生徒会長のなでしこ先輩がこんなに真っ黒なわけがない

石狩なべ

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第7話 身体検査

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 世はまさに、身体検査日和である。

「私の体重か? 欲しけりゃくれてやる。探せ! この世の全てをそこへ置いてきた!」

 というわけでGL学園でも、身体検査が始まる。特別教室に学年ごとに集まって、脱いだり測ったりするのだ。

 私とかなちゃんがジャージの中からもぞもぞとブラジャーを外す。

「まるちゃん。今日はね、勝負下着をしてきたの」
「ふふ。ぬかりないね。かなちゃん」
「せーので見せるよ」
「せーの…」

 お互いのブラジャーを見せ合う。

「「どゅふw」」

 お互いが笑顔になり、ひそひそ声で、男子には言えない秘密の女子トークを始める。

「さすがかな氏でございまする。これはヒロアカの勝緑を目的とした色のブラジャーでございまするな」
「色だけで分かるとはさすがまる氏でござる」
「この濁った感じ、二人がいちゃいちゃしているのが目に見えるようでございまする」
「そう言うまる氏、その色は、BORUTOのミッツボルをモチーフにしてるでござるな」
「どきっ。さすがかな氏」
「某の目はごまかせないでござる」
「ぬふっw さすがかな氏」
「ところでまる氏、某の家には、コミケで手に入れたBORUTOの戦利品、および、ミッツボルの同人誌というものがあってでござるな…」
「どっきんこ」
「貸してもいいでござるよ」
「かかかかか、かな氏!」
「そうでござるな。まる氏がこのGL学園を卒業するころには、寮から家に戻っているでござるな。その時も、まだこのジャンルが好きであれば…」

 かなちゃんが、私の顔を覗き見る。

「譲ってあげないことも、ないでござる↑」
「かな氏ぃぃぃいいいいいい!!」
「金持ちは凡人に優しくする。これ鉄則↑」
「かな氏ぃぃぃいいいいいい!!」
「まる氏なら、任せられる↑」
「かな氏ぃぃぃいいいいいい!!」
「皆さん、視聴覚室に移動してください」
「「はい」」

 先生に言われ、おしとやかに私とかなちゃんが移動する。ノーブラってすーすーするね。検査票を腕に持って、二人で廊下に出る。かなちゃんが周りをきょろりと見回す。

「視聴覚室、どこだっけ?」
「この学園広いし、視聴覚室なんてなかなか使わないから分からないよね…」
「先生に訊けばよかったね」

 よーし、こういう時は、

「しおりちゃんの出番かな!」

 ぎくっ。
 しおりちゃん、と聞いて、私の片目が引き攣る。

「……しおり先輩に会いに行くの?」
「しおりちゃん、風紀委員で学校内回ってるから、視聴覚室くらい一発だよ」
「あー…」

 私は一歩、後ずさった。

「だったら、私、その、用事があって」
「え? 用事?」
「あのー」
「もしかして、なでしこ様?」
「あ」

 私は頷いた。

「そ、そうなの! なでしこ先輩が忘れ物して、ついでに、届けようかなーなんて!」

(なでしこ先輩、忘れ物なんてしてないけど…)

 それでも、しおり先輩に会うくらいなら。

(ごめんね、かなちゃん。でも…)

 ―――私の可愛いペットになって。

 あのぎらついた目を、忘れられない。

「えー、なでしこ様に会うのー?」

 かなちゃんが目をきらきらと輝かせる。

「私もいきたーい!」
「いや! あの、でも、ほら、しおり先輩に視聴覚室の場所聞いてほしいかな、かなかなー?」
「しおりちゃんじゃなくても、なでしこ様に訊けば一発じゃない?」
「………はっ。そうか」

 私は頷く。

「じゃあ、訊きに行こうか」
「なでしこ様もノーブラなんだよね」

 …………。

「ぶほっ!」

 かなちゃんが鼻血を出した。

「はっ! いけない。なでしこ様の上半身を想像しただけで、鼻血が…!」
「かなちゃん、同じ女の子だよ」
「まるちゃん、だって、なでしこ様だよ?」

 はっ。

「そうか。まるちゃんにはもうなでしこ様のお裸の耐性がついてるんだ。寮の部屋が同じだから…」
「いや、かなちゃん。流石になでしこ先輩の裸を見ることは無いよ」

 お風呂は必ず別だし、なでしこ先輩のパジャマも肌を見せないような長そで長ズボンのやつだから。

「そういえば、あんまりあの人の足とか腕とか、見たことないかも」
「そうだよねえ。女の子の中の女の子だもん。流石なでしこ様。しっかりしてる」
「そうだね。確かにしっかりしてる。私がTシャツと短パンで走ってたら、ゲーム機渡されて大人しくしなさいって言われるもん」
「あはは! 何それ。親子みたい!」

 かなちゃんにけらけら笑われながら、二年生の教室が並ぶ廊下に向かう。

「なでしこ先輩、生徒会室にいるかな」
「この時間なら、教室じゃない?」
「二年生の教室怖いんだよなあ…」

 生徒会の人達が私を見たら囲んでくるんだもん。

「大丈夫。何かあったら、しおりちゃんもいるから!」

(…あてにならない…)

 私とかなちゃんが階段を上って、二年生の廊下へと出た。

(ん?)

