞑って、次の日になってたらメニーになってる。そしたら、リオン先輩は自分に笑顔を向けるのだろう。……それでもいい。テリーと呼ばれなくてもいい。好きな人と側にいられるなら、もう、何でも構わない。

(……なんて、ね……)

 それは、本の中の話だ。

(あたしは、テリー)

 美しいメニーには到底なれない。


 ――そこで、扉がノックされた。


「お姉ちゃん」

 声を聞いた途端、体がだるくなった。

「ちょっと、話があるんだけど」
「……」
「開けていい?」
「……」

 テリーがむくりと起き上がり、スマートフォンをパジャマのポケットに隠した。

「どうぞ」

 返事をすれば、メニーが扉を開けた。テリーは髪の毛をブラシで整える。

「何?」
「……体調は?」
「もう大丈夫」

 細かく、細かく、ブラシで髪をすいていく。

「そう。よかった」
「それだけ?」
「何言ってるの。心配だったんだから。晩ごはんも一人で食べちゃうし」
「別にいいでしょ。一人で食べたい気分だったのよ」

 ブラシを置いてリボンを選ぶ。三つ編みをしよう。

「お姉ちゃん、あのね、土曜日、映画行かない?」
「映画?」
「アナスタシアの恋。お姉ちゃん、見たがってたでしょう? フリータイムのチケットもらったから、よかったら」
「先輩と行けば?」

 メニーがきょとんとして、またにこりと笑った。

「先輩って、リオン先輩?」

 メニーがテリーの隣に座った。

「リオン先輩、忙しいから行けないの。だから」
「じゃあ、リトルルビィと行けば?」
「お姉ちゃん、見たがってたでしょう?」
「アリスは? アリスも見たがってたわ」
「お姉ちゃんと」
「あたし、勉強で忙しいの」

 三つ編みが失敗した。また一から始める。

「あんたは一年生でも、あたしは三年生よ。受験があるの。落ちたらママにどやされるわ」
「お姉ちゃん、飴舐めない?」
「いらない」
「……そっか」

 メニーが飴を口に入れ、テリーに言った。

「一日くらい気分転換も必要じゃない?」
「メニー」
「お姉ちゃんさ」

 青い瞳がテリーを見つめる。

「最近、私のこと避けてるよね」

 その瞬間、テリーの怒りが頂点まで達した。

「どうして?」
「……どうして、ですって?」

 愛おしかった妹はいない。鋭い目で敵を睨む。

「自分の胸に手を当てて考えたら?」

 怒りが、恨みが、ぼろぼろと剥がれていく。

「あんた、自分がかわいいからって、何でもかんでもうまくいくと思ってない? 前まで付き合ってた人は? その前に付き合ってた人は? 何度も何度も入れ替えては付き合って、今度はリオン先輩? いい加減にしてよ!」

 噴火したらとめられない。

「どうしてお前ばっかり上手くいくのよ!!」

 あたしの好きな人達が、

「どうしてお前が告白されるのよ!!」

 あたしの好きになった人は全員、

「あたしなら、あたしならあんたみたいに、別れたりしないし、キスを拒んだりしない! ずっと、相手を大切に想い続けるのに!」

 メニーばっかり。

「あんたってそうよね。昔からあたしの好きになった人と付き合ってるわよね! なに? 自分は血の繋がりがないのに、この家の者よりも優れているところを見せびらかして、その標的をあたしにして、あたしを、こけにして、笑いものにしたわけ!?」
「おね……」
「あたしがリオン先輩を想っていたことも知ってたんでしょう? そうよ! そうに決まってる! だから付き合い始めたんでしょう? そうよね! リオン様も、あんたみたいな美人を好きになるわよね! ブスなあたしよりも、あんたを選ぶわよね!」
「テ……」
「美人でよかったわね! ええ! 最高の気分でしょう!? あたしの負けよ! あんたはあたしと違って器用で利口で人脈がある! これで満足!? 満足でしょう!? よかったわね!!」
「テ」
「もう出て行って! お前の顔なんか見たくないのよ!!」
「少しは私の話も聞いてくれる?」
「っ」

