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④お詫びのキス−1
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俺は朝食を食べながら酒造りの話を聞き、ガッカリと肩を落とした。
「アルコールの実って、なんだよそれ……」
この世界では酒は発酵させて造るものではなく、植物から直に採取するものだった。
当然、甘い酒は発見されていないし、葡萄酒みたいな果実酒もない(でも実から採れるんなら全て果実酒なのか?)。
よくわからないけど、蒸留酒みたいな強いアルコール果汁を水やお茶で割って飲むのが一般的なのだそうだ。
「チヤは酒は飲めるのか?」
「俺はまだ未成年だから、法律で飲んじゃいけないことになってる」
「でも飲んだことはあるだろう?」
「そりゃあ、少しくらいはあるけど……俺はスイーツの方がいいよ」
正直に言って、飲んでも余り美味いとは思わなかった。
サワーとかもアルコールの入っていない炭酸ジュースの方がいい。
「ならば噛み煙草はどうだ?」
「噛み煙草?」
俺は干した棗の実みたいなシワクチャの果実を渡され、口に入れてみた。
「しっぶぅぅぅぅぅ!」
噛んでも渋いし辛いしやたらと唾液が溢れてくるし、こんなの何処が美味しいの?
涙目で抗議するようにロクを見上げたら、苦笑して手のひらを差し出された。
「ほら、ここに出していいぞ。お前には合わなかったな」
合う人なんているの?
俺は遠慮なくぺぇさせて貰ってから水を飲んだ。
そうしたらなんか身体が震えてきて、目がチカチカして瞬いても瞬いても眩しくっていけない。頭がグルグルと回る。
「チヤ?」
「しびぇ……」
喋ろうにも舌がしびびっとして呂律が回らない。
これはマズイ。ロクが毒なんて盛る筈はないけれど、俺の身体には合わなかったようだ。
このままじゃ、キケン――。
「チヤッ!」
素早く立ち上がったロクが俺を抱き上げて部屋へ運んだ。
いっぱい水を飲まされて、背中を摩られながらロクに何度も謝られる。
「済まない、本当に済まない。代わりの嗜好品を見付けられたらと思ったんだが……」
そっか。酒も噛み煙草もこっちでは普通の嗜好品なんだな。
俺が甘い物を食べられなくて辛そうだから、それで代わりを見付けようとしてくれたのか。
「ロク……あぃがと」
にこりと笑ったらロクが思い詰めた顔をして、俺に口付けてきた。
(無理しなくていいのに)
そう思ったけど、折角なので美味しいものを想像する。
甘いバナナタルトとか、カスタードクリームたっぷりのレモンパイ、クリームを添えたタルトタタンにバニラアイス。
チョコファッジ、クレームブリュレ、キャラメルプディング……。
「済まない」
甘味の幸福に酔いしれてトロトロになった俺からロクが顔を背けた。
痺れた舌がすっかり甘いのに塗り替えられて俺は幸せだったんだけど、ロクには辛かったよね。
ごめんね、ありがとう。
ロクの膝から降りようとした俺を、ロクの腕が阻止するように動いた。
「ロク?」
匂いだけでも辛い癖に何をやっているんだか。
「俺はもう平気だよ。あんたの捨て身の献身のお陰ですっかり元通りになった」
虫のいい話だけれど、俺の身体は甘味を摂った事ですっかり回復していた。
流石、甘味は万能薬だぜ。
「まだ身体に力が戻っていない。暫くこうしていろ」
この黒豹は意外に過保護なのかそんな事を言い、俺を自分の胸に寄り掛からせるように抱え直した。
