限界社畜、異世界に連れ去られてよしよしされる

海野ことり

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【24】異世界デート-①

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「ハーティとティルだっけ? 君たちは本当に互いを想っている、で間違いないの? 性別はともかくとして、同族を相手に優しい気持ちになれる? 自分と同じだけ、大事に出来る?」
 折原はヴァンパイアが自分第一の種族だと知っているのでそう訊ねたが、二人はしっかりと頷いた。

「自分を遺すことが大事だと、それがヴァンパイアの本能だと知っている。それでも僕は自分よりもティルに遺って欲しいと思う」
 藤色が真剣な顔でそう言えば、浅葱色も同意して頷く。

「ハーティは不思議なんだ。力を使っていないのに、ずっと見てしまう。その視線をこっちに向けたいと思う」
「ティル……ずっと、僕の餌を狙っているんだと思ってた」
「あいつらは邪魔なだけさ。餌なら俺がやるよ」
 浅葱色に口説かれて、モジモジと着物の袖を弄くり回す藤色は可愛い。だが言ってることは可愛くない。

「餌って……。それ、お客さんには言ってないよね?」
「言ってない。言わずとも、知っているだろう」
「そうだけどね」
 折原は既に疲れた様子だが、協力すると約束したからにはと気を取り直した。

「よし、両想いなら話は早い。ダブルデートでもしようか」
「ダブルデート?」
「あれ、学生の時にしなかった?」
(してねぇよ)
 日影が心の中で答える。
 せいぜいが食事を一緒にしたことがあるくらいだ。

「デートの定番と言えば、遊園地とか水族館だけど――ここにはないな。由紀彦のイッツ・ア・スモールワールドで出すことも出来ないよね?」
「遊園地には、行ったことがない」
「一度も?」
「一度も」
 もの凄く驚かれているが、日影は特に行きたいと思ったことがない。それよりも――。

「水族館は、行きたかったけど……いつか行こうと思って、そのままになってた」
 休日出勤も当たり前だったので、たまの休みは気絶するように寝ていた。
 十年近く、仕事以外のことを考える余裕すらなかった。
 過去を振り返って、灰色がかった思考になるが、折原まで悄気た顔をしているのに気付いて日影は口角を上げた。

「だから、水族館のこともよく知らない。さすがに知らないものを具現化は、出来ない気がする」
「じゃあ、どうせなら、この街の観光デートに行こうか。あなたたちもそれでいい?」
 声をかけたら、ヴァンパイアたちはピンとこない様子だったが、全て折原に任せると言う。
 何をどうすればいいのかわからないが、番いたいという気持ちだけはあるようだ。

「ヴィーはどうする?」
 まさかヴァンパイアの長が付いてくる訳には行かないだろうが、見届けたいだろうと折原が訊ねたら、使い魔を付けると言う。

「使い魔って、ネズミとか?」
「馬鹿な。蝙蝠の方が便利に決まっている」
「定番過ぎてつまんない」
「声も拾えるぞ?」
「怖っ!」
 カメラ機能だけならともかく、音声も聞こえるとなると少し面倒かも知れない。
 万が一を考えて行動しなくては。

「観光のオススメってある?」
 折原が当てにしないで長に訊ねたら、意外なことに直ぐに返事が返ってきた。

夢幻回廊ギャラリーウォークがいいだろう」
「ギャラリーウォーク?」
 どうやら折原も初耳のようだ。

「我々が有り余る魔力を使い、覚えた魔法を披露する場だ。実際に見たらわかる」
(魔法……)
 日影は外のことに余り目がいかないが、さすがにこの世界に魔法があることには気が付いていた。
 折原や自分にスキルがあるように、この世界のヒトたちも様々なスキルを持つ。
 スキルはそのヒト固有のものだが、魔力を元にした魔法もあって、どちらも使えないヒトもいる。理不尽に思えるが、元々世の中とは不公平なものだ。
 それにスキルも魔法も、研鑽しなければ成長しない。
 持っているだけで安泰ということはない。
 因みに、ヴァンパイアは種族特性として魅了スキルを使える。

「その夢幻回廊は誰でも入れるの?」
「勿論」
「危なくない?」
「危険はないし、アミュレットがあれば安心だろう」
 それはハーティが捧げ持っていた盆に載っていた。
 氷山の欠片のような蒼白い石は、魅了スキルを弾き、他にも様々なものから身を守ってくれるという。

「おお、お洒落」
 白い石は携帯ストラップのように紐が付いていたので、日影と折原はそれぞれベルトに結んだ。
 魔力の高いヴァンパイアの長のアミュレットなら、報酬として十分だった。この時ばかりは、折原も素直に礼を言った。

「ありがとう」
「なに、同性で番えるようになれば、男体の多い我が種族も栄えるかもしれない」
 それはどうだろう、と思ったが日影は折原に手を引かれて城の外に出た。
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