 メニーの言葉に、テリーがかちんときて、思わず手を上げた。しかし、その手をメニーに掴まれた。

「いっ!」

 力をこめるが、メニーが離さない。

「この……!」

 メニーがテリーをベッドに押し倒した。

「くう……!」

 ベッドの上に組み敷かれ、自分の乗っかるメニーをテリーが睨んだ。

「……のぉ……メニー!!」

 手首が強く握られる。痛い。

「は、離して……!」
「私の話、聞いてくれたらいいよ」

 か弱そうな顔をしたメニーが、さらに強くテリーの手首を握った。

「っ」
「そうだよ。私、お姉ちゃんの好きになった人と付き合うようにしてた」

 その言葉に、テリーがひゅっと息を呑んだ。

「でも、みんな、お姉ちゃんと話したことない人ばかりだったね。お姉ちゃんのこと、何も知らないの。お姉ちゃんの好きな食べ物も、お姉ちゃんの嫌いなものも」
「……っ」
「お姉ちゃんのこと知らない人だらけで、つまんなかった。だから、別れても何も心配いらないと思ったから、みんな私から振ってあげたよ」
「なっ」
「リオン先輩もそう。お姉ちゃんのことなんて、存在も知らなかった」

 動かない手に力が入る。

「だから、お姉ちゃんのこと、何も教えてないよ」

 これからも言わないよ。

「いらない情報は、与えないべきだよね?」


 ――テリーの顔が歪んだ。目を潤ませ、そこから静かに、大粒の涙を落としていく。


「……っ」

 テリーが顔を逸らした。

「……そんなに、あたしが嫌いだったのね……」

 声が震える。

「あたしが何したのよ」

 目を瞑る。

「あんたに何かした?」

 涙がこぼれる。

「なんで……。……なんでよ……」
「……」

 メニーが体を沈ませた。

「……嫌いじゃないよ」

 青い瞳は、一点から逸れない。

「嫌いなわけない」

 そうじゃない。

「お姉ちゃん、私は」

 汚く涙を落とすテリーにメニーが近づく。

「昔から、ずっと」

 テリーが気配に気づいて、はっと顔を向ければ、視界いっぱいにメニーが映る。

「好きなのは……」

 ――え?




 気がついたら、メニーと唇を重ねていた。





「……っ!!!!????」

 テリーが慌てて手に力をこめるが、メニーが上から押さえている。

「あっ」

 唇が離れたら、また重ねられる。

「んんっ!」

 足がすべる。ベッドに逃げ場はない。

「ん、んんっ! んん!」

 メニーがまったく離れない。

「……っ」

 息が出来なくて、その前に、まずはこの唇を離したくて、その前に、なぜメニーがこんなことをするのか理解が出来なくて、テリーの頭がパニックになってしまう。

(だ、誰か!)

 唇が離れる。今のうちに悲鳴をあげようと口を開きかけた瞬間、メニーが再び唇を重ね、その隙間から舌を入れてきた。

「ふんんん!!」

 口の中でころんと何かが転がった。

(な、何これ! 何か入ってる!)

 メニーがテリーの顎を上げた。

(あ、だめ、のんじゃう!)

 必死の抵抗も愚か。喉の奥に入っていき、飲んでしまった。しかし、自由になった手で、メニーを突き飛ばした。

「あ、あんた!」

 テリーがメニーを睨みつけた。

「今、あたしに何を……!」

 その瞬間、テリーの体がおかしくなった。

(へ……?)

 酷く、体が熱くなる。

「……な、に……した……のよ……」
「私もね、さっきから舐めてたから、じわじわきてるの」

 メニーが近づく。なぜか、体が後ろに下がった。

「っ」
「お姉ちゃん、こういうの弱いのかもね」

 突き飛ばされたメニーが、テリーの目の前に戻ってくる。テリーが後ろに下がるが、そこは壁しかない。

「テリー」

 壁の角に閉じ込められる。

「私も初めてなの」

 天使が微笑む。

「一緒に、気持ちよくなろう?」

 震える唇に、メニーが唇を重ねた。


(*'ω'*)


 体が震える。
 唇が震える。
 指がすべる。
 指を感じて、体が跳ねる。
 抵抗しようと手を動かす。
 縛られた両手首では何も出来ない。
 座ったまま、されるがまま。
 キスをしてくる。
 唇が重なる。
 指がすべる。
 肩が揺れる。
 奥が熱い。
 それに気づいたのか、メニーの指が布越しから触れてきた。

