ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
251 / 619
父娘と合同パーティー

第221話 フルシェ遺跡ダンジョン その3



そして罠のあった通路の入り口に立ち 後ろを振り返る。

「あそこに罠があるんだけど、あれをどうやって起動させるのかって事だよね?
って、どうしたの?」

普段通りに、と言われたので いつもと同じように 見つけ次第 魔獣を殲滅しながら歩いてたのが悪かったのだろうか。
途中から 立ち止まって敵の情報を伝えるのが面倒過ぎたので 通路を曲がる前に 「次の角を曲がれば誰がいる」って伝えたのが 横着過ぎた?
兄妹が固まり 彼女たちの両親は笑っている。お父さんは 満足そうに頷いているけど どういうこと?

「ヴィオの事については セフティーゾーンに行ってから聞きましょうか。
まずは罠解除だけど ここの罠は……、ほら よく見てみなさい、石のここに 印があるのが分かる?」

固まったままの兄妹はそのままに、テーアさんが教えてくれたのは 床に刻まれた印。【索敵】だと真四角のタイル状になっているけど、直接見ると 他の床より ほんの少し素材の色が違うのが分かる。
だけど ちゃんと見てないと見落とすレベル。
ただ、ダンジョンの優しさなのか 通路のど真ん中ではなく 壁に近い場所にあるから 気付かなくても踏まない可能性は十分ある。
その床の素材の一部に 炎のような模様があるのが分かる。本当に小さな模様で 傷のように思うかもしれないけど、ちゃんと見れば 炎の絵だと分かる。

「炎の絵って事は この板を踏むと ファイアボールを当てられたような傷を負うって事ね」

え?それって結構しっかり怪我しない?
私の作るファイアボールは 一撃必殺なんだけど あれを受けたら 場所によっては大怪我では済まない自信しかない。

「ん~、見た方が早いわね。あなた 適当なお肉持ってなかった?」

「ああ、町で買った肉ならあるぞ」

私が顔色悪くしていたからだろう、テーアさんが試してみようと言い出した。
タディさんから受け取った 肉はよく見る大きな葉っぱに包まれた肉だ。
それをそのままタイルの上に投げれば、肉が一瞬オレンジの炎に包まれ 直ぐに消えた。
ん? あれがファイアボール? 
てか ファイア? 
いや、ファイアにしても弱めのやつ?

「ふふっ、ファイアボールではなかったわね。まあ火属性の魔法が出ると思っておけばいいわ。
大抵の場合は 剣とか槍とかでつついて 魔法を出しちゃうことが多いわね。
ほら、お肉も火が通った訳じゃないでしょ? 特級ダンジョンなんかだと もっと強い火に包まれることもあるけど、このダンジョンではこの程度ね」

見せてもらった肉は 葉っぱの部分ですら焦げておらず、お肉なんてピンクのまんまだった。
軽い火傷のレベルでもなく、驚くって感じの効果しかないのではなかろうか。

「普通の冒険者だと 火が出たことに驚いて 慌てるでしょう? 丁度その時に魔獣と対戦していたりしたら 驚いた人の武器で怪我をするかもしれない。
そういったこともあるから気を付けておくのよ」

あ~、確かに威力のわりに 火の勢いは大きかったよね。
あれです、マジックで炎が出るやつみたい、わぁ!って驚かせるやつ。うん、確かに初見だとびっくりして 抜き身の剣とか持ってたら危険だね。気を付けよう。

その後 2か所分の罠も、水に包まれるとか、下からの風に吹き上げられるという マジックテイストの罠だった。


「さて、大分時間が早いわね。まさか2階層を昼前に攻略しちゃうなんて思ってなかったけど、あなた達ってばいつもこんな感じなの?」

6時前に町を出て 1時間かけてダンジョンに到着
1階の壁画をゆっくり眺めてたのは 多分2時間ほど
然程広くはなかった この2階層なので2時間ほどで攻略したわけだけど、まあ洞窟系だとこんな感じだよね。

「まあ採掘も採集もないダンジョンじゃと 大体これくらいじゃな。
初級で リポップ待ちの時なんかは 1日で2~4階層は平気で潜るぞ」

「「えぇっ!?」」

「そんな感じよね。まあ 一先ずお昼休憩にしましょうか。あ、これも 普段のあなた達の休憩を参考にさせてもらいたいわ」

普段の休憩って 普通の人はどうやってるんだろうか。
お兄ちゃんたちの時と同じで良いのかな?というか、行動食の時間じゃなくて お昼ご飯の時間って事で良いんだよね?
お父さんも頷いているので そのまま先導して 罠の道のつきあたりまで歩く。

皆が到着したところで 広めの空間を確保して 通路の途中に土壁を作る。

「【アースウォール】うん、いいね。
お父さん、匂いが出ないやつの方がいいかな」

「まあそうじゃな、セフティーゾーンじゃったらええが、ここは一応通路じゃからスープ位にしておこう」

「わかった」

ゴブリンとコボルトは肉を焼く匂いに釣られてくる可能性があるからね。
一応通路の魔獣は全部倒したけど、もしかしたら先行している冒険者によって既に倒された魔獣が居て、そのリポップが無いとは限らない。
なのでここはサンドイッチなどの 調理済みのモノを昼食にしよう。
ただし少し冷えてるからスープは作るけどね。

