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①はじめまして
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そこは随分と味気ない部屋だった。
白いスチールの壁に大きな数字の掛け時計、折り畳み式の長机にスチールパイプの椅子、部屋の片隅にはホワイトボード。
散文的なのも当たり前で、そこは芸能プロダクションの会議室の一室だった。
そこに見目の良い男性が四人、集められていた。
「あと一人って、藤堂って奴だろ? 初日から遅刻ってどうよ!?」
色白で小作りな顔立ちをした少女っぽい容貌の青年が、吐き出すように言った。
外見に反して口調も態度もがさつだった。
「人身事故じゃ仕方が無いでしょ。大人しく待ってようよ」
意外にも、そこにいるうちで一番年下の少年が醒めた態度で諌めた。
諌めるというよりはただ面倒事を避けたかったのかもしれない。
年齢の割りに何処か達観した空気を漂わせていた。
「俺は時間にルーズな奴ってのが嫌いなんだよ!」
腹立ちの治まらない男に、椅子にだらしなく腰掛けてゲームをしていた年長の恐ろしく綺麗な男が面倒臭そうに言った。
「他人に当たり散らさないでくれるぅ? お前のフラストレーションを押し付けられるとか、迷惑」
「なっ、俺は社会人としての常識を言ってるんだけどっ!」
ギスギスした雰囲気に耐えかねて、背の高い青年がぎこちなく笑いながら割って入った。
「あの、自己紹介でもして待っていましょうか――」
「そんなの二度手間だろっ」
少女めいた容貌を赤く染めた青年に噛み付かれて、青年からぎこちない笑みが掻き消え、シュンとしてしまった。その様子に流石に罪悪感を覚えたのか、青年が態度を幾分落ち着けて言った。
「まぁ、名前ぐらい名乗るか。俺はあゆむ。人とやるのは初めてだし、アイドルグループに呼ばれるなんて思ってなかったから、ちょっとナーバスになってた」
「そんなの皆一緒でしょ。第一まだ話を受けると決まってないし。あ、ワタシはコモドドラゴンね。一応リーダーを打診されてるけど、受ける気はないよ。柄じゃないでしょ」
そう言ったのは一番年下の冷めた少年だった。
彼はコモドドラゴンというハンドルネームの動画配信者だが、容貌と相まって “コドモ” という愛称で親しまれている。
続いて他のメンバーよりも一人だけ年嵩の、スクリーンから抜け出してきたように美麗な男が黒髪を鬱陶しそうに掻き上げながら名乗った。
「俺は伯爵。本業は別にあるから、こっちはパートタイマーな」
「何それっ! いい加減だなっ」
早速、あゆむが噛み付いたが、伯爵と名乗った男は美しい眉を馬鹿にしたように大きく寄せて毒づいた。
「ばーか、俺の歳で動画配信一本に絞れる訳ないだろ? 夢だけじゃ喰っていけねーんだよ」
「生々しいなぁ」
まだ親のスネかじりなのか、コドモが他人事のようにそう呟いた。
案外と調子の良い掛け合いを繰り広げる三人に、背の高い青年が気後れを感じながら名乗った。
「あの、俺は生馬、です。人前で歌を歌うのは夢だったから、嬉しいです」
「夢?」
不思議そうに問い返した伯爵に生馬は曖昧に笑った。
生馬は人前で堂々と歌ってみたかった。でも沢山の人の前に出る事が怖かった。
だから歌っている動画を撮って投稿サイトに上げてみたら、思わぬ反響があった。
それで嬉しくなって、沢山の動画を上げたし顔無し配信もやってみた。
低くて深みのある声が、某有名アニメのキャラクターに似ていた事もあって、歌だけでなく雑談枠や朗読枠のリスナーもあっという間に増えていった。
勿論、そこには誹謗中傷もあったけれど、あからさまなのは運営がブロックしてくれたのでそこまでは気にならなかった。
