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15. side.紅林 桃李
しおりを挟む『うるさいです』
『明日は多分行かないです』
『あのお菓子なら、もうちょっと苦い方が有難いです』
消灯後。
随分前に送ったメッセージの返事が律儀に帰ってくるのを見つめ、俺は頬を緩めた。
こういう、先輩の言葉を無視できないところがいじらしくて可愛いと思う。
茶室での彼の様子を思い出しながら『了解』『次はまた違うお菓子で出すよ。楽しみにしてて』『ところで好きなタイプ何?』と素早い手つきで即レスする。
あ、既読無視だ。……こういう、思い切りのいいところも可愛いと思う。
端末を見つめたままニヤニヤしていると、「中立派」の仲間達が恐ろしいものを見るような目で俺を見て徐々に距離を取り始めた。失礼な。
「ーー機嫌良さそうだね~」
向かいのソファから、男にしては高めの声が聞こえてくる。
「ふふ、国春君と連絡先交換したんだ。既読無視なんかしちゃって可愛いなぁ……」
「わぁ。トーリを無視するってすごいねぇくにはるくん。どうだった?中立派、入ってくれるって?」
「いや、保留」
「は?」
ザァッと部屋の中に広がる殺気に、集まっていた雑魚共が次々に逃げ出していく。中には気絶する奴もいて。
弱い奴がなんで此処にいるんだろう。殺しちゃっていいかな。ーーあぁダメだ。父上から殺しは禁止されてるんだった。
雑魚を殺すことはとりあえず諦めて、明らかに不機嫌になった目の前の男に視線を移す。
僅かな月明かりしか入ってこない真っ暗な室内では、表情を伺うことは出来ない。最も、興味があるかと言われれば全くないし、どうせわざとらしい笑顔を浮かべていることくらい予想できる。
とりあえず気休めに国春君のメッセージにスタ爆をしつつ、ニコリと微笑んでみせる。
目の前の男(予想)とは違って作り物には見えない、感情を上乗せした笑顔。これもまた、殺人の技術と共に地獄のような裏切りとその粛清を経て手に入れたものだ。
「なんでぇ?おれ、くにはるくん中立派に入れろって言わなかったっけ~?あれ?トーリ、俺に逆らうの~?ねぇなんでぇ?酷い~~」
「だって好きになっちゃったんだもの」
「………………ぇえ?今の、聞き間違い?トーリ、好きになったって言った?」
「言ったね」
「それは話変わる。詳しく」
入学式で見た時点で、好みのタイプだと思った。
周囲からの関心も好意も、全てがどうでもいいと言わんばかりの生意気な目。如何にも栄養が足りてなさそうな細身の体躯に青白い顔。
ぐちゃぐちゃに壊して、自分好みに作り上げて小さな茶室に置いておけたら、さぞかし楽しいだろうって。
それで、たまたま彼が前からウザかった警備員に絡まれていたから。
「……そしたらさ、物凄く可愛くて」
「ほう」
「猫みたいに警戒してるのに、俺が出すお茶とお菓子はパクパク食べるんだ。俺がちょっと優しくしたら期待したような目しちゃってね、もうゾクゾクするったら」
彼が、なんの疑いも持たずに自分に擦り寄ってくるようになったら。それは彼を壊すよりもよっぽど素晴らしい快楽を俺にもたらすだろうと確信した。
だから、中立派の勧誘(強制)をやめることにしたのだ。
「追い詰められて追い詰められて、その果てに俺のところに来た方が……よっぽど、楽しみが増える」
「…………ぇええ~それおれの前でやってよ~つまんないよ~おれ蚊帳の外じゃあん」
「なんで俺がお前に気を遣わないといけないの?」
「うぇえええん!!!酷いぃい~」
嘘っぱちの泣きべそをかく男を冷めた目で見つめ、息を吐く。このアタオカに何を言っても無駄だ。
とはいえ、俺の恋路を邪魔されるのだけは困る。警戒心の高い子猫のような彼は、自分に害が及ぶと分かった瞬間に俺から離れてしまうだろう。
それで生徒会や風紀のクソに取られるなんて事があってみろ。俺は全勢力を費やして目の前の男を殺す。
「ねぇねぇ~じゃあさぁ俺が部下使ってくにはるくんマワすからさぁ~人間不信になったところをトーリが手に入れるってのはど~?そっちの方が面白いし興奮する~」
「無理。多分国春君、そこそこ強いし。少なくともFの雑魚よりは使えるんじゃないかな」
「…………へぇ~……好物~そういうキャラ」
お、食い付いた。
「頼むからさ、邪魔しないでよ。本当に殺すよ」
「ぇ~……でもつまんない~!!せっかくこの学園にBL求めてきたんだからさぁ~?俺の好きに動かして好きな展開にしても良くねぇ~?」
「俺も国春君もお前の玩具じゃねえんだよ」
本当に、こいつがただの雑魚だったら速攻で殺してるのに。国春君の処女は俺が頂くって決まってるんだよ誰が雑魚共に渡すか。
ちなみに国春君が既に処女じゃなかった場合、俺が茶室で強姦する。
ぽろん、と言う通知音と共に『ブロックすんぞ』という愛想のないメッセージが出現するのを見つめ、穏やかに微笑む。そして、永久にスタ爆を続けていた指を画面から離した。
目の前の男が身を乗り出して覗き込んでくるが、何もしないようなのでそのままにさせておく。
「処女か聞いといたら~?」
「へぇ、お前もたまにはいいこと言えるんだ」
「でしょ~~?」
すぐさま『国春君って処女?』と打ち込んだ。直ぐに既読が付いて、『俺男です』と帰ってくる。
俺は満面の笑みを浮かべた。
処女確定。圧倒的感謝。
国春君はもう寝たのだろう。いよいよ既読がつかなくなったので俺はメッセージを送るのをやめ、ぶらぶらと外を歩く。
あんなサイコパス野郎とずっと一緒にいるなんて息が詰まる。マジでその内殺してしまう。
しかし、あれで「中立派」のトップなんだからもう、どうしようもない。国春君、是非とも明日も茶室に来て俺を癒して欲しい。
脳内で100回ほどサイコパスを銃殺したところで。
人の気配を敏感に感じ取った俺は足を止め、くるりと振り返った。そして、数メートル先に立ってこちらを見つめる人影に微笑みかける。
「……やぁ、君と会うなんて今日は夜から悪運続きだなぁ。お疲れ様。仕事終わりかい?」
「……」
「ふふ。どうしたのかな、汚物でも見るような目をして。
ねぇ生徒会会長殿」
殺すぞ。くそゴミ野郎。
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