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二章 オッサン少女、焼オニギリを完成させる。
しおりを挟む朝起きると何故かデジャブを感じる様な状態に俺はなっていた。
シルビアが寝ていたはずの俺のベッドで何故かソファーで寝ていた筈の俺が寝ている。
しかも今の俺はシルビアの抱き枕状態だ。
目の前にシルビアの美しい寝顔がある。
どうにか抜け出せないか身を捩るが無理そうだ。
...もういいや...、また寝るか。
二度寝から眼が醒めると俺はシルビアから解放されていた。
ベットから身を起こすと俺が起きた事に気付いたシルビアが柔らかく笑いながら声を掛けてきた。
[眼が醒めましたかジュエル、おはようございます。]
[はい、おはようございます。シルビアさんは良く眠れましたか?]
何故か朝から肌がツヤツヤしているシルビアに寝心地は良かったか尋ねると[ええ、とても気持ち良く眠れました!それに抱き心地も良かったです!!]と渾身の笑顔が返ってきた。
...何の抱き心地が良かったのかは聞くのを止めておこう。
シルビアが俺の髪を櫛でといてくれ、緩く編んでくれる。
今の俺の髪は更に長くなっており膝までの長さがある。
相変わらずオヤジ様と母上は髪を前髪以外はすいてくれるだけて切らせてくれない。
この前、二人に膝までで勘弁してください!と懇願すると何とか妥協してくれ今の長さ迄で許された。
[...ジュエルの髪は本当に美しいですね!]
[あまり上手に髪を結いきらないので短く切りたいのですが...]
そう返答するとシルビアが慌てたように返してくる。
[この髪を切るなどとんでもない!!私が毎日結わせてもらいます!!!]
はぁ、皆同じ反応だな...毎日シルビアが結ってくれるならもういいや
[では、お願いしますねシルビアさん。]
[はい!!]
嬉しそうなシルビアの声が響く。
昼になりトルステン達が旅立ち前の挨拶に来た。
日本人の少年はシルビアにすがり泣いていた。
そりゃそうだろうな...唯一意思の疎通が出来ていた人と別れなければならないのだから...。
俺達は手を振りながら見送る。
後からシルビアに教えてもらったのだが少年の名前はショウと言うらしい。
ショウ、逞しく生きろよ!俺が成人した後に再開できたならどうにかしてやるぜ。
トルステン達が旅立ち数日後、俺は工房でロータリーエンジンを完成させて試運転をする準備を始めていた。
エンジンを鉄のアングルで作った固定器具にグルンとオヤジ様に手伝ってもらい取り付た。
ラジエターやマフラーなど必要な物なども既に取り付けてある。
後はエメリッヒの制御魔導具待ちだ。
[ジュエルちゃん、完成したよ!!!]
エメリッヒが箱状の魔導具を持って来たのでエメリッヒと共にエンジンに取り付ける。
[さぁ、出来ました!!後はちゃんと動作するかエンジンを掛けて見ないとわかりませんね。]
エンジンを見に来ている俺の家族と自転車関係のおっさん達が緊張した面持ちて俺とエメリッヒを見ている。
このロータリーエンジンは基本はガソリンエンジンと変わらない。
ガソリンの替わりに燃料が魔力なだけだ。
ローターで空気と魔力の混合気を圧縮させ点火する、そのままだな。
火属性の魔力を空気と共に圧縮すると威力が増す。
ならば燃焼機関が作れるだろうと思いここまで作ってきたのだ。
エメリッヒが作ってきた魔導具を作動させ、セルモータを回すスイッチに手を掛ける。
[では、エンジンを掛けます!!]
セルモータを回すと勢い良くローターを回し始める。
よし!圧縮は大丈夫そうだ!!かかれーーーー!!!
エンジンに初爆が起こるのとほぼ同時にエンジンが掛かりアイドリングした!
よっしゃ!!!成功だ!!!
スロットルバルブを開くと鋭くエンジン回転が上がる。
完璧だな!!
[大丈夫そうです!!!出来上がりました!!!]
周りのエンジンを見ながら心配そうな顔をしていた人たちが一斉に笑顔になり声が上がる。
[うぉー、何かわからんがすげー!!]
[結構大きな音がするな...]
など反応はそれぞれ様々だ。
オヤジ様が俺とエメリッヒに近付いてくる。
[やったな!二人共。]
[はい!これを馬車に積めば馬が要らない車になります!!!]
エメリッヒが嬉しそうな顔で[なるほど!!何に使うのかと思っていたのだけれどこれはいろんなものの動力源になるんだね!?]と感心している風に呟く。
[その通りです!!エメリッヒさん!!!]
オヤジ様が嬉しそうな顔から真剣な顔付きに成り言う。
[これは今までの魔導具とは根本的に違う!!..なんと呼ぶ方が良いのだろうか?]
あー、そう言えばそうだな。大体魔導具はそれ単体で機能させる物だがこれは魔導具を媒介にしている機械だしな....
俺が悩んでいると隣のエメリッヒがゆっくりと口を開く。
[魔導機...。魔導と機械を組み合わせて作った物だから魔導機と言うのはどうかな?]
魔導機か...うん!いい総称じゃねえか!!
[魔導機、良いですね!!!それにしましょう!!]
魔導機が出来た日、その日にお世話になったリーンベルの人達を読んでささやかなパーティーを開いた。
皆、酒瓶を枕に泥酔して寝ている姿はまるで俺の描く地獄絵図のようだ。
皆、酒を飲みすぎだ...死屍累々になってんじゃねえかよ...
応援ありがとうございます!
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