声だけじゃなくて顔が見たいというリスナーの要望には戸惑ったが、マスクをしていれば良いかなと軽い気持ちで顔出し配信も始めた。
そうしたら生馬は百八十センチと長身で、切れ長の目に薄い唇が酷薄そうな雰囲気を醸し出すイケメンだったので、更に人気が加速した。
引っ込み思案でオドオドとした態度も、画面越しだと謙虚で清楚な人柄に映った。
そんな生馬に芸能プロダクションが目を付け、他にも売れそうな動画配信者を集めてアイドルグループとして売り出そうというのが今回集められた主旨だった。
(大勢の人の前に出るのは怖い。でも仲間がいたら――一人じゃなかったら、俺だけが見られてるんじゃなければ大丈夫な気がする)
生馬はそういう理由で、ソロではなくグループでアイドルデビューをしたいと思っていた。
だから急遽寄せ集めた動画配信者たちにとても期待をしていた。
(上手くやっていけるかな、嫌われないといいな)
歌唱力だってルックスだって優れているのに自分に自信のない生馬は、心臓が飛び出しそうにドキドキしていた。
メンバーには絶対に嘘を吐かない、意地悪もしないし優しくする。
気の利いた言葉やお洒落な会話は出来ないけど、不快にはさせないように頑張る。
だからどうか、俺を仲間にして下さい。
生馬は祈るようにそう願っていた。
誰よりも物静かに見えて誰よりも意気込んでいた生馬に、他の三人も何事かを感じ取ったのだろう。明るい顔付きになって三者三様に微笑んだ。
やっと雰囲気が好転してまとまり掛けたところでガチャリとドアが開いた。
***
「遅れて済みません! 初日から遅刻とか本当にごめんなさい――」
騒々しい青年だった。けたたましく話しているからだけではない。
茶金に近い明るい髪色に色彩の多い派手な服装、びっちりと濃い睫が縁どる垂れ目がちの大きな瞳。
一目で人の関心を集めるような、華のある青年だった。
その青年が言葉を唐突に途切らせ、生馬を見て険しい表情を浮かべた。
「なんでお前がここにいるんだ」
憎々しげな、不似合に低い声で唸った彼は明らかに怒っていた。
「あ……まさ、か……」
生馬も心当たりがあるのか真っ青な顔をしている。
遅れてきた青年が激高していきり立った。
「二度と俺の前に姿を現すなと、顔を見せるなと言っておいたよなぁぁぁっ!」
激しく怒鳴られて、生馬はその場に固まってしまい逃げ出す事も出来ない。
目を逸らす事も出来ず、どうしようもなく震えているだけだ。
「ちょっとお前なんなのいきなり? 何があったか知らないけど、俺達に失礼だと思わない訳?」
「済みません。でも彼は――」
「このグループに必要だから呼ばれたんだよなぁ。それをお前が勝手に台無しにしたりしていいの?」
「それは――くそっ、俺は認めないからなっ!」
青年は小さく毒吐くと生馬から顔を背けて、一番遠い椅子に座った。
やっと呪縛の解けた生馬は今にも逃げ出したそうな素振りで、ここに居てはいけないと思い込んだ様子で椅子を立ち上がりかけてコドモに止められた。
「偉い人の話を聞いてからにしようよ。折角ここまで来たんだもん、そうしなよ」
「……うん」
コモドドラゴンに制止され、何も言わずに帰るのは失礼だと思い直したらしく生馬は素直に椅子に座り直した。但しその顔色は酷く蒼褪めたままだった。
緊迫した空気に耐えられなくなる前に、プロデューサーが大男を伴って現れた。
「こんにちは~。今日はお集まり戴きありがとうございます。早速ですが、今回の主旨をご説明したいと思います。まず初めに、この男は君たちのマネージャーの高見沢です。何かあったら彼に言って下さいねー」
妙に間延びした話し方をする男に毒気を抜かれつつ、誰も言葉を発しない。
生馬と青年のやり取りが影を落としているのだ。
「えっとー、まず君達は全員が初対面だよね。互いの動画を観たり、歌は聴いた事があるかもしれないけど、実際に会った事はなかったよね?」
