ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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サマニア村

第389話 トニー達との訓練

予定を決めて勉強、狩り、魔法陣の練習を繰り返して三週間。
私が魔法陣の練習をしている時に お父さんはトニー君たちの狩りの様子を見に行ってたんだよね。

はりきり過ぎて空回りをするトニー君
それをフォローしようとして 自分の動きが全くできないルン君
冷静に判断しているけど 近接攻撃しかないから 結局手助けできないナチ君
まあ連携が全く取れていないって事だったようですね。

「恒久的なパーティーではないにしろ、しばらく一緒に行動すると決めたんじゃったら ちゃんとパーティーとしての連携をせんと死ぬぞ」

「トニー、お前は自分が年下だから二人がフォローしてあたりまえじゃと思っとるんか?
そんな舐めた行動をしておったら誰もお前と組みたがらんぞ。ヴィオと一緒にやるとしたら ヴィオは一番年下じゃ。ランクは一番上でもな、それをお前がフォローするつもりか?」

「ルン、お前は自分自身の能力もまだまだ足らんのに トニーの事ばっかり気にしてどうする。助けることと 甘やかすことは違うぞ。
まずは自分自身の能力を上げるように訓練をした方がええ。お前は猫としての瞬発力が得意のはずじゃのに 全くそれが活かせておらん、猫系の獣人は斥候役が多いぞ。
近接でも力業で行くよりは 細かくいけるようにしてみい」

「ナチは 毎回動きを確認しとるんじゃったら それを二人にも共有して理解させろ。
お前だけが分かっておっても 他の二人が理解できんかったら意味がないじゃろう。冷静に判断する上で行動するなら遠距離からの攻撃、魔法も鍛えた方がええぞ」

と、そんな感じでガッツリ叱られたらしいです。
地下訓練場で会った時に教えてもらいました。
まあルン君も魔法攻撃出来たらいいよね。ってかメンバー全員がどちらも使えるようにした方が良いと思うけどね。

「お兄ちゃんたちも近接攻撃ばっかりだったけど、魔力訓練を頑張ってやるようになってから 魔法もよく使うようになったよ。
森とかは大きな武器を振り回しにくいし 飛んでる魔獣もいるからね。魔法が使えるようになって探索と討伐が楽になったって言ってたよ」

「そうなの? トンガさん達もそうなんだ……。
なんか魔法より剣の方が格好良いと思ってたけど そうか……」

もしかして それが理由で長剣を使っていたのだろうか。
そういえば魔法も【ファイアボール】ばっかりだったよね。
うんうん、トニー君は厨二ボーイなんだね。火魔法は極小ファイアボール以外は素材を駄目にするから 燃やす時とお料理の時くらいしか使わないよ?言わんけど。

月末には一緒に森に行けると思っていたけど どうやら難しそうである。
お父さんやエデル先生が訓練場にいる時は、対複数人での組手はやっていたけど それは連携の練習などではなく 各自が好きに攻撃を仕掛けるというものだった。
なので 連携を意識した練習をするようになったんだよね。

「森じゃないなら俺も一緒にやる!」

「僕も!」

まあレン君とハチ君も参加して五人とやるのも 剣や武術だけならお父さん一人で良かったんだけど、魔法も使えるようになった方が良いと指導しているので 魔法攻撃もありという事になったので、私が一緒に入ることになった。

「えぇ!?魔法で攻撃するんだぞ? ヴィオに当たったら怪我するぞ?」

トニー君がびっくりしたように言うけれど、お父さんに当たっても怪我しますけど?

「大丈夫 当たらないから。私は魔法の反撃はしないけど それ以外の攻撃はするからね」

「多少怪我をしても 私が治しますから 君たちは連携を考えて動くと良いですよ。
この年齢で銀ランクに昇格できたヴィオさんと、そのヴィオさんを鍛え上げたアルクさんですからね。
君たち程度が本気を出しても 問題ありません」

私は煽ったつもりではなく結界と盾を使うからという意味だったんだけど、サブマスのそれは完全に五人を煽ってますよね……?
まあ何故か私にキラキラした目を向けてくるレン君とハチ君、気合を入れ直しているルン君とナチ君、キッと睨みつけてきたのはトニー君だけという不思議な状態ですけども。

この訓練をすると決めた時に サブマスが見学に来るとは聞いていた。
『会議が終わればパーティーメンバーとなるのです。今のヴィオさんの戦い方を見ておく必要があるでしょう?』と楽しげに言われたんだよね。
もちろん サブマスがパーティーメンバーになるなんてことはギルマスとタキさんしか知らない極秘情報だけどね。

平日の午後ということもあり、訓練場は貸切状態にしてある。
大人は ギルマス、サブマス、武術担当のエデル先生、魔術担当のアリアナ先生、トニー君のお婆ちゃんでもある算術担当のエリア先生が見学をしているくらいだ。

私の結界鎧はそのままだけど、盾に関しては いつもの包むタイプのものを使うと 相手が何もできなくなってしまうので、前にドゥーア先生のところでやったような 小さなものを使うように言われている。
自分への攻撃は勿論だけど、お父さんへの魔法攻撃もそれで防がないといけないからちょっと大変かもしれない。

ちなみに今回の彼らの武器はこうだ。
ナチ君 弓、ルン君 短剣、トニー君 ハチ君 レン君が剣。もちろん訓練場の木剣を使っているんだけど ナチ君以外前衛っていう偏りが凄い。

ナチ君はお父さんに言われてから魔法と弓の練習を始めたらしく、今回は魔法がメインで各自への指示をする役目みたいだね。
五人で作戦会議をしているので 私とお父さんも準備をしておく。

「多少魔法が当たっても大丈夫じゃから、ヴィオは盾の練習をすると思うくらいでええぞ。そのかわり自分の事はしっかり守っておくんじゃぞ」

魔法が当たっても大丈夫とはどういう状態なのでしょうか。
それも気合で吹き飛ばす? 私は結界鎧があるから大丈夫なんだけど、一応それを知られないためにも盾を使う。
けど お父さんは生身なんですけどね?

