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【14】エルフの頼みごと-①
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(頼み……)
エルフの頼みなんてろくなものじゃなさそうだけど、折原はあっさりと頷いた。
「いいよ。詳しい話を聞かせて」
「おい、いいのか?」
思わず小声で囁いた日影に、折原は安心させるように微笑んだ。そして彼の頼みなら喜んで聞きたいのだと言う。
(なにそれ……面白くない)
日影は胸の奥がズキズキと痛んで、思わずシャツをきつく握りしめた。
彼は自分に優しかったように、他の誰にでも優しいのか。そう思うと、折原の優しさが憎たらしくなってくる。
日影は胸に込み上げてくる思いを堪え、下を向いて必死にやり過ごそうとした。
「もうすぐ、僕の姪が結婚するんだ」
静かに語り出したエルフをチラリと見る。
結婚する年齢の姪がいるってことは、結構歳がいってるのか。日影はほんの少しだけ安心した。
「おめでとう。新居は何処に構えるの?」
「それがねぇ、相手が山エルフなんだよ」
「あらら……。それは反対されるね」
「うん。姉たちから、止めてくれって言われてる」
聞けばエルフは違う種類のエルフとは仲が悪いそうで、むしろ他種族の方がまだましなのだそうだ。
長命種で優れたエルフは他種族には寛容の気持ちが強く、同族には張り合うからだと言う。
「草原エルフが空気の薄い山に住む下等なエルフとなんて、ってもう大反対されてる」
「向こうは?」
「向こうはそうでもないみたいだけど、ロバみたいに鈍重だとは言われてるね」
「ははぁ、よくも恋に落ちたね?」
「恋は備えても次元嵐の渦の外だよ」
ワットは何やらこちらの格言めいたことを言い、ウィンクを決めた。
「それで向こうで暮らすと言うから、僕くらいは祝ってやりたくてね。ウタには我が家秘伝の薬を届けて欲しいのと、他に何かしてやれることがないかの相談なんだけど」
「結婚祝いか……」
向こうで上手くやれるような取っ掛かり、あるいは身を守ってくれるような何か……と考え込む二人を見て、日影がぼそりと呟いた。
「うまい飯」
「えっ?」
「うまい飯を作ってくれて、歌を歌ってくれたら俺なら満足だし。祝われてるって思う」
「ん~、確かに外国ではサプライズパーティーをプレゼントしたり、サーカスを呼んだりするらしいね」
「サーカス……」
違うそういうんじゃない、と日影が抗議しようとしたら折原が笑いながら片目を瞑った。スゴイ。キラキラして、美形エルフに負けてない。
「由紀彦にも協力してもらっていい?」
「俺? 俺は鈍臭いし、料理も出来ないぞ」
言ってて情けなくなるが、日影は自転車にも乗れないし卵も割れない。仕事以外は呆れるくらい不器用な人間なのだ。
暗い顔でそう打ち明けたら、励ますように肩を叩かれた。
「日影さんには野外設備を出して欲しい」
「野外設備?」
「イッツ・ア・スモールワールドだよ」
耳に息を吹き込むように囁かれて、日影の胸が高鳴る。折原の役に立てるかもしれない。甘やかして褒めてもらえるかも。もう一度、求めてもらえるかもしれない。
そう思ったらムクムクとやる気が出てきた。
「任せろ。お前が望むなら、俺はどんなものでも手に入れる」
「ワオ、男らしいね」
「報いたい」
真っ直ぐに折原の目を見つめて言った日影に、折原が目を細める。
(この真っ直ぐさにやられちゃうんだよな)
不器用で、人に誤解されてばかりでちょっと拗らせちゃった性格なのに、変な所で真っ直ぐで誠実だから、折原は胸を撃ち抜かれてしまう。
可愛くて可哀想。それだけなら親切にして終わりだったのに、異世界にまで攫ってきてしまった。
(もう帰せないって、わかってるのかな)
勿論、帰ることは可能だけれど、折原に帰す気はない。もしも日影が帰りたいと言っても、泣いても、帰してやれない。それは折原が一番よくわかっていた。
