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⑥かん違い
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藤田の過干渉が減った。それは相変わらず家の中の移動も抱っこだったし、いつも側にいてなにくれとなく世話を焼いたがそのやりようが少し変わった。
小山田がふるりと身震いをする。或いはほんの少し顔色が青い。そうすると以前の藤田なら寒いんじゃないかと大騒ぎをして、毛布でぐるぐる巻きにしたものだが今は違う。
さり気なく温かいお茶を出し、小山田がお茶を飲んで落ち着いて「ちょっと寒いからお前の上着を寄越しやがれ」と言い出して初めて着る物を差し出す。
他にも善人ぶった――と小山田には感じられた――語り掛けが無くなり、そうすると一日中一人で過ごしている小山田は自分の方から藤田に話し掛けてしまう。
「あのな、この間やってた映画がもうDVDになってた。ネットでレンタルしたから、届いたら一緒に観ようぜ」
「いいけど、君の映画の趣味は俺と合わないからなぁ」
「ちゃんとお前が好きそうな話題作だって借りたって!」
「ならいいけど」
「偉そうだな!」
ブーブーと膨れる小山田を藤田は何も言わず、優しい目で見ている。
(何も言われてないんだけど……)
小山田は無性に恥ずかしくなって視線を逸らす。でも近くには居続ける。直ぐ隣に、手を伸ばせば届く距離に。
「あの、さ。東の再開発区域に行きたいな。ドライブ。そんで帰りに穴場のラーメンでも喰って帰ろうぜ」
「いいよ。そうしたら松葉づえも持って行かなくちゃね」
「……当たり、前……だろ」
小山田の足は少しずつ回復していた。まだ歩けないが、足に感覚が戻ってきている。
「今日もマッサージをするからね」
「…………ああ」
小山田の回復に合わせて医者からリハビリの指示があった。まだ自力で動かしたり歩くのは駄目で、外から刺激を与える為に爪先から足全体をマッサージするのがいいらしい。
藤田はわざわざ理学療法士の指導を受けて、就寝前に毎晩マッサージをしてくれるようになった。
それが小山田にはどうにも苦手だった。
「うっ……」
小山田の口から低い呻き声が漏れる。それを聞いた藤田がぴたりと手を止めて訊ねる。
「痛かった?」
「へ……き。ちょっとピリピリしただけ」
「少し弱くしよう。俺は素人だし、無理は禁物だと言われているからね」
「ん……」
弱くされるのもそれはそれで困る、と思ったが小山田は口に出せない。そんな事を言って、何故困るのかと訊かれたらもっと困る。だってこれは絶対に藤田には内緒にしなくちゃいけない事だ。
爪先から足裏へ向かって丁寧に指を滑らされ、小山田は床に付いた手をギュッと握った。
温かな肌の接触はぞわぞわとするようなざわめきと心地好さを伴っている。
「…………」
こんな時こそ何か話してくれればいいのに、藤田は無言で小山田の足を撫でる。
するっ、と足首から脹脛を撫で上げられて小山田の膝が動いた。
「痛い?」
「いたく、ない」
「そう」
藤田は確認を終えるとまた手の動きを再開する。するすると指が皮膚の上を滑る。筋肉や腱を刺激し過ぎないように掌全体を使って、優しく柔らかく包み込む。
「っ!」
「小山田センセイ?」
「なんでも、な……」
本当にもう勘弁して欲しい。どうして――
泣きそうな気持ちを持て余す小山田の前が緩やかに反応していた。
それに気付いても藤田は見て見ないフリをしてくれるけれど。
(男に脚を触られて反応するとか最悪じゃねぇか!)
きっと溜まってるんだ。もうずっとしていないから。
心の中でどれだけ自分に言い訳しても、藤田に触れられて反応している事実に変わりは無かった。
(あぁもう本当にヤダ。こいつは見て見ぬ振りをしてくれてるけどきっと呆れて――)
恐る恐る藤田の顔を窺って小山田は吃驚した。藤田が熱に逆上せたような真っ赤な顔をしている。
(あのスカした男が何だって……)
自分の反応した股間を見て藤田が興奮している、と気付いて小山田は転げ回りたくなった。
(だって俺は男だぜ!? いや、それを言うならそもそも男の手で反応する俺の方がおかしいんだけどさ!)
