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サリア

IQ異常値問題

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「アメリアヌは甘えん坊で、まだ、なかなかアーメンガードから離れられないようなの。だから、テリーが泣いてたら、あなたが抱っこをしてくれるかしら」
「かしこまりました」
「私もしたいのだけどね、なにせこの年で、赤子をずっと抱っこして歩くのはどうしても厳しいの。悪いけれど、お願いするわね」
「かしこまりました」

 紐で固定して、ガラガラを持って、気をそらす。ほらほら、二番目のお嬢様、がらんがらん。

「びゃぁああああ!!」

 ほらほら、二番目のお嬢様、クマさんですよ。

「びゃあああああ!!」

 痛い。痛い。髪の毛を引っ張らないで。

「ぎゃぁああああ!!」
「よしよし」
「あーん! あーん!」
「良い子。良い子。あなたは良い子」

 泣き止まないから体を揺らして、背中を叩いて優しくあやす。

「テリー」

 名前を呼べば、ぴたりと泣くのをやめた。

「……」

 緑の瞳が赤子を見た。目がぱっちり合う。

「お嬢様」
「びゃぁあああああ!!」
「テリー」

 ぴたりと止まった。

「テリー」

 泣くのをやめて、何を考えてるかわからない顔で、自分を抱えるメイドの髪の毛を引っ張る。痛い。痛い。

 でも、なんて小さな手。

 人差し指を差し出せば、それをぎゅっと握られる。長女の時は、他のメイドがやっていた。だから、自分は初めて受け持つ仕事。

 私が、この子を守らないと。

「テリー」

 みんなの前では怒られてしまうから。

「テリー」

 秘密ですよ。

「テリー」






「サリアーーーーーーーーーー!!!」


 トイレから叫び声が聞こえて、ああ、そういえば今日だったかと冷静な頭でひらめく。

(またどんぴしゃだったわ)

 サリアが下着とナプキンを持ってトイレの扉をノックする。

「テリーお嬢様、サリアです」
「赤、赤に、赤に染まってるわ……!」

 震える手が下着とナプキンを持ち、自分で装着する。水を流す音が聞こえ、暗い顔のテリーがトイレから出てきた。

「女って不公平よ。なんで生理なんてあるの。ああ、あたし死んじゃう。出血多量で死んじゃうのよ! ああ! もうだめ! めまいが!」
「はいはい」
「サリア! あたし! 死んじゃうの!」
「お部屋に戻りましょう」

 汚れた下着を回収して、テリーの部屋までついていく。ベッドに寝かせ、水と薬を渡す。

「さあ、どうぞ」
「……ありが……」

 お礼を言う前にテリーが薬の形状を見て、ベッドにバタリと倒れた。

「また玉の薬のだわ! あたし! 粉しか飲めないのに!」
「前も飲んでいたではありませんか」
「もうやだ! あたし死んじゃう!」
「飲まないとお腹が痛くなりますよ」
「……チッ!」

 テリーがしぶしぶ飲んだのを見て、よしと頷く。

「クロシェ先生には、本日の授業は出席できないと伝えてきますね」
「なんで生理って来るんだろう。あたし、女に生まれたことに後悔はないけど、生理は嫌。サリア、あたし、生理だけは嫌なの」
「はいはい」
「サリア! あたし! 嫌なの!」
「わかりましたから」

(そう言われても、こればかりはどうもできないし)

 サリアがテリーをゆっくり寝かせ、頭をなでた。

「さあ、ゆっくりお休みください」
「……ん」
「おやすみ。テリー」
「……おやすみ」

 背中をとんとんと叩けば、テリーの呼吸がどんどん深くなっていく。

(……)

 テリーが夢の中へ入ったようだ。

「おやすみなさい」

 頭をなでてから、サリアが部屋から出ていく。


(*'ω'*)