 私はきょとんとした。かなちゃんが口を押さえた。
 血だらけの廊下。
 倒れた女子生徒。
 鼻から鼻血を出す乙女達。

 廊下を見て、私は悲鳴をあげた。

「ぎゃああああ! 殺人現場!」
「全部鼻血だ」
「かなちゃん! ここはいちゃいけない場所なんだよ! 早くどっか行こうよ!」
「あ♡」

 かなちゃんの声が、ピンク色になった。

「なでしこ様だ」
「おうっ」

 上ジャージ、下スカートのなでしこ先輩が髪をなびかせて、廊下を華麗に歩く。人々がなでしこ先輩に見惚れ、鼻血を出す。

「ああ、なんて美しいの…」
「なでしこ様ぁ…」

 なでしこ先輩の歩く道を、カーリングのように生徒会の先輩たちがモップで血を拭いていた。

「なでしこ様、保健室までもう少しです!」
「うふふ。別に大丈夫なのに、皆、過保護ね」

 なでしこ先輩がにっこり笑う。

「いつもありがとう」
「「いえいえ、とんでもございましぇん!」」

 生徒会の先輩たちがでれんとしてなでしこ先輩を囲み、廊下に進んでいく。そして、―――私と先輩達との目が合う。

「あ! まるがいる!」
「まるだと!?」
「間違いない! まるだ!」
「野良猫め!」

(げっ)

 一瞬、片目を引き攣らせ、かなちゃんを背中に隠す。引き攣った笑顔を浮かべる。

「こ、こんにちはー」
「お退き!」
「保健室はそちらなのよ!」
「野良猫が何の用よ!」
「あのー、視聴覚室がわからなくてぇー」
「馬鹿が!」
「ど阿呆が!」
「視聴覚室は一階よ!」
「野良猫が!」
「さては、道が分からないという理由で、なでしこ様に会いに来たのね!」
「まあ、なんて下劣な奴!」
「野良猫め!」
「お退き! 破廉恥な目で、なでしこ様を見るんじゃないの!」

(私、なんでこんなに嫌われてるんだろう…)

 引き攣らせる笑顔のまま、先輩たちに手を振る。

「わっかりましたー…さよーならー…」
「「ふんっ!」」

 生徒会の先輩たちが私とかなちゃんを通り過ぎようとした瞬間、なでしこ先輩が私に振り向いた。

「まる」
「ぷえ?」

 生徒会の先輩たちがぴたりと止まった。なでしこ先輩が先輩達を縫って出てきて、私の前まで歩いてくる。

「視聴覚室は一階の廊下を右に進んだところよ」
「…ん。了解です」
「良い子ね」

 なでしこ先輩の手が私の下げていたチャックを一番上まで上げる。ぐえ。苦しい。苦い顔をしてなでしこ先輩を見上げた。

「苦しいです」
「上げてなさい。検査が終わったら下げていいから」
「はーい」

 なでしこ先輩の手が離れる。後輩のチャックを上げたなでしこ先輩に、皆がうっとりと見惚れる。私の後ろにいるかなちゃんがじっとなでしこ先輩を見つめる。なでしこ先輩が気付いて、きょとんとして、ふわりと微笑んだ。

「こんにちは。伊集院さん」
「っ」

 かなちゃんが心臓発作で倒れた。

「あーーーーー! かな氏ーーーーー!!」
「さあ、皆さん、行きましょうか」
「「はい!」」

 なでしこ先輩が離れる。生徒会の先輩達と共に、また廊下を歩き始める。私はかなちゃんの肩をトトトトトン! と叩く。

「かな氏! かな氏! しっかりするでありんす! 脈あり! 脈あり! まだ脈ありでありんす!」
「…くっ…。いいか。…立ち止まるんじゃねえぞ…」
「かな氏ーーーーー!!」

 こんな感じで、身体検査は始まる。




(*'ω'*)





 視聴覚室に無事に辿り着き、私とかなちゃんが検査を受ける。身長体重、脈も測って、その他、色々測る。
 女性のお医者さんの前に座ると、お医者さんが聴診器を私に向ける。

「それでは、心臓の音を聞きますね。シャツを上に上げてください」

 胸の上まで上げる。聴診器が当てられる。

「はい、結構です」

 下に下げる。

「お疲れ様でした」
「ありがとうございました!」

 私はシャツの袖を伸ばし、ジャージを着る。カーテンで隠された個室から出て、かなちゃんを探す。

(…あれ、いない)

 どこに行ったんだろう。

「さっきまでいたのに」

 私はてくてく歩く。

(あ、視聴覚室の外かな)

 先に終わって、廊下で待ってるのかも。

(外に出てみよう)

 私は検査票を胸に抱いて、視聴覚室から出た。廊下を見回す。かなちゃんはいない。

(やっぱり中かな?)

 スマホをポケットから取り出す。


 <かなちゃん、どこ?


 LIMEにメッセージを残して、送信ボタンを押す。

(よし)

 後はかなちゃんが既読するのを待つだけ。

(ふふ。身長伸びてた)

 152から、153になってた。

(げへへ! なでしこ先輩、外れましたね! ざまーみろ!)

「へーえ。まる、153センチなんだー」
「はい! 153センチになれました!」
「うふふ。ちっちゃくて可愛いわねー」

 なでなでなでなでなで。

「……………」

 私の体が硬直する。ぐぎぎ、と首が動く。ゆっくり振り向く。
 にこにこ笑って私の頭を撫でているしおり先輩が立っていた。

「私は160センチ。まるより大きいわねー」
「……………」
「まる、実はね、私、ちょーっとだけ、まるにお話があるの」
「………………か」

 私はにこりと笑う。

「かなちゃんを待ってるので!」
「ちょっとだけでいいの」

 手を掴まれて、すごい勢いで引っ張られる。

「ひえっ」
「大丈夫。ちょっとだけだから」
「あ」
「ちょっとだけだから」
「あの」
「こっち」
「か、かなちゃ…!」

 口を手でふさがれる。引っ張られる。

「ひゃにゃひゃーーーー!」






「……あれ、まるちゃんどこだろう?」

 私がいなくなった頃、廊下に出てきたかなちゃんがスマホを覗いた。




(*'ω'*)




 薄暗い理科準備室に、ぽいと投げられる。

「ひゃっ!」

 扉が、がちゃんとしまった。振り向けば、鍵をかけられたようだ。

「ひぇっ!」

 私は腰を抜かしてずるずると室内の隅に逃げる。

「ひいいい!」
「ふふっ」
「で、電気を、電気をつけましょう!」
「ちょっとお話するだけよ」

 私は体を隅の壁に押し付ける。しおり先輩が、にっこりと微笑んで私を見下ろす。

「うふふ! まるったら、怯えちゃって可愛い…」
「お、お話って何ですか!」
「大丈夫。怖い事なんてしないから、そんなにしっぽを丸くしないで」

 しおり先輩が私の前にしゃがみこみ、にっこりと微笑む。

「まる」
「…なんでしょう」
「私の猫になってくれる?」

 やっぱり、それかーーーい!

