410 / 619
ウミユ遺跡ダンジョン 後半
第367話 ウミユ その34
最後の夜は アンテッド祭りをせずに 早めに休息をとることにした。
何故なら ラスボスはアンテッド祭りだと噂だから。
入る人が少ないとはいえ、職員はスタンピード予防の為に年に一度くらいはラスボスまで入るらしい。
気まぐれな冒険者が入ってくれるかもしれないと、ボスの情報だけは三カ所とも書いてたのだ。
ただ、道中の敵の情報などは 冒険者が販売できる余地を残すため(だと思う)殆ど記載が無かったけどね。
「明日は 1階層に戻ることになるから全員でボス戦に臨もう。
となれば人数が11人だ。10階層の時と同じように かなり強敵が並ぶことになると思う」
「スケルトンの上位種が既に出てることを考えれば ボーン種がボスって事か?」
「あり得るな」
こういう時の発言は テリューさんが仕切り、トンガお兄ちゃんが質問などをする事が多い。
もちろん誰でも質問も発言もできるけど 代表って感じかな。
「お父さん、飛んでるレイスみたいなのはまた違う?」
死霊系の資料で調べたら アンテッドの中には骨系のスケルトン、ボーンの他に、半透明でフワフワ浮いているレイス系、それから腐った死体代表のグール、包帯男で有名なマミーなどの種類がある。
「レイスとグールは墓場系ならセットでおるが、ここはそういうのとも違うからな。多分ボーンぐらいになるんじゃないか?」
そっか。
確かに 木の陰から腐った死体がこんにちわするのはちょっと考えにくい。
やっぱり彼らは 墓石とかの周辺で土からズボっと出てきてもらいたい。
「まあ、アルクさんの言葉にもあるように 多分出てもボーン種までだろう」
「どちらにせよ、最初に全体攻撃でピュリフィケーションをするわ」
ネリアさんの発言に皆が頷く。
私は結局 プリヒケーチョンが言えないので 【浄化】でやってます。
けど、ネリアさんが言うような 範囲攻撃は私にはできないので お願いしたいところ。
その他の予想を立てつつ、あとは当日 部屋が明るくなる直前にまた考えることとして この日の話し合いは終了した。
◆◇◆◇◆◇
翌日、ボス部屋に入れば 昨日の想定よりもマシだった。
結局ボーン種は居らず、スケルトンの上位種が2体ずつ揃い踏み、それにペットだろうか 骨の馬と空を飛ぶ骨の蝙蝠が10匹ほどいるくらいだった。
「じゃあ 最初はネリアの全体浄化、飛んでる奴はヴィオ 頼めるか?」
「わかった」
「他は自分の対面上のやつら1体ずつな」
「「「応」」」
やることは決まった。
私は空飛ぶ蝙蝠……の骨を聖の玉、いや【セイントボール】で打ち落とすだけのお仕事です。
夕方以降しか現れなかったアンテッド、だけどボス部屋では 他のボスと同じだけ部屋が明るくなる。
太陽っぽい明かりじゃないから大丈夫なのかな?
そして今回はじめて知ったんだけど 蝙蝠は入った時から空中待機。誰かの肩に止まるとかじゃなくホバリングのように同じ場所で浮いて待て状態。骨なのに どうやって浮力を保っているのか超不思議。
ネリアさんは部屋に入った時から呪文を唱え始めている。範囲攻撃の時は 特殊な魔法陣とセットであの長々しい呪文がいるんだってさ。
「……女神の尊きお力によるご高配を賜りたくお願い申し上げます【ピュリフィケーション】」
明るくなり、馬の嘶きが聞こえたところで魔法が発動。
キラキラとした光と同時に 魔法陣がアンテッド全体の足元に浮かび上がる。
おぉ~!なんか豪華‼ 魔法使ってます!って感じで格好良い。
「「すげぇ」」
「ほぉ、これは見事なもんじゃな」
お父さんたちも感心して見つめているくらい。魔法陣がはっきり見えたところで強い光が部屋中を覆う。
GYOAAAAAAA…………‼‼‼‼
超眩しい! まさかの仲間からの目潰し攻撃とは!
