おとぎ話の悪役令嬢のとある日常(番外編)

石狩なべ

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リトルルビィ

餌の彼女は想い人(1)※

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 ――おそろしい影が迫る。足は、必死に逃げる。捕まったらただでは済まない。
 あれはおそらく、最近流行っている通り魔だ。絶対そうだ。でないと、こんなにしつこく追いかけてこない。足は逃げる。しかし、後ろからはとんでもないスピードで追いかけてくる足音が聞こえてくる。

(もうだめ)

 殺される。

(こわい)

 殺される。

(あっ!)

 つまづいた。

「きゃあ!」

 夜道に人はいない。足から血が出た。

「た、たすけ……!」

 手を伸ばした。

「たすけっ……」

 小さな足が見えた。赤い靴を履いている。

「ひっ」

 足が近づいてきた。

「た、助けて……」

 おそろしくて瞼を閉じる。

「お、お願い! 何でもしてあげる! だからお願い! 命だけは!」

 膝を舐められた。

「ひっ!!」
「それじゃあ」

 赤い目はこう言った。

「頭なでて?」






 出会いは最悪であった。本気で殺されると思って命乞いをしたのに、帰ってきた答えは頭をなでて。通り魔である犯人を探していた吸血鬼と偶然鉢合わせてしまっただけだったのだ。

「だって、そのせいで夜道を歩く人がぐんと減ったの。人がいないと、私、血を吸えなくなっちゃう!」

 彼女は特殊な体をしていた。吸血鬼でありながら、普通に成長をするし、背も伸びるし、パンも食べる。長生きは出来ないので一日一日を大切に過ごす。怪我はするし、コウモリに変身したりは出来ない。太陽の光は大丈夫であるし、聖水も効かない。にんにくは匂いがだめといっているが、十字架はネックレスにつけるほど大好きだ。

 そして何より、

「またピープルだ!!」

 普通に学校に通っている。

「あいつ、また点を取りやがった!」
「くそ! 奪い返すぞ!!」

 男子が行うバレーの唯一の女子メンバーとなっているリトルルビィが、背の高さを利用してボールを飛ばす。相手チームは躍起になり、なんとかボールを受け取ろうと身構えるが、思うようにいかない。

「いいか! とにかく地面には落とすな!」
「うわああああああああああ!!」

 男子が頑張ってパスまで繋げた。相手チームのほうへ投げる。しかし、リトルルビィが高らかに飛んだ。そのままボールを叩き飛ばす。

「ぎゃーーーーー!!」
「きゃああああああ!!」

 男子達の悲鳴。女子達の歓声。試合終了のベル。全てが一斉に鳴り響き、試合は終了した。相手チームは絶望し、チームの男子はリトルルビィをチームに入れたことに後悔はないと大喜びした。

「ルビィ先輩! お疲れ様です!」
「お水どうぞ!」
「タオルどうぞ!」
「かっこよかったですぅー!」
「もうとろけちゃいそぉー!」
「えへへ。どうもありがとう!」

 背が高く、女子にしては髪の短いリトルルビィが汗を拭う。その姿に少女達がとろけてしまう。男子はなんか色々負けた気になって慰め合う。

「畜生……! またピープルにやられた……!」
「パープルじゃなくて、ルビィのくせに!」
「畜生!!」
「見ろよ! また女子達のハートを鷲掴みだぜ!」
「なんてこった! 俺の元カノまで!」
「片腕なしのくせに!」

 差別用語に女子達が反応した。男子の顔がはっと青ざめる。

「そのルビィ先輩に負けた奴は、どこのどいつよ!!」
「そーよそーよ!」
「負け犬のくせに!」
「遠吠えするんじゃないわよ!!」
「畜生……! ピープルめ! お前覚えてろ!!」

 リトルルビィが苦く笑い、義手の手を振った。その様子を眺め、ふう、と息を漏らした。

(前まではあんなに大きくなかったのに)

 まるで小型犬。きゃんきゃん言ってるやつ。

(小さかったからリトルルビィなんてあだ名がついてたのに)

 今では、大型犬。

「ああ、ルビィ先輩、素敵……」
「あの赤い目に見つめられて押し倒されたい!」
「もう女でもいい!」
「付き合いたい!」
「キスしたい!」
「すっごくやさしいし!」
「はあああああん! いいわあああああ!」

(大人気ね)