「ゃっ!!」
「わあ、すごい」

 耳元で、くすくす笑われる。

「テリー、すごく濡れてる。気持ちいいの?」
「き、きもち、よくなんか……」

 指が引かれた。

「あっ!」

 指が進んだ。

「あっ、やっ、やめっ……」
「そうだよね。下着越しじゃ、嫌だよね」

 ぱんつの中にきれいな手が入った。中指と薬指がそこをめがけて、もぞもぞと動き出す。

「っ、あ、いや!」
「ここ、こちょこちょされると、きもちいいよね」

 指がねちっこくそこを触ってくる。

「や、いや、いやぁ……!」
「私、毎晩テリーを想って、ここ触ってたの。ここ、きもちいいでしょ?」
「やだ、メニー、こわ、こわい!」
「その年で自慰してないの、テリーくらいだよ。もう、……かわいいんだから……」

 濡れた指のすべりが活発になっていく。

「あっ、あっ、あっ、あっ」
「テリー、イきそう?」
「わか、わかんない……!」
「気持ちいいならイッていいよ。ね?」

 指が動く。

「あっ、いや、っ、だめ。あっ、それ以上は、んっ……! んんっ!」

 指が早く動き始めた。

「あ、あ、あ、あああ、あああ、あああああああ……!」

 体がどんどん力んでいき、次の瞬間、奥が痙攣した。

「っ」

 びくっ! と体全体が跳ねてしまう。

「~~~~~っ……!!」

 奥から、感じたことのない快楽が、テリーを包んだ。

「……」
「……わかる? 私の指、絞めつけてくるの」

 耳元で囁かれる。

「テリーが、私の指、離したくないって言ってる」
「……そんな、こと、言ってな……」

 指がまた動き始める。

「あっ!!」

 また、そんな奥で動いたら。

「あっ、や、あたし、やだ、も、もう……!」
「テリー、まだ私が気持ちよくなってないから、だめ」

 奥で指が動いている。

「あっ、あぁっ! ああっ!」
「テリーの声聴いてるだけで、もう、興奮してきちゃう……」

 唇が重なる。

「んちゅ」
「んん!」 

 舐められる。

「……はぁ……」

 舌同士が離れたら、糸が繋がった跡を残す。そして、メニーがテリーの両足を左右に大きく開かせた。テリーが悲鳴をあげる。

「いやーーー!!」
「テリー、ここヒクヒクしてる。かわいい……!」
「あ、やめて! 見ないで!」

 メニーの顔が近づけば、吐息が当たる。

「やだぁ! いやぁ!!」
「ああ、テリー、ここ、ヒクヒクしてる。すごくきれいなピンク色だね」

 指で開かれる。

「っ!」
「テリー、見られて感じちゃった?」

 どんどん溢れてくる。

「イッたばかりなのに、テリーったら、もう……」

 ふう、と息をかけられ、テリーの尻がぴくりと跳ねた。その反応が面白くて、メニーが舌を出した。そして、膨らんで真っ赤にそまるそこを、舌に当てた。

「っっっ!!」

 テリーの目が見開かれる。今まで感じたことこない快楽に、体が嫌でも跳ねてしまう。

「あっ、だめ、そ、そこは!!!」

 メニーの小さな舌が、しつこく舐めてくる。

「き、きたない、からぁ!!」

 べろべろべろべろべろべろ。

「だめっ、メニー、だめ、だめなの、そこ、きたないから、あっ、あん!!」
「ここ?」

 べろべろべろべろべろべろ。

「いやぁぁあああああっっっ!!」

 ――また絶頂してしまう。

 くたりと力が抜けても、爪で突かれたらまた元気になってしまう。体がおかしい。奥が熱い。熱くて仕方ない。

「も、もう、もう……!」

 つー。

「ああああんっっ!!」
「テリー、私も、もう限界……」

 メニーが足をテリーに絡ませた。

「イきたい」

 お互いの大切なところが、ぴったりとくっつく。テリーは動けず、されるがまま。メニーの腰がゆるゆると動いていけば、女性器が、つんつんと擦られる。

「ひゃっ……!」
「あっ、いい。テリー……」

 メニーの腰が淫らに揺れたら、それに合わせるようにテリーの腰も揺れていく。揺れたら、やはり、擦れて、感じて、喘ぎ声が止まらなくなる。

「あっ、あっ、あっ、あっ!」
