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62.新たな甘味と引き寄せられたモノ―2
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「やった! サトウキビだ!」
なんでメープルシロップが採れるような涼しい地方でサトウキビが生えてるのかは謎だけど、ここは異世界なのでそういうものだと思うことにする。
俺はちゃんと甘いか確認する為に節を折ろうと手をかけ、途端にブシュッ! と中から爆ぜるように飛び散ったデロデロの液体まみれになる。
「うぇええ~、なんだよこれ~」
トロミのある大根おろしみたいな白い物が、頭からも肩からもボタボタと落ちる。
気持ちが悪いとは思ったけど、それを掬って口に含んでみたら確かに甘かった。
「収穫方法を考えなくちゃいけないけど、確かにサトウキビみたいだ」
これで砂糖が出来る。
農耕栽培が出来ればいずれは誰でも食べられるようになる。
「お菓子とか、甘い飲み物とか、シロップ漬けとか……思い出せるものは全部作るんだ」
砂糖さえあれば、これでもう俺の目標の半分は達せられた気がする。
ロクがいて、甘い物があったら他には何もいらない。元の世界になんて帰らなくてもいい。
(こんなに順調で良いのかなぁ……)
俺はなんだか急に怖くなってブルッと震えた。
もっと大変だと思ったのに、順調に信徒は増えているし少なかった生産量を増やす目処も立った。
探していた甘味は見つかったし、後は強欲そうな鷲型獣人の王様の手に落ちないように気を付ければいい。
獣神の侵攻を事前に防ぎ、人間への差別を少しでも無くし、より良い社会を作って俺たちもそこに暮らす。
言葉にすれば本当に簡単だけれど――。
(でもそんなに上手くいく?)
俺は決して悲観的な性格じゃないけれど、どうしても疑わずにはいられない。
上手く行きすぎていると落とし穴があるんじゃないかと思ってしまう。
騙されているようで気持ちが落ち着かない。
(これが考えすぎ、夢にまで見た砂糖が手に入る事が信じられなくて――とかならいいんだけど)
俺が煮え切らない態度でじっと立ち尽くしていたら、駆け付けてきたロクが俺の姿を見て鼻を引くつかせ、直ぐに抱え上げて館の方に走り出した。
「ちょ、ロク!? どうしたの? サトウキビを見つけたから、採取して調べなくちゃ――」
「後だ!」
ロクは吠えるようにそう言うと俺が目を開けていられないくらいのスピードで走り、急に止まった。
「ぐえっ!」
神様の加護はあっても肉体の脆弱な俺はロクの肩の上で目を回していた。
猛スピードでの移動と、急停止って勘弁して欲しい。
「チヤ、目を瞑ってしがみついていろ」
「えっ、なに?」
「お前のその甘い匂いを嗅ぎ付けて集まってきた」
「なにが――」
俺はロクの言っている事がわからずにふらつく頭を押さえながらそろそろと後ろを向いた。
するとそこには化け物としか思えないような緑の小鬼が涎を垂らして歯を剥いていた。
「ゴッ、ゴブリン!?」
まさかゲームの世界で有名な雑魚キャラを目にするとは思わなかった。
それにこの世界に魔物はいないと思ったのに、ゴブリンって魔物だよね?
「ゴブリン? 随分と可愛い呼び方だな。あれは餓鬼だ」
「餓鬼……」
「人間を好んで喰う獣だ。しかも甘い物が好物らしく、メープルシロップが発見されてから多数の目撃証言が集まっていた。この国の餓鬼が一斉にこの地方を目指しているらしい」
「聞いてないよっ!」
俺はロクにも神様にも文句を言いたい気分だった。
そんな厄介なモノがいるなら事前に教えて欲しかった。
「甘い物が好物だなんて誰も知らなかった」
「ウッ、これまでは無かった事態だからか……」
新たな発見には新たなトラブルが付き物だ。
物事は良い側面ばかりじゃない。それが俺の不安の原因だった。
「人間って邪魔な毛とか牙とか角がなくて、柔らかくて食べやすいのかなぁ」
「おまけに味付けまでされているしな」
ふわふわのスポンジに甘くてとろりとしたクリームが掛かっていたら俺だって武者振りつくもの……って、俺はケーキじゃない!
