ゆっくり進みながらも振り返ろうとする心情を、人は愛と呼ぶのです

はるた

文字の大きさ
15 / 36

日常から非日常に?

しおりを挟む

告白されて何が変わるかと言われても、男同士で元は友人だった間柄だ。
きっと、何も変わらないだろう。
そう思っていた優吾であったが、その考えは次の日に覆された。

「優吾、おはよう」
「……あ、おう。おはよ、う……?」

あまり見たことがない笑顔とともに緩く手を振られ、驚きのあまり立ち止まってしまった。
優吾と一緒にいる時は確かに笑うことも多々あったが、ここまで幸せいっぱいだという表情をしているのは見たことがない。
朝から強すぎる美しい男の笑みに、グッと眉間に力を入れて隣に歩み寄った。

「どうした? そんな顔をして」
「いや、なんでもねぇけど……え~っと」

喜色満面、背景には花が舞っているようにすら見えるケインに、付き合ったと言ってもお試しだよな? と、優吾は昨夜の言葉を反芻してしまう。
だが、それよりも今日の違和感のうちのひとつに気が付いた優吾は、覗き込むように隣にいる男を見上げた。

「……なんか、近くねぇ?」

学内に入るまでの階段も、教室へ行くまでの道のりも、そして椅子に座った時も。
全て腕と腕が触れるほどの、薄っすら熱を感じられる距離。別に不快ではないが、今までよりも近いそれがどうにも落ち着かない。
優吾の言葉にケインは目を眇め、ああ、と言いながら頬を少しだけ染め上げた。

「すまない、抑えているつもりなんだが……やはり、浮かれているらしい」

口元に手を置いて、照れたように優吾と目を合わせるため少し首を傾げてくれる。
バチっと視線が合い、そんな彼の蕩けるような瞳に、優吾はすぐに前を向いて溜め息を吐き出した。

「……それ、お前の顔だから許されるんだぞ」

顔が良い男はズルい。タイプではなくとも胸は高鳴るし、なんだか嬉しい気持ちになってしまう。ときめきの音を鳴らす心臓を押さえ込みながらレジュメを取り出し、話題を変えようと策を練る。
そこで、優吾は昨夜から気になることがあったと思い出し、ケインの方は見ないまま疑問を口にした。

「な、ケインってさ、男に告白されたことある?」
「……いや、男からはないな。そもそも、男友達というのがほとんどいなかった」
「そうなん?」

くるくるとペンを回しながら、なんでもないことのような顔をしつつ耳を傾ける。
ノンケの男が男に向けて恋愛感情を持つなんて、何かきっかけがあったのかと思ったが、的は外れたらしい。それよりもケインの言った『男友達がほとんどいなかった』という発言の方が気になったものの、彼は俯いたままで答える気はないようだ。

「じゃ、女子は? 告白されてるのは前提だから、最高で何回された?」
「……聞きたいか?」
「もち。ケインの武勇伝なら聞いてみたい」

女子の友達もいない気はするが、告白だけならきっと相当だろう。
優吾は自身の好みが少しズレているだけで、ケインの美しさは理解していた。
そして、そんな男と今、仮とはいえ付き合えているのだ。
何となく彼の自慢話が聞きたくなる、これは人間の性だろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

BL小説家ですが、ライバル視している私小説家に迫られています

二三@冷酷公爵発売中
BL
BL小説家である私は、小説の稼ぎだけでは食っていけないために、パン屋でバイトをしている。そのバイト先に、ライバル視している私小説家、穂積が新人バイトとしてやってきた。本当は私小説家志望である私は、BL小説家であることを隠し、嫉妬を覚えながら穂積と一緒に働く。そんな私の心中も知らず、穂積は私に好きだのタイプだのと、積極的にアプローチしてくる。ある日、私がBL小説家であることが穂積にばれてしまい…? ※タイトルを変更しました。(旧題 BL小説家と私小説家がパン屋でバイトしたらこうなった)2025.5.21

拝啓、箱庭の君へ

古夏
BL
平凡なサラリーマンとして暮らす深山旭。 そんな旭の幼馴染は世界的有名モデルのケイシ(舞島慧士) 幼いころから慧士のお世話係だった旭は、二十六歳になった今も変わらず世話を焼く日々。 そんな日々に突如降ってわいたケイシのスキャンダル報道。それをきっかけにすれ違う二人──

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...