「嫌です!」
「えー? どうしてー?」

 小首をかしげる、あざといしおり先輩。私は必死にうずくまる。

「猫って、意味がわっかんないです! 私、人間! 人類! ネコ科ちゃいます! 耳もしっぽもありましぇん! 私は知りましぇん! ボクは死にましぇん!」
「難しく考える必要ないわ。まる。空いた時間、私と一緒にいてくれたらいいの」

 そうね。

「まるは寮なんだっけ?」

 じゃあ、その部屋から私のお部屋に来なさいな。

「土日は24時間ずっと一緒よ。おトイレも見てあげる。ご飯も見てあげる。まるの面倒は私が見るわ。まるは私の膝の上でごろごろお昼寝してたり、ゲームしてたり、かなちゃんみたく変な本読んでてもいいから。何もしなくていいの。ただ、私の部屋で私の傍で私の膝の上にいてくれたらいいの。いい? 誰にでも話してるわけじゃなくて、まるだからこうやって言ってるのよ。私まるがとても気に入ったの。まるがいない膝はすごく寒くて寂しいの。ね? まるがいてくれたら私はずっと上機嫌でいられる気がするの。だって、こうやってまるの顔を見るだけで私の胸がどきどきしてきゅんきゅんしちゃうんだもん。私、まるが大好きなの。まるにもそうなってほしいの。私はまるの笑顔が見たいの。それくらいまるが好きになっちゃったの。だからまるにも私のことを知って私の事を想って私の事を好きになってほしいの。相思相愛。あ、勘違いしないでね。私、別に女の子が好きってわけじゃないの。だから女の子の恋人なんて作らないし、告白されても馬鹿じゃないの? って気持ちで相手の事見てるんだけど、まるは別。まるは猫だもん。私の可愛い猫ちゃん。ほら、こっちおいで。抱きしめてあげるから。私の腕の中で可愛くにゃんにゃん鳴いてみて。そのまま、しおり様大好きだにゃんって言ってみて。まるの声で聞きたいなぁ。私の部屋には何時に引っ越す? 引っ越し業者をすぐに手配してあげる。今日中には終わらせましょうね。家に帰ったら何が食べたい? 焼き魚でも用意する? あ、そうだ。ペットは調教するものよね。じゃあ、調教しないと。ご飯が欲しくなったらまるが私にキスをするっていうのはどう? ああ、何それ。素敵。素敵素敵素敵! まるが私にキスをする時は、食欲と睡眠欲と性欲が欠けてる時。もちろん全部満たしてあげる。食欲も睡眠欲も、それと」

 しおり先輩がにぃぃいいっこりと、にやける。

「もちろん、性欲も」
「長い!!」

 あと色々と言ってることが怖い!

「十文字で簡潔に何が目的なのか答えてください!」
「もー。照れ屋さんなんだから」

 頭をなでなでなでなで。

「だから、つまり、何が言いたいかって言うとね?」

 しおり先輩がまとめる。

「私の猫になって?」
「だから嫌です!!」
「やりたいお仕事があるなら、コネで会社に入れてあげる」
「自分の力で何とかします!」
「テスト勉強しなくてもいい結果にさせてあげる」
「ちゃんと勉強します!」
「そんなに嫌?」
「嫌です!」
「どうして?」

 しおり先輩が切なげに、私の顔を覗いてくる。

「まる」

(うっ)

 潤んだ瞳が、私を見つめてくる。

「私、酷い事しようなんて、思ってないのよ」

 ただ、

「まるに、傍に居てほしいだけ…」

 冷たい手が、私の頬に触れる。びくっと体が揺れると、手が離れる。

「ああ、まる。怖がらないで」

 そっと、優しく抱きしめられる。

「よしよし、怖がらないで」

(ふひっ!)

 背中を撫でられる。

「まる、怖くないわよ」

(ふへ…)

 しゅん、と体から力が抜けていく。

「まる、可愛いまる」

 なでなでなでなで。

(はぁぁぁああ、なんだこれ…)

 なでなで、気持ちいい…。

(ふはあ…)

 しおり先輩の腕の中で、どんどん脱力していく。

「そうそう。力を抜いて」

(ああ…。しおり先輩の声…、眠くなっちゃう…)

「そう。怖い事なんてないのよ。ただちょっと」

 ちょっとだけ、

「まるの可愛いところ、見せてね」

(ん?)

 しおり先輩が柔らかい布で、私の両手を縛った。

「へ」

 拘束された。両手が背中に回されたまま、動かなくなる。

「え?」
「ふふっ」

 しおり先輩の繊細な手がゆっくりと、私の体を撫でる。

「まるってば、いけない子。この私を怖がるなんて」

 きっと心が乱れてるんだわ。

「心の乱れは風紀の乱れ」

 しおり先輩が唇を舐めた。

「風紀委員として、取り締まりましょう」
「誰かーーーー!!」

 私は大声を出す。

「誰かきてぇえええええ!!」
「こらこら。声を出さないの」
「ぎにゃーーーーー!!」
「そんな悪い子には…」

 しおり先輩の手が、私の胸を掴んだ。

「えい」

 むにゅ。

「っ」
「うふふ」

 むにゅ。

「ん」

 むにゅ。

「ブラジャー、つけてないんだもんね」

 しおり先輩がにっこり笑ったまま、私を見下ろす。

「どう? まる、気持ちいい?」
「…………っ」

 私の顔が青ざめる。血の気が引いていく。

(な、なんで、しおり先輩、私のお胸に、触ってるんだ…?)

