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ウミユ遺跡ダンジョン 前半
第343話 ウミユ その10~他者視点~
~~~虎獣人 クルト視点~~~
「くそっ! なんで、ヴィオが、そんな目に、合わなきゃなんねえんだよ!」
ザンッ! ズシャッ!
見える魔獣を全て殲滅するかのように 大剣を軽々振るう目の前の男と、ただ静かに だが怒りをその目に宿して 次々に瞬殺していく女。
「なあ、あんたらは 襲撃犯の目安ついてんのか?」
クルトは〔土竜の盾〕のリーダー夫妻にそう尋ねる。
いつもハチャメチャなことをするから 驚かされるのにも随分慣れた。
便利な魔法、美味しい料理、快適なダンジョン生活、それだけじゃないが それだけでも十分ヴィオを護りたいと思う理由になるだろう。
共和国を回って 久しぶりに帰った地元の村で、まさか幼馴染に妹が出来たとは青天の霹靂だった。
その後 なんでそうなったのかを聞いた時も驚いたが、あれは村の連中に聞かせるために かなりぼかした言いかただったんだと、今日初めて知った。
アルクさんの反応から見ても あそこまでの事だとは知らなかったんだろう。
あそこまで詳細に覚えているのも ヴィオの賢すぎる頭脳がなせることなのか、出来れば覚えていたくないだろうことを 鮮明に覚えているというのはどんな気持ちなんだろうか。
両親が健在で 姪っ子もいて、幼馴染と冒険が出来ている自分はどれだけ恵まれているのかと思った。
「ピンク髪の子連れの冒険者を探してほしい。
それが最初にメネクセスの冒険者ギルドに出された依頼だったらしい」
「はぁ?」
「それは ヴィオの母さんを国から追い出した宰相が 定期的に連絡が出来るようにしたいって思って出した依頼だったんだってさ。
元冒険者のフィルに相談しとけば良いものを、フィルに内緒で国外に出ろって言ったもんだから よく分からんまま依頼したんだと思う。
依頼を受けた冒険者たちはアイリスが死んだあと、所在確認をした証明って事でひと房の髪だけ切り取って持ち帰ったらしいからな。
俺たちはそれで ヴィオを探してほしいってフィルから依頼されたんだ」
っつーことは、ヴィオの母ちゃんが髪色隠しながら ギルドのタグを使わず逃げたのは そいつのせいじゃねえか。
くそったれが!
穴から飛び出してきたグラススネークを【エアショット】で撃ち抜く。
ああ、折角の肉が穴に落ちちまった。
次の休憩までに 気持ち落ち着けねえとな。くそっ!
~~~黒豹獣人 オトマン視点~~~
「これってさぁ、待つ必要あるのかなぁ……」
薄っすら笑みを貼り付けたまま 詠唱もせずに 少し先に見えるウルフもコボルトもゴブリンも消えていく。
水魔法だと思うけど、何かが顔に張り付いたと思えば ギュルンと巻き付いたそれが頭を引きちぎるという ちょっと恐怖すら感じる魔法。
確か午前中には 長剣を使っていたと思うんだけど、魔法使いの立ち位置でいたっておかしくないレベルの魔法をバンバン使っている。
そして同じく 午前中には槍を使って殲滅していた弟の方も 詠唱もなしに遠くの魔獣を倒している。
ネリアに聞けば 風魔法だと思うけど あそこまで早いとよく分からないとの事。
「トンガ君 それってどういうこと?」
斥候役の俺だけど、全くやることがないまま進んでいる。後ろの奴らはこの速さについて来れていないが 5カ所目で止まると思っているのか 昨日のように焦って追いかけてきている訳ではないようだ。
ネリアは 攻撃を諦めて 先ほどから奴らの行動と声を確認し続けているので、俺は無防備になっているネリアの護衛役になっている。
「え? だからさぁ、あいつらの何人か 引っ張ってくるか誘き寄せて聞いちゃっても良くない?
どうせ屑じゃん?
