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66.お披露目−1(R−15)
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「何故だ! 何故、全く強くなっていない!」
「ちょ、えっ!? ヨカナーン!?」
俺は思わぬ人の登場に、咄嗟に頭が働かずまともに反応を返せなかった。
それを良いことに相手は滔々と捲し立ててきた。
「団長殿がお前を番にすると聞いたから、少しは強くなったかと思えば……変わっていないじゃないか! 相変わらず軟弱で、お前のようなものに公的な立場が与えられるなど、不公平ではないか!」
「えぇぇ、そんなことを言われても……」
不公平だと訴えられても困る。それは俺だけ恵まれているのかもしれないけど、狡いと言われたって俺にはどうしようもない。
「お前みたいなつまらぬ人間ごときが、団長殿の寵愛を受けるだなんて!」
ギリギリと歯軋りをして悔しがっているヨカナーンを見ていたら、結局は嫉妬に過ぎないんだと理解した。
「自分だったら釣り合うと思うの?」
「それ、は……私は、人間だから……」
急に自信を失くして俯いたヨカナーンの頬に、以前は無かった大きな痣が出来ている事に気付く。
怪我を負ったのか、病気にでも罹ったのか……彼の今の状況が垣間見えて哀しくなった。
「ヨカナーンが敵わないと思うくらいの人、これならロクを任せられると思う人だったら、そうしたら大人しく引き下がった?」
「それは、勿論――」
「嘘だね。君はロクがどんな人間を連れてきても、きっと気に入らなかった。だって獣人しか駄目だ、人間だから自分はロクの相手になれないんだって思うことで、辛うじて自分を納得させてたんでしょ?」
獣人じゃないから。人間だから仕方がないんだと自分に言い聞かせることでやっと抑えてきた想いを、同じ人間である――ううん、ヨカナーンからみたら自分よりもずっと劣る人間である俺がぶち壊した。
人間だっていいのだと、ロクに愛されるのだと示してしまった。
そして公的にも関係が認められようとしている。そんなの、人間だからと割りを食ってきた、それで自分すら欺いてきたヨカナーンにはとても耐えられなかったんだろう。
「だから『不公平』なんだよね? 同じ人間なのに、どうしてこうも自分と違うのかって」
「ッ!」
ヨカナーンが血の気の失った顔でブルブルと震えた。
俺は自分がヨカナーンを激しく傷付けてしまったことに気付いてハッとした。
(しまった! またやってしまった! 真正面から馬鹿正直に指摘して、人を大きく傷付けた。こういうところがいけないってわかってるのに……)
「あの、ごめ――」
「憐れむな!」
拒絶するように怒鳴られて口を噤んだ。
「私が、お前に憐れまれるなど――」
屈辱に卒倒しそうな様子のヨカナーンに何か言ってあげたかったけど、きっと何を言っても聞き入れないだろう。
寧ろ、言えば言うほどに傷付ける。
(うぅぅ、どうしたらいいんだよっ!)
俺はヨカナーンにいたく同情していたし、このまま別れたくはない。
それにロクだってきっと気にする。
「ヨカナー――」
「うるさいっ!」
「ごめん! 白妙!」
俺は聞く耳を持たないヨカナーンを、白妙に咬ませて昏倒させた。
白妙は毒のない蛇だけれど、呪いを使えるのでこのくらいは朝飯前だ。
「さて、彼をこのままにはしておけない。連れて帰って、当面はこっちで面倒をみるしかないな。金鍔、人に化けて運んでくれる?」
『わかったでござる』
金鍔は相変わらず美々しい狐の青年に化けた。
こう見えても神の眷属だから力はあるし、ヨカナーンくらいは軽々と抱えられる。
近くで倒れていた案内役に大きな怪我が無いことを確認すると、彼を起こし騒ぎ立てるのをなんとか宥めて侯爵邸へ帰った。
「どうしてヨカナーンが?」
背後の空気をおどろおどろしくさせて、ロクが険しい表情でそう訊いた。
「え~と、偶然? 俺が王都に来たのを知ってて、それで気に入らなかったみたいで……」
「主殿、こやつは蜂を斬ろうとしていたでござる。危険でござる」
「ちょ、金鍔っ!」
俺は余計なことを言い出した金鍔を慌てて止める。
お供は人に化けると人の言葉を話すようになるので、俺以外とも会話が出来る。
「チヤ、どういうことだ。襲われたのか? 何故連れ帰ったりした。邸内で秘密裏に処理する為か?」
処理って、殺すとか拷問するってこと? 怖いよっ!