 なんか、やばい気がするぞ…?

「まーる」

 むにゅん。

「ぁっ」
「あら、えっちな声」

 むにゅ、むにゅ。

「ん」
「聞かせて、まる。まるの声が聞きたいの」

 もにゅ、むにゅ。

「ん、ん…」
「ほら、まる、呼吸も乱れてきた」

 こり。

「ひゃっ!」
「ふふっ。ここも硬くなってきた」

 こり、こり。

「あ、だめです、そこは…!」
「まる、女の子にお胸触られて、えっちな気分になっちゃったの?」

 こりこり。

「な、なってません!」
「でも、まるの乳首、硬くなってるわよ」

 こりこりこり。

「さ、触らないでくださっ…!」
「嫌だ♡」

 くにくにくに。

「んんっ!」
「あはっ♡ もう、まるってば♡」

 くりくりくりくり。

「はあ、はあ、はあ…!」
「可愛い。まる。すごく可愛い。ねえ、早く私のものになって…」

 こりこりこりこり。

「ん、んん…!」
「布越しって、中途半端よねぇ。あ、そうだ。直接触ってあげる!」
「ひっ!」

 私は後ずさるが、これ以上は壁があって後ずさることも出来ない。

(怖い!)

 それでも、私は壁に体をくっつける。

「や、やです!」
「うふふ。乱れちゃって悪い子ね。取り締まらないと」

 しおり先輩の手が、私のジャージのチャックを下に下ろす。ジーーー、と音が鳴る。

「あ…」

(この音の感じ、やだ…)

 どうしてか、ぞくぞくしてくる。
 けれど、お構い無しにしおり先輩がにこにこしながら、楽しそうに私のチャックを下ろしていく。

「ふふっ」
「や、やだ!」

 しおり先輩の手が私のTシャツの袖に入った。お腹に触られる。

「ひゃっ」
「まる、お肌すべすべね」

 つう、と上に上がってくる。

「まるのおっぱいはどう?」
「ぁ、い、いや…」

 手が上に上がってくる。

「やぁ…!」

 ぎゅっと瞼を閉じる。





 ――――瞬間、




 ばごーーーーーん! と扉が開けられた。

「ひえ!」

 悲鳴をあげてぎゅっと身を縮こませると、鍵を握ったなでしこ先輩が立っていた。

(…あ…)

「まるさん、探しましたよ」

 なでしこ先輩がふわりと微笑む。

「視聴覚室から行方不明になったと、伊集院さんから言われました。全く。お友達にご心配をかけてはいけないでしょう?」
「…………」
「こちらにいらっしゃい」

(いや、先輩、両手縛られてるの、見えてますよね?)

 なでしこ先輩がしおり先輩に微笑む。いつの間にか私から手を離していたしおり先輩も、なでしこ先輩に微笑む。

「ご機嫌よう。なでしこさん」
「ご機嫌よう。しおりさん。またまるさんが悪さを働いたようで」
「ええ。取り締まり中でしたの」
「そうでしたか」
「後程お渡ししますので、今はお引き取りを」
「いいえ。お友達を待たせるのはよろしくありません。今すぐに開放してあげてください。悪さに関しては、放課後にでも、私の方から指導しておきます」
「いいえ、そんな。なでしこさんにやってもらうまでもございません。私が取り締まりますわ」
「大丈夫ですよ。問題児の一匹程度、私が指導しても問題ございませんから」
「ふふっ。なでしこさんはお優しいこと。でも、今回はこの私が」
「いいえ。結構ですわ」
「ねえ、なでしこさん」
「はい、何でしょう」
「この子は、私が担当しますわ」

 しおり先輩が、手を縛られて縮こまる私を抱きしめた。

「何分、風紀を乱す問題児ですから」
「結構です」

 なでしこ先輩が理科準備室に入った。

「指導が必要な方には、一つの指導だけで充分です」

 なでしこ先輩が微笑む。

「ほら、まるさん、両手を拘束なんてふざけたことしてないで、こちらにいらっしゃいな」
「………誰か、解いてください」
「……仕方ありませんね」

 しおり先輩が手を伸ばす。私の両手に結んでいた紐をしゅるりと解く。

「まるさん、風紀の乱れを行ってはいけませんよ」

 そう言って、

 ―――――むちゅ、と、私の頬にキスをした。

「んっ」

 私の肩がぴくりと揺れると、しおり先輩がくすりと笑う。なでしこ先輩はにこにこしながら、私に手を差し出した。

「まるさん、速やかにこちらへ」
「は、はい」

 立ち上がり、そそくさとなでしこ先輩へ逃げようとすると、手首をしおり先輩に掴まれる。

「ぷえ?」

 そのまま引き寄せられる。

(ふぁ?)

 後ろから、ぎゅっと抱きしめられた。なでしこ先輩が笑ったままきょとんとする。しおり先輩もにこにこする。

「まる、覚えておいて」

 耳元で囁かれる。

「お前は私のものよ」

 そう言われて、ようやく手が離れる。私は自由になる。ぽかんとしおり先輩を見つめると、背中を叩かれた。

「ほら、まるさん。なでしこさんがお待ちですわよ」
「は、はい」

 そそっと小走りでなでしこ先輩の横に立つ。私の背中に、なでしこ先輩の手が添えられる。

「さ、こちらです」
「あ、はい」

 しおり先輩を残して、私となでしこ先輩が理科準備室から出て行く。振り向くと、しおり先輩が女神のように微笑み、手を振っていた。

(…やっぱり、苦手だ。あの人…)

 でもなんだかな。

(切なそうな目だったな)

 お前は私のものよ。

(切なそうな声だったな)

 少しだけ、気になるな。

(ともあれ…助かった…)

 なでしこ先輩と人気の無い廊下を歩く。

(かなちゃん、結局どこにいたんだろう)

 なでしこ先輩と階段を上る。

(今日は身体検査だから、三時間目で帰れるやー。帰ったらゲームしようっと)

 なでしこ先輩と廊下を歩く。

(うん?)

