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70.急展開−1
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元々頑健だったヨカナーンは直ぐに動けるようになった。
勿論、心身ともに健康を取り戻したかと言えばそんなことはなくて、まだ調子が悪かったり不安になったりするみたいだけど、でも王都に留まり続けるのは危険だし、ヨカナーンの為にも領地に戻って療養した方が良いだろうということで早々に帰ってきた。
そんなに長く離れていた訳じゃないのに、白樺の雑木林や緑の丘を見ると帰って来たという思いがしみじみとこみ上げてきた。
俺はここの人じゃないのにな。
「チヤ? 疲れたか?」
馬車から外を眺めていたら、ロクに髪を撫でられた。
「ううん、平気。ここはいいところだなぁって思ってた」
「そう言って貰えると嬉しい。ここは難しい土地だから」
ロクが言ったように、ロクサーン侯爵領は治めるのが難しい土地だった。
コンドル型獣人が住み着いている山があるし、隣国と国境を接している為に昔から小競り合いが耐えなかった。
他にも犯罪者が逃亡に利用したり、密輸入が横行したり、役人の腐敗も起こりやすいから気を抜けないのだといっていた。
「その代わりに異国の文化や技術がいち早く入ってくるし、交易による発展が著しいから悪いことばかりではない」
「王都の目も届きづらいしね」
「ああ」
それに田舎だからよそ者が目立ちやすく諜報活動が難しいし、この土地への想いは強いが王都なんて外国みたいなものだと思っている。
だから領民に切り崩し工作などをしても殆ど効果がない。
これが各領地がある程度の独立性を保っていられる理由だ。
「だが、これからは余り安心は出来ないだろう」
「神薬を作っているのが俺だってバレた?」
「それはまだ知られていないと思うが、上級神薬の製法はなんとしても手に入れたい筈だ」
「当初の予定通り、定期的に献上するだけじゃ満足しないっての?」
「しないな。国王が欲深いこともあるが、何よりも神の奇跡のような薬を扱うのが獣神の末裔じゃないのが問題だ」
この領地内では、神薬の効果もあって順調に大神に帰依する人が増えている。
元々神への信仰心が薄く、獣人たちは神霊が心の拠り所となっていたので神教徒が増えたところで危機感もなくピンときていなかったようなのだが、獣神ではなく大神が人々に恩恵を与えているとなったら大問題だ。
「彼らには獣神が唯一無二でいて貰わなくては困るのだ。そうでないと、権威を保てないところまできている」
「そうなの?」
「ああ」
俺にはこの国の王権が揺らいでいるようには見えなかったけれど、獣神の権威が落ちれば王家の正統性も危うくなるのかもしれない。
その辺はほぼ無宗教で育った俺にはわからない感覚だった。
「つまり、どうあっても俺たちの存在は許せないってこと?」
「上手く手打ちに持ち込めなければそうだろうな」
「国政なんて、そんな面倒臭いものには関わりたくないんだけどな」
「わかっている。だが獣人全体の種の生存が掛かっているとなれば、引く訳にはいくまい」
「まぁね。大神との契約を破るのも気が進まないしね」
「神よりは人と闘う方がマシだ」
「わぁ、スケールがでっかい」
俺はただの大学生だったのに、気が付いたら異世界に召喚されて神の加護なんてものが付いてて自分自身が甘味になってて、身の安全を図る為に異世界の神と契約をして、神薬を作ったり甘味を広めたり開発したりして狙われる理由には事欠かない。
おかしいな。どうしてこんなことになっちゃったんだろう?
