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番外編(高校時代)
たまには交代しませんか?
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「なんかね、彼氏が全然リードしてくれないの」
クラスメイトがそんなことを言ってた。
「なんかさ、ここ行きたいって言ったら、いいよ行こうみたいな感じで言ってはくれるんだけど、なんか私ばっかり決めてるみたいな?」
「えー、デート中は?」
「いや、もうなんか、なよなよしてるみたいな」
「えー」
「もう別れようかな」
あたしは本を読むふりをして、聞いていた。
「私ばっかり決めてて、バカみたい」
(*'ω'*)
「西川先輩、今日はあたしがたい焼きを奢ります」
月子がそう言って、私の分のたい焼きを買ってくれた。
「西川先輩、今日は、ご自分の勉強に集中してください」
月子が私なしで参考書を頼りに問題を解いていく。でも答えが違っている。私は横から口を出した。
「ツゥ、この問題の考え方は……」
「っ、か、解説書があるから、大丈夫です!」
解説書を開いてみるが、理解できない文章に、月子が絶望した。
「……」
「教えるよ」
「……はい……」
勉強が終わると、月子が漫画を差し出した。
「読みたいのこれですよね!」
「あ、それは前回読んだ巻だね」
「えっ! あ、す、すみません……」
「ううん。取ってくれてありがとう」
もちろん漫画もいいのだが、それよりも月子に触れたかったので、月子のベッドに座り、月子に近づく。
「ツゥ……」
「……っ!」
「へ?」
——月子に押し倒された。
(???????)
「きょ、今日は!」
私の上に跨って乗っかる月子が言った。
「あたしが、します!!」
「……えっと」
「西川先輩は、見ててください!」
「えっと……ツゥ、一回おちつ……」
月子が勢いのまま私にキスをしてきた、が、歯と歯がぶつかって痛みが起きる。
「いっ」
「っ!」
「あっ、っ、つ、ツゥ!」
痛みよりもツゥだ! 起き上がると、月子がベッドの端で口を押さえ、痛みに悶えていた。
「大丈夫?」
「……すみません……」
「舌噛んでない?」
「だ、大丈夫です……」
「見せて」
月子の唇を確認する。うん。ちょっと赤くなってるが、なんともない。月子が涙目で謝ってきた。
「すみません……」
「私は大丈夫。痛かったね」
月子がこくこく頷き、私に抱きついた。
「ごめんなさい……」
(むふぉぁあああ!!)
——ぎゅっとする。
(あったかい……スーハースーハー……)
「……あたしダメですね」
「ん?」
「なんか、いつも先輩にしてもらってばかりだなって……」
「……え、そう?」
「なんか、出かける時も、すごい、先輩から誘っていただけますし……勉強も、先輩が見てくれないと全然わからないし……」
「……」
「あたし、駄目です……」
月子の顔を覗くと、ピュアすぎる瞳から涙が溢れていた。
「西川先輩がいないと、なんにもできない……」
――背中が、ぞくりとした。
「あたし、だめなんです……。無理なんです……」
私の肩に顔を埋めてさめざめと泣く月子。私の腕の中にすっぽりとはまって、押し倒されても、脱がされても、きっと受け入れてしまう。何をしても許される。相手が私であれば。月子は私を信用しすぎてる。私を敬愛している。嫌われるのを恐れている。
私の手が月子を掴み、強く抱きしめ、絶対に離さない。
「……ツゥ、私そんなことで怒ったりしないよ」
「でも」
「ツゥのこと、嫌になったりしないよ」
「でも、でも……」
「目瞑って」
さっきできなかったキスをする。ほら、こんなに簡単。
「ほら、次はツゥからして」
「……はい……ん……」
今度は上手にできました。
「上手」
「……ごめんなさい」
「何が?」
「泣いちゃって。……鬱陶しいですよね……」
「なんで? 信頼されてるんだなって感じて、すごく嬉しいよ」
絶対に月子の腰から手を離さず、可愛い頭を撫でる。
「私のためにしてくれたんだよね。嬉しい」
「……西川先輩は……優しすぎます……」
「そうかな?」
「もっと……厳しくしてください……」
月子が強い眼差しで私を見てきた。
「そうじゃないと、私、ずっと成長できない……!」
あ、ごめん。月子。その目は私好きじゃないや。
いいんだよ。成長しなくて。
月子はこのままでいいんだよ。
何もできない月子でいて。
そしたら私が助けてあげるから。
「月子は十分頑張ってるよ」
甘く、優しく、毒とは気づかれない言葉で隠す。
「ゆっくり進んでいけばいいから。ね? 焦りは禁物だよ」
「……でも……」
「月子」
無能でいろ。
「頑張ってることは、私が側で見てるからわかるよ。でも無理はダメ。私、心配になっちゃうよ」
「……」
「ゆっくり、やっていこ? ね?」
「……はい」
「ほら、ぎゅーしよ」
月子が再び私を抱きしめる。ほら、あったかい。今私たち、一つになってる。
(本当はセックスしたいけど、ここ月子の部屋だし、今したらとんでもないことしちゃいそうだからやめておこ)
月子の部屋でよかったね。そう思いながら腰をなでる。
「西川先輩」
「ん?」
「あの……大好き、です……リン、ちゃん……」
「……うん。私も大好きだよ。ツゥ」
無能であり、それを嘆く月子を抱きしめて、私は満足な笑みを浮かべる。
クラスメイトがそんなことを言ってた。
「なんかさ、ここ行きたいって言ったら、いいよ行こうみたいな感じで言ってはくれるんだけど、なんか私ばっかり決めてるみたいな?」
「えー、デート中は?」
「いや、もうなんか、なよなよしてるみたいな」
「えー」
「もう別れようかな」
あたしは本を読むふりをして、聞いていた。
「私ばっかり決めてて、バカみたい」
(*'ω'*)
「西川先輩、今日はあたしがたい焼きを奢ります」
月子がそう言って、私の分のたい焼きを買ってくれた。
「西川先輩、今日は、ご自分の勉強に集中してください」
月子が私なしで参考書を頼りに問題を解いていく。でも答えが違っている。私は横から口を出した。
「ツゥ、この問題の考え方は……」
「っ、か、解説書があるから、大丈夫です!」
解説書を開いてみるが、理解できない文章に、月子が絶望した。
「……」
「教えるよ」
「……はい……」
勉強が終わると、月子が漫画を差し出した。
「読みたいのこれですよね!」
「あ、それは前回読んだ巻だね」
「えっ! あ、す、すみません……」
「ううん。取ってくれてありがとう」
もちろん漫画もいいのだが、それよりも月子に触れたかったので、月子のベッドに座り、月子に近づく。
「ツゥ……」
「……っ!」
「へ?」
——月子に押し倒された。
(???????)
