ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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魔導学園へ

第238話 首都リズモーニに到着


フルシェの町から徒歩で二日、首都リズモーニに到着した。
プレーサマ辺境伯領の領都でも あまりの大きさに驚いたけど、規模が違いました。
まず首都に壁はない。
街道を進んでいたら いつの間にか 長閑な田園が広がり始め、アチコチで作業をしている人の姿も見え始めた。
2時間程 麦畑や 緑が咲き誇る畑などを眺めていたら ポツリポツリと建物が増えてきた。
だけどお城のようなものは見えない。
建物は民家だけではないようで、大きな通り沿いでは呼び込みをしている人もいるからお店があるんだろう。

「お父さん、首都って魔獣が来ないから門が無いの? これだったらどこからでも街に入れちゃわない?」

「ん?ああ、ここはまだ中心部じゃないからな。まあ首都に入っては居るが 中心部だけでは人が住める場所がなくなってな、こうして外に広がっとるんじゃ」

えぇっ!?広がり過ぎじゃない?
人が増えれば食料も必要になるから 畑も必要だしって事なのか?人が増えれば 外にも店が必要だろうって感じでどんどん増えたんだろうか。凄いな。

ある程度密集していた建物がある場所を過ぎれば また一面の田園風景が広がり、その先に外壁らしき線が見える。

「まさか あれが首都の外壁だったりする?」

「おお、そうじゃ。よくわかったな。あれが元々あった首都リズモーニじゃな。魔導学園もあの中にある。
冒険者ギルドと 商業ギルドの支店は外の町にもあるが、本店はあの中にあるぞ」

マジカ、思ってた規模と全く違ってた。
外壁が線に見えるくらいの距離、強化を使ってのそれだから この田園風景はどれだけ広大なのだろうか。
食事事情、教育事情、インフラ整備もこの世界は結構整っている。

ダムがあるなんて思ってもなかったし、教育に関しては町や国で多少の違いはあるかもしれないけど、識字率は決して低くはない。
料理だって 町によって色んな地元料理があるし、豊作ダンジョンがあるおかげで スパイスや調味料も多い。なのでラノベあるあるの クソマズ飯というのにあたった事はない。
というかお父さんの料理が美味しいし、外食も お父さんの嗅覚で選んでるからハズレの場所に行くことが無いだけかもだけど。
玩具に関しては 異世界人いるんじゃね?って思うものがあるけど、既にこの世界では当たり前に受け入れられているし、私の想像している勇者様は 絶対転生者(日本人)だと思ってるしね。

魔法という地球にはなかった技術があって、ダンジョンというある意味無限の資材があれば 人口が増えすぎるんじゃないかと思うけど、そこは魔獣という外敵がいるから ある程度増えすぎないようになっているのだろう。
神様の箱庭にいる気分だけど、人口が増えすぎれば 住む場所などが無くなって、色々足りなくなって 他所から奪い取るという戦争が起きるんだもん。そう考えれば そなる前に間引きしてもらうのも大切かもしれないよね。
戦争は人災だし 相手をいつまでも恨んで その怨みの連鎖になりそうだけど、魔獣だと仕方ないって諦められそうだもん。

あまりに広大な敷地を見て ぼんやりしてたら いつの間にかお父さんに抱っこされていて 入街審査の列に並んでいた。

「大きな街じゃから 審査する係も多いが 審査を受ける者も多いからな、まだまだ時間がかかる。朝も早かったから少しこのまま寝ておればええ」

ポンポンと背中を叩かれれば お父さんの体温と安心感に 瞼が落ちてくる。ザワザワとした人の騒めきも環境音楽のようで心地よい。

しばらく心地よい眠りを堪能し ふと気づけばフカフカのお布団の上だった。
ガバっと起き上がって周囲を見渡せば もう一つのベッドの上には お父さんのリュック、壁には私の旅用マントとリュックが掛けられている。

