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ウミユ遺跡ダンジョン 後半
第365話 ウミユ その32
あ゛~~~~、やっちまった。
昨日はあのまま眠ってしまったようで 朝起きたら目が重くて開かない。
泣きながら寝たから 目が腫れてるんだろう。
こんな状態で出たら また笑われそうだな……やだな。
回復魔法は自分にかけ辛いと言ってたけど、それは痛みを我慢しながら集中するのが難しいからだと思うんだよね。
だけど目の腫れは回復魔法じゃなくてもいける気がする。冷やして温めれば良かったはず。
「【ウォーター】」
仰向けのまま冷たい水玉を目の上に乗せる。今お父さんが入ってきたら スライムに食われていると思うかもしれないね。
2~3分冷やしたら 今度は温かい水玉を目の上に乗せる。
じんわりと温かさが染み渡り 顔の力が抜けていく。
これ ホットアイマスクみたいで良いね。まあ 地球にいた時みたいにブルーライトを浴びる生活をしてないからか 疲れ目とは無縁ですけどね。
でも ドゥーア先生とか サブマスとかは書類仕事の後に眉間を揉んでるから 疲れ目あると思うんだ。教えてあげたら喜んでくれるかな?
水玉を解除すれば 重たい感じは無くなっており 目も開けやすくなった。
手鏡で確認すれば 腫れは無く いつも通りの私がいる。
あ~~~、昨日は格好悪い事しちゃったよね。
顔合わせるの 恥ずかしいな……。
けど いつまでもテントにいる訳にも行かないし……。
時間的にはまだ早い時間だろう。昨日はかなり早くテントに入ったし あのまま寝てしまったから 早起きでもスッキリしている。
この時間なら お兄ちゃんたちはまだ寝てるだろう。
迎えるほうが気は楽だから良いかも、と思って外に出たら 何故か全員がテーブルについていた。
「えっ!? 私そんなに寝坊した???
ごめんなさい! お待たせしました。おはようございます」
慌ててテーブルに駆け寄って 謝罪をしてから おはようのご挨拶。
「ヴィオ おはよう。大丈夫 まだ5時過ぎくらいじゃと思うぞ。朝食には早いがスープだけ飲むか?」
よく見ればお通夜状態の皆、寝てないの???
そういえば 昨日は聖水のお試しをするって言ってたよね?それを何時までやってたんだろうか。
もう夜から朝に変わっているから アンテッドの気配は感じられない。
お父さんがコーンスープをカップに入れてくれたので ゆっくり飲めば 温かさと甘さがゆっくり染み渡ってくれる。ほぅ、幸せ。
「ヴィオ……、昨日はごめんね」
トンガお兄ちゃん、熊さんの耳ってそんなに変わらないと思ったんですけど ヘニャンと倒れるんですね。
泣きそうな顔のまま謝ってくる。
ルンガお兄ちゃんは目が真っ赤だ。
「ううん、私こそ 拗ねちゃって、子供みたいな態度しちゃってごめんね。
私だったらまだしも 大人のお兄ちゃんたちが あんなの持って歩くとか恥ずかしいし 実用的じゃなかったなって反省したの。
嫌な態度してごめんね、それからおはよう」
「うわ~ん、僕こそごめんね。おはよう、ありがとう」
号泣しながら抱きしめられてますけど どういう状況? とりあえずトンガお兄ちゃんのお耳が立つように ヨシヨシしながら耳を起こしてみる。
ありがとうと言いながら 落ち着いてきたらしいのは 耳が起きてきた事で分かる。なかなか便利である。
ルンガお兄ちゃんは 何か迷っている感じだったから トンガお兄ちゃんのお膝を乗り越えて ルンガお兄ちゃんの胸に飛び込む。
怖々と、でも優しく抱きしめてくれたルンガお兄ちゃんも ごめんを言ってくれたので お耳をヨシヨシしてあげましょう。
「子供みたいな態度って、ヴィオはまだ6歳の子供なんだから アレが普通なんだよな。
なんかついつい忘れがちだけど、大人でも子供でも 考え付いたことを笑うのは良くなかったよな。
悪かった、あと ヴィオから無視されんのは 結構きついな。
一晩で許してくれたのはすげえと思うぞ。ありがとな」
クルトさんは 拳を前に突き出して冒険者のポーズ。
私も拳を重ねて 笑顔で頷けば頭を撫でてくれた。
「ヴィオ、昨日はすまなかった」
「「「「ごめん(ね)(なさい)」」」」
テーブルの向こうから 土竜の人たちが揃って頭を下げてくる。
もう怒ってないし 逆に申し訳ないと思ってる。何かこちらこそすみません。
「いや、昨日な あの後 ネリアに聖水を作ってもらったんだ」
どうやら水生成魔法はオトマンさんが行い 純水まで作ったところにネリアさんが聖魔力を注いで聖水を作った。
だけど どれくらいか分からずに上級聖水なんかにしてしまった私の濃さに合わせるのに ネリアさんはかなり魔力を使ったらしい。
まあ その前にピリヒケーチョン見せてくれてたしね。
それで何とか上級聖水と鑑定で出るようになった聖水を持って 順番に夜の森へ繰り出したらしい。
勿論 お父さん作のミニ樽を首から下げて、おたまは数が足りないから柄杓を作ってくれたらしい。益々打ち水感が増すね。
「結果として この階で見かけた スケルトン、スカルラビットとスカルラットには覿面だった。
ついでにブラックウルフも嫌がって逃げたし 宵闇茸は枯れた。
オークには効果が無かったけど 夜にだけ出る相手には効果があった。
メネクセスには 数年前に色んなところで流行病があって廃村になった場所とか、人死が多すぎて瘴気が発生してる場所があるんだ。
この聖水を持ち歩く方法なら 俺たちでもそこに行って助けになることができる。
それを はじめて見たからって 子供が考えたことだなんて笑ったりして 本当にすまなかった」
え~~~と、効果があったのは良かったね。
アンテッド以外にも効果があったのは驚きだけど ブラックウルフは水が苦手という訳でもないから 聖水が嫌だったのかな? 聖魔法の攻撃も効果があるのかな?
