ゆっくり進みながらも振り返ろうとする心情を、人は愛と呼ぶのです

はるた

文字の大きさ
16 / 36

日常から非日常に? 2

しおりを挟む
「そう、だな……高校三年に上がった時、ほぼ一学年分から告白されたのだろうか」
「……ん? え、マジで⁈」
「同級生からは受験勉強を口実に付き合ってくれと言われ、後輩たちは残り一年の思い出に、もしくは記念に告白してみたかった、なんて。そんな言葉とともに全ての休み時間で呼び出された。結局、全員断るのに二週間近く掛かったな……」
「すっご……てか、全員断ったのか」

想像していたよりも規模が大きい話であった。
まさかそこまでモテていたとは、大学内でも非公認ファンクラブができるほどではあるが、おそらく高校時代にも作られていたのだろう。
元々ノンケならひとりくらい付き合ってみてもいいじゃないかと思ったが、それは口にする前にケインの方から否定されてしまった。

「本当に好きだと思えなければ、俺は付き合えないと思ったんだ。そんなの相手に失礼だし、受験生なのに恋愛にうつつを抜かすのはおかしいだろう」

突き放す声は真剣で、下手に付き合って相手の時間を無碍にすることがないよう、相手に未練がないようはっきり言葉にして断る姿勢は、彼の生真面目さが伺えた。

「……ケインって、そういうところすごいよな」
「そもそも、当時は恋愛に興味がなかったんだ……でも、今なら分かるな」

俯いていたはずの顔を近付け、周りに聞こえない声音で持って優吾の耳元で囁く。

「仮でもお試しでも、愛しい相手と恋人になれるというのは、この上ないほどに幸せなことだと」

低くて優しい声、それにプラスして、顔を近付けたせいで肩に触れた彼の長い髪に肩が跳ねる。
熱くなった耳を押さえながら身体ごと離せば、悪戯が成功したかのように笑みを湛えるケイン。
からかわれているのかと思ったが、その瞳の奥は真剣な色を灯しており、言いたいことが全部グチャグチャになってしまう。

「お、まえっ……親に感謝しろ! その顔と声!」
「ん? 声もなのか?」
「顔にピッタリの声だからな! そりゃモテるわ‼」

小声で叫ぶという器用なことをした優吾は、未だにケインの髪が落ちる感触がすると耳を触りながら前を向き、ぐるぐると目を回している。
そんな優吾とは対照的に、嬉しそうに微笑むその幸せそうなこと。
声も褒められて嬉しいと言っているが、どうせ何百回も言われているだろうと心の中だけで悪態を吐いた。

「……な、ケインって、俺のどこが好きなの?」

ごくりと飲み込んだ唾の音がやけに大きく聞こえた。
ケインは意志が強く、たとえ一学年分の女子生徒が告白してきても、好きではないと断れる男だ。高校生なんていう多感な時期にその精神力は凄いと感心するが、今の問題点はそこではない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

BL小説家ですが、ライバル視している私小説家に迫られています

二三@冷酷公爵発売中
BL
BL小説家である私は、小説の稼ぎだけでは食っていけないために、パン屋でバイトをしている。そのバイト先に、ライバル視している私小説家、穂積が新人バイトとしてやってきた。本当は私小説家志望である私は、BL小説家であることを隠し、嫉妬を覚えながら穂積と一緒に働く。そんな私の心中も知らず、穂積は私に好きだのタイプだのと、積極的にアプローチしてくる。ある日、私がBL小説家であることが穂積にばれてしまい…? ※タイトルを変更しました。(旧題 BL小説家と私小説家がパン屋でバイトしたらこうなった)2025.5.21

拝啓、箱庭の君へ

古夏
BL
平凡なサラリーマンとして暮らす深山旭。 そんな旭の幼馴染は世界的有名モデルのケイシ(舞島慧士) 幼いころから慧士のお世話係だった旭は、二十六歳になった今も変わらず世話を焼く日々。 そんな日々に突如降ってわいたケイシのスキャンダル報道。それをきっかけにすれ違う二人──

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...