雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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公爵家編

14.フラガ

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 言葉も順調に覚えてきて、流暢に話せないが単語を繋げば伝わるし、分かることが多くなった。

「メル、サマ」

 ちゃんと様付けも出来るようになったんだ。流石にいつまでも呼び捨てはいけないと思って、グレイさんに教えてもらった。初めて、様付けした日は、2人共なんとも言えない変な顔してた。なんというか怒ってるって感じじゃなくて、困ってるような顔だった。
 でもって、使用人達には様付けはしなくてもいいらしい。グレイさんや他の人は頑なに俺を様付けするんだけど、なんでだろう?別に俺も呼び捨てでも良いんだけどなぁ。グレイさんに聞いてもニコヤカに笑って、答えてくれないし……。謎だ。

 でもさらに謎なのは、今ここにいるメル様だ。

「なぁに?」
「タノシ?」

 メル様はさっきからずっと俺のほっぺをツンツンと触っている。
 プニプニするほどの肉があれば、触りごたえもあるだろうけどそんなものは俺には無く、楽しいとは思えない。それでも彼女は、楽しそうにツンツンと人差し指で突いてくる。……謎だ。

「楽しいわよ~。でも、もっとご飯、食べなきゃね」
「ゴハン?」
「そうよ~。オヤツでも良いけど。……美味しいオヤツ、食べる?」
「オヤツ!」

 俺がオヤツとはしゃげば、甘いものがすぐに出てくる。ディゾル家のオヤツはハズレがないから、オヤツという単語が出てきたらなるべく反応するようにしている。今日のオヤツは何だろうな?

「じゃあ、今日はフラガにしましょ」
「フラガ、オーシー!」

 俺はベッドの上でソワソワしながら、フラガを待つ。そんな俺をメル様は穏やかに笑う。

「嬉し?」
「ウレシ!」

 数分後、ベッドテーブルに赤い色の苺とそっくりの果実が置かれる。これがフラガだ。味も苺にそっくりなんだ。
 メル様がフラガを一つ手に取った。

「はい、ア~ン」

 自分でも食べれるようになったが、未だにメル様やルダン様は食べさせようとする。食べないと拗ねるから困ったもんだ。
 俺は仕方無しに口を開けると、メル様にポイッとフラガを入れられた。すかさず口を閉じてフラガは噛むと、ジワリと口いっぱいに果汁が溢れた。俺は口から溢れないように集中する。

「あー、かわい」

 モグモグと咀嚼していると、また例の言葉……呪文を言った。この言葉の意味は未だに分かっていない。だって、いつでもどこでも使ってるから、よく分からない。

 俺が口の中のフラガを飲み込むと、メル様は口を開けた。今度は、俺に食べさせろという合図だ。
 差し出すフラガをメル様が迎えに行く途中で、ドアがノックされる。

「チッ、いつもお父様は良いところで」

 メル様は大きめの舌打ちをして、部屋の中に訪問者を迎え入れた。
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