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水族館 3
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静かな空間に気持ちが鎮まるのを感じつつ、まだ目的のフロアまで辿り着いていないため、優吾は魚たちを眺めるのもそこそこに進んでいった。
「あ、ペンギン! いたぞ、ほら!」
大水槽を通り過ぎたところで、少し離れた位置にペンギン広場という看板が見えた。
思わずケインの手首を掴み、走りはしないが人の間を潜りながら進んでいく。
そこは通路の上からペンギンのいる大きなプールを見下ろす仕組みとなっており、特に端の方には人だかりができていた。
どうやらそこが、ペンギンが集まる人工的な岩場の真上に位置しているらしい。その近くに丁度空いたスペースを見付けた優吾は、ケインを引き連れペンギンたちを見ようと顔を覗かせた。
「お、ここ結構いい場所じゃん。見える?」
丁度二人の目線下、岩の陰で二羽のペンギンが寄り添い合い、くちばしをくっ付け合って仲良しアピールをしていた。
夫婦かと思ったが、周りの会話を聞くにオス同士らしい。人前でも気にせずイチャイチャするその二羽に、優吾は少し苦笑しながらもケインの方へ視線を向けた。
「どうだ? 見たかったんだろ、ペンギン」
「ああ、とても可愛らしいな……だが、叶うならひとつ弁明させて欲しい」
「弁明? って、何についてだよ?」
大多数のペンギンはプールの中でぷかぷかと浮かび、女性や子供の目を楽しませている。
下を見るのに必死な彼ら彼女らは、ケインと優吾には気にも留めずに甲高い声を上げて、水に浮かぶ鳥たちを楽しんでいた。
「俺がペンギンを好きで可愛いと思っているのは、どことなく優吾に似てるからだ」
少し腰を折って手すりに頬杖を付くケインは、空いている方の手でもってペンギンを指差す。
その指の先にいるペンギンを見つめ、もう一度ケインを見つめて、優吾はキュッと眉間に皺を寄せた。
「……おれ、あんなに短足?」
「そこじゃない。いつも俺を上目遣いで見つめてきて、ひょこひょこと隣を歩き、たまに何かをねだってくる姿がそっくりなんだ。可愛いと思えてならない」
先回りで自虐に走るも、それを丸ごとひっくり返すように甘い言葉を囁かれ耳に熱が集まる。
暗くてもバレるかもしれないほど顔全体が熱く、眦にはじんわりと涙が滲んでいた。
なのに、当の本人は全く気にした顔を見せず、当たり前のことを言ったに過ぎないとばかりにけろりとしている。
「……ケインさぁ、本当に俺のこと、好きじゃん」
「そう言っているだろう。信じてくれていなかったのか?」
「ちがくて……いやだって、ここまで、とはさぁ……」
周りにはたくさんの人がいる。
親子連れ、カップル、夫婦、友達同士……そんな彼ら彼女らは気にも留めず、ケインは本気で優吾を口説こうとしているのだ。
ドッキリだと言われた方が信用できるほどの言葉の数々。なのに、この男は本気で優吾に愛を告げ、デートにまで誘ってきた。
貴重な休みに、他の誰でもない、優吾を。
今までの彼の言動が脳内を駆け巡り、ぐちゃぐちゃになった頭の中。
髪を掻き乱したい衝動に駆られるが、あいにく気合いを入れてセットしてきたため崩すことも叶わない。
「……な、次は動物園も行こう? 俺、ゴリラ見たい」
「ん? ゴリラ……? 好き、なのか?」
「わりと好きだよ。おっきくて」
意趣返しのように、おそらくケインの守備範囲外の動物の名を出せば驚いたような顔を して唸っていた。
理由は聞くなよと笑ってやれば、ますます困惑するケイン。その姿に可愛らしいという 感情が浮かび、優吾は顔には出さないが内心酷く狼狽えた。
「…………」
「優吾? どうした」
「あ、あーいや……なんでもない」
黙った優吾の顔を覗き込もうとするケイン。
最近思ったが、ケインはこうして優吾の顔に近付くことが多いように感じられた。
普通友人であってもこの距離間はおかしいはず。早野にやられたら咄嗟に背を仰け反らせて逃げるだろう。
だが、ケインにされるのは嫌ではないし、逃げるという考えも最初からなかった。