 生徒会室に歩いている。

(あれ?)

 いつの間にか、生徒会室の前に来ている。

(…あれ?)

 なでしこ先輩が扉を開ける。

(おっと、これは、まさか…)

 投げ入れられた。

「ひゅーーーん!」

 地面にころころころ!  と転がる。なでしこ先輩が扉を閉めて、いつもの如く鍵をかけた。

「あばばばばばば!」
「逃げるな」

 振り返るなでしこ先輩は、鬼の如く。

「今度は何をされた」
「な、何も…」
「また嘘をつく気か?」
「い、いや、あの…」
「言え。何をされた」
「あ、えっと、あの、変な勘違いをされないで欲しいのですが…」
「あ?」
「あの、その…」

 私は目を逸らして、正直に話す。

「…胸を、触られました」

 なでしこ先輩が腕を組んだ。

「あの!  勘違いしないでください!  しおり先輩のただの悪戯です」

 なでしこ先輩が近づいた。

「なんか、変に気に入られてるみたいで」

 なでしこ先輩がカーペットに膝をつき、私に手を伸ばした。

「いやあ、モテる女は辛いですね! なはははは!」

 後ろにぐっと引き寄せられる。

(むはっ!)

 後ろからぎゅっと抱きしめられる。

(んぶっ!)

 後ろ向きで、なでしこ先輩の腕の中に、閉じ込められる。

「どんな風に触られた?」

 なでしこ先輩の目が、ぎらりと光る。

「言え」

(先輩、怖いです。目が怖いです)

 私は顔を引きつらせながらなでしこ先輩に振り向き、縮こまる。

「あのー…」
「ああ」
「こう、むにゅむにゅっと」
「ほう」

 なでしこ先輩が、ジャージ越しから私の胸に触れた。

「ひゃっ!」
「これで、こうして、こうか?」

 むにゅ。むにゅ。

「んっ」
「触る前から硬くなってるな」

 またジャージのチャックが下に下げられる。

(うっ)

 ジーーーという音が耳に反響して、背筋がぞくぞくする。

(なんか、この脱がされてる感が、やだ…)

 Tシャツの中から、私の乳首が飛び出ているのが見える。なでしこ先輩の指がTシャツの布から乳首を挟んできて、さらにそれを強調させる。

「まる、見てみろ。お前の乳首が既に勃起しているじゃないか」
「し、してないです…」
「あの女に触られて興奮したか。このエロ猫」
「…してないです…」
「してないなら、なんでこんなことになってるんだ?」

 人差し指と中指で、くに、と挟まれる。

「んっ!」
「もう硬いじゃないか」

 くにゅ、くにゅ。

「変態め」
「あ、ち、ちが…」

 くにゅ。くにゅ。

「せ、先輩が、触る、から…!」
「私のせいか?」

 人のせいにするなんて、なんて生徒だ。

「指導だ」

 なでしこ先輩の指が私の乳首を突いた。

「自分のしでかした事を、人のせいにしてはいけない。まる」

 くにゅくにゅくにゅくにゅ。

「あ、や、やです! ち、乳首、いやぁ!」

 なでしこ先輩の指が私の乳首をつまみ、ぐっと伸ばした。

「いやぁあ! ちくび、伸びちゃいますぅ…!!」

 なでしこ先輩の指が離れる。乳首が元の位置に戻る。またつままれる。伸ばされる。

「ゃっ、いやです、これ、やだぁ!」

 言うと、また指の間に乳首が挟まれる。指が交互に動く。

 くにゅくにゅくにゅくにゅ。

「あっ、それも、いや! です! ぁ、あんっ!」
「嫌々ばかりだな」

 なでしこ先輩の手が、下に伸びる。スカートの中に入る。

「ここは、嫌だと言ってないみたいだぞ?」
「へっ…?」

 細い手が私の股の間に入ってきた瞬間、腰がびくんっ!と揺れる。

「ひゃあ!」
「また濡れてる。すけべな猫になったものだな。まる」

 なでしこ先輩の指が動く。パンツ越しから、その部分を、円を描くようにくるくるとなぞり出す。

「ぁっ! あ、だめ、です、な、何やって…!」

 くるくるくるくる。

(な、なんか、これ、前にも、同じようなことが…)

 くにゅくにゅくにゅくにゅ。

「あっ、だめ、それ、だめです、あっ、やだ、やなのに、あっ…」

 くるくるくるくる。

「まる、今のお前の顔を鏡で見てみなさい」
「んんっ…」
「とてもいやらしい顔をしているぞ」

 なでしこ先輩の声が耳に響く。

「淫乱猫」

 指が動く。パンツに隠されたその部分をほぐすように動かしてくる。

 もにゅ。もにゅ。もにゅ。もにゅ。

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
「まる、腰が揺れてる」
「ご、ごめんなさ…あっ♡」

 なでしこ先輩が触ってくる。私は漏れてしまう声を我慢するため、両手で手を塞いで、じっとこらえるが、大人しくすればするほど、なでしこ先輩の指は動き出す。

(その触り方…やだ…)

 胸がきゅんきゅんしてしまう。

「…そ、そんな触り方、しないでください…」
「まる、何を言ってる? 私はお前のしでかたことを人のせいにしないよう、指導しているだけだぞ?」
「だ、だからって、そんなところ、触る必要あるんですか…?」
「ある」

