【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

海野ことり

文字の大きさ
143 / 194

71.初戦圧勝-1

しおりを挟む
 館の一番奥の部屋に隠れるように言われ、もしも危険が迫ってきたら隠し通路から逃げるのだと言い含められた。

「ロクはっ?」
「お館様は、天馬隊の相手をしております」
「俺も一緒に――」
「こちらはあなたを押さえられたらお終いです!」
「……」
 ウィリアムにはっきりと言われて口を噤んだ。
 俺は戦えないし、人質に取られたら例えロクでも手が出せないかもしれない。
 だから見つからないように、敵の手に落ちないようにすることが俺のやるべきことだ。

(わかってるよ、わかってるけど……)
 ロクに全てを押し付けて、自分一人だけが安全なところに逃げるなんて悔しい。

「イチヤ様、私はお館様が負けるなどとは夢にも思っておりません」
「ッ!」
 俺はウィリアムの言葉にハッとした。
 そうだ。ロクが負ける筈がない。
 ただ戦略的撤退とか不測の事態は起こるかもしれないから、俺が足を引っ張ることがないように一人でちゃんと逃げるんだ。
 そうしたらロクもきっと助かる。

「ロクには俺のことを気にせず、自由に動いて貰わないとね」
「それでこそ番様です」
 そうニッコリと笑ったウィリアムに、良いように動かされた気がしなくもないけどお陰でちょっと冷静になれた。
 俺はまず金鍔を人間に化けさせて、ロクの手助けをしてくるように頼んだ。

「幻覚を見せて脅してきてよ。きっとみんな、妖術になんて免疫がないから吃驚するよ」
「我は主殿をお守りせねばならないからダメでござる」
 金鍔にあっさりと拒否されて焦る。

「俺のところには蜂たちがいるし、白妙も戻ってきてくれたから大丈夫だよ」
「白妙はダメでござる。主殿を放って何処かへ行くようなお供は、いらないでござるよ」
 そう言ってぷんぷんと怒っている金鍔を、なんとか宥めなくてはいけない。

「え~と、白妙はヨカナーンのところに行ってたんだよ。どうもヨカナーンのことを気に入ったみたいで――」
『おもちゃ。楽しい』
 ふわふわと白妙がご機嫌な声で言う。
 それを聞いて金鍔は気に入ったんなら仕方がないと言い出した。

「え? なに、どういうこと?」
 二匹が言うには、元々神は依怙贔屓をするものらしい。
 気に入ったもので遊び、力を与えたり便宜を図ってやることもある。

「うっ、やってることが権力者の助平ジジイと変わらない……。あ、それじゃあ、俺のお供になったのも気に入ったからか?」
 俺はヨカナーンと一緒なのかと思いつつ訊いたら、それは違うと言う。

「我らには主人が必要なのでござる」
「必要?」
「お仕えすれば神格が上るでござる」
 どうやら金鍔たちは神としての力が弱く、神格を上げないといずれ消えてしまうのだそうだ。
 そして仕える相手は誰でも良い訳ではなく、心からお仕えしたいと思える相手でないと魂は磨かれない。
 だから天界で俺を見つけた時、金鍔たちは必死に駆け付けた。

「主殿は大人気だったでござるよ」
「へ~、俺は神様じゃないんだけどね」
 神格を得ていない、異世界の神の加護があるだけの俺でも良かったのだろうか?

「関係ないでござる。甘くて良い匂いがして、美味しければ問題ないのでござる」
「はは、美味しければって……」
 一体神の目に俺がどう映っているのか心配だが、仕えることが結局は自分たちの為になるなら裏切られる心配はないだろう。

「金鍔、納得したなら行ってくれるかな?」
「わかったでござる」
 金鍔は人間に化けたままボフンと姿を消して移動した。
 神の眷属なのでそのくらいのことは出来る。

「でも心配だから白妙にも行って貰おうかなぁ」
 まだ不安でそう呟いたら、白妙がぽやんと答えた。

『ナーンが行ったから平気』
「ん? ヨカナーンのことか?」
 白妙がおもちゃにしているヨカナーンだけど、ちゃんと力も与えてあげていたようだ。

「なんの力をあげたの?」
『ナーンがいちばん欲しいもの』
「えっ? 一番欲しいものって?」
 白妙のことだから呪い関連かと思ったら、純粋に腕力だって。

「腕力なんて貰っても、仕方がないだろう」
 俺はそう思ってたんだけど、後からそうではないと思い知ることになる。
 なんせヨカナーンに足りないのは血筋と腕力だけだったんだから。