むしろ、優吾を心配して不安そうに瞳を揺らす彼の表情に、どうしようもないほど――
「……あれ、ケインくんじゃない?!」
「あ、ペンギン! いたぞ、ほら!」
大水槽を通り過ぎたところで、少し離れた位置にペンギン広場という看板が見えた。
思わずケインの手首を掴み、走りはしないが人の間を潜りながら進んでいく。
そこは通路の上からペンギンのいる大きなプールを見下ろす仕組みとなっており、特に端の方には人だかりができていた。
どうやらそこが、ペンギンが集まる人工的な岩場の真上に位置しているらしい。その近くに丁度空いたスペースを見付けた優吾は、ケインを引き連れペンギンたちを見ようと顔を覗かせた。
「お、ここ結構いい場所じゃん。見える?」
丁度二人の目線下、岩の陰で二羽のペンギンが寄り添い合い、くちばしをくっ付け合って仲良しアピールをしていた。
夫婦かと思ったが、周りの会話を聞くにオス同士らしい。人前でも気にせずイチャイチャするその二羽に、優吾は少し苦笑しながらもケインの方へ視線を向けた。
「どうだ? 見たかったんだろ、ペンギン」
「ああ、とても可愛らしいな……だが、叶うならひとつ弁明させて欲しい」
「弁明? って、何についてだよ?」
大多数のペンギンはプールの中でぷかぷかと浮かび、女性や子供の目を楽しませている。
下を見るのに必死な彼ら彼女らは、ケインと優吾には気にも留めずに甲高い声を上げて、水に浮かぶ鳥たちを楽しんでいた。
「俺がペンギンを好きで可愛いと思っているのは、どことなく優吾に似てるからだ」
少し腰を折って手すりに頬杖を付くケインは、空いている方の手でもってペンギンを指差す。
その指の先にいるペンギンを見つめ、もう一度ケインを見つめて、優吾はキュッと眉間に皺を寄せた。
「……おれ、あんなに短足?」
「そこじゃない。いつも俺を上目遣いで見つめてきて、ひょこひょこと隣を歩き、たまに何かをねだってくる姿がそっくりなんだ。可愛いと思えてならない」
先回りで自虐に走るも、それを丸ごとひっくり返すように甘い言葉を囁かれ耳に熱が集まる。
暗くてもバレるかもしれないほど顔全体が熱く、眦にはじんわりと涙が滲んでいた。
なのに、当の本人は全く気にした顔を見せず、当たり前のことを言ったに過ぎないとばかりにけろりとしている。
「……ケインさぁ、本当に俺のこと、好きじゃん」
「そう言っているだろう。信じてくれていなかったのか?」
「ちがくて……いやだって、ここまで、とはさぁ……」
周りにはたくさんの人がいる。
親子連れ、カップル、夫婦、友達同士……そんな彼ら彼女らは気にも留めず、ケインは本気で優吾を口説こうとしているのだ。
ドッキリだと言われた方が信用できるほどの言葉の数々。なのに、この男は本気で優吾に愛を告げ、デートにまで誘ってきた。
貴重な休みに、他の誰でもない、優吾を。
今までの彼の言動が脳内を駆け巡り、ぐちゃぐちゃになった頭の中。
髪を掻き乱したい衝動に駆られるが、あいにく気合いを入れてセットしてきたため崩すことも叶わない。
「……な、次は動物園も行こう? 俺、ゴリラ見たい」
「ん? ゴリラ……? 好き、なのか?」
「わりと好きだよ。おっきくて」
意趣返しのように、おそらくケインの守備範囲外の動物の名を出せば驚いたような顔を して唸っていた。
理由は聞くなよと笑ってやれば、ますます困惑するケイン。その姿に可愛らしいという 感情が浮かび、優吾は顔には出さないが内心酷く狼狽えた。
「…………」
「優吾? どうした」
「あ、あーいや……なんでもない」
黙った優吾の顔を覗き込もうとするケイン。
最近思ったが、ケインはこうして優吾の顔に近付くことが多いように感じられた。
普通友人であってもこの距離間はおかしいはず。早野にやられたら咄嗟に背を仰け反らせて逃げるだろう。
だが、ケインにされるのは嫌ではないし、逃げるという考えも最初からなかった。
むしろ、優吾を心配して不安そうに瞳を揺らす彼の表情に、どうしようもないほど――
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