火台はお父さんが作ってくれたので 中鍋を取り出し 水生成魔法でお水を作る。魔力を抜くから 先に水を作っておきたいんだよね。
今日は大人が3人、いや4人、子供が2人だから それなりに食べるだろうし、スープはお兄ちゃんたちがいた時と同じくらいでいいだろう。

大鍋にホーンラビットの肉を入れて軽く炒めてから お野菜をドカドカ入れていく。豊作ダンジョンで貰ったお野菜が まだまだあるからね。
途中でお父さんが味見をしてくれて スパイスを足してくれる。うん、美味しいね。

スープが完成したところでクルリと振り返れば デジャヴ???
シートを敷いて 寛いでいるタディさんと テーアさんは 器の準備も万端で クツクツ笑っているし、兄妹二人は このエリアに来た時の状態のまま 立ったまま固まっています。
石化の呪いでもかけられましたか?

「さて、ガルスとケーテも、自分の器は持っとるか?無ければ用意をするが」

「あっ、いや、持ってます」

「あ、あります、ちょっと待ってください」

慌てて自分たちのバッグからお椀を取り出す二人。テーアさん達も持ってきてくれたので 其々の器にたっぷり盛り付けますよ。
お替りは自分でお願いしますね。

「では「いただきます」」

お父さんといただきますの挨拶をすれば、4人も後からいただきますと言ってから スープに口をつけました。そういえば クルトさんも最初は言ってなかったよね。
“いただきます” は 家でゆっくり食べる時には言うけど、ダンジョンでは そんな気分にならなかったからだという事だったけど、一緒に行動するようになって 普通に言うようになってたね。
家より豪華、とは 豊作ダンジョンでの夕食時の台詞だ。

「美味しい……」

「ダンジョンの中で 温かいスープを飲むことになるなんて思ってなかった」

「〔大樹の祠〕のメシウマは当時から話題だったが、ヴィオもその技を受け継いだんだな」

「本当にね、私の鞄も時間遅延があるけど、食材を持ち運ぼうなんてあまり考えたことが無かったわ」

ケーテさんは一言呟いてから 真剣にご飯を食べてます。
タディさんは お父さん世代だから お父さんのパーティーの話も知ってるんだね。その人たちに認められるのは嬉しさ倍増だね。
そしてテーアさん、意外と豪快な性格なんですね。食材あった方が楽しいし テンションが下がらないですよ?
次はお風呂も持ち歩くつもりでいます。
多分常識ではなさそうなので 言わんけど。
感想 120

あなたにおすすめの小説

継子いじめで糾弾されたけれど、義娘本人は離婚したら私についてくると言っています〜出戻り夫人の商売繁盛記〜

野生のイエネコ
恋愛
後妻として男爵家に嫁いだヴィオラは、継子いじめで糾弾され離婚を申し立てられた。 しかし当の義娘であるシャーロットは、親としてどうしようもない父よりも必要な教育を与えたヴィオラの味方。 義娘を連れて実家の商会に出戻ったヴィオラは、貴族での生活を通じて身につけた知恵で新しい服の開発をし、美形の義娘と息子は服飾モデルとして王都に流行の大旋風を引き起こす。 度々襲来してくる元夫の、借金の申込みやヨリを戻そうなどの言葉を躱しながら、事業に成功していくヴィオラ。 そんな中、伯爵家嫡男が、継子いじめの疑惑でヴィオラに近づいてきて? ※小説家になろうで「離婚したので幸せになります!〜出戻り夫人の商売繁盛記〜」として掲載しています。

君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。 求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。 そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。 しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。 ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが…… ◆なろうにも掲載しています

【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

ガリ勉令嬢ですが、嘘告されたので誓約書にサインをお願いします!

荒瀬ヤヒロ
恋愛
成績優秀な男爵令嬢のハリィメルは、ある日、同じクラスの公爵令息とその友人達の会話を聞いてしまう。 どうやら彼らはハリィメルに嘘告をするつもりらしい。 「俺とつきあってくれ!」 嘘告されたハリィメルが口にした返事は―― 「では、こちらにサインをお願いします」 果たして嘘告の顛末は?

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

【短編】「中身はいいけど顔がなぁ」と笑った侯爵令息。美人の姉目当てに地味ブスな私を利用したこと、謝られても手遅れです

恋せよ恋
恋愛
「……結局、男の人は、顔しか見ていないのね」 絶世の美女である姉エリザベスを狙う男たちから 「地味ブス」と蔑まれてきた伯爵家の養子アイリス。 そんな彼女に、幼馴染のアレンからの頼み事が。 友人レオナルドの「女嫌い」克服のため 彼と文通を重ね、アイリスは生まれて初めての恋を知る。 しかし、文通で育んだ絆は、すべて彼の「暇つぶし」と 「美貌の姉への足がかり」に過ぎなかった。 「アイリス? 中身はいいけど、顔がなぁ」 「俺、面食いなんだよ。あの子、おしゃれする気ないのかな」 冷めた令嬢と、後悔に悶える貴公子の、すれ違いロマンス! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!