 さて、そろそろ教室に戻ろう。

「テリーーーーーーーー!」
「ぐはっ!」

 頭から背中に突進されて、テリーがその場にぶっ倒れた。

「テリー! いたの!? もーー! 声かけてくれたらよかったのにぃー!」
「ルビィ……。そんなに抱きしめるんじゃないの……。つぶれる……」
「テリー! 今の試合、見ててくれた!? あのね! テリーのために勝ったよ!!」
「あんた……あたしがいるって知らなかったくせに……よく言うわ……」
「何言ってるの! テリーったら! 私が気づいてなかったと思ってるの!?」

 満面の笑顔で、耳元でささやかれる。

「テリーの血の匂いに、気づかないわけないでしょう?」
「っ」

 また笑顔で、ぎゅっと、抱きしめられる。

「テリー」
「……」
「お腹空いちゃった」

 ルビィの汗の匂いがする。

「いつもの、ちょうだい?」
「……わかったから」

 背中を叩く。

「そんなに抱きしめるんじゃないの。後輩達があたしを睨んでくるのよ」
「ありゃま」

 リトルルビィが振り向くと、ジェラシーに燃えた女子達が、ハンカチを噛んで二人を見ていた。


(*'ω'*)


 リトルルビィとテリーは、今よりも子供の時に知り合った。そこからリトルルビィと義妹のメニーが同い年ということもあり、リトルルビィとメニーが友達となった。つまり、関係性としては、リトルルビィからすれば、友達の姉。テリーからすれば妹の友達。

 しかし、それは表面上の関係性である。もっと、深いところで言ってしまえば、

「……あっ」

 吸血鬼と餌。

「ルビィ……」

 燃えるように熱い痛みに耐える。

「んぐっ……」

 後ろから抱きしめてくる熱い手。自分の首に噛み付く牙。

「ん、んん……」

 科学準備室に隠れて、その行為を行う。

「……ルビィ……」
「痛い?」

 テリーがこくりと頷いたのを見て、リトルルビィが笑った。

「慣れないね。何回もしてるのに」

 傷ついた首に唾液を乗せれば、穴が塞がった。

「ありがとう。もう平気」
「……ごめん」
「なんで謝るの? テリーは何も悪くないよ」

 優しく振り向かされ、正面から抱きしめられる。

「美味しかったよ。ありがとう」
「……ん」

 まるで大型犬。血を吸われている時は恐怖と痛みから体が震えるのに、抱きしめられたら、どうしてか、いつもほっとする。

(……前はもっと小さかったのに)

 小さかったから、仕方ないわねって思って、痛くても、小さな体をなでて、大丈夫よって涙目で言っていたけれど。

(大きくなってから、なんか、圧がすごくて)

 量も少し多くなって、

(あと、なんか、力も、強くなって)

 なんだか、必死に、大切に抱きしめられているようで、まるで、――餌ではなくて、とても大切な人かのように。

(……何考えてるんだろう)

 彼女は吸血鬼。自分は餌。

(通り魔から命を助けてもらった時に、あたしからそう言ったんじゃない)

 ――助けてくれてありがとう。お礼に何でもするわ。
 ――ええ!? いいよ! いいよ! こっちは血が足りなくなったら大変だからやったことなんだから!
 ――じゃあ、あたしがあんたの餌になるわ。それなら毎晩困らないでしょう?
 ――えーーーーーーー。

 その日から何年も続いてる関係。

(でも、少し気になるのよね)

 リトルルビィには、メニー以外、特別親しい人がいないように見える。

「そんなことないよ! 私、お友達いっぱいいるよ!」

 リトルルビィは笑顔でこう答えるだろう。確かに表面上はそう見える。髪を切ってから後輩にもモテモテだし、片腕が義手でも、人々がその姿にうっとりするほど、成長したリトルルビィが、まるで少年のようにかっこよくなった。

(けれど、なんだろう)

 何か、壁があるというか。

(彼氏がいた姿も見たことない)

「ねえ、リトルルビィ」
「ん?」
「あんた、好きな人いないの?」

 訊くと、リトルルビィの顔が真っ赤になった。

「へ!!!!!!!!??????」
「あ、もういい。わかったから」

(なんだ。いるのね)

 テリーがリトルルビィの首に巻くリボンを結び直した。

「誰? どこのクラス?」
「え、だ、え、えっと……」
「何よ。あたしにもったいぶる気?」

 餌でもあるけれど、あたしはあんたのお姉ちゃんみたいなもんなのよ。

「リトルルビィ、誰なの?」
「……テリー……」
「ん? 何?」
「……テリー」
「ええ。何?」
「……や、だから……」
「ん?」

 首を傾げると、それを見たリトルルビィが目をそらした。

「……なんでもない……」
「何でもないじゃないわよ。教えてよ」
「……なんでもない……」
「……もう」

 かわいくリボンが結べて、テリーが手を離す。

「安心したわ。あんた好きな人いたのね」
「……」
「ねえ、学年だけでも教えてくれない?」
「……三年生……」
「あら、あたしと同い年? イケメンなの?」
「……」

