ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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父娘と合同パーティー

第230話 フルシェ遺跡ダンジョン その12


6日目の朝、しっかり朝食を頂いてから 10階へ。
厳めしい扉も見慣れてきましたね。
少し緊張気味の兄妹と いつも通りの私たち。

「ヴィオは いつも通りなのね。私は ボス部屋の時はいつも緊張しちゃうの。母さんたちにも 余分な緊張は ミスの元だからって言われてるんだけど……」

そんな不安気なケーテさんの頭を撫でながら 心配そうなガルスさん。
そんなに不安になることってあるかな。誰が待ってるか情報が無いダンジョンだったら多少不安になるかもだけど……。

「ん~、情報があるからって言うのが一番大きいけど、もし無くても 入る前に自分たちにできる準備をしておけば安心だし、なにより演出が長いから その間に色々準備はできるよね?
だから別に緊張はしないかな。どんな風に並んでるかなって考えるくらいかも」

「「へ????」」

緊張しない理由を話せば 緊張していた筈の二人が ポカンとなってます。うんうん、緊張がほぐれていいのではないでしょうか。
お父さんは後ろで笑ってるけど、演出を楽しみにしてるのは知ってるからね。

ということで、ケーテさん一家に 私が思うダンジョンのボスたちが頑張っている演出について説明した。かなり私の主観が入るので、時々お父さんが補足説明をしてくれてます。ありがとう。


「くくっはっはっは、ヴィオは本当に 面白いことを考えるなぁ。
そんな風に考えたことはなかったけど、確かにそうなのかもしれないな。
俺たちは 魔法が然程得意ではなかったし、補助魔法をそんなに重要視したことが無かったけど、ケーテなんかはまだまだ体力、守備力が薄いからな。回復だけを重視してたが 補助魔法をしっかりかけてからってのも考えるべきだな」

「そうね、相手によっては 先に盾を準備しておけば かなり安全にボスを攻略できそうだわ……」

タディさん達は本人たちが強すぎるから、自分たちが守ることも前提にある分、然程 事前準備をしてなかったみたいだけど、ケーテさん達はそれじゃあ不安になると思う。
多分二人にそれを体験させたいんだろうけど、そうしたら また私の出番がなくなることも気にしているみたい。

「まあ それじゃあ ケーテとガルスの二人で対戦できるように、儂とヴィオの二人でボス部屋に行くか。
別に ダンジョンに一緒に入ったものが 全員一緒にボス部屋に入らなければいかんという事はないからな」

「そうなの?」

「そうじゃ、扉に一緒に手を触れた者が入ることになるが、それを別にすれば2組のパーティーっちゅうことになるな。ただ、待つ方は ボス戦が終わるまで待つ必要があるけどな」

そっか、その後に片付けもあるもんね。
ちょっと待ち時間があるって事か。

「ふふっ、そうね。待ち時間も含めて 私たちは作戦会議をしたいから 先にヴィオたちで攻略してしまってちょうだい。すぐに追いかけるわ」

ということで、急遽 中ボスはお父さんと二人でやることになりました。テーアさんには 私たちが入ってから どれくらいの時間がかかったのかを計ってほしいとお願いした。
そうすれば ボス戦後 どれくらいの準備時間がかかったのか分かるからね。
え?それを調べる理由? ただの興味ですが 何か?




いつも通りの軋み音を鳴らして ボス部屋の扉が開く。
ケーテさん達に手を振って お父さんと二人で真っ暗なお部屋の中へ。

段々明るくなっていくにつれ 見えてくるのは 緑の集団。
防具をつけてるのが最上段に並んでいるから ゴブリンナイトまでいるみたいだね。
ところで 普段お父さんと二人だけで入る時より 敵の数が多いように感じる。お兄ちゃんたちと一緒の時と同じくらい、いや それより多いかもしれない。

お兄ちゃんたちは 「単独の特殊ボスは別だけど、複数匹いる様なボス部屋は 入る冒険者の人数に合わせて増減するんだよね」って言ってたと思う。
だとすると、ナイトが5体、メイジが3体、ハイゴブが10体っていうのは 多すぎないだろうか。

「お父さん、これってケーテさん達も一緒に入ると思ってて準備してくれてた感じかな。
まさか 部屋の前で 別れるとは思ってなくて 人数調整できなかった感じじゃない?」

