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魔導学園へ
第266話 お屋敷でのお勉強 その4
しおりを挟むドゥーア先生が戻ってきたのは 3日後の土の日だった。
午後の勉強をしている時に 屋敷内が少し慌ただしくなったので ブン先生に確認したら、ドゥーア先生から連絡が来たのだろうという。
「旦那様から風魔法の伝達魔法がオットマールに届いたのでしょう。
今回はどれだけ時間がかかるか分かりませんでしたから お帰りになる際 連絡を頂けるようにお願いしてましたからね」
ブン先生は風魔法がそんなに得意ではないから 伝達魔法を受け取るのはオットマールさんなんだって。
というか そんな便利な魔法があったんだね。
「エルフの風を使った伝達魔法は有名じゃな。海人族では水中での伝達魔法が得意じゃというし、種族特性なんかもしれんな」
そうなの?
あ、でも【索敵】の練習を始めた時に そんな感じの話を聞いた気がするね。エルフは風で、海人は水の索敵が出来るって、同じことかな。
「まあ伝達魔法に関しては 風属性が得意な人であれば 比較的使われる方が多いと聞きますよ。
魔力操作が得意で 魔力が多い方ですと 町2つから3つほど離れていても伝達出来るとか」
距離制限はあるけど 電話が出来るって感じ?いや、トランシーバーに近いのかな。
「ブン先生、だったら フルシェのダンジョンを出た時に お屋敷に連絡してもらえば良かったね。
私もその魔法を覚えれたら 連絡できたのに、ドゥーア先生が戻ったら教えてもらえるかな」
あの時は町に戻ってから ブン先生がダッシュでギルドまで行ってたもんね。
そう言ったら ブン先生も気付いていなかったらしく ポカンとしております。
「確かに……、普段 学園と屋敷の連絡でしか使っていませんでしたから、多分 旦那様もお忘れだったと思います」
なんと!
そんな便利魔法を 帰りますコールでしか使っていなかったなんてもったいなさ過ぎる。
後でその話を聞いたオットマールさんも忘れていたらしく「私とした事が……」ってなってました。
そっか、先生とのやり取りができるって事は オットマールさんからも送ることが出来たわけだね。送る時にはそれなりの魔力が必要だから、ドゥーア先生から送る方が距離は長いみたいだけど、隣町のフルシェくらいなら 問題なかったはずだとのこと。ドンマイ!
「いやぁ 大発見だったね!もうね、教師陣が大興奮!
魔道具と呪文の先生まで集まってきちゃってね、武術専門コースの先生たちにお願いして 皆であのダンジョンに行くことにしたんだよ」
夕食後、未だ興奮冷めやらぬ先生が 学園での様子を教えてくれた。
最初はご自分と同じ古代文字研究と魔法陣学の先生たちに ダンジョンでの話を聞かせて 写本を見せただけだったそう。
新しい資料に大興奮したものの、直ぐに文字と記号の解析に没頭し始めた同僚達を残して 他の先生たちに資料を見せるべく 研究棟を移動したみたい。
ダンジョン研究学、神代学、魔法歴史学、3か所に見せてあげたいと言ってたけど、1か所目の魔法歴史学と神代学の棟で盛り上がり過ぎ、助手の人がダンジョン研究学の人を呼びに行ってあげたらしい。
その後はドゥーア先生に質問をしたい同僚が押し掛け、人が集まっていると知った他の先生たちが「どうしたどうした」と集まって 新しい資料に大興奮!
という中々カオスな状態になっていたらしい。
「旦那様、ダンジョンへ行かれるとは いつからのご予定ですか? まさか お客様を放置して先生方だけで参られると?」
「え、や、あ……。あぁ!」
「まさか アルク殿とヴィオお嬢様を前回のように護衛にすれば、などとはお考えでないですよね?