 リトルルビィがテリーを見つめる。

(……いじめすぎたかしらね)

「はいはい。わかったわかった。もう言わないから」
「……テリー」

 再び正面から抱きしめられる。むぎゅ。

「うぷっ」
「……」
「ちょっと。……もう16歳でしょ?」
「……」
「……しょうがない子ね」

 いつまで経っても変わらない忠犬の背中を優しくなでる。

「リトルルビィ、もう少ししたら教室に戻るわよ。昼休みは永遠じゃないんだから」
「……うん」

 しがみつくように抱きしめてくるリトルルビィ。

(ルビィの好きな人ね)

 きっと優しい人なのだろう。

(ってことは、そろそろあたし離れしないといけないわね)

 この大きな犬が好きな人の元へ行けるように。

(ああ、このリードを離す時が来たようね)

 少し寂しい気もするが、これもリトルルビィのためだ。

(あたしはただの餌)

 リトルルビィの人生にまで踏み込める存在ではない。

(よし)




 その日から、テリーは必要最低限、リトルルビィから距離を置くことにした。




「テリー!」
「ん? ご飯の時間?」
「ううん! 違うけど!」
「ならごめんなさいね。あたし忙しいから」
「えっ」

 次の日。

「テリー!」
「ご飯の時間?」
「あのね! 今度の土曜日、一緒にでかけ……」
「あたし忙しいから」
「えっ」

 次の日。

「テリー!」
「ご飯の時間?」
「あのね! 今日の昼休みにテニスの試合に……」
「あたし忙しいから」
「えっ」

 リトルルビィがメニーを睨んだ。

「……」
「八つ当たりはやめて」

 メニーがサンドウィッチををつまみながら、リトルルビィを睨み返した。

「お姉ちゃんに何かされた?」
「メニーだ。メニーが何かしたんでしょ……」
「私は何もしてません」
「メニーだ。犯人はメニーだ……」
「はあ……」

 メニーがため息を吐いた。

「お姉ちゃん、生理前なんじゃない?」
「ううん。それは一週間前に終わってる」
「……」
「匂いでわかっちゃうの」
「……んー……」

 メニーが頭を掻いた。

「血は?」
「その時は普通にくれる」
「喧嘩は?」
「してない」
「怒ったりは?」
「してない」
「……変な口説き文句でも言ったんじゃないの?」
「言ってないよ!!」
「お姉ちゃんがにぶすぎるから、臭い言葉でも」
「言ってないよ!!!!」

 リトルルビィが机を叩いた。

「私が、どれだけ我慢してると思ってるの!?」

 テリーを抱きしめたいがために、何度血を飲むのを口実にしたことか!!

「だって、テリーってば! それ以外抱きしめさせてくれないんだもん!!」

 ――リトルルビィ、もう高校生なのよ。くっつかないの。

「小さいころは!! もっと!! もっとぎゅってしてくれたのに!!!!!!」

 ――なあに? そんな顔して。抱っこする?

「抱っこしてくれたのに!!!!!」

 テリーの胸に顔を埋めるのが大好きだったのに!!!!

「メニーだ! メニーが何か言ったんでしょう!!」
「そんなに好きならいい加減に言えば?」
「だっ」

 リトルルビィが大人しくなった。

「……私ね、最近毎日考えるの。そろそろ本当にテリーに好きなんだって言わなきゃと思って」
「うん」
「でもね、私達、女同士でしょう?」
「そうなんだよね」
「で、テリーは男の子好きでしょう?」
「そうなんだよね」
「わ、私も、別に女の子が好きなわけじゃないよ? 後輩達とか、メニーを恋愛対象として見たこともないし」
「知ってる」
「でも、……テリーは違うの……」

 最初は、楽が出来るからそれならそれでいいやと思って、テリーの血を飲んでたけど。

「そうじゃなくて……」

 テリーが本当に優しいから。

「……」

 寂しくなったら頭をなでてくれるし、一緒に寝てくれるし、ママみたいで、お姉ちゃんみたいで、でもそうじゃない。テリーがいないと私はだめ。テリーがいない世界なんて考えられない。テリーの血の味がもう舌に染み付いてしまった。もう、テリー以外の血は欲しくない。テリーしかいらない。その瞳に見つめられたら心臓が飛び跳ねるの。テリーが笑ったらすごく幸せになるの。テリーの側にいたい。くっついてたい。ずっと一緒にいたい。