 なでしこ先輩の指が動く。

「二度としないための指導だからな」

 くちゅくちゅくちゅくちゅ。

「ほら、まる、これはなんの音だ?」
「あっ、だめ、いやっ! へん、変です、これ。なんか、変…!」

 なでしこ先輩の指がラインをなぞる。
 くちゅくちゅくちゅ。

「まる、私の指が濡れてきてるのだが?」
「あっ、それは、多分、あの、おりものが、きて、あの…!」

 くちゅくちゅくちゅ。

「あぁあんっ! そ、そんな風に、触られたらぁ!」

 くちゅくちゅくちゅ。

「あっ! だめ! いや! なんか、なんか、なんかきて、きちゃう!」

 くちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅ。

「あっ! あっ! だめ! あっ! せんぱ、あっ! あっ!!」

 私の腰がびくんっ! と震えた。

「あっ――――」

 びくん、びくんっ、と腰が痙攣する。体が震えだす。なでしこ先輩の指が離れる。濡れた指を、ペロリと舐めた。

「人の指を汚すなど、反抗期か?」

 呼吸が、乱れる。

「ご、めんなさ……ごめんなさ……」
「もう一回」

 指が私の股をなぞってくる。

「ひやぁ!」

 胸を揉んでくる。

「や、や! 無理です! もうだめです!」

 もにゅもにゅむにゅにゅにゅん。

「あっ、お、っぱい、そんな、風に、触られたら…」

 びりびりする感覚に、首を振る。

「だめ、だめです…だめ…」
「駄目じゃないだろ? まる、こういう時は、ご指導頂いてありがとうございますと、きちんとお礼を言わないと」
「だ、だって、そんな、触り方…」

 もにゅもにゅもにゅもにゅ。

「んんんんんっ!」
「また硬くなってきた」

 くにゅくにゅくにゅくにゅ。

「あっ、ち、違います!  硬くなってなんか、ないです! 気のせいです!」
「ほう? 気のせいだと?」

 くにゅくにゅくにゅくにゅ。
 私は目をそらす。気のせいだと言い聞かせる。

「そ、そうですよ。こ、こんな、こんな、ちくび、勃ってるなんて、き、気のせい、です…」

 くちゅ。

「あっ!」

 くりくりくりくり。

「あっ、挟んじゃ、いや…いやぁ…」
「気のせいにしては、私はお前の乳首が硬く感じるのだが?」

 くにゅくにゅくにゅくにゅ。

「きの、気のせい、です…。ちくび、か、硬くないもん…。…ぼっき…なんて、わ、わたし、してなんか…」
「そうか。では、ここも気のせいか?」

 下に置かれていたなでしこ先輩の指が動き出す。パンツのラインを、つつ、となぞられ、再び電撃が走るような感覚に、体の全身がぞくぞく震えだした。

「ふみゃああぁあ!」
「なんだ、これは? 濡れてるじゃないか」
「ち、違います、これは、おりもので、私、生理が近いんです! だから、触っちゃ、だめっ…!」
「とんがってるここは、何だろうな?」

 つーーー。

「きゃああん!」
「嘘つき」
「あっ」

 もにゅもにゅもにゅもにゅ。

「こんなに硬いのに、勃起以外の何がある」
「あっ、あっ、あっ、あっ」
「ほら、まる、しっかりえっちな声まで出てるじゃないか」

 ぴちゃぴちゃぴちゃ。

「まるさんってば、お下品ですね」
「だ、だって、そんなふうに、さわられたらぁ……」
「また人のせいですか?」

 ぴちゃぴちゃぴちゃ。

「あっ!」

 私は慌ててなでしこ先輩の手を押さえる。けれど、掴むことしか出来ない。なでしこ先輩の長い指は私のスカートの中で、変な動きを続ける。

「やっ! せんぱ、あっ」

 くちくちくちくちくち。

「やっ、やっ、やっ、あっ、ゃんっ」

 指の動きが早くなる。

「あっ、いや、こわい、こわいです…! いや! やだ!」

 私は必死に体を振り向かせて、なでしこ先輩の胸にすがりついた。

「んんっ!」
「っ」

 なでしこ先輩の指が、ぴたりと止まる。

(……あっ、止まった……)

 荒い呼吸を繰り返して、なでしこ先輩のジャージの裾を、ぎゅ、と握りしめる。

(先輩の熱…)

 すりすりと、頰をすり寄せると、感じる。

(なでしこ先輩の、胸、感じる…。そっか。ちゃんとノーブラなんだ…。ふにふにしてる…)

 なでしこ先輩の胸に、ジャージ越しから顔を押し付ける。

(柔らかい…)

「…まる」

 耳元に低い声が囁かれる。

「こっちを向きなさい」
「……ん……」

 なでしこ先輩の胸にくっつきながら、顔を見上げる。なでしこ先輩の顔が、すぐ近くにあった。

(はへ…?)

 むに、と唇が、私の唇に押し付けられる。

「んっ」

 唇を舐められる。

「ふぁっ…」

 指が動きだす。

「ふんんんんんんんっっっ!」

 腰がぴくぴく震える。なでしこ先輩が私の顔中に、唇を押し付ける。

 むちゅ。

「ん」

 ぴちゃぴちゃぴちゃ。

「んんんんん……!」
「ほら、まる、目を閉じないで」
「ん、んん、んっ」
「目を開けて、誰に触られているか、認識しろ」

 私は震える瞼を無理矢理上げる。その先は、なでしこ先輩で覆われる。なでしこ先輩の美しい髪の毛が映る。なでしこ先輩の燃えるような熱く黒い瞳が映る。なでしこ先輩の薄く微笑む顔が映る。けれど、なでしこ先輩に見惚れる余裕はない。見つめることしか出来ない。余裕がない。彼女の長い指が、私の触ってほしくない箇所をめがけてつついてくるから。