男の言葉に生馬と遅れてきた青年を除く三人が頷いた。男は確認する気も無かったのか気にせずに続ける。
「こうして顔を合わせて貰ったら分かると思うけど、違うタイプのイケメンを揃えましたー。歌が上手いのは大前提ね」
「「「「…………」」」」
イケメンと言われて彼らは悪い気はしないものの戸惑った。
程度の差はあれど、元来がオタクと呼ばれるような人種ばかりだ。褒められ持ち上げられる事には慣れていない。
「俺は君らを活かすのはこの五人がベストだと思ってるから、一人でも欠けるならこの話は無かった事にして貰います。どうだろう、引き受けてくれるかなー?」
随分と軽い物言いに全員が戸惑い、それでも生馬とあの青年以外は頷いた。
「俺は……」
何か言い掛けた生馬を伯爵が手を挙げて制した。
「お前、夢だって言ってたじゃん。だったら簡単に逃げ帰るんじゃねぇよ」
「だよね、ワタシ達の分も頑張って貰わないと」
「お前は自分が頑張れよ」
コドモと伯爵の掛け合いに生馬がふっと口元を綻ばせた。
(そうだ、俺の夢だったんだ。今度は簡単に諦める訳にはいかない。それに俺が下りたらこのグループは成立しないというなら、頑張って彼に認めて貰う努力をした方が償いになるんじゃないか?)
生馬はキュッと唇を噛み締めてから自分を励ますように頷いた。
それを見た青年も苦い顔のままではあったが、黙ったまま頷いた。
(彼は負けず嫌いだから)
きっと自分だけ下りるのが業腹だったのだろう、そう思っても生馬の目元が緩んでしまう。
(一緒に歌を歌える。ならばきっと償うチャンスもある筈だ)
生馬は前向きにそう思った。
「あ、お前だけ名乗ってねぇぞ」
伯爵の言葉に青年が短く告げた。
「藤堂です。音楽は、俺にとっても特別だから」
だから誰にも邪魔させない。不本意でも我慢する。
藤堂の飲み込んだ言葉が聴こえたような気がしたが生馬は堪えた。
言葉ではなく、行動で彼に信じて貰うつもりだった。
白いスチールの壁に大きな数字の掛け時計、折り畳み式の長机にスチールパイプの椅子、部屋の片隅にはホワイトボード。
散文的なのも当たり前で、そこは芸能プロダクションの会議室の一室だった。
そこに見目の良い男性が四人、集められていた。
「あと一人って、藤堂って奴だろ? 初日から遅刻ってどうよ!?」
色白で小作りな顔立ちをした少女っぽい容貌の青年が、吐き出すように言った。
外見に反して口調も態度もがさつだった。
「人身事故じゃ仕方が無いでしょ。大人しく待ってようよ」
意外にも、そこにいるうちで一番年下の少年が醒めた態度で諌めた。
諌めるというよりはただ面倒事を避けたかったのかもしれない。
年齢の割りに何処か達観した空気を漂わせていた。
「俺は時間にルーズな奴ってのが嫌いなんだよ!」
腹立ちの治まらない男に、椅子にだらしなく腰掛けてゲームをしていた年長の恐ろしく綺麗な男が面倒臭そうに言った。
「他人に当たり散らさないでくれるぅ? お前のフラストレーションを押し付けられるとか、迷惑」
「なっ、俺は社会人としての常識を言ってるんだけどっ!」
ギスギスした雰囲気に耐えかねて、背の高い青年がぎこちなく笑いながら割って入った。
「あの、自己紹介でもして待っていましょうか――」
「そんなの二度手間だろっ」
少女めいた容貌を赤く染めた青年に噛み付かれて、青年からぎこちない笑みが掻き消え、シュンとしてしまった。その様子に流石に罪悪感を覚えたのか、青年が態度を幾分落ち着けて言った。
「まぁ、名前ぐらい名乗るか。俺はあゆむ。人とやるのは初めてだし、アイドルグループに呼ばれるなんて思ってなかったから、ちょっとナーバスになってた」
