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第1章
木元浩介
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「くがっち気合い入りすぎっしょ~。マジで…」
ため息混じりのしかめっ面で木元さんが呟く。
俺はエビチリを頬張りつつ苦笑いを浮かべた。
職場近くの中華料理屋に俺と木元さんはよく行く。
昼間人口が多いこの辺りでは、昼でも空いているこの店はとても居心地の良いスポットだ。
「係長に昇進したし、何かしら結果が欲しいんですかね…」
正直な感想を述べた。
家族がいて、昇進直後の久我山係長が結果を残したい気持ちも解るし、それに対し木元さんが不満そうな気持ちを露わにするのも解る。
会社という様々な年代が集まる組織の中で、些細な衝突は付き物だ。
(まぁ俺は一生この会社に勤めるわけじゃないしどうでもいいけど…)
求人サイトをチェックするのが日課になっている俺が1番この会社に適してないだろう。
「ただ何となく」で会社を選んだ事。
学生時代就職活動に力を入れなかった事。
後悔してるのかすら曖昧なところであるが、学生時代にタイムスリップ出来るボタンがあるなら躊躇なく押すと思う。
そんな自分と比べると木元さんはとても立派に見える。
「弘くん大人だな~マジで!」
木元さんはノリは軽いが、自分に対して絶対の自信を持っている。
「川瀬もくがっちも上司と呼べないっしょ~」
木元さんは良く川瀬課長と久我山係長の不満を言う。
「あの2人より給料低いのマジないわ~」
これも木元さんの愚痴のセットだ。
久我山係長はともかく川瀬課長に不満が出るのは俺も同じだ。
新卒で入社して右も左もわからない時に一見人当たりの良い川瀬課長に業務について相談していた。
初めの頃は応えてくれたが、すぐに
「久我山か西本さんに聞いて。俺忙しいからさ」
今思えば説明するのに3分もかからないレベルの相談であったが、明らかに嫌そうな表情であしらわれた。
「忙しい」が口癖の割にはゴルフやキャバクラの話題は仕事の手を止めて嬉々と話しだす。
それから暫く積もり積もって川瀬課長に相談する事はなくなった
あんな人がよく管理職になれたもんだと正直思ってしまう。
「木元さんならすぐ係長になれますよきっと…」
木元さんの愚痴に同調したいがどこで本人に伝わるかわからない。
不満があっても社内で波を荒立てる事はしたくない。
いつも自分の中で不満を押し込む様にしている。
木元さんが不満を口にする時は煽てて木元さんの身の上話に映る様に仕向ける。
「だよな~俺数字作ってるし、にっしーにも気に入られてるしそろそろだべ~」
西本部長に気に入られているかはともかく、木元さんの営業力は凄いと思う。
広域量販営業部の主なお客さんはスーパーのサービスカウンター。
男性よりも女性の方が圧倒的多数だ。
自分の母親の年齢に近い人もいれば俺や木元さんと同年代の若い女性もいる。
木元さんはどの年代の女性にも分け隔てなく接する。
新卒の頃、同行して量販店を廻った事があるが、様々な年代の女性に営業する木元さんの姿はまるでホストの様だった。
(俺には真似できないな…)
俺は瞬時にそう思ったが、なんとなくかっこよくも見えた。
「グロサリーだっけ?まぁ適当に営業かけてみっけど、俺らに言うからにはくがっちもやれよって言おうかな~」
木元さんが出世するかどうかの鍵は礼節面での上司の評価だと思う。
社内営業も時には大切だ。
特にうちみたいな古い会社は著しくそうだと思う。
川瀬課長が「課長職」に就いているという事実だけでそれが顕著であろう。
やんわりとその事を伝えたいが、うまく伝わらず険悪なムードになるリスクを考えて、俺は半笑いで反応を誤魔化した。
「んじゃデザート食って行くか!」
「劉ちゃーん!杏仁ちょーだーい!」