「あいつらって強いの?」
「三匹いたら普通の人間ならやられる。冒険者でも対応できるのは四匹までだな」
チッ、ゲームでは雑魚キャラだったのに、こっちの世界じゃ結構強いじゃないか。
「俺、生きたまま食べられるのはヤダよ?」
なんとかしっかりしようと思うんだけど目に涙が滲んでしまう。
ロクの事は信用してるけど、それでも怖いもん。
「大丈夫だ。しっかりと掴まって、俺が良いと言うまで目を閉じていろ」
「うん。わかった」
俺はロクの首にギュッとしがみつき、涙で濡れた目をきつく瞑った。
ギシギシという軋んだような鳴き声が辺りに充満し、ゴブリン――餓鬼が無数に集まってきているのがわかった。
俺たちは絶体絶命のピンチだった。
なんでメープルシロップが採れるような涼しい地方でサトウキビが生えてるのかは謎だけど、ここは異世界なのでそういうものだと思うことにする。
俺はちゃんと甘いか確認する為に節を折ろうと手をかけ、途端にブシュッ! と中から爆ぜるように飛び散ったデロデロの液体まみれになる。
「うぇええ~、なんだよこれ~」
トロミのある大根おろしみたいな白い物が、頭からも肩からもボタボタと落ちる。
気持ちが悪いとは思ったけど、それを掬って口に含んでみたら確かに甘かった。
「収穫方法を考えなくちゃいけないけど、確かにサトウキビみたいだ」
これで砂糖が出来る。
農耕栽培が出来ればいずれは誰でも食べられるようになる。
「お菓子とか、甘い飲み物とか、シロップ漬けとか……思い出せるものは全部作るんだ」
砂糖さえあれば、これでもう俺の目標の半分は達せられた気がする。
ロクがいて、甘い物があったら他には何もいらない。元の世界になんて帰らなくてもいい。
(こんなに順調で良いのかなぁ……)
俺はなんだか急に怖くなってブルッと震えた。
もっと大変だと思ったのに、順調に信徒は増えているし少なかった生産量を増やす目処も立った。
探していた甘味は見つかったし、後は強欲そうな鷲型獣人の王様の手に落ちないように気を付ければいい。
獣神の侵攻を事前に防ぎ、人間への差別を少しでも無くし、より良い社会を作って俺たちもそこに暮らす。
言葉にすれば本当に簡単だけれど――。
(でもそんなに上手くいく?)
俺は決して悲観的な性格じゃないけれど、どうしても疑わずにはいられない。
上手く行きすぎていると落とし穴があるんじゃないかと思ってしまう。
騙されているようで気持ちが落ち着かない。
(これが考えすぎ、夢にまで見た砂糖が手に入る事が信じられなくて――とかならいいんだけど)
俺が煮え切らない態度でじっと立ち尽くしていたら、駆け付けてきたロクが俺の姿を見て鼻を引くつかせ、直ぐに抱え上げて館の方に走り出した。
「ちょ、ロク!? どうしたの? サトウキビを見つけたから、採取して調べなくちゃ――」
「後だ!」
ロクは吠えるようにそう言うと俺が目を開けていられないくらいのスピードで走り、急に止まった。
「ぐえっ!」
神様の加護はあっても肉体の脆弱な俺はロクの肩の上で目を回していた。
猛スピードでの移動と、急停止って勘弁して欲しい。
「チヤ、目を瞑ってしがみついていろ」
「えっ、なに?」
「お前のその甘い匂いを嗅ぎ付けて集まってきた」
「なにが――」
俺はロクの言っている事がわからずにふらつく頭を押さえながらそろそろと後ろを向いた。
するとそこには化け物としか思えないような緑の小鬼が涎を垂らして歯を剥いていた。
「ゴッ、ゴブリン!?」
まさかゲームの世界で有名な雑魚キャラを目にするとは思わなかった。
それにこの世界に魔物はいないと思ったのに、ゴブリンって魔物だよね?
「ゴブリン? 随分と可愛い呼び方だな。あれは餓鬼だ」
「餓鬼……」
「人間を好んで喰う獣だ。しかも甘い物が好物らしく、メープルシロップが発見されてから多数の目撃証言が集まっていた。この国の餓鬼が一斉にこの地方を目指しているらしい」
「聞いてないよっ!」
俺はロクにも神様にも文句を言いたい気分だった。
そんな厄介なモノがいるなら事前に教えて欲しかった。
「甘い物が好物だなんて誰も知らなかった」
「ウッ、これまでは無かった事態だからか……」
新たな発見には新たなトラブルが付き物だ。
物事は良い側面ばかりじゃない。それが俺の不安の原因だった。
「人間って邪魔な毛とか牙とか角がなくて、柔らかくて食べやすいのかなぁ」
「おまけに味付けまでされているしな」
ふわふわのスポンジに甘くてとろりとしたクリームが掛かっていたら俺だって武者振りつくもの……って、俺はケーキじゃない!
「あいつらって強いの?」
「三匹いたら普通の人間ならやられる。冒険者でも対応できるのは四匹までだな」
チッ、ゲームでは雑魚キャラだったのに、こっちの世界じゃ結構強いじゃないか。
「俺、生きたまま食べられるのはヤダよ?」
なんとかしっかりしようと思うんだけど目に涙が滲んでしまう。
ロクの事は信用してるけど、それでも怖いもん。
「大丈夫だ。しっかりと掴まって、俺が良いと言うまで目を閉じていろ」
「うん。わかった」
俺はロクの首にギュッとしがみつき、涙で濡れた目をきつく瞑った。
ギシギシという軋んだような鳴き声が辺りに充満し、ゴブリン――餓鬼が無数に集まってきているのがわかった。
俺たちは絶体絶命のピンチだった。
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