「ヨカナーンは、俺たちの前に出てくる気なんて無かったと思う。でも、俺があんたの番になるって知って、我慢できなくなったんだよ。その気持ちは……ちょっとわかる」
俺はうらぶれた姿のヨカナーンに憐れみを覚えた。
彼の切羽詰まった気持ちが可哀想だと思った。
そんな風に思うのは傲慢だろうし、きっとヨカナーンからすれば屈辱でしかないんだろうけど……。
「放っておけないよ」
放置しちゃったら、俺はずっとヨカナーンのことが心に引っ掛かり続ける。
自分が幸せになることと引き換えのように誰かが不幸になっていると思うのはストレスだ。
だから自分の為にヨカナーンを連れてきた。決して善意だけじゃない。
「当面は監視を付けて拘束するぞ」
「うん。彼のことはエミールにでも相談して、何処かの部署で使って貰うよ」
「余りエミールばかり頼るな」
「え?」
「最近のお前は、エミールやジェスばかり頼っていて面白くない」
珍しく漏らされたロクの嫉妬が嬉しい。
「ちょ、えっ!? ヨカナーン!?」
俺は思わぬ人の登場に、咄嗟に頭が働かずまともに反応を返せなかった。
それを良いことに相手は滔々と捲し立ててきた。
「団長殿がお前を番にすると聞いたから、少しは強くなったかと思えば……変わっていないじゃないか! 相変わらず軟弱で、お前のようなものに公的な立場が与えられるなど、不公平ではないか!」
「えぇぇ、そんなことを言われても……」
不公平だと訴えられても困る。それは俺だけ恵まれているのかもしれないけど、狡いと言われたって俺にはどうしようもない。
「お前みたいなつまらぬ人間ごときが、団長殿の寵愛を受けるだなんて!」
ギリギリと歯軋りをして悔しがっているヨカナーンを見ていたら、結局は嫉妬に過ぎないんだと理解した。
「自分だったら釣り合うと思うの?」
「それ、は……私は、人間だから……」
急に自信を失くして俯いたヨカナーンの頬に、以前は無かった大きな痣が出来ている事に気付く。
怪我を負ったのか、病気にでも罹ったのか……彼の今の状況が垣間見えて哀しくなった。
「ヨカナーンが敵わないと思うくらいの人、これならロクを任せられると思う人だったら、そうしたら大人しく引き下がった?」
「それは、勿論――」
「嘘だね。君はロクがどんな人間を連れてきても、きっと気に入らなかった。だって獣人しか駄目だ、人間だから自分はロクの相手になれないんだって思うことで、辛うじて自分を納得させてたんでしょ?」
獣人じゃないから。人間だから仕方がないんだと自分に言い聞かせることでやっと抑えてきた想いを、同じ人間である――ううん、ヨカナーンからみたら自分よりもずっと劣る人間である俺がぶち壊した。
人間だっていいのだと、ロクに愛されるのだと示してしまった。
そして公的にも関係が認められようとしている。そんなの、人間だからと割りを食ってきた、それで自分すら欺いてきたヨカナーンにはとても耐えられなかったんだろう。
「だから『不公平』なんだよね? 同じ人間なのに、どうしてこうも自分と違うのかって」
「ッ!」
ヨカナーンが血の気の失った顔でブルブルと震えた。
俺は自分がヨカナーンを激しく傷付けてしまったことに気付いてハッとした。
(しまった! またやってしまった! 真正面から馬鹿正直に指摘して、人を大きく傷付けた。こういうところがいけないってわかってるのに……)
「あの、ごめ――」
「憐れむな!」
拒絶するように怒鳴られて口を噤んだ。
「私が、お前に憐れまれるなど――」
屈辱に卒倒しそうな様子のヨカナーンに何か言ってあげたかったけど、きっと何を言っても聞き入れないだろう。
寧ろ、言えば言うほどに傷付ける。
(うぅぅ、どうしたらいいんだよっ!)
俺はヨカナーンにいたく同情していたし、このまま別れたくはない。
それにロクだってきっと気にする。
「ヨカナー――」
「うるさいっ!」
「ごめん! 白妙!」
俺は聞く耳を持たないヨカナーンを、白妙に咬ませて昏倒させた。
白妙は毒のない蛇だけれど、呪いを使えるのでこのくらいは朝飯前だ。
「さて、彼をこのままにはしておけない。連れて帰って、当面はこっちで面倒をみるしかないな。金鍔、人に化けて運んでくれる?」
『わかったでござる』
金鍔は相変わらず美々しい狐の青年に化けた。
こう見えても神の眷属だから力はあるし、ヨカナーンくらいは軽々と抱えられる。
近くで倒れていた案内役に大きな怪我が無いことを確認すると、彼を起こし騒ぎ立てるのをなんとか宥めて侯爵邸へ帰った。
「どうしてヨカナーンが?」
背後の空気をおどろおどろしくさせて、ロクが険しい表情でそう訊いた。
「え~と、偶然? 俺が王都に来たのを知ってて、それで気に入らなかったみたいで……」
「主殿、こやつは蜂を斬ろうとしていたでござる。危険でござる」
「ちょ、金鍔っ!」
俺は余計なことを言い出した金鍔を慌てて止める。
お供は人に化けると人の言葉を話すようになるので、俺以外とも会話が出来る。
「チヤ、どういうことだ。襲われたのか? 何故連れ帰ったりした。邸内で秘密裏に処理する為か?」
処理って、殺すとか拷問するってこと? 怖いよっ!
「ヨカナーンは、俺たちの前に出てくる気なんて無かったと思う。でも、俺があんたの番になるって知って、我慢できなくなったんだよ。その気持ちは……ちょっとわかる」
俺はうらぶれた姿のヨカナーンに憐れみを覚えた。
彼の切羽詰まった気持ちが可哀想だと思った。
そんな風に思うのは傲慢だろうし、きっとヨカナーンからすれば屈辱でしかないんだろうけど……。
「放っておけないよ」
放置しちゃったら、俺はずっとヨカナーンのことが心に引っ掛かり続ける。
自分が幸せになることと引き換えのように誰かが不幸になっていると思うのはストレスだ。
だから自分の為にヨカナーンを連れてきた。決して善意だけじゃない。
「当面は監視を付けて拘束するぞ」
「うん。彼のことはエミールにでも相談して、何処かの部署で使って貰うよ」
「余りエミールばかり頼るな」
「え?」
「最近のお前は、エミールやジェスばかり頼っていて面白くない」
珍しく漏らされたロクの嫉妬が嬉しい。
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