「イチヤ様、お待ち下さい。そもそも争いにはならない可能性の方が高いです」
「でも、連絡もなしに攻めてきたんだろう?」
 俺はウィリアムの言葉に口を尖らせて反論する。
 天馬に乗ってきたなんて、奇襲されたとしか思えない。

「確かに軍事的な圧は掛けたかったのでしょうが、濡れ衣を着せるにしても査問会もなしにロクサーン侯爵を更迭は出来ません。さて、彼らにお館様を首尾よく連れ出すことが出来ますのかどうか……見ものですね」
 ニコリと笑ったウィリアムが腹黒そう。

「ロクが王城に連れて行かれたらこっちの負け?」
「いえ、中央にはまだお披露目に来た有力貴族も残っていますし、それはそれでやりようがございます。ただ――」
「ただ?」
「イチヤ様を攫われたら、お館様は我慢なさいません」
「……そうかな?」
「はい」
 困ったように笑うウィリアムを見て、俺は眉間にできた皺を揉んだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

黒豹陛下の溺愛生活

月城雪華
BL
アレンは母であるアンナを弑した獣人を探すため、生まれ育ったスラム街から街に出ていた。 しかし唐突な大雨に見舞われ、加えて空腹で正常な判断ができない。 幸い街の近くまで来ていたため、明かりの着いた建物に入ると、安心したのか身体の力が抜けてしまう。 目覚めると不思議な目の色をした獣人がおり、すぐ後に長身でどこか威圧感のある獣人がやってきた。 その男はレオと言い、初めて街に来たアレンに優しく接してくれる。 街での滞在が長くなってきた頃、突然「俺の伴侶になってくれ」と言われ── 優しく(?)兄貴肌の黒豹×幸薄系オオカミが織り成す獣人BL、ここに開幕!

転生した新人獣医師オメガは獣人国王に愛される

こたま
BL
北の大地で牧場主の次男として産まれた陽翔。生き物がいる日常が当たり前の環境で育ち動物好きだ。兄が牧場を継ぐため自分は獣医師になろう。学業が実り獣医になったばかりのある日、厩舎に突然光が差し嵐が訪れた。気付くとそこは獣人王国。普段美形人型で獣型に変身出来るライオン獣人王アルファ×異世界転移してオメガになった美人日本人獣医師のハッピーエンドオメガバースです。

男だって愛されたい!

朝顔
BL
レオンは雑貨店を営みながら、真面目にひっそりと暮らしていた。 仕事と家のことで忙しく、恋とは無縁の日々を送ってきた。 ある日父に呼び出されて、妹に王立学園への入学の誘いが届いたことを知らされる。 自分には関係のないことだと思ったのに、なぜだか、父に関係あると言われてしまう。 それには、ある事情があった。 そしてその事から、レオンが妹の代わりとなって学園に入学して、しかも貴族の男性を落として、婚約にまで持ちこまないといけないはめに。 父の言うとおりの相手を見つけようとするが、全然対象外の人に振り回されて、困りながらもなぜだか気になってしまい…。 苦労人レオンが、愛と幸せを見つけるために奮闘するお話です。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

【R18】兄弟の時間【BL】

BL
色々あってニートになった僕、斑鳩 鷹は当たり前だけど両親にめっちゃ将来を心配されまさかの離島暮らしを提案されてしまう。 待ってくれよ! アマゾンが当日配送されないとこなんて無理だし、アニメイトがない世界に住めるか!  斯くて僕は両親が改心すればと家出を決意したが行く宛はなく、行きついたさきはそいつの所だった。 「じゃぁ結婚しましょうか」 眼鏡の奥の琥珀の瞳が輝いて、思わず頷きそうになったけど僕はぐっと堪えた。 そんな僕を見て、そいつは優しく笑うと机に置かれた手を取って、また同じ言葉を言った。 「結婚しましょう、兄さん」 R18描写には※が付いてます。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

処理中です...