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65.王都再来-1(R−15)
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「なぁ、本当にこれが普通なのか?」
今回のお披露目の為に特別に仕立てた薄物を纏わされた俺は、その妖しさにドン引きだった。
オーロラみたいに輝く布は煌々しく高級そうなんだけど、うっすらと肌が透けて見えるのがまるで裸で歩いているようで恥ずかしい。
正直に言って、性に対してオープンなこっちの人たちに、こんな淫靡な衣装を作れるなんて思っていなかった。
「人間のデザイナーが作っていますからね。やはり獣人に見初められるのは出世なので、獣人の気を引く衣装は研究されているのですよ」
「やだやだ、本当に売り物みたいだね」
俺はロクに見せ物になってもいいとは言ったが、実際にそういう用途の服を身に着けると気分が下がった。
この格好で鷲型獣人の国王や貴族たちの前に出なきゃいけない。
正式に番の許可を得る為だから、一度は仕方がないと納得しているけど憂鬱だ。
「チヤ、その上から身体が隠れる布を被ってもいいんだぞ」
「どっかの国じゃそういう習慣もあるそうだけどね、でも流石にそれは不味いでしょ。いいよ、俺は何もわかりません、何も出来ませんって顔でロクにくっついてるから」
「必ず、守る」
「うん。信じてるよ」
誰かに不埒な真似をされたり、国王に目を付けられてもロクがなんとかしてくれる。
こっちは王家に対する忠誠心は無くてもこの国に所属しているメリットはあるので、出来れば敵対せず上手く躱して穏便な関係を築きたい。
だから多少のことは我慢するつもりだ。
「でも、実は俺よりもロクの方がヤバイ感じだよね」
「そうか? 確かに身体は大きくなったが、そんなに変わってないだろう?」
「なに言ってんの? 獣神みたいに神々しいって、あんたの姿を後ろから拝む人が跡を絶たないじゃん」
ロクの自分の容姿に対する自己評価の低さは本当にどうにかして欲しい。
神格を得て一回り大きくなった堂々たる体躯は、強いものに無条件で惹かれる獣人たちの羨望を一身に集めている。
それに神通力は無いと本人は言っているが、千里眼や身体強化や超感覚を身に着けたロクは一種の超人で、ただ人とはオーラが違う。
そんなロクの治める領地が、メープルシロップや砂糖、神薬など見たことのないものを売りに出した。
しかも売れている。
注目度は抜群に違いない。
「ロクにそんな気が無くても、ロクを見た人は勝手に色んな想像をするよ」
何故こんなに姿が良くなったのか、新しい作物や商品を次々と出している秘訣は何か、中央政治から急に手を引いたように見えるけれど本気なのか?
ロクの変化が様々な憶測を呼ぶのはまず間違いがない。
「それでなくても、これだけ色々とやらかしているんだから、周りが騒ぐのは仕方がないけどね」
「わかっている。それでも一度は姿を見せて、はっきりと害意無しと言えば、ある程度は抑え込める」
「その姿勢を打ち出す為にも行くんだもんね?」
「一番はお前に公的な立場を与える為だ」
「ふふん。わかってるよ」
俺は顔を上げてロクの顎下にチュッと口付けた。
公式な場所で俺を番だと紹介すれば、国王だって簡単には手を出せない。
気にせずやりそうなマキシム卿は既に処理している。
「レオポルトは無視しろよ」
ロクに低い声で警告され、俺はそう言えば王城にはそんな獣人もいたなと思い出す。
「よせよ、もう忘れてたんだから」
「向こうは忘れていまい」
「そんな訳ないって。あれから何ヶ月も経ってるんだぜ?」
「だがお前のそんな姿を見てはな」
「じゃあ、もう少し厚手の服にして――」
「却下だ。せっかく似合っているのだから、それがいい」
予想外に俺の格好を気に入ったらしいロクが、フンフンと鼻息も荒く首筋や耳の後ろに鼻を擦り付けてくる。
ロクに似合うと言われて、俺も悪い気はしない。
「じゃあ、帰ってきたらこの格好でしようか?」
「それはいいな。そうしよう」
俺はロクの鼻息がくすぐったくて、クスクスと笑った。
「お館様、イチヤ様、そろそろ出発されませんと、後の予定が詰まっております」
「ああ、わかった。直ぐに出るよ」
俺は普通の格好に着替えてロクと天馬に乗った。
