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番外編(高校時代)
初心
しおりを挟む高校生活は、なんら変わりなく、変化なく、平和に過ごせていた。
「パス!」
「任せろってな!」
「きゃー!」
「リン、ないすぅー!」
勉学も真面目に取り組む。
「このクラスで今回のテストの成績が一位だったのは、西川だな」
「リン、安定だね」
「やったー」
真面目に生徒会の仕事をする。
「リンちゃん、この書類ってさ」
「はいはい」
何も変わらない毎日。平凡、平和、安定そのもの。
変わったといえば、そうだな。
——この間、私は処女を捨てました。
(はぁー……やば……)
本を読む月子の太ももに頭を乗せて、ぼーっとする。
(ツゥ)
腰に抱きついてみる。月子が私を見下ろした。
(ツゥ)
「……ふふっ、どうかしました?」
「んーん。なんでも」
ツゥの匂いを嗅ぎながら、ツゥの温もりを堪能する。ツゥの手が伸びて、私の頭を優しく撫でる。
(これ、好きだなぁ)
平日は先輩後輩。土日は恋人。
(なんか、こんなに毎日幸せでいいのかな……)
「西川先輩、寒くないですか?」
「リンちゃんって呼ばないの?」
「……先輩は、先輩なので」
別に今更いいのに。料理部もそんなに厳しいわけじゃないし、名前呼びしてる先輩後輩はいくらでもいる。私は月子の声が好きだから、その声でリンちゃん、なんて呼ばれたら、もう、とんでもない。嬉しすぎる。それを耳慣れていく過程も、想像するだけでわくわくしてくる。
月子の手を弄って遊び出した。月子が笑った。その顔を見て、近づきたくなって、上体を起こした。
「西川先輩……?」
月子にキスした。唇にも、頬にも。
「……えっと、先輩」
月子がうずくまる。
「あの、本、読んでるから……」
「うん」
月子のパーカーを脱がした。
「えっと……」
月子の服に手を入れた。
「せんぱい……」
首筋に唇を押し付けて、脱がしていく。
「あの、……ん……あのっ……」
そのままゆっくりと——押し倒して——月子が痛くないように、月子が気持ちよくなるように、優しく触れて、優しくキスをして、優しく体を重ねた。
(女で良かったー)
こういう時、たまに思う。
(どっちか男だったら絶対孕んでる)
「……先輩」
「ん?」
「……そろそろ、下着取ってください……」
「だめー」
私の後ろに、月子のブラジャーとパンツが落ちている。
「あの、じゃあ……あたしが拾うので……」
「やだ」
「ん……」
「裸のままくっつきあってたいの」
月子の肌は、すごく温かいから。
「んふふ、月子、あったかいね」
「……あったかいですけど……風邪ひいちゃうから……」
「くっつきあってたら大丈夫だよ」
布団の中で、月子を抱きしめる。はぁ。……幸せ。
「ツゥ、好き」
「……はい。あたしも……」
「私のこと好き?」
「……はい。西川先輩のこと、だ……大好きです……」
「あ、大好きって言われちゃった~!」
じゃあいっぱいキスして。甘やかせて、愛してあげないと。
「ツゥ、キスしよ? ん」
「あ……ん……」
「ここにもするね」
「あ……せんぱい……」
「ここも」
「ひゃ……」
「……」
「あ……まって……くださ……あっ……」
「……」
「あっ……さっき、した……のに……せんぱ……」
「……」
「……やっ……あっ……あんっ……」
月子の全部が大好きだから、全部に触れたくなる。月子の肌が柔らかくて、月子の唇が柔らかくて、声が良くて、心地よくて、休みの日は、もう、いつもこんな感じで、最近は、そう、月子と初めて体を重ねてからは、しばらくは、もう、私の家に連れてくる頻度が高くなった。
流石に、月子の部屋でこんなことはしにくい。
(でも月子の部屋で月子を抱いたら、寝る前に月子、思い出したりするのかな)
「……っ……っ……あっ……」
(うわ、なにそれ、興奮するー)
「んっ……!」
(あ)
月子が達したらしい。細い腰をビクつかせ、その場で脱力する。
「……っ」
「……月子、まだ寝ないで」
「あ……」
「まだ、私が気持ちよくなってないから」
「リンちゃん」
「うん。大丈夫。ちゃんと月子も気持ちよくなろうね」
「あ……」
「私も月子が大好き」
「リンちゃん、これ、恥ずかしい……」
「恥ずかしくないよ」
「やだ……恥ずかしい……」
「大丈夫だよ」
「あっ……!」
「大丈夫。月子は可愛いから」
「あっ、や……!」
日々を過ごすたびに、どんどん月子に溺れていく。
そっか、だから人は恋愛をするんだ。
こんなに幸せで、こんなに心地がいいから。
月子が側にいると安心する。
月子に触れてないと、すごく寂しくなる。
だから、会える時に触っておかないと。月子を堪能しないと。
月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子、月子——。
「リンちゃん、あの、あのね……!」
——月子が意気込んで、覚悟を決めた顔で、言った。
「体が持ちません!」
「……えー」
「今日も、本読もうと思ったのに、全然読めなかった!」
「でも、一緒にいられたよ?」
「一人の時間も大事だと思いませんか!」
そうか。確かに最近月子とはずっと一緒にいるかもしれない。
(私は幸せだけどな。へへ)
「……来週は……したいことがあって……」
「うん。わかった。来週は会うのやめとこ」
「ごめんなさい」
「ううん。一人の時間も必要だもんね」
しかし、困ったことになった。月子がいない土日は、まるで私は廃人のようになってしまったのだ。つまんない。月子がいないと、何も楽しくない。落ち着かない。寂しい。
「ねえ、お母さん。ツゥがいなくて寂しい時ってどうしたらいい?」
「写真は?」
「写真?」
「そう。写真見たら落ち着くよ」
「写真か」
月曜日、私は月子にスマホを向けた。
「……なんですか?」
「ツゥの写真欲しいと思って」
「……あたしを撮ってもいいことないですよ?」
「だって土日寂しかったんだもん」
「それは……ごめんなさい。あの……」
「ん?」
「この間、先輩が歌の録音くださったのを、MIXしてて……」
「……」
「完成したら……渡します……なるべく早めに……」
「……月子……」
胸が、こんなにも締め付けられることがあるだろうか。私は迷うことなく言った。
「好き!」
「……学校、行きましょう」
「うん!」
「……行きましょう」
後に聞いたMIXは、MIXとは思えないほどの出来だったが、でも、月子の見えない愛情がかなり伝わるものだった。本当に頑張ってくれたんだなと思ったものだった。
そんな愛が溢れた歌ってみた動画を、Rinというチャンネルで出してみた。再生数は、二桁だったけど、私は満足だった。
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