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第1章
誉田弘人
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「ビッグスモールの販路を拡大したい。」
「なのでこれからは重点的にビッグスモールに対する商品の提案の強化を行ってほしい。」
久我山係長が俺と木元さんを呼び、こう言った。
「ビッグスモールですか…5店舗しか担当してないんですけど何を提案すればいいんですかね?」
木元さんが気だるそうに久我山係長に問う。
「今ある商品以外だったら何でもいい。手当たり次第投げかけてみてくれ。」
久我山係長の言葉に木元さんは下唇を突き出し、眉を顰めている。
木元さんが今思っているであろう気持ちと俺も同じ気持ちだ。今ある商品以外と言われてもこれといって目新しい物もない。
久我山係長がいきなりこんな話をした事に正直驚いている。
この会社に入社して早3年たつが、成し遂げた事もなければこれらしたい目標もない。
日々淡々と業務をこなしているだけだ。
俺の目からは、久我山係長は「同類」に映っていた。
「階級が変われば人も変わるのかな…」
ふとそんな考えがよぎった。
久我山係長は典型的な「いい人」だ。
上司や他部署の人から仕事を押し付けられても嫌な顔せず、俺や木元さんに押しつける事もなく、黙々と業務を行っていた。
真面目だけど損するタイプ。
俺の久我山係長に対するイメージは固まっていた。
ところが今、俺と木元さんに新しい提案を行ってほしいと珍しく指示をだした。
「西本部長にでもつつかれたのかな?川瀬課長が言うわけないしな…」
そんな事を思いながらも久我山係長に問いかけた。
「各店舗はある程度既存商品で棚は埋まってますし、新たな商品提案となりますと既存商品と入れ替えする形で提案を行うと考えていいんですか?」
俺の問いに久我山係長はニヤリと笑った。
「いや…ちがうよ」
「既存商品はそのままでいい。」
「では、どうやって…」
木元さんの放った言葉を遮るように久我山係長は言った。
「別の部門に売り込めばいい。同じ食品を扱ってるなら話は通じるだろ?」
「誉田と木元が担当している店舗で売上1位を目指すんだ。」
思わず吹き出しかけたが堪えた。
余りにも無茶だ。どこが1番売り上げているかなんて考えもしなかったが、うちが1番ではない事は明白だ。
店の在庫を見ればわかる。他のメーカーの方が明らかに多く在庫を抱えている。
売れる商品ならある程度在庫を持っても問題ないが売れなければ処分にリスクを抱える。
量販店でバイト経験があるからなんとなくそこは理解していた。
「マジすか?うーん厳しいんじゃ…」
木元さんが俯きつつ呟く。
「厳しくてもやるんだよ。いいね?」
いつもの久我山係長からは想像できない、座った目で俺と木元さんを睨む。
「「はい。」」
あからさまに不服そうな木元さんと不服でも上司からの命令なら仕方ないと思う俺が同じ言葉で返事をした。
「なのでこれからは重点的にビッグスモールに対する商品の提案の強化を行ってほしい。」
久我山係長が俺と木元さんを呼び、こう言った。
「ビッグスモールですか…5店舗しか担当してないんですけど何を提案すればいいんですかね?」
木元さんが気だるそうに久我山係長に問う。
「今ある商品以外だったら何でもいい。手当たり次第投げかけてみてくれ。」
久我山係長の言葉に木元さんは下唇を突き出し、眉を顰めている。
木元さんが今思っているであろう気持ちと俺も同じ気持ちだ。今ある商品以外と言われてもこれといって目新しい物もない。
久我山係長がいきなりこんな話をした事に正直驚いている。
この会社に入社して早3年たつが、成し遂げた事もなければこれらしたい目標もない。
日々淡々と業務をこなしているだけだ。
俺の目からは、久我山係長は「同類」に映っていた。
「階級が変われば人も変わるのかな…」
ふとそんな考えがよぎった。
久我山係長は典型的な「いい人」だ。
上司や他部署の人から仕事を押し付けられても嫌な顔せず、俺や木元さんに押しつける事もなく、黙々と業務を行っていた。
真面目だけど損するタイプ。
俺の久我山係長に対するイメージは固まっていた。
ところが今、俺と木元さんに新しい提案を行ってほしいと珍しく指示をだした。
「西本部長にでもつつかれたのかな?川瀬課長が言うわけないしな…」
そんな事を思いながらも久我山係長に問いかけた。
「各店舗はある程度既存商品で棚は埋まってますし、新たな商品提案となりますと既存商品と入れ替えする形で提案を行うと考えていいんですか?」
俺の問いに久我山係長はニヤリと笑った。
「いや…ちがうよ」
「既存商品はそのままでいい。」
「では、どうやって…」
木元さんの放った言葉を遮るように久我山係長は言った。
「別の部門に売り込めばいい。同じ食品を扱ってるなら話は通じるだろ?」
「誉田と木元が担当している店舗で売上1位を目指すんだ。」
思わず吹き出しかけたが堪えた。
余りにも無茶だ。どこが1番売り上げているかなんて考えもしなかったが、うちが1番ではない事は明白だ。
店の在庫を見ればわかる。他のメーカーの方が明らかに多く在庫を抱えている。
売れる商品ならある程度在庫を持っても問題ないが売れなければ処分にリスクを抱える。
量販店でバイト経験があるからなんとなくそこは理解していた。
「マジすか?うーん厳しいんじゃ…」
木元さんが俯きつつ呟く。
「厳しくてもやるんだよ。いいね?」
いつもの久我山係長からは想像できない、座った目で俺と木元さんを睨む。
「「はい。」」
あからさまに不服そうな木元さんと不服でも上司からの命令なら仕方ないと思う俺が同じ言葉で返事をした。
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