ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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ウミユ遺跡ダンジョン 前半

第344話 ウミユ その11


お昼休憩をうっかり長くとった割に その後の無双のせいで 結局予定時間より大分早めに5つ目のセフティーゾーンに到着した。
まあ 暗い話をした後は スッキリしたくなるよね。
悲しい映画や 感動映画を見た後は 無性に走りたくなって 映画館から駅(最寄りではなく一つ先)まで走った覚えがある。
皆も休憩直後の暗い雰囲気は無くなって 若干高揚感すらあるように見える。

「おう、結構肉が落ちたから これも使ってくれ」

「採集は 最後の方にしたくらいでこれくらいしかないの」

テリューさんとクルトさんから 肉の差し入れ。
アンさんから お野菜と小麦を差し出されたけど 確かに肉の量を考えれば 採集は集合の伝達魔法を受けてからやったんだろうと思う。

「ありがとう、これもしっかり使わせてもらうね」

お兄ちゃんたちは魔法で無双しまくっていたようで 肉を拾い忘れてたと謝られた。珍しいことだけど お兄ちゃんたちも鬱憤が溜まっていたんだろうし しょうがない。
テントの準備はお父さんにお任せし、私はクルトさんと夕食を作り始める。

〔土竜の盾〕は男性三名でテントを準備するようで、女性は野菜を切るなどの作業に手をあげてくれたのでお願いしておく。
多少豪快なところはあるけど、これくらいの大きさでとお願いすれば ちゃんと切ることができる。適当に切ってとかは困るようだけど、見本をいくつか準備しておけば大丈夫だ。皮むきは 分厚く剥きすぎるけど、これはピーラーを使ってもらえば問題ないし、料理が壊滅的に駄目な訳ではないようで安心した。

本当に駄目な人は なにがどうなったらそうなるのか分からないレベルにダークマターを作り出すからね。『適当、適宜、少々』などは困るようだけど こればっかりは作り慣れてもらうしかない。

今夜は豚汁ならぬ ボア汁と 肉じゃが、ミドリハナヤサイブロッコリーの胡麻和えが副菜で、ホーンラビットと フライングラビットの食べ比べをするらしいので 肉料理はそれらが数種類というところ。

「私 コレが食べれるものだって知らなかったわ」

ブロッコリーを見ながら ネリアさんが驚いている。
確かにぱっと見 どこをどうやって食べるのか分からないよね、小さな木にも見えるし。
けど 揚げても、焼いても、蒸しても、茹でるだけでも美味しく食べられるのが ブロッコリーの良いところなんですよ。

「これは茹でる前に ある程度の大きさに切っておくと良いよ。これくらいの大きさにしておけば色んな料理にも使いやすいの」

房を切り落としていけば モリッとして見えた上の部分が コロンコロンと落ちてきて、その一つずつが 枝分かれしているのが分かったらしく「おぉ~」とか歓声が上がる。
ダンジョン産以外は知らないけど、ダンジョン産のブロッコリーは 芯も柔らかく そんなに皮を厚く剥く必要はなかったので、薄く剥いて短冊切りにしておく。

「ヴィオ、この野菜は凄い量だけど 全部スープにするの?」

野菜を切り終えて 山盛りになっているそれらにちょっと準備をした本人が驚いている。
豚汁、肉じゃが、カレーに入れる野菜って同じような感じだよね。
マルネギ玉ねぎジンセン人参パテトお芋
絹さやを入れたり、豚汁だったら 芋のかわりに大根やごぼうを入れることもあるけど、今回は料理が苦手な皆が覚えやすいように 基本の3野菜で作ってみることにした。
この3つは今のところ 全ての豊作ダンジョンの低層階で採集できているからね。

「今回はスープにするのと おかずにするの、2種類のお料理に使うから 多めに切ってもらったの。
どちらの料理も野菜の種類を変えてくれていいけど、この3つの野菜は結構採れやすいみたいだから まずは基本の形として覚えてね」

「「「わかったわ」」」

男性陣はテントの準備が出来たところで クルトさんのお手伝いというか 見学に行ったみたい。
まあ 覚えるなら野菜多めの副菜より 肉の方が良いんだろうね。
女性陣には 野菜を食べるとお肌や 髪艶が良くなると言ったからか 肉の方に移動することはない。
うんうん、うちも肉系はクルトさんや お父さんが準備してくれることが多いから良いと思う。

今日はこのおかずだから 残り数が少ないポアレスを炊いている。
このダンジョンで見つかるかはまだ分からないけど ダンジョンを出たら 取り寄せしてくれているのは確実だし、ここで土竜の皆が米を好きになれば メネクセス王国でも流行らせてくれるかもしれないしね。