「そんなの皆一緒でしょ。第一まだ話を受けると決まってないし。あ、ワタシはコモドドラゴンね。一応リーダーを打診されてるけど、受ける気はないよ。柄じゃないでしょ」
そう言ったのは一番年下の冷めた少年だった。
彼はコモドドラゴンというハンドルネームの動画配信者だが、容貌と相まって “コドモ” という愛称で親しまれている。
続いて他のメンバーよりも一人だけ年嵩の、スクリーンから抜け出してきたように美麗な男が黒髪を鬱陶しそうに掻き上げながら名乗った。
「俺は伯爵。本業は別にあるから、こっちはパートタイマーな」
「何それっ! いい加減だなっ」
早速、あゆむが噛み付いたが、伯爵と名乗った男は美しい眉を馬鹿にしたように大きく寄せて毒づいた。
「ばーか、俺の歳で動画配信一本に絞れる訳ないだろ? 夢だけじゃ喰っていけねーんだよ」
「生々しいなぁ」
まだ親のスネかじりなのか、コドモが他人事のようにそう呟いた。
案外と調子の良い掛け合いを繰り広げる三人に、背の高い青年が気後れを感じながら名乗った。
「あの、俺は生馬、です。人前で歌を歌うのは夢だったから、嬉しいです」
「夢?」
不思議そうに問い返した伯爵に生馬は曖昧に笑った。
生馬は人前で堂々と歌ってみたかった。でも沢山の人の前に出る事が怖かった。
だから歌っている動画を撮って投稿サイトに上げてみたら、思わぬ反響があった。
それで嬉しくなって、沢山の動画を上げたし顔無し配信もやってみた。
低くて深みのある声が、某有名アニメのキャラクターに似ていた事もあって、歌だけでなく雑談枠や朗読枠のリスナーもあっという間に増えていった。
勿論、そこには誹謗中傷もあったけれど、あからさまなのは運営がブロックしてくれたのでそこまでは気にならなかった。
声だけじゃなくて顔が見たいというリスナーの要望には戸惑ったが、マスクをしていれば良いかなと軽い気持ちで顔出し配信も始めた。
そうしたら生馬は百八十センチと長身で、切れ長の目に薄い唇が酷薄そうな雰囲気を醸し出すイケメンだったので、更に人気が加速した。
引っ込み思案でオドオドとした態度も、画面越しだと謙虚で清楚な人柄に映った。
そんな生馬に芸能プロダクションが目を付け、他にも売れそうな動画配信者を集めてアイドルグループとして売り出そうというのが今回集められた主旨だった。
(大勢の人の前に出るのは怖い。でも仲間がいたら――一人じゃなかったら、俺だけが見られてるんじゃなければ大丈夫な気がする)
生馬はそういう理由で、ソロではなくグループでアイドルデビューをしたいと思っていた。
だから急遽寄せ集めた動画配信者たちにとても期待をしていた。
(上手くやっていけるかな、嫌われないといいな)
歌唱力だってルックスだって優れているのに自分に自信のない生馬は、心臓が飛び出しそうにドキドキしていた。
メンバーには絶対に嘘を吐かない、意地悪もしないし優しくする。
気の利いた言葉やお洒落な会話は出来ないけど、不快にはさせないように頑張る。
だからどうか、俺を仲間にして下さい。
生馬は祈るようにそう願っていた。
誰よりも物静かに見えて誰よりも意気込んでいた生馬に、他の三人も何事かを感じ取ったのだろう。明るい顔付きになって三者三様に微笑んだ。
やっと雰囲気が好転してまとまり掛けたところでガチャリとドアが開いた。
***
「遅れて済みません! 初日から遅刻とか本当にごめんなさい――」
騒々しい青年だった。けたたましく話しているからだけではない。
茶金に近い明るい髪色に色彩の多い派手な服装、びっちりと濃い睫が縁どる垂れ目がちの大きな瞳。
一目で人の関心を集めるような、華のある青年だった。
その青年が言葉を唐突に途切らせ、生馬を見て険しい表情を浮かべた。
「なんでお前がここにいるんだ」
憎々しげな、不似合に低い声で唸った彼は明らかに怒っていた。
「あ……まさ、か……」