「きょ、今日は!」
私の上に跨って乗っかる月子が言った。
「あたしが、します!!」
「……えっと」
「西川先輩は、見ててください!」
「えっと……ツゥ、一回おちつ……」
月子が勢いのまま私にキスをしてきた、が、歯と歯がぶつかって痛みが起きる。
「いっ」
「っ!」
「あっ、っ、つ、ツゥ!」
痛みよりもツゥだ! 起き上がると、月子がベッドの端で口を押さえ、痛みに悶えていた。
「大丈夫?」
「……すみません……」
「舌噛んでない?」
「だ、大丈夫です……」
「見せて」
月子の唇を確認する。うん。ちょっと赤くなってるが、なんともない。月子が涙目で謝ってきた。
「すみません……」
「私は大丈夫。痛かったね」
月子がこくこく頷き、私に抱きついた。
「ごめんなさい……」
(むふぉぁあああ!!)
——ぎゅっとする。
(あったかい……スーハースーハー……)
「……あたしダメですね」
「ん?」
「なんか、いつも先輩にしてもらってばかりだなって……」
「……え、そう?」
「なんか、出かける時も、すごい、先輩から誘っていただけますし……勉強も、先輩が見てくれないと全然わからないし……」
「……」
「あたし、駄目です……」
月子の顔を覗くと、ピュアすぎる瞳から涙が溢れていた。
「西川先輩がいないと、なんにもできない……」
――背中が、ぞくりとした。
「あたし、だめなんです……。無理なんです……」
私の肩に顔を埋めてさめざめと泣く月子。私の腕の中にすっぽりとはまって、押し倒されても、脱がされても、きっと受け入れてしまう。何をしても許される。相手が私であれば。月子は私を信用しすぎてる。私を敬愛している。嫌われるのを恐れている。
私の手が月子を掴み、強く抱きしめ、絶対に離さない。
「……ツゥ、私そんなことで怒ったりしないよ」
「でも」
「ツゥのこと、嫌になったりしないよ」
「でも、でも……」
「目瞑って」
さっきできなかったキスをする。ほら、こんなに簡単。
「ほら、次はツゥからして」
「……はい……ん……」
今度は上手にできました。
「上手」
「……ごめんなさい」
「何が?」
「泣いちゃって。……鬱陶しいですよね……」
「なんで? 信頼されてるんだなって感じて、すごく嬉しいよ」
絶対に月子の腰から手を離さず、可愛い頭を撫でる。
「私のためにしてくれたんだよね。嬉しい」
「……西川先輩は……優しすぎます……」
「そうかな?」
「もっと……厳しくしてください……」
月子が強い眼差しで私を見てきた。
「そうじゃないと、私、ずっと成長できない……!」
あ、ごめん。月子。その目は私好きじゃないや。
いいんだよ。成長しなくて。
月子はこのままでいいんだよ。
何もできない月子でいて。
そしたら私が助けてあげるから。
「月子は十分頑張ってるよ」
甘く、優しく、毒とは気づかれない言葉で隠す。
「ゆっくり進んでいけばいいから。ね? 焦りは禁物だよ」
「……でも……」
「月子」
無能でいろ。
「頑張ってることは、私が側で見てるからわかるよ。でも無理はダメ。私、心配になっちゃうよ」
「……」
「ゆっくり、やっていこ? ね?」
「……はい」
「ほら、ぎゅーしよ」
月子が再び私を抱きしめる。ほら、あったかい。今私たち、一つになってる。
(本当はセックスしたいけど、ここ月子の部屋だし、今したらとんでもないことしちゃいそうだからやめておこ)
月子の部屋でよかったね。そう思いながら腰をなでる。
「西川先輩」
「ん?」
「あの……大好き、です……リン、ちゃん……」
「……うん。私も大好きだよ。ツゥ」
無能であり、それを嘆く月子を抱きしめて、私は満足な笑みを浮かべる。
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