他の教師陣から 必要以上に興味を持たれないようにと、学園の見学もあの短時間になさった旦那様です、ま・さ・か 興奮しすぎて普段より冷静さを欠いているであろう教師陣が集まる中へ お連れするなんてことはお考えではないですよね?」
「あ、え、う……」
「では 旦那様はしばらくの期間 ダンジョンの為にご不在という事でございますね。
アルク殿、ヴィオお嬢様、こちらからお越し頂くようにお願いいたしましたのに 我が主人が申し訳ございません。
ですが スティーブンは教師役としておりますゆえ、どうぞ魔道具のお勉強はお続けください。エミリンも魔道具に関しては 助言が出来ると思いますので、明日の授業からは エミリンも同席させていただきましょう」
「あ、オットマール……」
「まぁ!お嬢様とご一緒にお勉強ができるなんて楽しみですわ。
わたくしは お守りのような魔道具を作るのが好きなのですわ。このネックレスもそうなのです。
お嬢様も装飾系の魔道具から練習すれば お洒落にも使えますし 頑張りましょうね」
「あ、エミリン……」
「ささ、お夕食もお済でしたからね、今夜の回復希望者は8名ですわ。2名は軽症者ですので 使用人たちが練習を致します。
お嬢様、本日もよろしくお願いいたしますね。ささ、参りましょう」
先生が「ダンジョンに行く」と宣言したところで 極寒ブリザードが吹き荒れたのかと思うほど オットマールさんの絶対零度の視線と ヒンヤリした声が先生に突き刺さった。
ウキワク大興奮でお喋りしていた先生も、これはまずいと思ったらしいけど 時すでに遅し。
そこからは全く先生が弁明することもできず、オットマールさんとエミリンさんの会話だけが交わされる。どんどん小さくなっていくドゥーア先生だけど、この家の主人ですよね?
流れるように エミリンさんから手を取られ 食堂を後にすることになったけど、シュンとした先生がちょぴり可哀想。
というか もう一回ダンジョンに行くのは良いと思うけど、ブン先生は同行できないって事なのかな?
それが私の勉強の為だとしたら 申し訳ない気がするね。
ただ、オットマールさんが言ってたように 他の大人たちとの接触が増えれば 私のボロも出やすくなっちゃうからね。同行は遠慮しておきます。
翌朝、朝食時間に顔を合わせた先生から 改めて謝罪をされた。昨日 相当怒られたみたいです。
「ヴィオ嬢の勉強を見ると言っておきながら不誠実な事をしてしまって申し訳なかった。
ダンジョンへは 明日行ってくるが 私は夕方には戻ってくる。他の教師陣を送り届けて 実物の壁画を見せて 説明まではする必要があるからね。魔法陣で使用されいている文字の再確認もしなければいけないからね。
ああ、戻らないかもしれないという心配はないよ、御者はオットマールだからね……」
ああ、熱中していたとしても強制送還されるという事ですね。
現場を見たいという教師たちと その助手、護衛役の武術コースの教師陣、総勢15名もの大所帯で移動するらしい。
人数が多いので学園所有の大型馬車で行くらしいけど、ドゥーア先生が風魔法を使ってドーピングするから こないだと変わらない時間で到着するだろうとの事。
戻ってくるときはゆっくりでも良いだろうという事で 助手先生の誰かが御者をするみたい。
ドゥーア先生とオットマールさんは 先に戻ってくるというけど 馬車はどうするんだろうか。
「少し遅めの昼食を乗せた馬車を屋敷から出しますからね、それに乗って戻ってくる予定です」
オットマールさんに抜かりは無いようです。
きっと昼食を差し入れした時に ドゥーア先生を引き上げてくるつもりなのだろう。
まあ、先生も あの壁画に書いてある文字は全部写してきている訳だし、石像のように 写せないものを鑑賞したいという訳でもなさそうだから 前回よりは興奮もましだろう。
他の先生たちがダンジョン内でどういう行動をするのだろうと 怖いもの見たさのような興味もあるけど、確実に引率役の武術コースの先生は苦労するんだろうなと思う。
保育園児の引率よりも大変そうです……(合掌)
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
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