「ぶふっ、まぁ そう見えるな。儂ら二人にしては ちと多い。ヴィオ 一人じゃ流石にきついじゃろうから 儂も行くか」

「ん~、盾で分断するから とりあえずは大丈夫。もし危険だったらお願いします」

演出時間が長いからこそ相談できるよね。
ということで ダンジョン様のうっかりミスだと思うことにして、それでもやることは変わらないから準備しますよ。

演出終了と同時に【エアウォール】×2を展開。
後方のメイジとナイトを 一先ず隔離。

「【フレイムバレット】【アースランス】」

前方にいたハイゴブリン10体に向けて 炎弾を発射、後方の隔離組には 地面からの土槍を発射しておく。
ハイゴブリン9体は炎弾が命中して 消えたけど、1体だけ 肩を掠ったくらいで 助かっている。
それがこちらに向かって走ってくるので 鞭に魔力を通して振り切って討伐する。

メイジ2体と ナイト3体は 槍で貫けたけど、其々に残っているのがいる。メイジは偶々立ち位置が良くて助かった感じだけど、ナイトは 残っている2体が どうやら3体を犠牲にして助かったようだ。
2本の矢が刺さっている個体が2体もあったので 生き残りに押し出されたのだろう。
同じナイトとはいえ個性があるみたいだね。
散々ここまで【エアウォール】を使って練習に付き合ってたから うっかりそっちにしてしまったけど、どうせなら【ウォーターウォール】にしてニードルを全方向から出せば早かったかもと反省。

とりあえず 残っていたメイジゴブリンは魔法を唱えているようだったので 鞭で真っ二つに切断しておく。
ゴブリンナイトは 武器や防具を身に着けており、それは胸当てだったり 腰巻だったり、膝当てだったりと 個体によって違うようだった。
しかし 絶命した個体が消えて 落としたその防具を 残っている2体が身に着けている。
ゴブリンたちよりも 随分知恵があるようだ。

「ヴィオ、同じ種族、同じランクの魔獣でも 上位種に育っていく過程がある。もしかしたらその2体は 更なる上位になり得る個体かもしれんぞ、気を付けろ」

「わかった」

そうか、冒険者でも 銀ランクと言えど スチーラーズのようなへなちょこもいれば、お父さんたちみたいな実力者もいるもの、魔獣だって同じだよね。
気合を入れ直して ゴブリンナイトに向き合う。
とりあえず盾の中にいる2体をさらに分断させたいので 【ウォーターウォール】を2枚作り出す。
まさか 更に壁が出来ると思っていなかったらしいゴブリンナイトは 焦ったように壁を叩き始める。
さっきの大きな風の盾の時はそんな事をしなかったのに。

とりあえず 風の盾は解除し 1体分の水の壁は 少しずつ狭くなっていくように調整しておく。
もう一体は 水の壁に 剣を立ててくるものの 柔らかい水に阻まれて こちらに剣は届かない。
水とはいえ 魔力だからね、フヨフヨしている割に 手を通そうとしてもあちらからは通せないのだ。こっちからは通せるんだけどね。

口を大きく開けて叫んでいるけど、飛ばれても困るから 天井まで包み込む形にしている為 声は聞こえない。
破れなさそうだと安心したところで サンドウィップで真っ二つにしてあげた。
さて、残り一体。と思ったら いつの間にか水の壁が消えている。

「あれ? お父さん もう一体は逃げた?」

「いや、水の盾に挟まれて窒息死したようじゃったぞ。対象が消えてそのまま圧縮されたからか 壁も消えたな」

思ったより こちらの個体に時間がかかっていたようでした。
まあ、無事に討伐が出来たので何よりです。


ゴブリンナイトは魔石と防具を落としていたので 魔石だけいただきます。防具は臭いがしないのは分かってるけど、自分が使うものでもないし 置いておけばリサイクルできるかなって。
宝箱には 体力回復薬3本、魔力回復薬3本と大盤振る舞い。
これもきっと 6人入ってくると思っての準備だったと思うと 申し訳なかったなと思う。
次は4人で入ってくるからね、ダンジョン様 よろしくお願いしますよ!
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