生馬も心当たりがあるのか真っ青な顔をしている。
遅れてきた青年が激高していきり立った。
「二度と俺の前に姿を現すなと、顔を見せるなと言っておいたよなぁぁぁっ!」
激しく怒鳴られて、生馬はその場に固まってしまい逃げ出す事も出来ない。
目を逸らす事も出来ず、どうしようもなく震えているだけだ。
「ちょっとお前なんなのいきなり? 何があったか知らないけど、俺達に失礼だと思わない訳?」
「済みません。でも彼は――」
「このグループに必要だから呼ばれたんだよなぁ。それをお前が勝手に台無しにしたりしていいの?」
「それは――くそっ、俺は認めないからなっ!」
青年は小さく毒吐くと生馬から顔を背けて、一番遠い椅子に座った。
やっと呪縛の解けた生馬は今にも逃げ出したそうな素振りで、ここに居てはいけないと思い込んだ様子で椅子を立ち上がりかけてコドモに止められた。
「偉い人の話を聞いてからにしようよ。折角ここまで来たんだもん、そうしなよ」
「……うん」
コモドドラゴンに制止され、何も言わずに帰るのは失礼だと思い直したらしく生馬は素直に椅子に座り直した。但しその顔色は酷く蒼褪めたままだった。
緊迫した空気に耐えられなくなる前に、プロデューサーが大男を伴って現れた。
「こんにちは~。今日はお集まり戴きありがとうございます。早速ですが、今回の主旨をご説明したいと思います。まず初めに、この男は君たちのマネージャーの高見沢です。何かあったら彼に言って下さいねー」
妙に間延びした話し方をする男に毒気を抜かれつつ、誰も言葉を発しない。
生馬と青年のやり取りが影を落としているのだ。
「えっとー、まず君達は全員が初対面だよね。互いの動画を観たり、歌は聴いた事があるかもしれないけど、実際に会った事はなかったよね?」
男の言葉に生馬と遅れてきた青年を除く三人が頷いた。男は確認する気も無かったのか気にせずに続ける。
「こうして顔を合わせて貰ったら分かると思うけど、違うタイプのイケメンを揃えましたー。歌が上手いのは大前提ね」
「「「「…………」」」」
イケメンと言われて彼らは悪い気はしないものの戸惑った。
程度の差はあれど、元来がオタクと呼ばれるような人種ばかりだ。褒められ持ち上げられる事には慣れていない。
「俺は君らを活かすのはこの五人がベストだと思ってるから、一人でも欠けるならこの話は無かった事にして貰います。どうだろう、引き受けてくれるかなー?」
随分と軽い物言いに全員が戸惑い、それでも生馬とあの青年以外は頷いた。
「俺は……」
何か言い掛けた生馬を伯爵が手を挙げて制した。
「お前、夢だって言ってたじゃん。だったら簡単に逃げ帰るんじゃねぇよ」
「だよね、ワタシ達の分も頑張って貰わないと」
「お前は自分が頑張れよ」
コドモと伯爵の掛け合いに生馬がふっと口元を綻ばせた。
(そうだ、俺の夢だったんだ。今度は簡単に諦める訳にはいかない。それに俺が下りたらこのグループは成立しないというなら、頑張って彼に認めて貰う努力をした方が償いになるんじゃないか?)
生馬はキュッと唇を噛み締めてから自分を励ますように頷いた。
それを見た青年も苦い顔のままではあったが、黙ったまま頷いた。
(彼は負けず嫌いだから)
きっと自分だけ下りるのが業腹だったのだろう、そう思っても生馬の目元が緩んでしまう。
(一緒に歌を歌える。ならばきっと償うチャンスもある筈だ)
生馬は前向きにそう思った。
「あ、お前だけ名乗ってねぇぞ」
伯爵の言葉に青年が短く告げた。
「藤堂です。音楽は、俺にとっても特別だから」
だから誰にも邪魔させない。不本意でも我慢する。
藤堂の飲み込んだ言葉が聴こえたような気がしたが生馬は堪えた。
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