「チヤ、怖いか?」
「……少しね」
「済まないがもう逃してやれない」
「わかってるよ」
俺は既に中心に組み込まれている。
もう今さら抜け出すことは出来ない。
「俺自身が強い訳じゃないから、どうしてもいつまでも自信が持てないだけ。自分で選んだことだし、納得はしてるから安心して」
「私が、出来ることはする」
「うん。ロクは俺の守り神だよ」
「神格は得たが神にはなれないぞ?」
「そういう意味じゃない」
俺はクスリと笑って外の景色に再び目を戻した。
生まれ育った場所とはまるで違う、外国の風景のような景色。
ここで生きていく覚悟ならとうに固めてある。
「本当に、ちょっと実感しきれていないだけ」
俺は言い訳をするように口の中で呟いて、それから王都で見た教会の話をする為にエミールに会いに行った。
白妙はヨカナーンで遊ぶというので別行動になった。
別に主替えをする気はないようなので好きにさせているけど、一体何をしているんだか。
でもヨカナーンも嫌がっていないし、寧ろ安定している様子なので悪いことではないと信じよう。
勿論、心身ともに健康を取り戻したかと言えばそんなことはなくて、まだ調子が悪かったり不安になったりするみたいだけど、でも王都に留まり続けるのは危険だし、ヨカナーンの為にも領地に戻って療養した方が良いだろうということで早々に帰ってきた。
そんなに長く離れていた訳じゃないのに、白樺の雑木林や緑の丘を見ると帰って来たという思いがしみじみとこみ上げてきた。
俺はここの人じゃないのにな。
「チヤ? 疲れたか?」
馬車から外を眺めていたら、ロクに髪を撫でられた。
「ううん、平気。ここはいいところだなぁって思ってた」
「そう言って貰えると嬉しい。ここは難しい土地だから」
ロクが言ったように、ロクサーン侯爵領は治めるのが難しい土地だった。
コンドル型獣人が住み着いている山があるし、隣国と国境を接している為に昔から小競り合いが耐えなかった。
他にも犯罪者が逃亡に利用したり、密輸入が横行したり、役人の腐敗も起こりやすいから気を抜けないのだといっていた。
「その代わりに異国の文化や技術がいち早く入ってくるし、交易による発展が著しいから悪いことばかりではない」
「王都の目も届きづらいしね」
「ああ」
それに田舎だからよそ者が目立ちやすく諜報活動が難しいし、この土地への想いは強いが王都なんて外国みたいなものだと思っている。
だから領民に切り崩し工作などをしても殆ど効果がない。
これが各領地がある程度の独立性を保っていられる理由だ。
「だが、これからは余り安心は出来ないだろう」
「神薬を作っているのが俺だってバレた?」
「それはまだ知られていないと思うが、上級神薬の製法はなんとしても手に入れたい筈だ」
「当初の予定通り、定期的に献上するだけじゃ満足しないっての?」
「しないな。国王が欲深いこともあるが、何よりも神の奇跡のような薬を扱うのが獣神の末裔じゃないのが問題だ」
この領地内では、神薬の効果もあって順調に大神に帰依する人が増えている。
元々神への信仰心が薄く、獣人たちは神霊が心の拠り所となっていたので神教徒が増えたところで危機感もなくピンときていなかったようなのだが、獣神ではなく大神が人々に恩恵を与えているとなったら大問題だ。
「彼らには獣神が唯一無二でいて貰わなくては困るのだ。そうでないと、権威を保てないところまできている」
「そうなの?」
「ああ」
俺にはこの国の王権が揺らいでいるようには見えなかったけれど、獣神の権威が落ちれば王家の正統性も危うくなるのかもしれない。
その辺はほぼ無宗教で育った俺にはわからない感覚だった。
「つまり、どうあっても俺たちの存在は許せないってこと?」
「上手く手打ちに持ち込めなければそうだろうな」
「国政なんて、そんな面倒臭いものには関わりたくないんだけどな」
「わかっている。だが獣人全体の種の生存が掛かっているとなれば、引く訳にはいくまい」
「まぁね。大神との契約を破るのも気が進まないしね」
「神よりは人と闘う方がマシだ」
「わぁ、スケールがでっかい」
俺はただの大学生だったのに、気が付いたら異世界に召喚されて神の加護なんてものが付いてて自分自身が甘味になってて、身の安全を図る為に異世界の神と契約をして、神薬を作ったり甘味を広めたり開発したりして狙われる理由には事欠かない。
おかしいな。どうしてこんなことになっちゃったんだろう?
「チヤ、怖いか?」
「……少しね」
「済まないがもう逃してやれない」
「わかってるよ」
俺は既に中心に組み込まれている。
もう今さら抜け出すことは出来ない。
「俺自身が強い訳じゃないから、どうしてもいつまでも自信が持てないだけ。自分で選んだことだし、納得はしてるから安心して」
「私が、出来ることはする」
「うん。ロクは俺の守り神だよ」
「神格は得たが神にはなれないぞ?」
「そういう意味じゃない」
俺はクスリと笑って外の景色に再び目を戻した。
生まれ育った場所とはまるで違う、外国の風景のような景色。
ここで生きていく覚悟ならとうに固めてある。
「本当に、ちょっと実感しきれていないだけ」
俺は言い訳をするように口の中で呟いて、それから王都で見た教会の話をする為にエミールに会いに行った。
白妙はヨカナーンで遊ぶというので別行動になった。
別に主替えをする気はないようなので好きにさせているけど、一体何をしているんだか。
でもヨカナーンも嫌がっていないし、寧ろ安定している様子なので悪いことではないと信じよう。
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