エルフの頼みなんてろくなものじゃなさそうだけど、折原はあっさりと頷いた。
「いいよ。詳しい話を聞かせて」
「おい、いいのか?」
思わず小声で囁いた日影に、折原は安心させるように微笑んだ。そして彼の頼みなら喜んで聞きたいのだと言う。
(なにそれ……面白くない)
日影は胸の奥がズキズキと痛んで、思わずシャツをきつく握りしめた。
彼は自分に優しかったように、他の誰にでも優しいのか。そう思うと、折原の優しさが憎たらしくなってくる。
日影は胸に込み上げてくる思いを堪え、下を向いて必死にやり過ごそうとした。
「もうすぐ、僕の姪が結婚するんだ」
静かに語り出したエルフをチラリと見る。
結婚する年齢の姪がいるってことは、結構歳がいってるのか。日影はほんの少しだけ安心した。
「おめでとう。新居は何処に構えるの?」
「それがねぇ、相手が山エルフなんだよ」
「あらら……。それは反対されるね」
「うん。姉たちから、止めてくれって言われてる」
聞けばエルフは違う種類のエルフとは仲が悪いそうで、むしろ他種族の方がまだましなのだそうだ。
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「草原エルフが空気の薄い山に住む下等なエルフとなんて、ってもう大反対されてる」
「向こうは?」
「向こうはそうでもないみたいだけど、ロバみたいに鈍重だとは言われてるね」
「ははぁ、よくも恋に落ちたね?」
「恋は備えても次元嵐の渦の外だよ」
ワットは何やらこちらの格言めいたことを言い、ウィンクを決めた。
「それで向こうで暮らすと言うから、僕くらいは祝ってやりたくてね。ウタには我が家秘伝の薬を届けて欲しいのと、他に何かしてやれることがないかの相談なんだけど」
「結婚祝いか……」
向こうで上手くやれるような取っ掛かり、あるいは身を守ってくれるような何か……と考え込む二人を見て、日影がぼそりと呟いた。
「うまい飯」
「えっ?」
「うまい飯を作ってくれて、歌を歌ってくれたら俺なら満足だし。祝われてるって思う」
「ん~、確かに外国ではサプライズパーティーをプレゼントしたり、サーカスを呼んだりするらしいね」
「サーカス……」
違うそういうんじゃない、と日影が抗議しようとしたら折原が笑いながら片目を瞑った。スゴイ。キラキラして、美形エルフに負けてない。
「由紀彦にも協力してもらっていい?」
「俺? 俺は鈍臭いし、料理も出来ないぞ」
言ってて情けなくなるが、日影は自転車にも乗れないし卵も割れない。仕事以外は呆れるくらい不器用な人間なのだ。
暗い顔でそう打ち明けたら、励ますように肩を叩かれた。
「日影さんには野外設備を出して欲しい」
「野外設備?」
「イッツ・ア・スモールワールドだよ」
耳に息を吹き込むように囁かれて、日影の胸が高鳴る。折原の役に立てるかもしれない。甘やかして褒めてもらえるかも。もう一度、求めてもらえるかもしれない。
そう思ったらムクムクとやる気が出てきた。
「任せろ。お前が望むなら、俺はどんなものでも手に入れる」
「ワオ、男らしいね」
「報いたい」
真っ直ぐに折原の目を見つめて言った日影に、折原が目を細める。
(この真っ直ぐさにやられちゃうんだよな)
不器用で、人に誤解されてばかりでちょっと拗らせちゃった性格なのに、変な所で真っ直ぐで誠実だから、折原は胸を撃ち抜かれてしまう。
可愛くて可哀想。それだけなら親切にして終わりだったのに、異世界にまで攫ってきてしまった。
(もう帰せないって、わかってるのかな)
勿論、帰ることは可能だけれど、折原に帰す気はない。もしも日影が帰りたいと言っても、泣いても、帰してやれない。それは折原が一番よくわかっていた。
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