世界征服へと至る愛

鳴海

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 次の瞬間、西島の唇には石神の唇が重ね合わされていた。男同士とは思えないほどその感触は柔らかく、そして温かい。ちゅっちゅっと啄むような軽いキスを、西島は何度も石神から重ねられた。

 生まれて初めてしたキスの、そのフワリとした感触の心地良さに西島が浸っていると、やがて石神がペロリと西島の唇を舐めた。驚いた拍子に西島の唇がわずかに開く。それを見逃すことなく、石神は舌を西島の口内へと滑り込ませた。

「えっ、あ、ちょっ……あ……む」

 くちゅり、と二人の舌が合わさった。その途端、ジンとした快感が西島の口の中に広がる。そのまま舌を優しく絡められたかと思うと、次には強く吸われた。石神の舌が動くたびに堪らなく気持ち良くて、西島の身体はゾクゾクと震えた。勝手に声も出てしまう。

「あ……んぁ……」

 石神の舌が西島の口内をなぞり上げた。あらゆるところを舌で舐め回され、西島の感じるところすべてが石神に暴かれていく。喉の奥深くまで、犯すように石神の肉厚の舌を入れられた時、堪らなく甘い快感が西島の全身を駆け抜けた。

「ふあぁ……ああ」
「気持ちいか?」

 唇を離した後、顔を紅潮させてトロンとなった西島の頬やこめかみにキスしながら、石島がそう問いかけた。西島はキスを受けるたびにビクッビクッと快感に震えながら、こくこくと頷く。

「あ……んっ、すごく……きもちー」
「すごいな、一回のキスだけでこんなにトロけて。西島、すごくやらしい顔してる」

 嬉しそうな石神が楽し気に西島の耳にキスをした。途端、大きな快感が背筋をぞわりと走り抜け、堪らず西島は身をよじらせた。

「んあっ」
「耳弱いんだな。じゃあ、これは?」

 細めた舌先を耳に入れられて、くすぐったくて逃げ出したいのに気持ちよくてもっとして欲しい。そんなもどかしくて苦しい感覚に西島は襲われてしまう。足に力は入らなくなり、無意識に石神の制服を縋るようにつかんでいた。

「あ……い、石が……石神ぃ、俺、なんか変な感……」

 はぁはぁと荒い吐息交じりの西島の声があまりに苦しそうで、石神は耳から舌を抜くと西島の顔を覗き込んだ。見ると、まるでセックスの最中かと思うほどに体をぐずぐずにした西島が、涙を滲ませた目で縋るように自分を見つめている。

 ぐっ、と石神が息を飲む。

 なにかが切れそうになるのを必死に堪えながら、石神は西島にあまり余裕のない笑顔を見せた。

「どうした? なにが変なんだ?」
「分かんな……けどぉ」

 ぽろぽろと涙を流しながら、西島はつかんだ石神の制服を更に強く握った。

「俺ぇ、もっかいキスしたい。だめ? 石神、キスだめ……?」

 そう言って舌を伸ばす西島に、石神が凶悪な顔を見せた。

「っ、おまえ、煽り過ぎだぞ」


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