「君は才能がある」

 学校の先生に、そんなことを言われた。

「利口だし、世渡りが上手い。きっとこの先、もっと広い世界を見られるだろう」

 広い世界。素敵な言葉だけど、広い世界とはなんだろう。私は、アンナ様がいてくれたらそれで十分。アンナ様のおかげでこの学校にも通えている。

「どうだい? 教師になる気はないか?」

 教員免許を取得したけれど、成績は優秀だったらしいけど、テストの穴埋めは楽しかったけど、でも、未来を考えたら、夢も広がるけど不安も広がる。

 だから、私は、ベックス家でいい。

『サリア、すぐに帰ってきなさい。アンナ様が……』

 メイド仲間に言われて帰省すれば、アンナは虫の息だった。流行病だった。医者ではないサリアには、何もできなかった。

「サリア」

 アンナが言った。

「自分の人生を生きなさい」

 それから間もなく、家族に見守られ、アンナは息を引き取った。
 その後は早かった。婿養子のダレンまで病に伏せた。

 サリアは学校を卒業して、すぐにダレンの看病に移った。

「サリア、見てごらん。可愛いだろう」

 二人の写真を見て、細くなったダレンが微笑んでいた。

「僕の娘だよ」

 サリアはにこりと微笑んだ。しかし、それから間もなくして、ダレンは亡くなった。これからは、アーメンガードが一人でベックス家を支えることとなった。
 アーメンガードが二度目の結婚をした。

「サリア」

 ある日、呼ばれてこんな話をした。

「あなたももう独立できる年でしょう。友人として言うわ。お前にここはもったいない。お前なら、もっといい職場があると思うの」

 アーメンガードがため息を吐いた。

「勘違いしないでほしいのは、追い出したいわけじゃない。ただ……」

 真剣なまなざしでサリアを見た。

「いつまでも、ママに囚われないでちょうだい」

 アンナ・ベックスはもういない。
 サリアがここにいる意味はない。
 聞けば、学生時代、とても優秀だったというじゃないの。伝手を辿ればここよりもやりがいのある仕事がたくさんある。サリアには才能がある。

「メイドで才能を潰す気?」
「私は、結構満足しております。奥様」
「もっと広い世界を見るべきだわ」
「そうでしょうか」
「考えておいて。……事前報告のほうが助かるわ」

 その夜、サリアは通帳を見た。小さなころから貯めている中身は、贅沢しなければ暮らせるほどの量。これなら、どこかで会社を作っても十分余りも出る。

(……)

 色んな人生を考える。サリアは考えるのが好きだから。
 色んな方向を考える。サリアは考えるのが好きだから。
 色んな正解を考える。けれど、サリアはその答えが正解なのかわからない。
 人生にはさまざまな道があり、サリアには多数の道が用意されている。

 ここを出たら、その道を進むことができる。どこへ行っても大丈夫な気がする。サリアは考える。この道だとこんな人生。あの道だとこんな人生。その中で、サリアはその道を指差した。

 ――これかしら。

 田舎に家を建てる。

(アンナ様が、田舎に住みたいと言ってた)

 花に囲まれた場所。まるで、ベックス家の所有する島のような田舎があれば、住みたいと。

(だったら、私も)

 本当に行っていいのだろうか。

(……)

 サリアは考えるのをやめた。ベッドに倒れ、ぼうっとする。

(やり残したことはないか)

 ベックス家の屋敷は、家同然。

(解いてない謎はないか)

 この屋敷の謎は、すべて解いてしまったか。

(本当にいいのかしら)
(私、よく考えて)
(ここはアンナ様がいた場所)
(本当に離れていいの?)
(本当にいいの?)

 本当に、悔いはないか?