多分夜闇に紛れてやりたいから11階まで待ってんのかもしれないけどさ、そこまで待つ必要ある?」
「ダーって撒いて、ついて来れる奴らだけ普通に置いといて、遅れる奴らが 依頼主知ってそうな奴らだろ? そっちを捕まえてみればいいんじゃねえの?って事だろ?」
初めての顔合わせの時に 多少ピリついたのは感じたけど、それ以降は 穏やかだったトンガ君だけど、これが本来の姿なのだろうか。
いや、本来の姿はきっと あの穏やかな感じなんだろうな。
だけど、大切な人を護る時には 剝き出しの爪と牙を首筋に当てられているような気持にさせる、今のこれは俺に対するものじゃないのは分かっているのに、本能が彼らを恐れている。
ネリアも アイリスの最期を知ることになって、しかもそれをヴィオ自身があんなに詳細に覚えていたことがショックだったんだろう。
盗聴をしながらも「さっさと重要な事を話せよ」「お前らの愚痴とかどうでもいいんだよ」「誰から頼まれたのか話し合えよ」などもうちょっと不穏な言葉を混ぜながらブツブツ唱えている。
皆の精神衛生上よくない事を思えば、トンガ君が言うように さっさと捕まえて尋問するのも手かもしれないよね。
今夜の野営中にテリューとアルクさんに相談してみようかな。
~~~~熊獣人 アルク視点~~~~
川から拾った直後に聞いた時、それでも驚いた過去じゃったが 更に驚きの情報が隠されておった。
あの時は それこそ殺されかけた直後じゃったという事なんじゃな。
だとしたら よくあの時点で思い出せたことがあったと褒めてやるべきじゃ。
本人があれだけ厳しい訓練にも耐えてきたのは 母親の死を目の前で感じていたからなんじゃな。
土竜の面々から聞いた話では 回復以外にも相当な魔法の使い手じゃったというが、それでも数に勝てんかったのは 近接に対処しきれんかったからかもしれんな。
そうか、だからこそヴィオは接近戦と 中距離に対応できる戦術が欲しいと言っておったんか。
冒険者に憧れが強いだけかと思っておったが そうじゃなかったんじゃな。
自分が同じ目にあうことがあれば その時に 魔法だけでは困るから じゃからあれだけ……。
何でそんな目に合うんじゃ。
ヴィオが、ヴィオの母親が何をしたと言うんじゃ。
じゃがヴィオの考察はあながち外れてはおらんのかもしれんな。国から辿れんようにしたちゅうんは 例の宰相に言われた 王妃の追手が云々というのが一番の原因な気がする。
王妃からしたら 旦那となった陛下の嫁や娘ちゅう存在は消したいくらい憎いじゃろう。しかも子供は作らん宣言までしたんじゃとしたら 消えれば何とかなると思ってもおかしくないんじゃなかろうか。
そう思えばヴィオの父ちゃんの不用意な発言が原因な気もするが、家族と急に離されたことで言うてしまったんかもしれんと思えば 攻めることも出来んな。
まずはその王妃の周辺を洗い出してもらいたいもんじゃな。
「お父さん、ポアレス見つかんないね。もっと下の階にあるのかな?」
「そうじゃな、大体5階おきに収穫物の種類は増えるから 5階以降にあるかもしれんぞ」
「そっか! あ~~~、もう後ろの奴らは放置してさっさと進んじゃいたいね。
どうせ悪い事をするんだから 周りの目なんか気にしないでかかってくれば良いのにね。面倒な人たちだよ、まったく」
魔獣の討伐は 同行しておる土竜の二人が倒してしまっておるから ヴィオは少々手持ち無沙汰になっているらしい。
あんな過去を話して皆がショックを受けていた事に 暗い話を聞かせて申し訳なかったと言った娘。
思い切りがいいのか、切り替えが早いのか、川で流れてくる前のことは 違う誰かの話をしているかのように 淡々と話すのは やはり死にかけた事が原因ではないかと思う。
しかし 逆に今は そうしてくれていることに安心する。
あの出来事を今もそのまま現実の延長線で受け止めていれば 6歳の心など壊れてしまっていただろうから。
先程の話はもう終わった事と 娘の中では折り合いをつけているのか、黙々と採集をしては 夕飯に使おう、これは朝食だねと楽しそうにしている。
さて、儂が出来るのはこの笑顔を護る事だけじゃ。
その為にはあいつらをどうにかせんといかんな。訳知りのような奴らを先に尋問するか?
これは野営中に相談する内容じゃな。
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