ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
397 / 619
ウミユ遺跡ダンジョン 後半

第354話 ウミユ その21


「ん~~~!よく寝たぁ」

「おはよう、よく眠れたようで良かった。食事にするか?」

久しぶりのお昼寝は ダンジョンという場所にもかかわらず 非常によく眠れました。
これもお父さんたちが側にいてくれるという安心感があるからでしょう。
今日は野営もここでするから テーブルや火台もセット済み。テントも3つ並んでいる。
お腹は空いていると言えば空いているけど、今しっかり食べると確実に夕飯が食べられないだろう。

「量が心配じゃったらパンケーキにするか? ココッコの卵に カウカウのミルクもあるから作れるぞ」

ウ~ンと悩んでいたら お父さんから素敵な提案が。
お父さんのパンケーキは 粉をミルクで溶くんだよね。フワフワで美味しくて 家に帰ってから食べるのが楽しみなデザートパンケーキ。
大喜びしてたら嬉しそうに準備をしてくれる。

「うわぁ、良い匂い~」

『駄目よシエナ、このダンジョンに来てから明らかに食べ過ぎだもの。美味しそうだけど さっきだってお昼にあんなにしっかり食べたもの、我慢よシエナ』

1枚だけなので フライパンを使って焼いてくれているけど ふんわり優しい良い匂いがしてくる。バターとミルク、お砂糖はそんなに入れてないけど ふんわり甘い香り。
トンガお兄ちゃんは お父さんの周りをクルクルしはじめて 邪魔だと怒られているし、シエナさんは テーブルから離れてセフティーゾーンギリギリのところで外を向いて何やらブツブツ唱えいる。

「父さん 俺も食いたい」

「え、ルンガずるい!父さんそれなら僕も食べたい!」

「お前らはさっき昼飯を食っておるじゃろうが。食いたいならクルトに作ってもらえ。クルト、そのタネは使ってしもうてええぞ」

クルトさんはお父さんの隣でレシピをメモしてたからね。
ワクワクさんのお兄ちゃんたち二人をあしらいながら パンケーキを焼いている。なんだかんだ面倒見が良いんだよね。

「ほれ、1枚だけにした分 フルーツをたっぷりにしておいたぞ」

お父さんが持ってきてくれたお皿には フワフワのパンケーキに溶けたバター、パンケーキを囲むように 賽の目切りにされた色とりどりのフルーツ。
この短時間に作ったとは思えないクオリティー、凄く美味しそうだ。

「わぁ、フルーツも沢山ある! お父さんありがとう、いただきます」

ナイフで切って一口大にしたパンケーキだけをまずは一口。
ふわっとした柔らかさ、口の中に広がる ミルクとバターの香り、幸せの味がブワッと広がってくる。
次はフルーツを乗せて一緒にパクリ。
フルーツの甘さがミックスされて これまた美味しい。
酸味のあるフルーツ、甘みが強いフルーツ、色んな種類を混ぜてくれてるから 飽きることなく1枚をペロリと完食してしまった。

「美味しかったぁ~、お家に帰るまでは食べれないと思ってたのに 幸せ。
お父さん美味しかったです、ごちそうさまでした」

「うん、喜んでもらえて良かった」

お父さんもニコニコ、私もニコニコ、お兄ちゃんたちもニコニコ、シエナさんだけは ウグウグしているけど 食べないのかな?

「乙女の究極の選択だそうだから まあ放置しておいてやってくれ。
アルクさん、もしまたパンケーキを作ることがあれば 俺も教えてもらっていいですか?」

乙女の選択なら仕方ないよね。
まああれだけ動いている人たちなんだから そんなに気にしないでも消費できると思うんだけど、そういう問題ではないんだろう。
でもレスさんが作れるようになれば、いつでもお家で食べれるようになるし良いね。

お腹がいっぱいになったところで 森の雰囲気が少し変わった事に気付く。
到着したばかりの時は サンサンと降り注ぐ太陽って感じだったのに 今は少日が傾いている感じ?真昼って感じの明るさではない。

「そういえば今何時くらいなんだろう。このお空の色は 外と同じなのかな」

「ダンジョン内の昼夜が外と同じかは分からんが、大体今の時間は15時頃じゃな。
ヴィオが昼寝をしてから2時間っちゅうところじゃろ。
年末じゃし 大分日が落ちる時間が早くなっておることを考えたら 後2時間もすれば日が落ちる筈じゃ」

季節によって日照時間が違うのは日本と似ているけど、まさかダンジョンも季節によって違うのか。
いや、昼夜がないダンジョンも多いし、偶々かもしれないね。
それよりも2時間も寝てたのか。そりゃスッキリしている筈だ。
流石に2時間も経過していれば 襲撃者たちも11階に到着しているだろうと思い マップを確認してみる。

「ん?いない……?」

階段付近から 二つ目のセフティーゾーンまでを満遍なく見ても 気配隠蔽をしているような薄っすらした印すら見つからない。

「お父さん、破落戸ってもう来た?」

「いや、まだ来ておらんし 多分まだ下りてきておらん」

私が寝ている間に終わらせたという事ではなかったようで安心したけど、まだボス戦中って事?
このセフティーゾーンに来るまでの移動時間を含めたら それなりに良い時間だけど、奴らは9階でそんなにゆっくりしていたのだろうか。
まあ、夜闇に乗じてって事なら 急ぐ必要もないし あえてゆっくりしているのかもね。

「とりあえ明日の朝までは様子見かな。あの人数だから 僕たちと同じだけのボスと対戦している可能性を考えれば もしかしたら来ないかもしれないけどね」

トンガお兄ちゃんの言葉に そういえば私も同じことを寝る前に考えていた事を思い出した。
どう考えても 5人組くらいしかナイトに立ち向かえそうになかったよね。
いや、弱く見えても魔法使いが良い感じに盾を使って隔離している可能性もあるか? あの集団に魔法使いがいたかどうかは不明だけど。