(面倒見がいい奴ぅ。俺なんてお前が止めなきゃずっと舌を啜ってたのに)
おまけに恐怖を感じたら無味無臭になれるのに、俺はこいつの腕の中ですっかり安心しきってしまって甘くなるのを止められない。
こいつには迷惑なのに、決して傷付けないとわかってるからここが俺にとってはこの世界で一番安心出来る場所なんだ。
(頼っちゃいけないのに……)
そう思う気持ちとは裏腹に、俺はロクの服をギュッと掴んでしまう。
ロクは俺に甘い物の代わりをあてがおうとしたのに。
「ごめんな?」
そう言って顔を見上げたら、もう一度口が下りてきた。
黒豹とキスなんて、考えた事も無かったよ。
「ふぁっ……」
ピチャピチャという水音が背筋をゾクゾクさせた。
俺が食ってるのに、食われてるみたいで興奮する。
きっと舌が引っ掛かりでもしたら破けてしまう鋭い牙が、舐めると美味しくて堪らない。
夢中であちこち味わっていたらロクの舌が俺の上顎を擦って、こんなところも感じるんだなと思っているうちにズルリと奥まで入り込まれる。
(ヤバイ。これなんかヤバイ……)
いつの間にか大きく開けた口いっぱいに舌が入ってきていて、俺は背中を反らせてギュウと腕にしがみついた。
キュンと身体の奥で何かが弾け、舌を抜かれたらくったりとしてしまった。
「……済まない」
なんで謝られたのかもわからないまま、後頭部を手のひらで押されて顔を胸に押し付けられ、そのまま気を失うように眠ってしまった。
気が付いたら一時間近く経っていて、やけにスッキリと目が覚めた。
「ごめん、出掛けようって言ってたのに。でも眠ったら噛み煙草の影響も完全に抜けたみたい」
「それは良かった」
俺は穏やかなロクの顔を見ながら必死に笑顔を装ったけれど、内心では冷や汗がダラダラだった。
(やっばい、完全に欲情してた。途中から甘味が味わいたいって目的が飛んでた)
俺はホモじゃないし、動物の顔をしてる人にその気になる筈なんて無かった。
でももしかしたら、俺の体液は獣人を興奮させるだけじゃなく俺自身にも効くのかもしれない。
飛び掛かってこなかったところを見ると、ロクには効かないようだが……。
(うぅぅ、俺がロクを襲わないように気を付けよう)
俺はホイホイと甘味に釣られる自分を反省した。
そしてこの村の視察に出掛けた。
「アルコールの実って、なんだよそれ……」
この世界では酒は発酵させて造るものではなく、植物から直に採取するものだった。
当然、甘い酒は発見されていないし、葡萄酒みたいな果実酒もない(でも実から採れるんなら全て果実酒なのか?)。
よくわからないけど、蒸留酒みたいな強いアルコール果汁を水やお茶で割って飲むのが一般的なのだそうだ。
「チヤは酒は飲めるのか?」
「俺はまだ未成年だから、法律で飲んじゃいけないことになってる」
「でも飲んだことはあるだろう?」
「そりゃあ、少しくらいはあるけど……俺はスイーツの方がいいよ」
正直に言って、飲んでも余り美味いとは思わなかった。
サワーとかもアルコールの入っていない炭酸ジュースの方がいい。
「ならば噛み煙草はどうだ?」
「噛み煙草?」
俺は干した棗の実みたいなシワクチャの果実を渡され、口に入れてみた。
「しっぶぅぅぅぅぅ!」
噛んでも渋いし辛いしやたらと唾液が溢れてくるし、こんなの何処が美味しいの?
涙目で抗議するようにロクを見上げたら、苦笑して手のひらを差し出された。
「ほら、ここに出していいぞ。お前には合わなかったな」
合う人なんているの?