 ぎゅっと、なでしこ先輩のジャージを握りしめて、必死に、なでしこ先輩の顔を見上げる。

「ぁっ、ぁっ、ぁっ、ぁっ…」
「そう。それでいい。お前の淫らに乱れた姿は、私の前だけだ」
「んっ、んっ、んっ、んっ…」
「他の誰でもない。お前は私だけのもの」
「はんっ、んっ、んんっ、ぁっ」
「触られて簡単に乱れるくらいなら、私以外に触られるな。わかったな?」
「ふぁ、ふぁい、ふぁいぃ!」

 なんか、よく分からないけど、早く、この変な感じから解放して。

「はあ! はあ! はあ! はあ!」
「まる、ここは触られてないだろうな?」

 くにゅ。

「ふぃいいい! さ、さわるの、先輩くらいですぅううう!」
「そうか」

 ぴちゃぴちゃぴちゃ。

「ぁっ、ぁっ、だめ、なんか、くる、くる、くるっ」
「ほら、まる、私を見て」
「ふぇっ、んっ、んっ、あっ、んっ」
「もっと見て」
「はっ、なで、なでしこ、先輩っ」
「まる、もっと呼んで」
「あっ、なで、なでしこ、せんぱ、なでしこ、なでしこせんぱぁっ」
「ふふふっ」