いや、唱えたネリアさんも 土竜の皆さんも腕を翳して「眩しっ!」とか言ってるから予想外らしい。
あまりに激しい光のせいで どれかのアンテッドが叫んでたけど確認できず。
光が治まったそこには 宝箱がポツンと置いてありました。
ああ、あと魔石が大量に転がってます。
「え……???」
「「「「は……???」」」」
全体を弱らせましょうの浄化攻撃だったはずが、まさかの全部倒してしまったっていうね。
「ネリアさん ワンパンだったね」
「ワンパンって?」
「ワンパンチの略だよ。一発だけ殴っただけで 相手が気絶したりするやつ。超強いってこと」
「「「「あぁ……」」」」
全員が納得の頷きだけど、ネリアさんだけが驚いて自分の手元を確認している。
だけど魔法陣はさっき投げて消えてますよね?
「なんで? 今までそんな事なかったよね?
ノーマルのスケルトンなら10体くらいいけたけど、上位種は流石に倒せなかった筈だよね?」
ああ、使った事がある魔法なのに威力が桁違いになってたって事?
「そりゃこの一月以上 ダンジョンで毎晩 魔力操作の訓練やってたからだろ?
俺らも 魔力切れギリギリまでいっつも練習してたお陰で 魔力も威力も上がってっからな。
元々やってたあんたとレスさんなら 威力が倍増しててもおかしくねえんじゃね?」
ルンガお兄ちゃんの言葉に やっと納得したらしいネリアさん。
「そういえば 王国に来たばっかりの時より 水樽に溜められる量も増えてきたよな」
「このダンジョンで 私たち料理も覚えて、魔法も上手になって、魔力も上がって、良い事尽くめだったわね」
「まさかの 後半は毎日風呂にも入ってたしな。快適過ぎてダンジョンで生活しても良いと思えたくらいだ」
うんうん、豊作ダンジョンって生活できちゃうよね。私もそう思います。
このダンジョンだったら 11階から20階までが目隠しもあって、昼夜もあって、米も肉も野菜も調味料も揃ってて最高かな。
皆でお喋りしながら魔石を拾い集めていく。
ちなみにダンジョンだから上位種の魔石が落ちているけど、地上で会うアンテッドは 核=魔石だから 倒したと同時に魔石も壊れるため 取得物は骨が身に着けていた防具と武器だけになるんだって。
それもあるから人気がないらしい。
宝箱には よく分からない魔道具が幾つかと いつも通り食材盛り合わせが入ってた。
今回はワンパンで倒したネリアさんしか活躍していないので 魔道具と魔石は全部ネリアさんへ。換金して美味しいものを食べたりして欲しい。
食材は この後ドゥーア先生のところにも行くから 私たちが預かることにしたよ。
テリューさん達が途中で一度戻った事で、5階以降にお米があることもドゥーア先生に手紙を送ったという事だったから、きっと深層階まで行かなければいけないゲルシイに依頼することはなかったと思う。
もしかしたら すでに10階までを行き来する冒険者が受けてるかもしれないね。
忘れ物が無いか確認すれば 6週間という長期間を過ごしたウミユのダンジョンともお別れとなる。
全員でボス部屋の続きに現れた小部屋に入り 魔法陣の上に乗る。
お父さんに掴まって目を閉じれば 一瞬の浮遊感のあと 人の声が聞こえるようになった事で1階に戻ってきた事を知る。
ワンパンで終わっただけあって まだ早朝なのだろう。
1階なのに人があまりいない。
数名いるが このダンジョンは24時間出入りが出来るから 夜に入ってて上がる人かもしれない。
全員で揃って外に出れば 本当に久しぶりの 本物の空と風と太陽だった。
「洞窟じゃなかったから そうでもないけど、後半はずっと森だったから 久しぶりに視界が広いね」
「まあ 確かにそうだよな。ここは昼夜もあるから あんまり感覚がバグらなかったけど、ずっと夜のところとかだと 結構参ってくるからな」
それはしんどそうだね。
ダンジョン受付は 早朝だからやっぱり混んでて、私たちは入場手続きをするカウンターではなく 後ろの建物に入っていく。
ゲルシイの時と同じように 冒険者カードと 私は赤いメダルも一緒に提出してもらう。
「〔土竜の盾〕〔サマニアンズ〕〔ヨザルの絆〕の3組合同パーティーですね。
予定より随分早くお戻りになりましたが……。
ああ、無事に踏破なさったんですね、おめでとうございます。
魔物情報やセフティーゾーンなどの情報はお売りになりますか?」
「いや、特にメモしてねえしいい」
「わかりました。中での素材など 販売希望の商品はございますか?」
「あ~、ゆっくり確認してからになるから 売るものがあれば町の方で売るからいい」