「……」

 まだ時間はある。サリアは一週間期限を決めて考えることにした。この一週間で決めようと思った。アーメンガードが、せっかく出て行っていいと言っている。それは解雇ではなく、サリアの未来のために。

(……一度、タナトスに戻って、海でも眺めながら考えようかしら……)

 今日もメイドの仕事を行う。
 朝礼を行い、午前中のうちに掃除をする場所を確認して、掃除道具を用意しようと廊下を歩いていたら――。

「誰か!!!!」

 サリアの手が止まった。メイド達が走っている。

「ギルエド様を呼んで!」
「早く!!」
「なんだなんだ、どうした?」
「テリーお嬢様が!」

(……テリーお嬢様?)

 二番目のお嬢様。

「テリーお嬢様が、発狂したのよ!!」

 ――サリアが表情を変えず、一歩後ろに下がり、騒ぐ使用人達の姿を確認した。ギルエドが階段を駆け下りてくる。

「ギルエド様! テリーお嬢様が発狂しました!」
「なんだって!?」
「部屋でお皿を投げて、近寄れません!」
「一体何があったんだ!!」

 普段涼しい顔をしているギルエドまで走る始末。サリアが静かにとことことついていくと、廊下が大騒ぎになっていた。

「どいてよ!」

 アメリアヌが泣きながら部屋から飛び出した。

「あーん!!」

 サリアの横を通り過ぎる。しばらくして、アーメンガードの再婚相手の連れ子であるメニーの手を引いたテリーが、笑顔で出てくる。

「メニー、お部屋に戻りましょう。お葬式の準備は、みんなが進めてくれるから大丈夫。ね? さあ、行きましょう」
「……はい……」

 その瞬間、サリアの頭にひとつの謎が浮かんだ。

 ――テリーお嬢様が、昨日までの顔ではなくなっている。

 その答え。
 さん、に、いち。わからない。
 ひらめいた。さん、に、いち。わからない。
 考える。さん、に、いち。わからない。
 提案してみる。さん、に、いち。わからない。
 仮説を立ててみる。さん、に、いち。わからない。
 さん、に、いち。やはりわからない。

 サリアは解けない謎に遭遇してしまった。いつもであれば、簡単に解けるのに。

(何があったの?)

「誰か、ここを片付けて」
「奥様、大丈夫ですか?」

 サリアは片付けるふりをして、部屋を覗いてみる。
 倒された長テーブル。贅沢な椅子。割られた皿。地面に転がる料理。
 一箇所だけきれいになっている。……メニーが立っていたところだろう。
 唖然として白くなるアーメンガード。

「テリーお嬢様ったら、急にどうしたのかしら……」
「今の子は怖いわねぇ……」

(発狂)

 なぜ急に? サリアは考える。さん、に、いち。

(奥様がメニーお嬢様を突き放した)

 ここは貴族の家。そういう扱いはどうかと思うが、めずらしいことではない。

(メニーお嬢様とテリーお嬢様は仲がよかった)

 否。二人はろくにしゃべったこともない。

(わからない)

 深い深い謎がひとつ。

(これは、なに?)

 考えても、部屋を見ても、周りを見ても、今までなら解けたはずの謎が、答えが、わからない。

(……テリーお嬢様?)

 笑顔だ。
 笑顔が違った。
 なんというか、違和感を感じる。

(けれどわからない)

 考える。

(わからない)

 時間は過ぎる。

(わからない)

 夜の廊下を歩きながら考える。

(わからない)

 ずっと考えてるのにわからない。

(あれ、今日は何日?)

 あらあら、大変。サリアは気づいた。決めようと思っていた期限は、もう一週間前に終わっている。

(謎に集中しすぎて忘れてた。……あ)

 メニーがテリーの部屋の前で、テリーと何か話しているようだ。テリーがちらっとサリアを見て、とても優しい顔でメニーを部屋に入れた。サリアが通り過ぎようとすると、声をかけてきた。