 なでしこ先輩が、にんまりと笑った。

「よろしい」

 低い声で、囁いてくる。

「イっていいよ」
「っ」

 細い指が、パンツ越しに、少しだけ中に入った。
 胸がキュンと鳴る。
 お尻がきゅんと鳴る。
 その奥から、またきゅんきゅんと筋肉が絞めつけられる。

(あっ)


 ~~~~~~~~~っっっ!


 お尻の中が、痙攣した。


「んんんんんんんっ!!」


 びくんっ、と体が揺れる。


「ふえ、」


 目を見開く。


「………はぁ、………はあ、………………はあ」


 肩から大きな呼吸をする。


「はあ、はあ、はあ、はあ、」


 乱れた呼吸を整える。


「はあ! はあ! っ、はぁ…!」
「まる」

 目線を再び上げると、なでしこ先輩が見ている。

「まる」

 焦点が合わなくなっていく。

「まる」

 暗闇が近づく。

「まる」



 ――――ちゅ。


 柔らかな唇が、頰にくっつく。


(あ)


 しおり先輩にキスされたところ。


(……あ……)


 そのキスで、一気に気持ちが落ち着く。


(なんか…)


 この感じ、
 この優しい感じ、
 このふわふわした感じ、


(似てる)


 この強引で、優しい感じが、




「…なっちゃん…」




 そこで私の意識は、ぶつりと切れた。




(*'ω'*)







 目を覚まして最初に、なでしこ先輩から新しいブラジャーとパンツが渡された。

「着替えろ」
「…………」

 上ジャージ、下スカートの状態で正面のソファーに座らされて、なでしこ先輩の目の前でパンツを脱ぐ。ちらっと見ると、なでしこ先輩が腕と足を組み、涼しい顔で私を見ている。

「……なんだ?」
「あの、ソファーの裏とかで着替えてもいいですか?」
「女同士だろ」

 なでしこ先輩が呆れたようなため息を出す。

「何を恥ずかしがっている。さっさと着替えろ」

(なんで先輩の目の前でパンツ脱がなきゃいけないんだろ…)

 私は穿いてたパンツを下に下ろしていく。

(…あれ、ついてない…?)

 おかしいな。乾いたとしても、おりものの、あのヌメッとしたやつ、ついてたら分かると思うんだけど。

(あれ?)

 私は脱いだパンツの中を見る。

(何も付いてない)

 ただ、

(…何これ。なんか臭い…)

 なんとも言えない、鼻にツンとくるような匂い。

(……おえ)

 身体検査用に穿いてきた勝負パンツを畳んで、なでしこ先輩の用意してもらったパンツに手を伸ばす。

(…あ、可愛い。猫ちゃんパンツだ)

 私は足に通す。そのまま、パンツを穿く。

(次は)

 ブラジャーは簡単。Tシャツの中に入れて、もぞもぞやって、装着。はい、おしまい。

「終わりました!」

 顔を上げると、なでしこ先輩が超不満そうな表情を浮かべていた。

「…………………」
「ん?  何ですか?  着替えましたよ」
「チッ」

(えっ、なんで舌打ち!?)

「下着は家に帰ったら洗うから、私に渡せ」
「いや、いいです。なんかこのパンツ、変な匂いするんで、私が洗います」
「お前、私の言うことが聞けないのか?」

 えぇえええ!? なんで変な匂いのするパンツ一枚でそんなまがまがしいオーラ見せるのーーー?

「……あの、では、お願いします」
「ん」

 大人しくパンツを渡す。なでしこ先輩が受け取り、鞄の中に入ってたポーチの中に私の脱ぎたてのパンツをしまった。

(…ポーチに匂いつきますよ。そういうのやめましょう。先輩…)

 時間を見れば、既に学活の時間は終わっている時間。

 私が急に体調不良になったから生徒会室で休ませてる、という連絡をなでしこ先輩がしてくれたおかげで、かなちゃんからは嬉しいくらいの心配のLIMEメッセージ。


 <まる氏! 大丈夫でござるか!
 <生徒会室ってどんな感じでござるか!
 <やっぱり、BLにありそうな感じなのでござるか!
 <教えてくだされ! まる氏! どうかこの通り!


「ランチの時間だ。帰って食事にしよう」

 なでしこ先輩がそう言って腰を上げ、ふと、言葉を訂正する。

「…いや、外食でもするか」
「へ、外食ですか?」
「マックがいい」

 私は顔をしかめる。

「なでしこ先輩、マックって、何か知ってます? フランス料理店じゃないですよ?」
「お前は私を馬鹿にしてるのか?」
「違います! 違います! やめてください! そんな風に私を責め立てるように睨まんといてください!」

 そのぎらぎらした目で見んといてくださいな!

「そうじゃなくて、あの、なでしこ先輩、ハンバーガー食べれるんですか?」
「たまに体の悪いファーストフードを食べたくなる時があるだろ。あんな気分だ」

 私が食べたいから、まるには付き合ってもらう。

「まる、好きなのがあったら私が特別に買ってやる。遠慮せず、好きなのを選べ」
「ま、まじっすか!? いいんですか!?」
「滅多に食べられない、高いのでもいいぞ」
「えっとっすね! じゃあっすね! 私、アレがいいっすなぁ!」

 立ち上がると、ふらりと立ち眩み。

「ひゃ」

 なでしこ先輩が即座に手を伸ばし、私の肩を支える。

「わ」

 私がきちんと立つと、なでしこ先輩の手が離れる。私はぱちぱちと瞬きした。

「すみません」
「眩暈か?」
「ただの立ち眩みですよ」

 私は鞄を持って歩き出す。

「マック行きましょう」
「まる、その前に」

 手招きされる。

「一回おいで」
「…何ですか?」
「なんで警戒する」

 なでしこ先輩がむっと顔をしかめた。

「来い」
「はーい」

 なでしこ先輩のいるソファーに歩き、腰をかける。なでしこ先輩も再びソファーに座る。

(何々? 女の子同士の秘密のお話?)

 そう思いながら、にこにこしてなでしこ先輩を見上げると、なでしこ先輩の手が私の腰を掴んで、引き寄せてきた。

(ん)

 そのまま、ぎゅっと抱きしめられる。

(んむ)

 頭をなでなでと撫でられる。

(ふわっ)

 気持ちいい。

「…………」

 思わず黙り込んでしまうほど優しい手が、私の頭を撫でる。

「まる」

 その低い声に、胸がどきっと鳴る。

(…どき?)

 耳元で囁かれる。

「痛いところはないか?」
「……痛いところは、ありません」

 頭を撫でられる。

「怖いか?」
「…先輩の裏表は、慣れました」

 頭を撫でられる。

「何も怖くないから」
「んっ」

 むちゅ。
 頬にキスされる。

「まる」
「あの」

 むちゅ。
 瞼にキスされる。

「ここも」
「あ、あの…」

 むちゅ。
 額にキスされる。

「あとはどこがいい?」
「あ、あの、先輩」
「ん?」
「私は、指導を受けてたんですよね…?」

 眉をへこませて、なでしこ先輩を見る。

「な、なんで、そんなに、優しくするんですか…?」
「指導が終わったらからだ」

 …………。

「…指導が終わったら、優しくなるんですか?」
「優しくしてるつもりはない。いつも通りだ」

 ちゅむ。
 眉にキスされる。

「でも、すごく優しいです」
「そうか?」

 ちゅ。
 目尻にキスされる。

「なでしこ先輩は、スキンシップが好きですよね」
「普通だ」

 むちゅ。
 目の下にキスされる。

「だって、こうやって私にキスしてるじゃないですか」
「可愛がってるペットにキスをするのは当たり前じゃないか」

 ちゅ。
 頬にキスされる。

「私、可愛がられてるんですか…?」
「可愛がってないと、こんなことしない」

 ちゅ。
 鼻にキスされる。

「嫌いじゃないんですか?」
「嫌いなものを私が傍に置くと思うか?」

 むにゅ。
 口の端にキスされる。

「じゃあ、どうしてですか?」
「ん?」
「どうして、体、触るんですか?」
「指導だから」
「他の人にはしないじゃないですか」
「そうだ。お前だけだ」
「なんでですか。おかしいですよ」
「まる」
「だって」


「目を閉じろ」



 唇に、キスをされる。
 なでしこ先輩の唇が、私の唇にくっつく。
 ふわふわした唇。
 たまに当たる硬い骨。
 なでしこ先輩のジャージの裾をぎゅっと握る。
 なでしこ先輩が私の腰を抱く。
 唇同士がくっつく。

(…あったかい)

 なでしこ先輩はスキンシップが好きなんだ。

(だから、キスするんだ)
(だから、私の体を触るんだ)
(本当に私のこと、ペットだと思ってるんだ)
(面白がってるんだ)
(またいつか、今日みたいなことされるのかな)

 ちょっと怖いな。

(…………)

 ふいに手を下に滑らす。なでしこ先輩の手に、自分の手を重ねてみる。

(……ん?)

 なでしこ先輩の指がぴくりと動く。

(えっ)

 手を握られる。

(ふぇ…?)

 きゅ、と指同士が絡みつく。

(え?)

 きゅん。

(え?)





 唇が離れた。





「……………」

 俯いて、なでしこ先輩の胸に顔を隠す。なでしこ先輩が私の背中を撫でる。

「……まる」

 耳元で囁かれる。

「お腹空いただろ? マックに行こう」
「……………はい」

 頷いても、抱きしめてくる手が離れない。

「………マック、行くんですよね?」
「…………ああ」
「…………あの、じゃあ………」

 抱きしめてくる手が離れない。

「い、行きましょうよ」
「ああ」

 手が離れない。

「なでしこ先輩」
「ああ」

 手が離れない。

 絡み合った手も、離れない。


「……………」
「…………………」
「…………あの、なでしこ先輩」
「…………………」
「なんか、ふらつくので、もう少しだけ、このままでいてもいいですか?」
「……………ああ」

 なでしこ先輩の腕の力が、強くなった気がした。

「いいよ」

 多分、なでしこ先輩が急に優しくなったから。
 きっと、なでしこ先輩の乱暴と優しさが表裏一体だから。
 まるで飴と鞭のようだから。

 だから、私の顔は妙に熱くて、胸がざわついているんだ。

(なるほど、これがなでしこ先輩の魅力ってやつか…!)

 侮れない…!

(これが本物のマドンナか! すげえ!)

 私は熱い顔を無視して、なでしこ先輩の背中に腕を伸ばし、ぎゅっと、抱き着いた。

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