 なのに、

「テリーは鈍感すぎるよ……」
「二人でちゃんと話したほうがいいよ」
「……そうする」

(……喉も渇いてきた)

 テリーに会いたい。

(……でも、テリーに好きって言ったら、どんな顔するかな)

 拒まれたら、

(……どうしたらいいのかな)

 リトルルビィが大きなため息を吐いた。


(*'ω'*)





 月が静かな町を照らす頃、暗い部屋の窓がノックされた。

(……ん)

 窓が勝手に開けられた音が聞こえた。

(なに……?)

 ベッドに誰かが入り込んでくる。

(あん? 誰? メニー?)

 抱きしめてくる。

(……あ)

 この匂い、知ってる。

「……リトルルビィ……?」
「……起こしちゃった?」

 テリーが寝返れば、そこにはリトルルビィが潜り込んでいた。

「ごめんね。なんか、一緒に寝たくなって……」
「……この屋敷とあんたの家、どこまで離れてると思ってるのよ……」
「……怖い夢見ちゃって……」
「……もう」

 そっと頭を撫でられる。

「来なさい」
「っ」

 リトルルビィが大きな体を丸くして、テリーの胸に顔を埋めた。

(わっ)

 久しぶりのテリーの匂い。

「……朝になったら帰りなさいよ」
「……うん」

 帰りたくない。

(ずっとこうしてたい)

 このまま、テリーの一部になりたい。

(テリー)

 気持ちいい。

(テリー)

 テリーの寝息が聞こえる。

「……」

 ――手が、テリーを抱きしめる。

「……」

 背中をなぞってみる。ブラジャーをしてない。

「……」

 パジャマの裾から手を入れてみる。キャミソールを着ている。

(……邪魔)

 肌に触れる。テリーの体が一瞬揺れた。

「んっ」

 指を優しくすべらせる。テリーの肌に触れている。

「ん、……んう……」

 キャミソール以外、何もつけてない。それをいいことに、リトルルビィの手が肌をなぞっていく。優しく触れて、なでて、お腹に触れて、上がっていって、二つのふくらみに触れてみた。

「……ん」

 その形に触れる。

「ん……」

(あ、だめ)

 やわらかい。

(だめ)

 頭ではわかっているのに、止められない。

(テリー……)

 ふくらみを優しく揉んでみる。

「……あっ……」

 テリーの声に、リトルルビィの心臓が高鳴る。

「ん、」

 優しく揉む。

「んん……」

 先端が固くなってきた。

「……ん、ちょ……ルビィ……」

(私は、子供だよ)
(私は、女の子だよ)

「どうしたの? テリー?」
「……変なところ、触らないの」

 寝ぼけた声が言った。

「テリー」

 だから、

「これは、夢だよ?」
「……ああ、そうか。……夢か」
「そうだよ。夢だよ」

 リトルルビィがささやいた。

「だから、何が起きても、夢だから」
「……あ、そう……」
「そうなの」

 だから、どこを触れても、

「これは夢なの」

 リトルルビィが首を噛んだ。

「っ」

 テリーが痛みで目を覚ます。

「ちょ、いたっ」

 飲み続ける。

「るび、なんか、いた……」

 痛くない。

「え……?」

 痛くない。

「なに、これ……」

 気持ちいい。

「あれ……?」

 体が、熱い。

(これは、ゆめ……?)

 指が肌に触れただけで、体が跳ねる。

「あっ」

(血が甘くなってきた)

 吸血鬼として過ごしてきてわかったが、血管には様々なつぼがあるようだ。性欲を増進させるつぼとか。

(触るだけ)

 手が肌をなぞる。

「やっ……」
「テリー、声抑えて」
「んっ」

(これは、ゆめ……)

 心臓の鼓動が早い。

(これは、夢)