グツグツ  コトコト  ジャッジャ 

お料理の音って それだけでも聞いてると楽しくなるし お腹が空いてくるよね。
醤油や味噌の匂いって 余計に空腹を刺激してくるから さっきからアチコチで腹の虫が鳴き続けています。

「よ~し、ポアレスも炊けたぞ」

「肉もこれだけあれば十分だろ」

「こっちも準備万端だよ。スープ用のカップ持ってきてね」

「あっ!ヴィオ スープをよそうのは私がするわよ」

今日は火台を沢山作ったから どこの炊き出しですか?状態だけど、3つの合同パーティーです。
その割に量が多すぎるんだけど、これを皆ペロリと完食するんだからびっくりだよね。

『あいつらなんだよ、今日も飯作ってたぞ、ダンジョンで飯を作るとかおかしいんじゃねえの?』
『ランクが高いとそうなのか?』
『馬鹿言え、俺たちも銀の上級だが そんな無駄な荷物を持ってくることはない。マジックバックも容量は限られているんだ』
『あいつら ダンジョンを何だと思ってんだ クソっ』

調理中も 盗聴の魔法を使っておいたので あちらの話し声は聞こえてるんだけど、2日目の今日も彼らは干し肉を齧っているのか 昨日よりも不機嫌さが上がってきております。
マジックバックの容量に関してはそうなんだけど、全員が持っているし 食料は採集しても 1/3くらいは消費してるしね。味気ないものだけで楽しくないよりは、ちょっと荷物は増えても 毎回幸せな気持ちになる方が良い。

テーブルの上には 肉・肉・肉・肉 まあ食べ比べが目的だし 色んな食べ方をしたいんだろうけど、多くない?
ホーンラビットは食べ慣れているから フライングラビットの方だけ食べてみようと思うけど、種類も4種類もあるから どれにするか迷う。

「ヴィオ、僕と分けっこしようか。そしたら 少しずつ4種類全部食べれるよ?」

トンガお兄ちゃんったら なんて素敵な提案をしてくれるの?
ありがたくその提案に乗ることにして 4種類を 2切れずつ頂いた。

「今日は ポアレスっちゅうこの白いのをパンのかわりに食べてくれ。もし食べ慣れんようじゃったら 次回からはパンにすればええ。
ただ、今日の料理じゃったら こっちが合うからな。では頂こうか」

「「「「いただきます!」」」」

初めて見る炊き立てご飯に驚いている土竜の人たちだけど、既に私たちが作るもの=美味しいもの という刷り込みがされているので 何の疑いもなく頷いた。
食べ方が分からないだろうから お手本として 私が食べてみる。
本当はお箸が欲しいけど フォークを使っておりますよ。

照り焼きラビットをひと切れパクリ。
その後にお米をパクリ。
うんうん、本当は米の上に肉を乗せて一緒に食べたいけど、いかんせん私の口はまだ小さく ポロポロ溢す事が分かっているのでやりません。
お兄ちゃんたちはもう慣れているから 米に肉を乗せて 豪快な一口で食べてます。

ゴクリ……。

凝視していた面々も 恐る恐るお肉と一緒にお米をパクリ。

「「「……んっま!」」」

カっと目を見開いたかと思えば ガツガツと肉と米を掻っ込む男性陣。
女性陣は 流石にそれは……と思ったらしく 肉、素早く米、肉、素早く米 をやってます。

「ふぅ~、たまに飲むボア汁はやっぱり美味しいね。今日はお醤油系の味付けが多かったから 余計に合うかも」

「そうじゃな、このハズレ系の調味料を使う時には このスープがよく合う」

ボア汁を飲んでほっこりしていたら 汁を忘れて肉に夢中になっていた6人が ハッとして汁と肉じゃがを食べる。

「んんんん! お野菜が凄く柔らかくなってて 味が染み込んでて すっごく美味しい」

「お汁と 煮物、同じ材料しか使ってないのに 味付けが違うだけでこんなに味が違うの?凄い!もう別物だよ? しかもコレ、すっごくこのポアレスに合う!」

「私 この二つ覚える。これは凄い」

ふっふっふ、これで醤油と味噌、米の虜になったヒトが増えたね。イイヨ、良いよ。その調子で大好きになってレシピを覚えて広めてくれたらいい。
私がメネクセス王国に行く頃には あっちでも この料理が当り前に食べれるようになってたら 最高です。
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