車屋異世界転生記

ライ蔵

文字の大きさ
上 下
6 / 76

一章 元オッサン異世界でヤモリ神にビビられる。

しおりを挟む

エストワールの手紙を読んだ俺はこう思う。

俺は正しかった。


やっぱり奴はアホだ。


色々とツッコミ処満載の手紙だったが取り敢えず目の前にいる気の毒なヤモリ神に手紙の内容を簡潔に伝える。


[あなた様はどうやらエストワール様に捨てられたみたいですよ?]

もう台詞が違うことは気にしないことにした。青色タヌキ型ロボットの便利道具みたいな物を使った張本人であるタヌ神の手紙に書いてあるからな。


[ふぁ!!???]


ヤモリ神が歯の無い口をパクパクさせながら変な声を出している。


[取り敢えずエストワール様の御手紙を自らの目で確認された方が良いのでは無いでしょうか?]

俺はそう言いながらヤモリ神に読みやすいように開いたまま目の前に差し出した。


手紙を読んでいるであろうヤモリ神は途中で体の色が青くなったり赤くなったりしている。コイツは感情で色が変化するのか?あっ、また青くなった。


手紙を読み終わったヤモリ神はまるでこの世が終焉を迎えたような深~~いため息を付き俺には見えない遥か遠くを眺めているような全てを諦め悟りを開いたような顔をしていた。

まあ実際はどうみてもなにも考えていないようなヤモリの顔なんだけどな。

余程のショックを受けたらしいヤモリ神は言葉は出てこないのに口をパクパクさせている。

俺にはよ~く分かるぞお前の気持ち。


あいつが泣くまで殴るのをやめたくない、そんな気持ちが。


ヤモリ神は精神が落ち着いてきたらしく、歯の無い口から言葉を吐き始めた。


[ウワァァァ~~~~!!!!!!!、いやだ~イヤダ~~~!!!。こんな人間の皮を被った化け物の下僕なんかにナリタクなイぃぃぃぃ~~!!!!]


おふぅ、全然落ち着いて無い上に発狂してやがる。

て言うか誰が人間の皮を被った鬼畜だこら


俺はヤモリ神に声を掛ける。


[取り敢えず落ち着いて下さい。エストワール様にお会いしたら共に折檻しましょう。]




何故か翻訳されると言葉の丁寧さが余計に恐ろしく感じる台詞が出たぞ。

俺の言葉を聞き激しくガクブル震えだした発狂ヤモリ神。


面倒だから落ち着くまで放置して今の自分の状況を考察するか。


俺はヤモリ神を放置して自分の部屋に戻り、机に向かいながら椅子に座る。


行儀がとても悪いが机の上に両足を投げ出し、両腕を頭の後ろに回し目を瞑りながら考える。


前世で俺が瞑想するときの定番の格好だ。社員にこの格好の時によく怒られたな[居眠りしてんじゃねえよ。働けボンクラ!]って、一応俺が社長だったはずなんだがな。


まあ、それはいいか。まずは俺の今の見た目だ。


先ほど井戸から汲んだ水で自分の姿を写した時に道理で見たことがあったはずだ。

俺のやっていたネトゲで育てたサブキャラじゃねえか。

髪の色や瞳の色が違う上にまだガキでちっこいが面影が残っている。

あのアホ神[ネトゲの方はどうにかしてみる。]とか言ってたが、思い付いたのがこれかよ。

なんでメインキャラじゃねえんだよ。

メインキャラはナイスミドルなおじさまだったのによ。

あまりにアホ過ぎて何も言えねえが仕方がない。

既にこの姿と性別で俺は生まれたんだから流石にアホ神でももう変えられないだろう。

それに俺もこのキャラを気に入っていたし女として生きるのも面白そうだ。

順調に育てばさぞ美人に育つだろう。

惜しいのは鏡などを通してじゃないと俺の姿を愛でられないとこか。

まあ、いざ自分ってなると全く興味が湧かないだろうが。


次は俺の能力か。生成魔法は便利そうだな、しかしやり過ぎるとこの世界に影響が強すぎるだろうからよく考えて使えってことだな。

回復魔法もありがたい。俺ももう一度人生をやり直せるのだから今生では簡単には死にたくないからな。


他の魔法も修行次第で使えるらしい。

魔力も多少多めらしいし楽しみだ。

魔法が使えるなんて楽しそうじゃないか。


そして、リミッターって何だ?

ここら辺りは後で落ち着いたヤモリ神に聞いてみるか。


しかしこう考えるとエストワールはロクでもないことしかやらねえ。

さぞヤモリ神も苦労しているだろうな。


[申し訳ございませんでした。先程は取り乱して見苦しい姿をお見せして心苦しい限りです。]


そう俺の背中の方から声が聞こえる。ヤモリ神も落ち着いたようだな。

だが登場した時のような尊大な物言いから柔らかくなっている。

相当に落ち込んでいるようだ。


俺はそれまでの行儀悪い格好から座り直し、机の上に上がるようヤモリ神を促す。


[きちんと私とお話しましょう。どうぞ私の机の上に来てください。]


しおりを挟む

処理中です...