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日常から非日常に?
しおりを挟む告白されて何が変わるかと言われても、男同士で元は友人だった間柄だ。
きっと、何も変わらないだろう。
そう思っていた優吾であったが、その考えは次の日に覆された。
「優吾、おはよう」
「……あ、おう。おはよ、う……?」
あまり見たことがない笑顔とともに緩く手を振られ、驚きのあまり立ち止まってしまった。
優吾と一緒にいる時は確かに笑うことも多々あったが、ここまで幸せいっぱいだという表情をしているのは見たことがない。
朝から強すぎる美しい男の笑みに、グッと眉間に力を入れて隣に歩み寄った。
「どうした? そんな顔をして」
「いや、なんでもねぇけど……え~っと」
喜色満面、背景には花が舞っているようにすら見えるケインに、付き合ったと言ってもお試しだよな? と、優吾は昨夜の言葉を反芻してしまう。
だが、それよりも今日の違和感のうちのひとつに気が付いた優吾は、覗き込むように隣にいる男を見上げた。
「……なんか、近くねぇ?」
学内に入るまでの階段も、教室へ行くまでの道のりも、そして椅子に座った時も。
全て腕と腕が触れるほどの、薄っすら熱を感じられる距離。別に不快ではないが、今までよりも近いそれがどうにも落ち着かない。
優吾の言葉にケインは目を眇め、ああ、と言いながら頬を少しだけ染め上げた。
「すまない、抑えているつもりなんだが……やはり、浮かれているらしい」
口元に手を置いて、照れたように優吾と目を合わせるため少し首を傾げてくれる。
バチっと視線が合い、そんな彼の蕩けるような瞳に、優吾はすぐに前を向いて溜め息を吐き出した。
「……それ、お前の顔だから許されるんだぞ」
顔が良い男はズルい。タイプではなくとも胸は高鳴るし、なんだか嬉しい気持ちになってしまう。ときめきの音を鳴らす心臓を押さえ込みながらレジュメを取り出し、話題を変えようと策を練る。
そこで、優吾は昨夜から気になることがあったと思い出し、ケインの方は見ないまま疑問を口にした。
「な、ケインってさ、男に告白されたことある?」
「……いや、男からはないな。そもそも、男友達というのがほとんどいなかった」
「そうなん?」
くるくるとペンを回しながら、なんでもないことのような顔をしつつ耳を傾ける。
ノンケの男が男に向けて恋愛感情を持つなんて、何かきっかけがあったのかと思ったが、的は外れたらしい。それよりもケインの言った『男友達がほとんどいなかった』という発言の方が気になったものの、彼は俯いたままで答える気はないようだ。
「じゃ、女子は? 告白されてるのは前提だから、最高で何回された?」
「……聞きたいか?」
「もち。ケインの武勇伝なら聞いてみたい」
女子の友達もいない気はするが、告白だけならきっと相当だろう。
優吾は自身の好みが少しズレているだけで、ケインの美しさは理解していた。
そして、そんな男と今、仮とはいえ付き合えているのだ。
何となく彼の自慢話が聞きたくなる、これは人間の性だろう。
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