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本編のアイリス
死にかけからの前世の記憶(アイリスSS)
しおりを挟む頭が割れるように痛い、身体も全身がギシギシするし、動かそうとするたびに痛い、時々ヒンヤリとした何かを頭や腕に感じて、それを気持ちいいと思うくらいには体が熱くなっているのだろう。
ああ熱い、痛い、辛い……。こんな思いをするのであれば、いっそのこと一思いに殺してくれたらいいのに、回復魔法の練習台ですって?
彼が綺麗だと褒めてくれた、私の自慢だった髪を切り落とし、囚人と同じ服を着せ、言葉を発せないようにと喉を潰された。回復魔法の時にもそこは治さないようにする徹底ぶり、いえ、治ってしまってもすぐにあなたの夫がまた潰しに来たのだったわね。
人は彼女を聖女だと呼ぶけれど、これのどこが聖女だというの?
勇者と凱旋したと言っていたけれど、私の婚約者だった彼は何処に行ったの?
アダームではない人を勇者と偽って帰ってきた彼女に言及したあの日から、私の自由は無くなった。
アダームが作ったという不思議な杖からは、様々な魔法が繰り出される。私はその魔法の的であり、彼女の憂さ晴らしの的であり、魔法の威力の実験体であり、その後のボロボロになった身体を聖女見習いたちに差し出し回復魔法の練習をさせる為の被検体だった。
「罪人にもこのように回復魔法の機会を与えるなど、聖女様は慈悲深いですわ」
練習中の聖女見習いによる回復は、術者の練度が低いからか、私の怪我の表面しか治すことは出来ていない。それでも見習いたちがそうして回復魔法をかける様を見ているだけの平民たちには分からないから聖女を褒め称える。
普通に考えてボロボロになっている人を、人通りが多くて誰でも見れる場所に連れて行って治させるなんて、なんて言ったかしら……、そうパフォーマンスのためにやっているだけだろうって事でしょう? ああ、あの地獄はまだ続いていたの……?
「あれ~、やり過ぎちゃったかも」
聖女のその声を最期に意識を失くしたから死ねたと思ったのに……。
◆◇◆◇◆◇
「アイリス! アイリス!」
体の痛みが治まってきた頃、誰かが私の体を揺すってくるけど、私の名前は――あれ、何だっけ?
口元に何かを差し込まれて液体を流し入れられる。一瞬毒かと思ったけど、それならそれでいいかと思って受け入れたらただの苦い水だった。
誰かに背中を支えられて、またゆっくりと水を流し込まれてゴクリゴクリと飲めば、身体の内側から色んな辛いものが消えていくような感じがした。
「あぁ、回復薬を買うことが出来て良かったよ。ほら顔色が随分良くなってきたよ」
「そうだな、ちょっとしばらく節約しねえとだけど、この薬がこれだけ効果があったなら、もっと早くに飲ませてやれば良かったな」
「まあそうだけど、寝かしといたら治る病気の方が多いんだ、こんな田舎町でそう簡単に薬は使えないよ。早くこの村出身の聖女か聖人が出てくれりゃいいんだけどねぇ」
「まったくだな」
男女の話し声を聞きながら、また私の意識は水に沈むように落ちて行った。もう少し話聞きたいけど、多分回復している最中の眠さなんだろうな……。ああ眠い。
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