限界社畜、異世界に連れ去られてよしよしされる

海野ことり

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【6】日影の能力-①

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お仕置きという名のイチャイチャの後、日影は草の生えた地面の上に寝転んだ折原に腹這いに乗っかり、ペッタリと胸に頬を付けて尋ねる。

「なあ、ここは安全地帯じゃなかったのか?」
「ああ、さっき落ちそうになったこと?」
「うん」
日影は折原に髪を弄ばれ、うっとりと目を瞑る。辺りが見慣れない場所でも気にしない。世界で一番安全で小さな密室はここだと知っているから、安心。

「ここは学校の校庭くらいの広さで――八百メートルトラックを外に十メートルくらい広げた感じかな、勿論、ここから外に行くことが出来る。ほら、あの端っこの消えた道なんかが通常ルートだね」
「通常ルート……」
日影は呟いて、遠くを見つめた。森へと続く、先の見えない暗い道。
あんな所へ入っていこうなんて、よくも思える。

「それとは別に、浅い階層へ降りることが出来る」
「浅い階層?」
「ここは階層構造になってて、浅い場所は比較的安全。日影さんが落ちそうになってたのは海辺に降りる階段だし、岩場から水が湧いている窪地もあるし、塩田みたいな棚もある」
「ほぁぁ」
本当にゲームみたいだと、感心する。
そう言えば、折原もゲームの中の人みたいに不思議な力が使えるようだった。 もしかしたら自分も――。

「なあなあ、バイクの召喚って、俺も出来るの?」
折原はニャアニャアと話し掛ける日影の腰を抱き、よく動く唇を追い掛けて柔らかく啄む。
猫は飼ったことがないけれど、自分がした質問も忘れてキスに夢中になる彼は猫よりも可愛い。
折原もついつい熱が入り、終いには、会話をしているのか前戯をしているのか分からなくなる始末だ。
折原は上がってくる呼吸を整えながら、何でもない顔で言葉を継ぐ。

「多分、出来ない。なんとなく、自分に出来ることはわかるでしょ?」
「俺に出来ること……プログラム?」
「それ以外で」
折原に笑われて、日影は悔しくなって噛み付く。

「日影さん、お腹が空いたの?」
「そうじゃ、ないけど……なあ、食べるものはあるのか?」
食事を心配する日影に、折原がニヤリと太々しく笑う。

「日影さんに、異世界料理をご馳走するよ」
「うっ、魔物はちょっと……」
「俺を信じなさいって」
折原は上機嫌でそう言い、日影ごと起き上がった。

「腹筋、すごっ!」
「男の子だからね、鍛えてんの」
「俺……全然ない」
ベロリとシャツをめくった日影を見て、折原が額を押さえる。
「日影さん、少しは警戒してよ」
「警戒? どうして?」
相変わらずちっともわかっていない日影を、再び押し倒して薄い腹を吸った。
「んはっ! くすぐったい!」
「あ~、もう、相変わらず薄い腹だな! もっと食べさせないと。日影さん、こっちに来て」
折原は日影の手を引き、山小屋へと連れて行く。
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