テンパりながらも小山田は何だかおかしくなって、笑い出さないようにギュッと唇を噛み締めた。
(藤田が、俺を見て……)
信じられない、何をやっているんだよ馬鹿野郎。
そう思えば思う程に小山田の前は反応してしまったし、藤田のマッサージも熱が入るのだった。
小山田がふるりと身震いをする。或いはほんの少し顔色が青い。そうすると以前の藤田なら寒いんじゃないかと大騒ぎをして、毛布でぐるぐる巻きにしたものだが今は違う。
さり気なく温かいお茶を出し、小山田がお茶を飲んで落ち着いて「ちょっと寒いからお前の上着を寄越しやがれ」と言い出して初めて着る物を差し出す。
他にも善人ぶった――と小山田には感じられた――語り掛けが無くなり、そうすると一日中一人で過ごしている小山田は自分の方から藤田に話し掛けてしまう。
「あのな、この間やってた映画がもうDVDになってた。ネットでレンタルしたから、届いたら一緒に観ようぜ」
「いいけど、君の映画の趣味は俺と合わないからなぁ」
「ちゃんとお前が好きそうな話題作だって借りたって!」
「ならいいけど」
「偉そうだな!」
ブーブーと膨れる小山田を藤田は何も言わず、優しい目で見ている。
(何も言われてないんだけど……)
小山田は無性に恥ずかしくなって視線を逸らす。でも近くには居続ける。直ぐ隣に、手を伸ばせば届く距離に。
「あの、さ。東の再開発区域に行きたいな。ドライブ。そんで帰りに穴場のラーメンでも喰って帰ろうぜ」
「いいよ。そうしたら松葉づえも持って行かなくちゃね」
「……当たり、前……だろ」
小山田の足は少しずつ回復していた。まだ歩けないが、足に感覚が戻ってきている。
「今日もマッサージをするからね」
「…………ああ」
小山田の回復に合わせて医者からリハビリの指示があった。まだ自力で動かしたり歩くのは駄目で、外から刺激を与える為に爪先から足全体をマッサージするのがいいらしい。
藤田はわざわざ理学療法士の指導を受けて、就寝前に毎晩マッサージをしてくれるようになった。
それが小山田にはどうにも苦手だった。
「うっ……」
小山田の口から低い呻き声が漏れる。それを聞いた藤田がぴたりと手を止めて訊ねる。
「痛かった?」
「へ……き。ちょっとピリピリしただけ」
「少し弱くしよう。俺は素人だし、無理は禁物だと言われているからね」
「ん……」
弱くされるのもそれはそれで困る、と思ったが小山田は口に出せない。そんな事を言って、何故困るのかと訊かれたらもっと困る。だってこれは絶対に藤田には内緒にしなくちゃいけない事だ。
爪先から足裏へ向かって丁寧に指を滑らされ、小山田は床に付いた手をギュッと握った。
温かな肌の接触はぞわぞわとするようなざわめきと心地好さを伴っている。
「…………」
こんな時こそ何か話してくれればいいのに、藤田は無言で小山田の足を撫でる。
するっ、と足首から脹脛を撫で上げられて小山田の膝が動いた。
「痛い?」
「いたく、ない」
「そう」
藤田は確認を終えるとまた手の動きを再開する。するすると指が皮膚の上を滑る。筋肉や腱を刺激し過ぎないように掌全体を使って、優しく柔らかく包み込む。
「っ!」
「小山田センセイ?」
「なんでも、な……」
本当にもう勘弁して欲しい。どうして――
泣きそうな気持ちを持て余す小山田の前が緩やかに反応していた。
それに気付いても藤田は見て見ないフリをしてくれるけれど。
(男に脚を触られて反応するとか最悪じゃねぇか!)
きっと溜まってるんだ。もうずっとしていないから。
心の中でどれだけ自分に言い訳しても、藤田に触れられて反応している事実に変わりは無かった。
(あぁもう本当にヤダ。こいつは見て見ぬ振りをしてくれてるけどきっと呆れて――)
恐る恐る藤田の顔を窺って小山田は吃驚した。藤田が熱に逆上せたような真っ赤な顔をしている。
(あのスカした男が何だって……)
自分の反応した股間を見て藤田が興奮している、と気付いて小山田は転げ回りたくなった。
(だって俺は男だぜ!? いや、それを言うならそもそも男の手で反応する俺の方がおかしいんだけどさ!)
テンパりながらも小山田は何だかおかしくなって、笑い出さないようにギュッと唇を噛み締めた。
(藤田が、俺を見て……)
信じられない、何をやっているんだよ馬鹿野郎。
そう思えば思う程に小山田の前は反応してしまったし、藤田のマッサージも熱が入るのだった。
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