 リトルルビィが、触ってくる。

「あっ」

 胸を触ってくる。

「ぁ……」

 揉んでくる。

「あ、それ……」
「テリー、力抜いて」
「……ん……」

 気がつけば、リトルルビィの前にだらしなく座り、後ろから胸をもまれている。

「ん、んん……」

 パジャマからリトルルビィの手が動いているのが見える。

「あ……ん……」
「テリー、気持ちいい?」
「……んっ……」
「恥ずかしがらないで。これは夢だから」

 そうだ。これは夢だ。

「気持ちいい?」
「……ん。……きもちいい……」
「テリー、下を脱いで、足広げてみて。そしたらね、もっと気持ちよくなるみたい」
「……うん……」

 テリーがパジャマのパンツを脱ぎ、足を左右に広げた。それを見て、リトルルビィがくすっと笑う。

「テリー、きもちいい?」
「……ん……」
「いま、どんな感じ?」
「……足が、すーすーする……」
「そっか。じゃあ……」

 毒を囁く。

「そのまま、足開いてて?」

 リトルルビィの手が下に下りていく。

「触るね?」

 ぱんつの中に手を入れ、指で触れてみる。思わず、テリーが声をあげた。

「あっ!」
「テリー、ここ、固いね。きっと、緊張してるんだよ。ほぐして、リラックスしようね」

 テリーのことを考えて、何度も自分ので触ったことのあるそれが、テリーにもついてる。だから、多分、自分でやるみたいに、こうしたら気持ちいいんじゃないかな?

「はっ、ぁあ……!」

 固いその場所を、指でほぐしていく。

「あっ、そんな、あっ、なに、これ、」
「テリー、もう濡れてきてる。胸、きもちよかったの?」
「こ、こんな……しらな……」

 指がどんどん早くなっていく。

「あ、いや、ん、あ、んん、そんな、だめっ……」
「テリー、ここ、ほぐしてるだけだよ?」
「ん……」

 感じたことない快楽に耐えるテリーの姿。

(かわいい……)

「テリー、かわいい……」
「ん、ん、んん、んんっ! んん!」
「いいよ。テリー、気持ちいいなら」
「ん、ん! んん! んー!!」

 指が深く入った。

「っ!!」

 テリーが絶頂した。腰が痙攣し、中が締め付けてくる。

「~~~~っっっ……!!」

 ――くたりと、テリーが気絶した。

(……テリーの)

 指についた液を、リトルルビィが舐めた。

(甘い……)

 そう思って――我に返った。

(ぎゃぁああああああ!! やってしまったーーーーーーー!!!)

 我に返ったリトルルビィが一気に顔を青ざめた。

(どどどどどうしよう!!!)

 ついついテリーの甘美に惑わされてしまった!!

「と、とりあえず!」

 濡れたそこを拭かなきゃ!

(でも、ティッシュで拭いて証拠が残ったら?)

 証拠隠滅! 舐めるしかない!

(そうと決まったら!)

 リトルルビィがテリーの足を広げ、濡れたそこに顔を寄せ、舌で全身を舐め始めた。

「ぺろぺろぺろぺろ」 
「……んっ」 

 激しい舌の動きに、テリーが目を覚ました。しかし、まだ夢の中のようだ。

(やっ、今度は何……?)

 股間を何かが舐めてる。しかもそれが、すごく激しく。

「ああん!」

(あ! やばっ! テリーが起きた!)

 でもとにかく証拠を隠滅させなきゃ! ぺろぺろぺろぺろ!

「あっ、なに、あっ、やっ、あん! それ、いやっ!」

 広げた足の間に何かいて、両足を閉じることができない。中では何かが舐めてきて、さっきよりもぞくぞくしてしまう。

「ん、ん、こんな、ん、こんなの、ん、な、なんなの……、あんっ!」

 ぺろぺろぺろぺろ!

「あん! はげしっ、そんな、とこ、なめちゃ、だめぇ!」

 拭うどころか、どんどん溢れてくる。

「あっ、あっ、だめ、あっ、きもちいい! きもちいいから! やめて! それ以上は!」

 またきてしまう。

「あ、なんか、来る、来ちゃう、んっ、あんっ、そんなっ、やんっ、なめちゃ、あっ、らめっ、こんなっ、それ以上、きもちよく、なっちゃうからぁ……!」

 ぺろん!

「あぁぁあああっ……!!」

 ――また気絶してしまった。

(……だめだ。こりゃ)

 リトルルビィが顔を上げた。

(拭いて、それを持って帰って、……家で捨てよう)

 リトルルビィがティッシュで拭い、さっきと変わりなく、テリーにパジャマを着替えさせた。

(これでよし)

 テリーの安らかな寝顔に、リトルルビィがきゅんと胸を鳴らした。

(……テリー)

 その額に、ぷちゅ、と、優しくキスをする。

(また、明日ね)

 ティッシュを腕に抱え、リトルルビィが部屋から出ていった。


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