「ねえ、そこのお姉さん」


 ――あなたに声をかけられるのは、何年ぶりでしょうか。


 サリアがテリーに体を向けた。

「はい」
「こんな夜分遅くに申し訳ありませんわ。よかったら紅茶を持ってきてくださらない? 妹のメニーと、二人で飲みたくて……」
「紅茶ですね」


 ――毎日同じ屋敷で過ごしているはずなのに、見ないうちに、なんだか大きくなりましたね。


「かしこまりました。テリーお嬢様」

 サリアが歩いてきた道を戻っていく。

 二番目のお嬢様。

 赤ん坊のころ、少しだけお世話をした。それだけ。

 二番目のお嬢様。

 あの笑顔から感じる違和感はなんだろう。

 二番目のお嬢様。

 この間は、あんな笑顔をしてなかったのに。

(あれは)

 サリアの足が止まった。

(本当に、お嬢様?)

 アンナの孫の、テリー・ベックス?

(悪霊が取りついた?)
(魔法使いが魔法をかけた?)
(頭を打って人格が変わった?)

 数日考えてみる。

(やっぱりわからない)

 謎は解けない。しかし、仕事は毎日やってくる。

(解けない謎が一番もやもやする)

 まるで思い出せないタナトスの事件のよう。

(あら)

 サリアが歩いていると、突然、テリーの部屋の扉がばたん! と扉を開けられた。

「ん」

(あら、まあ、考えていれば)

 テリーと目が合う。サリアは足を止め、一歩下がり、綺麗にお辞儀をした。

「こんにちは。テリーお嬢様」
「こんにちは。……ねえ、お姉さん」
「はい」
「お暇?」
「残念ながら、この後も部屋の掃除が」
「お出かけしたいの」

 見てみると、輝かしい目で二番目のお嬢様が自分を見上げている。

「ほら、メニーが元気なくてね? あたし、メニーにプレゼントを買いに行きたいの! ねえ、お姉さん、一緒に行ってくれない?」
「……。……私がですか?」
「うん! あ、でも、誰にも言っちゃ駄目よ? ママとアメリが、メニーを虐めるの! だから、秘密で行くの!」

(なるほど。これは良い機会かも)

 サリアは謎を確かめる一歩踏み込みことにした。

「そうでしたか」
「お姉さん、お願い。付き合ってくれない?」
「承知いたしました。ギルエド様に業務の変更をお願いしてきます」
「わーい! あ、メニーに言っちゃ駄目よ? これは秘密なんだから!」
「かしこまりました」
「あたし、支度してくる!」
「準備ができましたら、お部屋まで迎えに行きます。しばし、お待ちを」
「はーい!」

 テリーの違和感のある表情や仕草を観察するためだった。サリアはテリーについていった。謎を出してみた。テリーは真剣に考えていた。結局答えがわからず、メニーの好きそうなものを探しに出かけた。けれど、ハプニング。どろぼうに本が盗まれ、テリーはサリアに罪を着せないようにスカートを破った。

「サリア、テリーに何をされたの」

 サリアは微笑んだ。

「正直におっしゃい。あの子、最近おかしいのよ」

 ええ。奥様。最近、あのお嬢様は本当におかしいですね。

「何かの病気かも。病院に行かせるわ。サリア、良い機会だわ。この屋敷から出なさい。テリーはあなたをおもちゃにして遊ぶ気よ」

 ええ、奥様。望むところです。この謎は、解かないといけません。私の中で、まるで答えが見つからない。
 あの二番目のお嬢様は、確かに二番目のお嬢様です。ですが、何かがおかしいのです。私には、それがわからない。

「サリア」
「恐れ入りますが」

 もうしばらく、様子を見たいのです。

「サリア! 何を言ってるの!」

 この謎を逃すわけにはいかない。こんな面白そうな謎、私に解けない謎を放って、ここから出るわけにはいかない。

 なんて香ばしいの。なんて美しいの。なんて面白いの。田舎に行く道をあきらめたわけではない。つまらなくなったら、その選択もある。

(今はまだ、様子を)

 メニーお嬢様を。
 テリーお嬢様を。
 アメリアヌお嬢様を。
 観察して、過ごして、推理して、謎を深めて、推測して、考えて、仮説を立てて、また謎が深めいて、どんどん、堕ちていって、謎が、答えが、まるで、出てこなくて、

