【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

海野ことり

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51.プロジェクト始動―2

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「立ち聞き? 趣味が悪いよ」
「申し訳ありません、お声をかける機会を失っておりました」
「イチヤ様、私も気付いていながら何も言いませんでした」
 ウィリアムを庇うようにジェスがそう言い、俺は肩を竦めて不問に付す。

「いいけどさ、ウィリアムには気に入らないかもしれないよ? 俺は獣神への信頼を弱めて、大神を信仰させようとしているんだからね」
 別に大神は人間の神様ではないんだけど、姿形からそう思われかねない。
 獣人が人間の神を信仰するのはきっと難しいと思うんだ。

「私が大神を信仰することはとても難しく、場合によっては無理かもしれません。ですが人に信仰させることは出来ます」
「仕事として?」
「ロクサーン侯爵家の執事長としてです」
 それなら大丈夫かな? 人の信仰を変えることは難しいけど、仕事ならちゃんとやってくれるだろう。

「わかった。経典の監修はウィリアムにお願いするよ。あと祈りを捧げる場所――教会でも神殿でもなんでもいいけど、集う場所が必要だね。診療所を併設して薬を売りたい」
「それは私が手配しよう」
 ロクが重々しくそう言ってくれたのでホッとした。
 領主が主体になってやればお客さ――領民もいっぱいくるだろうからね。
 進めやすいよ。

「特級薬はどうする?」
「それは中級が知れ渡ってから勿体を付けて上級を売り、ここぞという時に特級薬を出しましょう」
「わかった。特級薬の販売は俺かロクのどちらかの承認を必要としよう」
「畏まりました」
 恭しくジェスが頭を垂れた。
 本当は死にそうな人には誰でも薬を渡したい。
 でも薬の数には限りがあるし、そうはいかないこともわかっている。
 だからせめて、お金以外の入手手段も設けておこう。

「診療所での診察は無料にして、薬は費用を貰おう。軟膏と丸薬は常備薬にして貰えるように安く設定して、入れ物にシンボルマークを入れて。マークは誰でも描けるような簡単な物――五芒星でいっか。こっちで見たことないしね」
 そう言いながら俺はサラサラ~ッと星マークを描いた。
 何故か周りは感心してくれたけど、こんなの誰でも描けるからね?

「あ、シンボルマークは紙に描いたりアクセサリーにして御守りとして売るから。素材は魔除けになるシルバーが良いかな」
 こういう小物の販売って馬鹿に出来ないんだよね。
 インディーズバンドをやってる友達が、物販の売上げは大事だとよく言っていた。

「それなら宝石としての価値はありませんが、綺麗な石と組み合わせても良いかもしれません」
「なにそれ、貴石ってやつ? この辺で採れるの?」
「採掘場から売れない石が沢山出まして、どうにかならないかと思っていたのです」
 それは磨いて綺麗になるなら数珠に加工だね。
 色によって効果が違いますって謳って、パワーストーンとして売ろう。
 五芒星の真ん中にパワーストーンを付けてもいいかもしれない。

「ロク、教会には売店コーナーも作ってね。軟膏と丸薬、御守りとパワーストーンを売って儲けるよ!」
「では売り子もいるな」
「売り子の制服もだよ」
 巫女服は無理でもシスターっぽい格好はして欲しい。
 いや別にコスプレ趣味なんて無いですよ?

「経典はどうする?」
 ロクの言葉にキョトンとしてしまう。
 どうするってなにが?

「販売するのか? それとも門外不出にして、教主からのみ語らせるのか?」
 あっ、そういう手もあるのか!
 教主、もしくは神官? とにかく大神に仕える人にだけ経典を覚えさせ、信者は教会に来てありがたい教えを聞くってやり方もある訳だ。
 情報は同じレベルで広く拡散してしまう方がいいって思ってたけど、勿体振って権威を高めるってのもありなんだな。

「そこはウィリアムの意見を聞きたいな」
「領民の識字率の問題もありますので、ごく簡単な文句や一節を書いた紙を配布すれば良いでしょう」
「お、それも売れる――いや、それはタダにした方がいいな。広めるのが先だわ」
 余り金に汚いと見限られちゃうからね。
 バランスが大事だ。

「何にせよ、経典の完成が急がれるな」
「う……メルにお願いして超特急で仕上げるぅ」
「無理はするな。施設を用意するのも時間が掛かる」
「うん。神薬も作らなくちゃいけないしな」
「ハヌマーンが来たら、奴にやらせればいい」
「ハハッ、堕神が従業員って凄いね」
 思わず笑っていたら髪をくしゃりと掻き回された。

「余り焦るな。大神から褒美を貰えたら、その普及だってするんだろう?」
「うん。甘いものを下界に広めるのは重要な使命だからねっ!」
「先は長いのだから焦るな」
「わかった」
 俺は頷きながらロクにキュッと抱き着いた。
 やることがいっぱいある。
 楽しくて忙しい。
 それを大好きな人と一緒に出来ることが、俺は何よりも嬉しいのだった。
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