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⑮だから黙っていたのに−1(R−18)

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 俺はロクには何も告げず、ただ川に落ちたとだけ言っておいた。
 レオポルトのした事をロクが知ったら本当に腕を切り落とすかも知れないし、あんな目に遭ったのを説明するのも嫌だった。説明することでもう一度傷付くような気がした。


「チヤ、食後の甘い物は?」
「……今日はいい。疲れたから早く寝る」
 レオポルトがいる場所で甘い匂いなんてさせたくない。
 これ以上、俺が食い物だと思われたくない。

「そうか。なら抱いて寝るからこっちに来い」
 ロクに腕を差し出されて躊躇する。
 地面になんて寝たら俺のヤワな身体は一発でガタガタになる。
 でも触れたら気付かれるかもしれない。レオポルトにされた事を思い出して身体を硬くしてしまい、不審に思ったロクに問い質されるかもしれない。

「チヤ?」
 躊躇ってはいても、重ねて呼ばれると抗えない。
 だって本当はロクのモフモフに包まれたい。獅子のこわい毛なんかじゃなく、黒豹のすべすべした毛に包まれて眠りたい。
 異世界一安心できる場所で、俺はこの腕の中にいて良いんだって確かめたい。

「ロク……やっぱキスしてもい? 甘くしないから、キスだけ……」
 甘くないキスに意味なんてないけど、ロクは断らなかった。
 薄く口を開いて牙も舌も俺の好きなように触らせた。

「ロク……」
 チュッ、チュチュッと音を立てて舌を吸ったら、ロクからもピチャピチャと啜るように吸い返された。
 水音がいやらしく、離れた場所で眠るレオポルトが身体を硬くしたような気がしたけど止まらない。
 甘くないキスはどんどんエスカレートしていって、ロクがハフハフと荒い息を吐いていた。

「チヤ、私を止めてくれ……」
「やだ。もうちょっと……」
 俺は止めるどころか服を乱されてもっとして欲しいと思ってしまった。
 ロクが俺の首筋をペロペロと舐め続け、それだけでも感じてしまってしようがない。

「アッ、ふあっ」
「声は抑えて」
 なんで声を出しちゃいけないのかわからないまま、言われた通りに耐えたら出口の無い熱が身体の中でぐるぐると回って体温がどんどん上がっていった。
 胸の尖りを吸われ、泣くほど感じていたら前を撫でられた。

「ふぇ?」
「駄目か?」
 甘くないのにココを触っても、ロクにはちっとも楽しくない筈で――。

(いや、甘いのを出してる時の方が苦痛なのか?)
 だったら今の方がマシなのか、と思いコクリと頷いた。
 そうしたら寛げた前を直に合わされ、グリグリと押し潰すように掴んだ腰を揺らされた。

(うわっ、ロクのに初めて触れた……)
 合わさった所が火傷しそうに熱い。
 ロクは自分の身体を俺に見せようとしなかったので、俺が彼の欲望に触れるのはこれが初めてだ。
 激しくいきり立ってガチガチになっているモノが当たって、服の下でこんな風になっていたのかと思ったら堪らなくなった。

「ロクッ!」
 早く、もっと、激しく俺を擦って揺らして。
 いっぱい突いて、痛いくらいに刺して、俺を虐めて。

「ロクッ、ロクッ!」
 どうしよう。どうしたらいいのかわからない。
 名前を呼ぶだけで精一杯で、気持ちよくて、止めて欲しくなくて。

「ロクぅ……」
 爪を立ててしがみ付いたらグッと一際強く抱き締められた。
 グルグルと喉の奥で唸り声を上げ、股間を濡らした男が可愛い。
 強面の黒豹なのに、俺を脅かさないように気を遣ってくれている獣人が可愛い。
 俺は触れるだけのキスをして、それからロクの濃紺の瞳を見て囁いた。

「きっとまたしてね。これっきりなんて嫌だよ?」
「だが――」
「声を出さなければ、シてもいいんでしょう?」
「……」
 複雑な目の色を見せるロクには何か葛藤があるのかもしれない。
 それでも俺はこれが欲しい。
 ロクが感じている姿を見たいし、隠さず俺を求めて欲しい。

「チヤ……私はお前を断る事が出来ない」
「うん。しようがないよ。だってあんたを誘惑するって言っただろ?」
「まだ負けてない」
 往生際の悪いロクの言葉に小さく笑う。

「いいよ、勝負はまだ途中だ」
「チヤ、これ以上は――」
「シッ。今夜はもうおしまい。おとなしく寝よう」
「……」
「続きはまた明日ね」
 そう言ってにこりと笑ったら、ロクが溜め息を吐いた。
 理由はわからないが、ロクは俺を断る事が出来ない。
 拒む事が出来ない。
 でも最後まではしない。

(もしかしたら不本意なのかもしれない)
 そうは思ったけれど、俺にはロクがくれるものを少しでも多く受け取る事しか考えられない。
 だって俺にはそれしか出来ないもの。
 俺は満足感で胸を満たして、ロクの上で目を瞑った。
 色々とあったけど最後はとても満ち足りた夜だった。
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