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79.代案−2
しおりを挟む「例えば、国王代理を立て私が力を手にしてから再び玉座を取り戻せば済む話ではないか?」
「あっ、それは無理です。そんな考えではまず間違いなく強くなれません」
俺は国王のご都合主義をバッサリと切り捨てた。
そんな考えの奴が神格なんて上げられっこない。
「あと、なんのリスクも無しに強くはなれません。ロクも修行をしたし、嫌なことも苦労もした」
「苦労? この私に!」
あれ? 何か拙かった?
「陛下、チヤは簡単ではないと申し上げたかったのです」
「む、そうか。しかし苦労をせよとは」
なんだよ、何がそんなに気に入らないんだよ?
俺が頻りに首を捻っていたら、ロクがコッソリと教えてくれた。
「苦労とは下々のすることで、高貴な身分の者がすることではないと思われている」
「えっ、なにそれ。王侯貴族は苦労をしないの?」
「したと思われるのは不名誉に当たる」
「貴族ってよくわからないね」
要は高貴な身分の人は汗水流して働かないってことだろうか?
身体を使った仕事が低く見られがちって意味ならわからなくもない。
「ロクの言う通りです。簡単じゃないって言いたかっただけです」
俺は面倒臭いのでぺこりと頭を下げておいた。
言葉一つを撤回して済むならその方が早い。
「しかしそのように強くなることは、王にこそ必要ではないか? 王が強くあってこそ、近隣諸国に睨みも効くというものであろう」
国王は多分本気で、疑いなくそう言った。
自分が強くなることが国の為だって、疑いもなく言い切れちゃうのは凄いよなぁ。
「恐怖で人を支配するのは余り上手く行かないと思います」
「恐怖ではない。尊敬だ。しかし何故だ?」
恐る恐る意見した俺に国王は怒るでもなく聞き返してきた。
一応、聞く耳はあるのか?
「強い王室の姿が国民の憧れになるのはいいです。でも強いから何をしてもいいだろうって雑な交渉を近隣諸国とすることになったら、直ぐに警戒されて備えられてしまいます。力には力で対抗しようと、他の国も武力を求めます」
つまり、あからさまな力の見せつけと脅しは他国を刺激し、戦争へ向かわせる。
「それでも我が国の方が強い」
「それじゃあキリがないですよ」
「構わぬ」
「……」
本当に、強いということのみに価値観を置いているんだな。
しかもそれで人を従わせるのが好きという。
「わかりました。玉座を降りないまま強くなりたいと仰るのでしたら、少し時間はかかりますが、陛下の為に特別に秘薬を調合しましょう」
「秘薬!? そんな物があるなら早く出さぬかっ!」
いやいや無いから。口からでまかせだから。
これは単なる時間稼ぎだからね。
「特別に、調合すると言いました。これから作り出すので時間が掛かります」
「そうか、なるべく急ぐように」
「はい」
俺は頭を下げて表情を隠しつつ、領地に戻ったらプロテインの開発でもしてみようと思う。
この世界の人たちは魔物じみた動物や植物と戦う為もあって戦闘訓練はよくするんだけど、身体を大きくするメニューなんかは研究されていない。
だからプロテインを作って飲ませたら、それなりに身体が大きくなるんじゃないかと思う。
「見せかけの筋肉でもいいよね」
俺はこっそりと呟く。
きっとその方が国王にはあっているし、本人も喜ぶだろう。
じゃあ話も付いたし帰ろうか、と退くタイミングを見計らっていたら今度はお供たちがたかってきた。
『チヤ様っ!』
『主殿!』
『ブンブンブンッ!』
「お~、お前たちも元気だったか? 会いたかったぞ」
外出する時のスマホよりも財布よりも、彼らを連れ歩くのが当然になっていた。
蜂たちがいないと空気がスカスカしたし、白妙が袖口や襟元から顔を出さないと寂しかった。
金鍔の胡散臭い忍者言葉が聞きたかったし、相談したいことだって沢山あった。
お供たちは神格を上げる代わりに付けられた補助具みたいなものだったけれど、いつの間にか大事なものになっていた。
「珍しい神、或いは神になる見込みのあるものを異世界に送らなくちゃいけないんだ。金鍔たちも探すのを手伝ってくれな」
『わかった』
『任せるでござる』
『ブブブッ』
俺の言葉にやる気満々で頷いた金鍔たちを、俺は頼もしく見つめたのだった。
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