「よし!行くぞ!」

「「「「おう!」」」」

あちらも準備が整ったようです。
剣を構えているのはルン、レン、ハチの三人。魔法を唱え始めたのはトニー、ナチの二人だ。
一応最初だから魔法も受けるつもりです。

「我の手には炎が宿り 全てを焼き尽くす炎は玉となり弾け飛ぶ【ファイアボール】」

「風よを切り裂け 【ウインドカッター】」

手を前に突き出すスタイルですが ナチ君は短縮詠唱できるようになってるんだね。
カマイタチのような風の刃を追いかけるように 赤いソフトボールのような玉がお父さんを目がけて飛んでくる。
その魔法と同時に駆けだす三人。
レン君はお父さんの足元へ斬りかかり、ルン君はお父さんの上半身を狙っているようだ。
ハチ君は私の方へ飛び掛かってくる役目になったんだね。

「【エアウォール】」「【アイスシールド】」

同じ軌道で飛んでくる魔法なので 1枚だけ盾をお父さんの上半身の前に出しておく。
真っすぐ駆け込んでくるハチ君の剣は 上段から打ち下ろしてきたので 氷の盾で受け止めてからハチ君の横っ腹を蹴り飛ばす。

お父さんは魔法が見えていないのかと思うレベルで気にしていない。
盾を信用してくれているのか、はたまた当たっても怪我をしないと思っているのか。お兄ちゃんたちの事があるからどちらもあり得ると思ってしまう。まあだけど 風の刃は盾で弾かれて 火の玉は消えた。

レン君の攻撃は するりとかわし通り過ぎようとするところで蹴り上げる。鳩尾に入った蹴りは レン君の身体を軽々と浮き上がらせて ナチ君のところまで飛んで行った。
弟に視線をやってしまったロン君は その一瞬のスキを突かれて 短剣を持っていた腕をはたかれて剣を落としてしまう。
まだ攻撃は続けられるはずなのに この時点で五人の動き止まってしまった。

「ん?終わり???」

「ちょっと待って、作戦会議させてくれ!」

ナチ君から手が上がり お願いされたので一旦休憩。
休憩と言っても何も始まってないんですけども……。
あちらの作戦会議には サブマス以外の大人たちも参加して どう攻めるべきかなどをアドバイスしているみたい。
こっちにはサブマスが来てくれてますよ。

「なぜ【アイスシールド】にしたんですか?」

「ん~、風だと剣が弾かれちゃうから その後の攻撃がしにくいと思ったんですよね。
最近は水の盾を作る時に粘着性のあるやつにしているから 剣がくっつくと思って止めました。
土は盾というより壁のイメージが強すぎて、木の壁も同じですね。森の中では使えるんですけど 樹々がないところではちょっと難しいので氷にしてみました」

イメージで色々出来る魔法だけど、逆にイメージが固まると それ以外を使おうと思うと ちゃんと考えてから使わないとよく使っている形の魔法がでちゃうんだよね。
攻撃魔法に関しては 上書き保存してる感じだけど、盾と単体魔法(【ファイア】とか【ウォーター】とかね)はフォルダ分けして保存している感じと言えば分かるだろうか。

攻撃魔法は色々試して 一番使いやすい形に持っていけばいい。あとは追尾効果を付けるとかぐらいで 基本的には形は変わらない。
違う形にしたければボールじゃなくてアローとかランスにすればいいだけだから。

だけど盾は 向きも大きさも毎回違う。包み込むときもあれば、壁のように使う時もあるし、匂いを漏らさない事だけなら筒状にするし、水の時は 粘着力を付けるのが最近の流行だ。
上書きではなくファイル……というよりExcelのシート分けをしている感じだね。最近使った頁が出てきちゃうから 別のを使いたいときはページを切り替える必要があるという事だ。

まあそんなPC用語は説明できないけど、サブマスは何となく言いたいことが分かったらしく「なるほど」と考え込み始めた。うん、こういうところはドゥーア先生とそっくりだよね。


作戦会議が終わった五人と再戦しては作戦会議、また再戦を数回繰り返し、私のお腹が盛大に鳴ったところで今日の訓練は終了となった。
なんなんですかねぇ、私のお腹ってば 他人に聞こえるほどに自己主張しなくてもよくないです?
皆にクスクス笑われるのも恥ずかしいんですよ。

五人はそれなりに怪我をしているので サブマスの回復魔法を受けているみたいだけど 私とお父さんは怪我もなかったので 皆に手を振って訓練場を後にする。
は~、お腹ぺっこぺこですよ。



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