いつもなら馬車で移動するのだが、今回は少しでも早く着けるよう天馬を利用することにした。
今回のお披露目の為に特別に仕立てた薄物を纏わされた俺は、その妖しさにドン引きだった。
オーロラみたいに輝く布は煌々しく高級そうなんだけど、うっすらと肌が透けて見えるのがまるで裸で歩いているようで恥ずかしい。
正直に言って、性に対してオープンなこっちの人たちに、こんな淫靡な衣装を作れるなんて思っていなかった。
「人間のデザイナーが作っていますからね。やはり獣人に見初められるのは出世なので、獣人の気を引く衣装は研究されているのですよ」
「やだやだ、本当に売り物みたいだね」
俺はロクに見せ物になってもいいとは言ったが、実際にそういう用途の服を身に着けると気分が下がった。
この格好で鷲型獣人の国王や貴族たちの前に出なきゃいけない。
正式に番の許可を得る為だから、一度は仕方がないと納得しているけど憂鬱だ。
「チヤ、その上から身体が隠れる布を被ってもいいんだぞ」
「どっかの国じゃそういう習慣もあるそうだけどね、でも流石にそれは不味いでしょ。いいよ、俺は何もわかりません、何も出来ませんって顔でロクにくっついてるから」
「必ず、守る」
「うん。信じてるよ」
誰かに不埒な真似をされたり、国王に目を付けられてもロクがなんとかしてくれる。
こっちは王家に対する忠誠心は無くてもこの国に所属しているメリットはあるので、出来れば敵対せず上手く躱して穏便な関係を築きたい。
だから多少のことは我慢するつもりだ。
「でも、実は俺よりもロクの方がヤバイ感じだよね」
「そうか? 確かに身体は大きくなったが、そんなに変わってないだろう?」
「なに言ってんの? 獣神みたいに神々しいって、あんたの姿を後ろから拝む人が跡を絶たないじゃん」
ロクの自分の容姿に対する自己評価の低さは本当にどうにかして欲しい。
神格を得て一回り大きくなった堂々たる体躯は、強いものに無条件で惹かれる獣人たちの羨望を一身に集めている。
それに神通力は無いと本人は言っているが、千里眼や身体強化や超感覚を身に着けたロクは一種の超人で、ただ人とはオーラが違う。
そんなロクの治める領地が、メープルシロップや砂糖、神薬など見たことのないものを売りに出した。
しかも売れている。
注目度は抜群に違いない。
「ロクにそんな気が無くても、ロクを見た人は勝手に色んな想像をするよ」
何故こんなに姿が良くなったのか、新しい作物や商品を次々と出している秘訣は何か、中央政治から急に手を引いたように見えるけれど本気なのか?
ロクの変化が様々な憶測を呼ぶのはまず間違いがない。
「それでなくても、これだけ色々とやらかしているんだから、周りが騒ぐのは仕方がないけどね」
「わかっている。それでも一度は姿を見せて、はっきりと害意無しと言えば、ある程度は抑え込める」
「その姿勢を打ち出す為にも行くんだもんね?」
「一番はお前に公的な立場を与える為だ」
「ふふん。わかってるよ」
俺は顔を上げてロクの顎下にチュッと口付けた。
公式な場所で俺を番だと紹介すれば、国王だって簡単には手を出せない。
気にせずやりそうなマキシム卿は既に処理している。
「レオポルトは無視しろよ」
ロクに低い声で警告され、俺はそう言えば王城にはそんな獣人もいたなと思い出す。
「よせよ、もう忘れてたんだから」
「向こうは忘れていまい」
「そんな訳ないって。あれから何ヶ月も経ってるんだぜ?」
「だがお前のそんな姿を見てはな」
「じゃあ、もう少し厚手の服にして――」
「却下だ。せっかく似合っているのだから、それがいい」
予想外に俺の格好を気に入ったらしいロクが、フンフンと鼻息も荒く首筋や耳の後ろに鼻を擦り付けてくる。
ロクに似合うと言われて、俺も悪い気はしない。
「じゃあ、帰ってきたらこの格好でしようか?」
「それはいいな。そうしよう」
俺はロクの鼻息がくすぐったくて、クスクスと笑った。
「お館様、イチヤ様、そろそろ出発されませんと、後の予定が詰まっております」
「ああ、わかった。直ぐに出るよ」
俺は普通の格好に着替えてロクと天馬に乗った。
いつもなら馬車で移動するのだが、今回は少しでも早く着けるよう天馬を利用することにした。
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