ガチャリと扉の開く音が聞こえれば お父さんがタオルで頭を拭きながら出てきた。どうやらお風呂に入っていたみたいだね。

「おお、起きたか。夕食には起こそうと思ったが 早かったな。ヴィオも風呂に入るか?」

まだ頭がボーっとしているけど お風呂は入りたい。
コクリと頷けば お父さんが出てきた扉の中に戻っていく。あ、自分で用意するって言えば良かった。
お風呂の準備は魔法か魔道具を使うので、どちらにせよ時間がかからない。
お父さんにお礼を言って ゆっくりシャンプーをして、身体もしっかり石鹸で洗う。クリーン浴では得られないサッパリさが心地いい。
湯船に浸かれば 段々頭が冴えてくる。

お風呂から上がれば お父さんがブラシを片手に準備万端で待っていたので笑ってしまった。
素直にお父さんの前に座れば 【ドライ】をかけながら 丁寧にブラッシングされる。獣人は獣化しちゃう年齢の時には グルーミングを行うみたい。
5歳を超えて 人化が安定してくると 然程しなくなるようだけど、それでもボディタッチは人族より多いみたい。
お父さんのこれはグルーミングなのだろうか、丁寧にブラッシングされると安心して 眠くなる。さっき起きたところだから今は大丈夫だけど、食後とかだとすぐに寝ちゃうくらいなんだよね。

「今日はもう 出かけるには遅いからな、明日街に買い物をしに行くか。色変えの髪飾りも別の種類があった方が楽しめるし、ヴィオが昔つけていたような耳飾りのタイプも探してみようか」

「うん!魔道具屋さん行ってみたい。耳飾りあれば眼鏡しなくていいもんね。
ドゥーア先生にも到着した連絡した方がいいのかな」

「ああ、それならギルドで手紙を出してきたから大丈夫じゃ。フルシェの町からも連絡を入れておるから そろそろ到着することは分かっておると思うぞ」

知らぬ間にギルドにも行っていたらしい。
審査すら知らぬ間に通過していたようだし、今回もお父さん抱っこのお陰で私の審査は無しだったみたいです。冒険者以外の人も多くいるから 私が寝てたのは丁度良かったみたい。
まあ 前にギルドカードを出してビックリされる事件があったもんね。


宿は〖鹿恍亭《ろっこうてい》〗という名前で 魔導学園にも近いらしい。
お部屋はモダンな作りで 今まで泊まった宿の中で一番高級な気がする。
基本的に私という 悪者ホイホイがいるから 安い宿には泊まってないはずだけど、それよりもなんだろう お洒落な内装に気を使えるレベルのお宿なのだ。
ノハシムでのアホ程の稼ぎがあるから大丈夫だろうけど『冒険者風情があの宿で宿泊を?』とか言われないか心配である。

「お父さん、このお宿 凄く高級な感じがするんだけど 冒険者が泊まっても大丈夫なところ? 私 もっと違うところでもいいよ?」

「ぶはっ、キョロキョロしておったと思えば そんな事を考えておったんか。
気にせんでええ。この宿をとったんは儂じゃなくて サブマスじゃしな。冒険者云々でいうなら この宿はギルド会議期間中のギルド関係者が 宿泊することでも有名な宿じゃから問題ないぞ。
貴族が泊まるような高級宿は もっと王城に近い場所にあるしな、ドゥーア先生ともこの宿で待ち合わせをしとるから気にせんでええ」

なんと、予約したのはサブマスですとな。
それはメリテントでの事件があったから心配してくれたんだろうな、サブマス心配性だから。
そんな事を話しているうちに ノックの音が響く。
お父さんが扉を開ければ クラシカルなメイド服を着た女性が ワゴンを押して入ってきた。
何用かと思えば まさかの 個室での夕食でした。

「この宿も酒を飲む客が多いからな、ヴィオが起きる時間ももう少し遅いと思ったから 部屋で食べれるようにお願いしといたんじゃ」

どちらにせよ 私の事を考えて注文をしてくれてたことに感謝です。
夕食はポタージュスープに お野菜たっぷりサラダ、ヒュージボアのステーキにマッシュポテトを添えて、パン、デザートにネクタリンというメニュー。
私のステーキは 一口サイズにカットしてくれているという親切さ。
お父さんのステーキが4枚な事と、パンが籠に山盛りであること以外は フレンチレストランのメニューと遜色ない感じで 
お味も非常に美味しかったです。
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