やはり木元さんはすごい。
ちゃん付けで呼ばれて、満更でもない表情の「劉ちゃん」を見て俺は思った。
ため息混じりのしかめっ面で木元さんが呟く。
俺はエビチリを頬張りつつ苦笑いを浮かべた。
職場近くの中華料理屋に俺と木元さんはよく行く。
昼間人口が多いこの辺りでは、昼でも空いているこの店はとても居心地の良いスポットだ。
「係長に昇進したし、何かしら結果が欲しいんですかね…」
正直な感想を述べた。
家族がいて、昇進直後の久我山係長が結果を残したい気持ちも解るし、それに対し木元さんが不満そうな気持ちを露わにするのも解る。
会社という様々な年代が集まる組織の中で、些細な衝突は付き物だ。
(まぁ俺は一生この会社に勤めるわけじゃないしどうでもいいけど…)
求人サイトをチェックするのが日課になっている俺が1番この会社に適してないだろう。
「ただ何となく」で会社を選んだ事。
学生時代就職活動に力を入れなかった事。
後悔してるのかすら曖昧なところであるが、学生時代にタイムスリップ出来るボタンがあるなら躊躇なく押すと思う。
そんな自分と比べると木元さんはとても立派に見える。
「弘くん大人だな~マジで!」
木元さんはノリは軽いが、自分に対して絶対の自信を持っている。
「川瀬もくがっちも上司と呼べないっしょ~」
木元さんは良く川瀬課長と久我山係長の不満を言う。
「あの2人より給料低いのマジないわ~」
これも木元さんの愚痴のセットだ。
久我山係長はともかく川瀬課長に不満が出るのは俺も同じだ。
新卒で入社して右も左もわからない時に一見人当たりの良い川瀬課長に業務について相談していた。
初めの頃は応えてくれたが、すぐに
「久我山か西本さんに聞いて。俺忙しいからさ」
今思えば説明するのに3分もかからないレベルの相談であったが、明らかに嫌そうな表情であしらわれた。
「忙しい」が口癖の割にはゴルフやキャバクラの話題は仕事の手を止めて嬉々と話しだす。
それから暫く積もり積もって川瀬課長に相談する事はなくなった
あんな人がよく管理職になれたもんだと正直思ってしまう。
「木元さんならすぐ係長になれますよきっと…」
木元さんの愚痴に同調したいがどこで本人に伝わるかわからない。
不満があっても社内で波を荒立てる事はしたくない。
いつも自分の中で不満を押し込む様にしている。
木元さんが不満を口にする時は煽てて木元さんの身の上話に映る様に仕向ける。
「だよな~俺数字作ってるし、にっしーにも気に入られてるしそろそろだべ~」
西本部長に気に入られているかはともかく、木元さんの営業力は凄いと思う。
広域量販営業部の主なお客さんはスーパーのサービスカウンター。
男性よりも女性の方が圧倒的多数だ。
自分の母親の年齢に近い人もいれば俺や木元さんと同年代の若い女性もいる。
木元さんはどの年代の女性にも分け隔てなく接する。
新卒の頃、同行して量販店を廻った事があるが、様々な年代の女性に営業する木元さんの姿はまるでホストの様だった。
(俺には真似できないな…)
俺は瞬時にそう思ったが、なんとなくかっこよくも見えた。
「グロサリーだっけ?まぁ適当に営業かけてみっけど、俺らに言うからにはくがっちもやれよって言おうかな~」
木元さんが出世するかどうかの鍵は礼節面での上司の評価だと思う。
社内営業も時には大切だ。
特にうちみたいな古い会社は著しくそうだと思う。
川瀬課長が「課長職」に就いているという事実だけでそれが顕著であろう。
やんわりとその事を伝えたいが、うまく伝わらず険悪なムードになるリスクを考えて、俺は半笑いで反応を誤魔化した。
「んじゃデザート食って行くか!」
「劉ちゃーん!杏仁ちょーだーい!」
やはり木元さんはすごい。
ちゃん付けで呼ばれて、満更でもない表情の「劉ちゃん」を見て俺は思った。
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