俺は遠慮なくぺぇさせて貰ってから水を飲んだ。
そうしたらなんか身体が震えてきて、目がチカチカして瞬いても瞬いても眩しくっていけない。頭がグルグルと回る。
「チヤ?」
「しびぇ……」
喋ろうにも舌がしびびっとして呂律が回らない。
これはマズイ。ロクが毒なんて盛る筈はないけれど、俺の身体には合わなかったようだ。
このままじゃ、キケン――。
「チヤッ!」
素早く立ち上がったロクが俺を抱き上げて部屋へ運んだ。
いっぱい水を飲まされて、背中を摩られながらロクに何度も謝られる。
「済まない、本当に済まない。代わりの嗜好品を見付けられたらと思ったんだが……」
そっか。酒も噛み煙草もこっちでは普通の嗜好品なんだな。
俺が甘い物を食べられなくて辛そうだから、それで代わりを見付けようとしてくれたのか。
「ロク……あぃがと」
にこりと笑ったらロクが思い詰めた顔をして、俺に口付けてきた。
(無理しなくていいのに)
そう思ったけど、折角なので美味しいものを想像する。
甘いバナナタルトとか、カスタードクリームたっぷりのレモンパイ、クリームを添えたタルトタタンにバニラアイス。
チョコファッジ、クレームブリュレ、キャラメルプディング……。
「済まない」
甘味の幸福に酔いしれてトロトロになった俺からロクが顔を背けた。
痺れた舌がすっかり甘いのに塗り替えられて俺は幸せだったんだけど、ロクには辛かったよね。
ごめんね、ありがとう。
ロクの膝から降りようとした俺を、ロクの腕が阻止するように動いた。
「ロク?」
匂いだけでも辛い癖に何をやっているんだか。
「俺はもう平気だよ。あんたの捨て身の献身のお陰ですっかり元通りになった」
虫のいい話だけれど、俺の身体は甘味を摂った事ですっかり回復していた。
流石、甘味は万能薬だぜ。
「まだ身体に力が戻っていない。暫くこうしていろ」
この黒豹は意外に過保護なのかそんな事を言い、俺を自分の胸に寄り掛からせるように抱え直した。
(面倒見がいい奴ぅ。俺なんてお前が止めなきゃずっと舌を啜ってたのに)
おまけに恐怖を感じたら無味無臭になれるのに、俺はこいつの腕の中ですっかり安心しきってしまって甘くなるのを止められない。
こいつには迷惑なのに、決して傷付けないとわかってるからここが俺にとってはこの世界で一番安心出来る場所なんだ。
(頼っちゃいけないのに……)
そう思う気持ちとは裏腹に、俺はロクの服をギュッと掴んでしまう。
ロクは俺に甘い物の代わりをあてがおうとしたのに。
「ごめんな?」
そう言って顔を見上げたら、もう一度口が下りてきた。
黒豹とキスなんて、考えた事も無かったよ。
「ふぁっ……」
ピチャピチャという水音が背筋をゾクゾクさせた。
俺が食ってるのに、食われてるみたいで興奮する。
きっと舌が引っ掛かりでもしたら破けてしまう鋭い牙が、舐めると美味しくて堪らない。
夢中であちこち味わっていたらロクの舌が俺の上顎を擦って、こんなところも感じるんだなと思っているうちにズルリと奥まで入り込まれる。
(ヤバイ。これなんかヤバイ……)
いつの間にか大きく開けた口いっぱいに舌が入ってきていて、俺は背中を反らせてギュウと腕にしがみついた。
キュンと身体の奥で何かが弾け、舌を抜かれたらくったりとしてしまった。
「……済まない」
なんで謝られたのかもわからないまま、後頭部を手のひらで押されて顔を胸に押し付けられ、そのまま気を失うように眠ってしまった。
気が付いたら一時間近く経っていて、やけにスッキリと目が覚めた。
「ごめん、出掛けようって言ってたのに。でも眠ったら噛み煙草の影響も完全に抜けたみたい」
「それは良かった」
俺は穏やかなロクの顔を見ながら必死に笑顔を装ったけれど、内心では冷や汗がダラダラだった。
(やっばい、完全に欲情してた。途中から甘味が味わいたいって目的が飛んでた)
俺はホモじゃないし、動物の顔をしてる人にその気になる筈なんて無かった。
でももしかしたら、俺の体液は獣人を興奮させるだけじゃなく俺自身にも効くのかもしれない。
飛び掛かってこなかったところを見ると、ロクには効かないようだが……。
(うぅぅ、俺がロクを襲わないように気を付けよう)
俺はホイホイと甘味に釣られる自分を反省した。
そしてこの村の視察に出掛けた。
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