「テリー、はぁ、すごい、きもちいい! これ、いい! いいよぅ!」
「はぁ! はぁ! はぁ! はぁ!」
「テリー、ほら、私のと、テリーのが、擦れてるよ、ほら、見て!」
「や、やぁ……!」 
「こうしたら、どう、かな?」

 揺れが、小刻みに変わる。

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」
「あ、いく、テリー、見てて、イクね。見ててね、あ、気持ちいい、テリー、テリー、テリー」
「やっ、はげし、あっ、あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
「イくっ! いっ、……てりー……!」
「……っっっ!!!♡♡」

 同時に絶頂してしまう。

「あぅっ……!!」
「っっ……!」

 メニーとテリーが体を跳ねさせ、くたりと、その場で力尽きる。

(……お、終わった……)

 テリーが両手をもぞもぞとした。

(早く、これ解いて、逃げないと……)

「……はー……」

 メニーがゆっくりと起き上がった。

「まだ出来るよね? テリー」
「っ!!?」
「もう一回しよう?」

 メニーがテリーの太ももをなぞった。

「や、やだっ! メニー!」
「だーめ」

 両手は解放されない。

「も、もうやだ! やなの!」
「じゃあ、テリー、これ言ったらやめてあげる」
「な、なに?」
「メニー、えっちなあたしを犯して」
「……っ」
「……言えるでしょう?」

 テリーがメニーを怯えた目で見つめる。

「……それで、やめる……?」 
「うん」
「……じゃ、じゃあ……」

 プライドなんて捨てて、言葉を吐く。

「めにー、……えっちな……あたしを、おか、して……」
「わかった」

 メニーがにやけた。

「犯してあげるね」
「やっ……!」 

 指が再び動く。

「やめるって!」
「うん。テリーを犯したら、やめるからね」
「や、やだ! やだぁ!」

 唇が重なる。

「んんんんっ!!」 

 舐められる。

「あ、あぁ……!」

 犯される。





「テリー」



 メニーの手が、テリーの肌に触れる。



「テリー」



 愛おしかった妹はもういない。

 いるのは、獣。





 ――また、絶頂が繰り返される。





(*'ω'*)






 昔は、すごく仲良しだったのに。


 ベックス家は町の中でも、なかなかの金持ち一家であった。そこに再婚相手の連れ子としてやってきたメニーは、父親が亡くなってから、まるで腫れ物のように扱われた。しかし、テリーだけはメニーと仲良くしていたのだ。昔から妹がほしかったから、とても嬉しくて、大切に、大切にしたのだ。

 痛くないようにメニーに触れて、
 優しく頭をなでてあげて、
 母のように抱きしめてあげて、
 たくさん甘やかせて、
 たくさん笑顔を見せて、
 たくさん耳に囁いた。愛してるわ。メニー。

 そうして、徐々にだが、時間が経つにつれ、メニーはきちんとベックス家の娘として扱われるようになった。

 それでも、小さなメニーは、事あるごとにテリーに走った。テリーはそれを笑顔で受け入れた。

「おねえちゃん!」
「どうしたの? メニー」
「お花あげる!」
「まあ、きれい! あたしに? どうもありがとう!」

 自分が笑えば、メニーも嬉しそうに笑った。いつまでもそんな関係でいたかった。
 メニーを愛してた。



 だけど、今は、



「ニコラ!」

 はっとすれば、親友のアリスが自分の顔を覗いていた。

「大丈夫?」
「……ええ」
「最近、妙にぼーっとしてるんじゃない?」
「……」
「ほら、掃除終わらないわよ! 手を動かす!」
「ああ、……はいはい」

 箒を動かして、教室のほこりを取っていく。廊下では部活動に行くクラスメイトで溢れている。

(……あ……)

 門の前でリオンが立っていた。それに駆け寄るメニーの姿。

「……」

 二人で肩を並べて帰っていく。

(……そっか。今日は、サークルないのね)