とりあえず まだ来ていないのだから このまま待っているだけでも仕方がない。
お父さんは 待ち時間の間にお願いしていた大皿や深いスープ皿などを作ってくれていたらしく、それらは既にレスさんに販売 引き渡し済みとの事。
だったら 小麦の製粉を、と思ったのに これもお兄ちゃん二人によって 既にされていた。

仕方がないので 製粉された粉でパン作り。
これはレスさんとシエナさんも一緒になってやってくれたから 大量に出来た。
数日分の料理の下拵えもしておく。野菜の皮むき、切りかたや大きさを変えて種類ごとに木のボウルに入れておく。
こうしておけば料理の時に使いやすい。時間停止のマジックバックがあるからこそできることだね。

大量の油袋もゲットしたので から揚げ、ボアカツ、ラビカツなど 揚げものも作っていく。
お皿が足りなくなりそうだったけど、ルンガお兄ちゃんとトンガお兄ちゃんの二人で 大きなボウルというか トレイに近いものを作ってくれたので、私とお父さん、クルトさんの三人は どんどん作っていくだけだ。

揚げ物はお父さんとクルトさん、それ以外を私が作ってる現在。
災害時の炊き出しですか?のレベルで作っているけど、何日分になるのだろうか。しばらく作らないで良いかもしれないね。

休憩を挟みながらも 肉の殆どを消費したところで 調理は終了。
熱々の状態でマジックバックに入れているから いつでも出来立ての熱々で食べられる。

パンケーキを食べてから4時間。
すっかり日は落ち、野営地も火台の火が煌々と輝いているだけで 辺りは真っ暗だ。
ホウホウと 鳥の鳴き声も聞こえるし、夜の森って感じで ちょっとウキウキしてしまう。

夕食の時間は過ぎているけど、皆 調理をしながらつまみ食いをしていたので空腹の人はいないと思う。
一応夜食としてピタパンサンドは作って 各自2つずつ渡しているけど いつ食べるかな?

そんな時間であるにもかかわらず まだ彼らの魔力は11階に到着していない。
もしかしたらボス戦で疲弊しすぎて1階に戻っているのかもしれないけど、依頼主がそれで納得するのかは微妙なところだよね。

お昼寝をしたのに 22時頃には段々眠くなってくる子供の身体。
お兄ちゃんたちも 交代で仮眠をとっているんだけど、お父さんが仮眠中の今 私はトンガお兄ちゃんの胡坐の間に座ってます。
前もこの状態で寝たことがあるから 一人で座ってた方が良いんだけど、さっき小さなお父さん達3人にコサックダンスを躍らせていたら ウトウトしてて 後ろに倒れそうになったんだよね。
魔力切れじゃなくて ただ眠いだけなのが分かるのは お父さん達がブレてないから。
魔力切れになってくると 形が保てなくなるからね。

お父さんが仮眠から出てきた時には とりあえず来たら起こすからと言われ 渋々テントに戻り眠ることになってしまった。
徹夜が出来ない身体が悔しいね。
でも 来たら絶対に起こしてね!
感想 120

あなたにおすすめの小説

継子いじめで糾弾されたけれど、義娘本人は離婚したら私についてくると言っています〜出戻り夫人の商売繁盛記〜

野生のイエネコ
恋愛
後妻として男爵家に嫁いだヴィオラは、継子いじめで糾弾され離婚を申し立てられた。 しかし当の義娘であるシャーロットは、親としてどうしようもない父よりも必要な教育を与えたヴィオラの味方。 義娘を連れて実家の商会に出戻ったヴィオラは、貴族での生活を通じて身につけた知恵で新しい服の開発をし、美形の義娘と息子は服飾モデルとして王都に流行の大旋風を引き起こす。 度々襲来してくる元夫の、借金の申込みやヨリを戻そうなどの言葉を躱しながら、事業に成功していくヴィオラ。 そんな中、伯爵家嫡男が、継子いじめの疑惑でヴィオラに近づいてきて? ※小説家になろうで「離婚したので幸せになります!〜出戻り夫人の商売繁盛記〜」として掲載しています。

君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。 求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。 そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。 しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。 ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが…… ◆なろうにも掲載しています

【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

ガリ勉令嬢ですが、嘘告されたので誓約書にサインをお願いします!

荒瀬ヤヒロ
恋愛
成績優秀な男爵令嬢のハリィメルは、ある日、同じクラスの公爵令息とその友人達の会話を聞いてしまう。 どうやら彼らはハリィメルに嘘告をするつもりらしい。 「俺とつきあってくれ!」 嘘告されたハリィメルが口にした返事は―― 「では、こちらにサインをお願いします」 果たして嘘告の顛末は?

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

【短編】「中身はいいけど顔がなぁ」と笑った侯爵令息。美人の姉目当てに地味ブスな私を利用したこと、謝られても手遅れです

恋せよ恋
恋愛
「……結局、男の人は、顔しか見ていないのね」 絶世の美女である姉エリザベスを狙う男たちから 「地味ブス」と蔑まれてきた伯爵家の養子アイリス。 そんな彼女に、幼馴染のアレンからの頼み事が。 友人レオナルドの「女嫌い」克服のため 彼と文通を重ね、アイリスは生まれて初めての恋を知る。 しかし、文通で育んだ絆は、すべて彼の「暇つぶし」と 「美貌の姉への足がかり」に過ぎなかった。 「アイリス? 中身はいいけど、顔がなぁ」 「俺、面食いなんだよ。あの子、おしゃれする気ないのかな」 冷めた令嬢と、後悔に悶える貴公子の、すれ違いロマンス! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!