王太子妃は決定事項?承諾してない!何でこうなった?!

御伽夢見

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 珍客:真っ黒くろりん

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 その日、クラーク公爵家に驚くべき訪問者がいた。クラーク公爵夫人をはるかに上回る腹黒が。

 オリヴァーと、プロポーズ以降、公爵家に戻っていたシルヴィアにとっては初めての対面であった。


          *



 イーサンは父に聞いた通りにある場所に来ていた。自分が色々学んだ山の中のある場所に。
一人で行けとのことで、共の者たちは来ないように指示しておいた。


    〘崩壊の危険あり立入禁止〙


と、注意書きがいくつかある遺跡。一見、確かに崩壊しそうである。

 だが、この中に前王夫婦が居るという。
 外苑風景が素晴らしい離宮で暮らしていたはずなのだが、王だった頃よりも自由が聞くようになり、あちこち出かける様子はあった。そして退いてはいるものの、影の公務のようなものをしていた。



 でも、今現在、ここだって??? 

 中が崩壊して死んでるとかってことはないよね?



 イーサンは躊躇したが、崩れた入口を覗き込むと、人が通れる程の空間があることに気付いた。そしてよくよく見れば、確かに崩れた入口なのだが、その外観を維持した形で補強されていることに気付いた。


 つまり、見た目に騙されるなって事か。


 やれやれ、とイーサンは多少のアウトドアグッズを入れた袋を持って入口を潜っていった。

 前に進むと奥から灯りが漏れてきていることに気付き、そちらの方向へ向かう。
 何人かの人の気配に気付いたが、イーサンが誰なのかを把握しているのか、何かアクションをかけてくる様子もない。

 やがて道が2つに分かれる。

 イーサンは姿を見せない者たちに声をかけた。

 「申し訳ないが、祖父達はどちらにいるか教えてもらえないだろうか?」

 「左へ。」

 一言だけ返事があった。

 進むとやがて大きな岩にぶち当たった。行き止まり。

 だが、左へと言われた。そして入口のことを考えると、

 見た目に騙されるな

ということになる。つまり、一見天井が一部崩れて、岩が転がって進めないように見えるだけ。

 慎重に隅を見ていく。やがて、暗がりの一部を角度を変えて見てみると、さらに暗くなってる部分に気付く。光と影を利用した目の錯覚か何かがあるのではと思い、そちらに手を伸ばすと、進めることに気付く。

 やがて、遺跡とは思えない、明らかに現代に造られた廊下と扉が見えてきた。

 イーサンは扉を開けた。



          *



 クラーク公爵夫人は呆気にとられていた。

 眼の前の珍客に。だが、公爵家に姿をみせた理由もわからなくもない。
 夫の家系の件か、未来の孫嫁・・の件だろう。

 夫の義両親も、夫の実母も、目の前の人のことを『黒ダヌキ』と表現していた。

 亡くなった夫の実父に至っては自分の親友なのに『真っ黒くろりん』と呟いていた。

 「ご無沙汰しております。そしてようこそおいで下さいました。
 本日はどのようなご用件で?
 生憎と主人は本日城で仕事をしておりまして屋敷には不在でございます。」

 珍客は静かに微笑んでいた。


          *



 「え?何と言いました?今?」

 イーサンは久しぶりに会った祖母に驚いた表情で声をあげる。

 それ以前に何故立ち入り禁止の遺跡の奥に立派な居住スペースがあるのか等確認したいことがちょこちょこあるのだが、それよりも祖母の話した内容のほうがイーサンにとっては一大事だった。

 祖父にあって話がしたいとイーサンはここに来た理由を説明したのだが、祖母から

 あの人なら出掛けたわよ。クラーク公爵家に。

との返事。

 「な、何故?」

 「あら。だってうふふ。
 おめでとう、イーサン。シルヴィアちゃんを無事に捕まえたんでしょう?」

 「って、ことは・・・はぁ?まさかシルヴィアに会いに行ったの?お祖父様!」

「そりゃあ、レイルズの件だけならばレイアルズ公爵家に行くだろうし、クラーク公爵家と言って出掛けた以上、当然シルヴィアちゃんにも会うでしょうよ。私は会ったことがあってもあの人はなかったからねぇ。」

 「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!あの人変な刺激しないでしょうね?
 やっと思いが通じ合えたのに止めて?」

 イーサン、あわててもと来た道を戻り始めた。

 「気をつけるのよ~。」

 背後から祖母の声が響いた。
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