「……」

 箒を動かす。

(わからない)

 メニーの考えてること。

(わからない)

 耳に囁いてくる熱い言葉。

(わからない)

 あの夜は媚薬の飴を飲まされた。

(だから、お互いにわけがわからなくなって)

 ファーストキスまで奪われた。

「……」
「あら、ニコラ、顔色悪いわよ? ははーん? さてはテストが不安なのね? 大丈夫! 一緒に勉強しましょう! アリスちゃんみたく留年なんてさせないわ!」
「……今日は、帰る……」
「ええ! 休むことも大事よ! 気をつけてね!」

 とぼとぼ一人で家に帰れば、メイド達が自分を迎える。部屋に入ろうと扉を開けた瞬間、廊下でメニーと鉢合わせた。

「っ」

 メニーと目が合う。

「……」

 すぐ目を逸らし、扉を開ければ、

「お姉ちゃん」

 メニーがすぐ後ろに立っている。

「先輩からチョコレートもらったの。お姉ちゃん、好きでしょう?」

 手が重ねられる。

「一緒に食べよう?」
「っ」

 首にメニーの唇が当たる。

「メニ……」

 メニーがテリーを部屋に押し込んだ。

「っ」

 思わず腰が抜けて座り込んでしまう。扉を閉めたメニーがにこりと笑った。

「お姉ちゃん、スカート汚れちゃうよ?」
「っ」

 体をちぢこませれば、メニーが優しく手を握り、テリーを立たせた。

「……っ」
「どうしたの? 今日はなんだか顔色悪いね」
「……」

 メニーがテリーをソファーに座らせる。

「大丈夫?」

(あ)

 メニーが優しくテリーの頭をなでてくる。


 おねえちゃん、だいじょうぶ?
 だいじょうぶよ。しんぱいしてくれてありがとう。メニー。


 子供の頃は、仲良しでいられたのに。

「……」

 テリーがふらりと目を逸らした。それを見て、メニーがにこりと笑って手を離す。

「ほら、これ限定品のやつなの」

 人気すぎて手に入らないチョコレート。テリーがほとぼりが冷めた頃に買おうと思ってたものだ。

「はい」
「……ありがとう……」

 箱に袋が詰められ、その袋を破いていく。中に小さなチョコレート。

(……味が濃い……)

 甘くて濃厚。

「どんな味?」
「……濃厚」
「甘い?」
「甘い」
「どれくらい?」
「……甘い」
「甘いだけじゃわからないよ」

 メニーの肩がテリーの肩に触れた。

「私も味わっていい?」
「……勝手に食べれ」

 ば――?


 気がつけば、目の前にメニーの顔があって、どんどん近づいてきて、また、唇を重ねられる。

「っ」

 口を閉じるのを忘れていた。舌が入ってくる。

「……んんっ……!」

 チョコレートのついた自分の舌と、メニーの舌が絡む。

(や、やだ……!)

 体を引かせようとしたが、はっと気づいた。メニーに腰を押さえられている。

(あ、そんなっ……)

 ぐちゅ。

「ん……」

 離れる。

「……本当だ。すごく甘いね」

 メニーがテリーに微笑んで、チョコレートの袋を破った。

「はい。お姉ちゃん」
「え?」
「まだ、足りないでしょう?」

 メニーに見つめられる。

「あーんして?」

 かわいい笑顔に唇が震える。

「テリー」

 名前で呼ばれたら、

「あーんして」

 あの夜を思い出して、恐怖が底からよみがえって、――逆らえない。
 口を小さく開ければ、メニーが嬉しそうに笑って、口の中にチョコレートを入れた。

「いい子だね。テリー」

 メニーがテリーの唇を舐めた。びくっ! と肩が揺れる。

「あまい」

 キスをする。

「あまい」

 舐められる。

「もっと」

 メニーに舐められる。

「テリー」

 チョコレートのように溶けていく。

「……テリー……」

 また、唇が重なる。

(……わからない)

 もうわからない。
 メニーが考えてること。
 わからない。
 わからない。

 頭が、ごちゃごちゃして、混乱して、とけていく。




 翌日、テリーが熱を出した。


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