 まったく、答えがわからない。

 けれど、どこかに答えがあるはず。

 でもそれが、私にはわからない。

 いつもなら解けるはずなのに。

 サリアは観察を続けた。テリーを見続けた。テリーが叫ぶたびにサリアは笑顔で面倒を見る。まるで昔のように。まるでテリーが赤ん坊に戻ったように。まるでサリアがその頃に戻ったように。テリーが呼べば、サリアは駆けつける。謎が解けない。側にいるのにわからない。

 テリーがわからない。


 まったくわからない。


 このままでは寿命が尽きてしまう。


 あきらめましょうかね。


 そろそろ、メイドをやめて、田舎に行こうかな。







「サリア」



「いかないで」





 生理に苦しむテリーがつぶやいたのを聞いて、サリアが止まった。
 まだ部屋にいて。そういう意味だということはわかっていた。
 けれど、なんだか止められた気がした。

『びゃああああああ!!』

 自分が出ていけば、またあの頃のように泣いてしまうのではないだろうか。

『あーん! あーん!』

 自分の人差し指を掴んだ小さな手。
 名前を呼べば、泣くのをやめた赤子。
 私の髪の毛ばかり引っ張っていた二番目のお嬢様。

「……」

 サリアがにこりと微笑み、テリーの手を握った。

「テリーが眠るまで、ここにいますよ」

 まだまだ小さな手。

「お腹は、まだ痛いですか?」
「うー……。……んー……」
「テリー、大丈夫。寝てください」

 やめた。

「まだ行きませんから」

 今じゃない。

「ここにいますよ」

 泣きそうな二番目のお嬢様の額に、サリアがキスをした。

「大丈夫。眠って」
「……」
「そう。眠って。大丈夫」

 自分がいなくなったら、誰がこの不思議な二番目のお嬢様の面倒を見るのだろうか。

「大丈夫。ちゃんといますよ」

 もうしばらくいたってかまわない。働いたところで、貯金が増えるだけだ。

「テリー」

 大丈夫。私はまだあきらめない。あなたの謎を解くまでは。

「だから泣かないで」

 涙を流すあなたを慰める。

「テリー」

 あなたは名前を呼んでも涙を流す。

「テリー」

 でも、私もあなたの謎を解いてみせるから。

「テリー」

 お願い。テリー、笑っていて。

 あなたの笑顔を見ると、とても心地がいいの。

 時々、変な笑顔を浮かべるけれど、

 時々、大人みたいな顔をするけれど、

 時々、あなたらしくないあなたが出てくるけれど、

 その謎をまとめて、私が答えを出すまでは、

「まだ、あなたの側にいますから」









「サリアァァァアアアアアアア!!!!」

 悲鳴が聞こえてサリアが扉を開けた。テリーがサりアの腕にするんと腕を絡めた。

「Gが!! Gが現れたわ!」
「まあまあ。大変」
「あたしの部屋に、巣を作ってるんだわ! いやああああああああああ!!!」
「大げさなんですから」

 おそらく鞄か何かに張り付いてついてきてしまっただけだろう。
 サリアが素手で捕まえて窓から逃がす。

「もう戻ってきてはいけませんよ」
「サリア! 部屋全体の掃除して! お願い! あたし、このままじゃ! 今夜眠れない! 眠れない美女になっちゃう!!」
「あら、それは大変」

 でしたら、テリー、提案があるんです。

「私と一緒に寝る?」

 顔を近づけて言えば、テリーの頬が一瞬で赤らんだ。あらあら、耳までまっかっか。刺激が強すぎましたでしょうか。

(でも、色んなあなたを見ないと、この謎は解けない気がするの)

(だから)

(もっと見せて。テリー)


 硬直して石となるテリーの額に、サリアが微笑みながらキスをした。










IQ異常値問題 END
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