「わかりました。では こちらカードのお返しとなります」
流石は銀ランク上級、私以外は全員銀の上級だからか 全く止められることも 驚かれることも ツッコまれることもなく終わったよ。
テリューさんからカードを受け取りマジックバックへ。
さて、町でゆっくりしてからか、直ぐに王都か どうするのかはギルドを出てから話し合おう。
あともうちょっとで 皆との時間が終わってしまう。
凄く楽しかったから ちょっと寂しいけど、 まだこの後ドゥーア先生のお家に行くことは決まってるから大丈夫。
さあ、町に戻ろう!
あなたにおすすめの小説
継子いじめで糾弾されたけれど、義娘本人は離婚したら私についてくると言っています〜出戻り夫人の商売繁盛記〜
野生のイエネコ
恋愛
後妻として男爵家に嫁いだヴィオラは、継子いじめで糾弾され離婚を申し立てられた。
しかし当の義娘であるシャーロットは、親としてどうしようもない父よりも必要な教育を与えたヴィオラの味方。
義娘を連れて実家の商会に出戻ったヴィオラは、貴族での生活を通じて身につけた知恵で新しい服の開発をし、美形の義娘と息子は服飾モデルとして王都に流行の大旋風を引き起こす。
度々襲来してくる元夫の、借金の申込みやヨリを戻そうなどの言葉を躱しながら、事業に成功していくヴィオラ。
そんな中、伯爵家嫡男が、継子いじめの疑惑でヴィオラに近づいてきて?
※小説家になろうで「離婚したので幸せになります!〜出戻り夫人の商売繁盛記〜」として掲載しています。
君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました
水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。
求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。
そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。
しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。
ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが……
◆なろうにも掲載しています
【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
ガリ勉令嬢ですが、嘘告されたので誓約書にサインをお願いします!
荒瀬ヤヒロ
恋愛
成績優秀な男爵令嬢のハリィメルは、ある日、同じクラスの公爵令息とその友人達の会話を聞いてしまう。
どうやら彼らはハリィメルに嘘告をするつもりらしい。
「俺とつきあってくれ!」
嘘告されたハリィメルが口にした返事は――
「では、こちらにサインをお願いします」
果たして嘘告の顛末は?
【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない
春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。
願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。
そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。
※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
【短編】「中身はいいけど顔がなぁ」と笑った侯爵令息。美人の姉目当てに地味ブスな私を利用したこと、謝られても手遅れです
恋せよ恋
恋愛
「……結局、男の人は、顔しか見ていないのね」
絶世の美女である姉エリザベスを狙う男たちから
「地味ブス」と蔑まれてきた伯爵家の養子アイリス。
そんな彼女に、幼馴染のアレンからの頼み事が。
友人レオナルドの「女嫌い」克服のため
彼と文通を重ね、アイリスは生まれて初めての恋を知る。
しかし、文通で育んだ絆は、すべて彼の「暇つぶし」と
「美貌の姉への足がかり」に過ぎなかった。
「アイリス? 中身はいいけど、顔がなぁ」
「俺、面食いなんだよ。あの子、おしゃれする気ないのかな」
冷めた令嬢と、後悔に悶える貴公子の、すれ違いロマンス!
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?