それにしても メネクセス王国は歴史で習ったけど 流行病で廃村まで追い込まれたって想像以上の被害だったんだね。
苦しい思いをして死んだなら 思いが残って瘴気になるのかな。
瘴気が溜まれば魔物が出るのでは無く アンテッドが湧く。
魔素が溜まればダンジョンが出来る。
アンテッドと魔物は違うものなのかな? だとしたらこのダンジョンに出てくるアンテッドは?
このダンジョンに瘴気溜があるとは思えないけど、ダンジョン様が 地上でアンテッドに会う時のための練習をさせてくれてるのかな。
謎がまた増えたけど、聖水が効果的なら僥倖だね。
土竜の皆さんにも もう怒っていない事、昨日の態度を謝ってあのことは終了となった。
効果があり過ぎたことで 余計ショックだったらしい。
あんなに笑ったんだから マネしないでって言われるかもしれないって ネリアさんからも懇々と詰められたらしい。
あの時笑わなかったのはネリアさんとお父さんだけだもんね。
2人は これが実用できるようになった時のことを考えてびっくりしてたんだと教えてもらった。
大人たちは アンテッドへの実験を昨晩聖水が無くなるまでやったらしく、その後も 反省会をしていて寝てないらしい。
朝食を食べたら仮眠をして欲しいとお願いして 皆を見送る。
「ヴィオは もっと怒っても良いのよ?
私は貴族の子供だったけど、6歳くらいの時なんて 我儘もいっぱい言ってたし 泣いて 怒って 拗ねてって 結構してたと思うもの。
洗礼式を越えたら 他家とのお茶会なんかが始まったから 段々貴族令嬢として外面を覚えるようになったけど、それでも家の中では 末っ子の特権とばかりに我儘だった気がするわ」
聖水を作って魔力切れになったネリアさんは 昨日の夜にしっかり寝たという事で 私と時間を潰してくれるらしい。
そっか、ネリアさんと オトマンさんは 元貴族なんだよね。
「ネリアさんは お家に帰りたいと思わないの?」
貴族令嬢と冒険者じゃ生活が違い過ぎるだろう。お風呂だって着替えだって全部自分でやる必要があるし、ドゥーア先生のお屋敷での生活が当り前で成長したなら かなりギャップが辛かったのではなかろうか。
「ないわね。私の家は 辺境の子爵領にある男爵家だったし、その四女なんて7歳の時に聖属性に適性があるって分かったからこそ生きてこれたけど、そうじゃなかったら どこかの家の奉公人として追い出されてたと思うわ。実際次女は成人して直ぐ色惚け伯爵の後妻として嫁がされたし、三女は 侯爵家のメイドとして売られたわ。
あの国では生活魔法もないし 聖魔法以外は邪道だって言われるような国だから 貴族のお屋敷はいつだって人が足りないのよ」
……うわぁ。
マジであの国で捨てられて感謝だよ。あの時に生き残っていたとしたら恐ろしすぎる。
生活魔法すら使えないとか不便すぎるよね。
その後は 皆が起きてくるまで聖魔法の練習をしながら時間を過ごした。
聖魔法は消費魔力が多いから 比較的少なくて済む【セイントボール】を多用すると言ってた。
付与魔法はプリヒ……浄化魔法を使うから それも効率悪いし、アンテッドは火魔法が苦手属性な事が多いらしいので、そっちをよく使うらしい。
「だったら昨日の聖水を武器に纏わせるとか駄目なのかな。
ネリアさんって弓攻撃するでしょう? 矢筒の底の部分に聖水溜めて打てば効果でないかな?」
「え? あ!!! あ~も~、そういうところよ。
ヴィオ、それって凄い発見かもしれないわ。昨日のあの状況を聞けば 多分効果があると思う。
今夜やってみましょう。それなら前夜に聖水を準備しておけば 大分楽に攻略できそうだもの。
何なのかしら、6歳の子供らしい柔軟な脳がそうさせるの? 私は常識にとらわれ過ぎてるのかしら」
ウガーとなっているネリアさんだけど、まあ試してみて効果があればいいね。
毎回付与しなくても 霧吹きみたいなので吹き付けてから攻撃してもらってもいいかもだしね。
さあ、そろそろ2時間、皆も起きてくるかな?
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