109 / 114
学園編
106.考えられない
しおりを挟む
それからたくさんの贈り物を貰い、雪で遊ぶ姿やグリフを真似た小さな雪像も見たり、ルダン様と一緒に踊ったりして夕方まで楽しみ、領民達と別れて馬車に乗った。雪を呼ぶグリフは祭りが終わった後にルダン様が破壊するらしい。
「誰も雪を嫌っていなかっただろう?」
「ハイ」
ルダン様の言葉に雪祭をしていた彼らの姿を思い出して頷く。ルダン様の言う通りだった。あの国で聞いたような憎しみや怒りなんてものはあそこには無かった。皆、楽しそうで嬉しそうだったし、俺も楽しかった。
良かった。俺のせいで誰も苦しいことが無くて……。もし、俺のせいでルダン様や他の人達に迷惑をかけていたらと思うと、考えるだけでも恐ろしくなる。
「ウェイン、領民達に雪を見せてくれてありがとう」
「えっ」
感謝されるなんて思いもしなかったから戸惑ってしまう。
「そんな、こと、言わないでください。ありがとうなんて、そんな」
感謝されたくてしたわけじゃない。俺は運命を変えたくて、結果的にそうなっただけで。しかもなんなら、周りの人に迷惑をかけてしまったようなものだ。身勝手だと非難される事はあっても、感謝されるいわれはない。
「運命を変えたんだ」
その言葉にドキリとする。ルダン様に全部説明する時に、俺は運命を変えると言った。
「君はメルの運命だけじゃない。彼らの運命も変えたんだ。ゲームの中ではきっと彼らは永遠に雪なんて知らなかっただろうから、彼らの代わりに感謝を」
ぎゅっと力を入れて手を握られ、頭を下げられて、更にどうしたら良いか分からなくなる。確かに、ゲームではディゾルの領民達のことは書かれていないから、雪を見る機会は無かったかもしれない。けれど、俺が知らないだけかも知れないし。喜んでくれたのは俺のお陰?そんなわけない。もしかしたら、ゲームの中のリラさんだって、事情を知れば雪なんてすぐに見せてくれたはずだ。
何かを言わなきゃ、しかし、声は出せない。理由は分かっている。最近になって思ったことだ。もし、リラさんとルダン様が会ってしまったら、俺なんて見向きもしなくなるんじゃないか、そう思い始めた。うんめいだって、おれじゃなくても、おれがいなくても、きっとメルさまならかえられる。それなら、おれがいきているりゆうってなに?
更にルダン様は話を続ける。
「ウェイン、ご褒美は何が良い?」
ごほうび?
理解出来ない状況が続き、その言葉がグルグルと回り始めた。
ごほうび、ごほうびって何だっけ?何が良いっどういう事?
「ウェイン?」
ルダン様がせっかく声をかけてくれたのに、俺は固まったままだった。
「誰も雪を嫌っていなかっただろう?」
「ハイ」
ルダン様の言葉に雪祭をしていた彼らの姿を思い出して頷く。ルダン様の言う通りだった。あの国で聞いたような憎しみや怒りなんてものはあそこには無かった。皆、楽しそうで嬉しそうだったし、俺も楽しかった。
良かった。俺のせいで誰も苦しいことが無くて……。もし、俺のせいでルダン様や他の人達に迷惑をかけていたらと思うと、考えるだけでも恐ろしくなる。
「ウェイン、領民達に雪を見せてくれてありがとう」
「えっ」
感謝されるなんて思いもしなかったから戸惑ってしまう。
「そんな、こと、言わないでください。ありがとうなんて、そんな」
感謝されたくてしたわけじゃない。俺は運命を変えたくて、結果的にそうなっただけで。しかもなんなら、周りの人に迷惑をかけてしまったようなものだ。身勝手だと非難される事はあっても、感謝されるいわれはない。
「運命を変えたんだ」
その言葉にドキリとする。ルダン様に全部説明する時に、俺は運命を変えると言った。
「君はメルの運命だけじゃない。彼らの運命も変えたんだ。ゲームの中ではきっと彼らは永遠に雪なんて知らなかっただろうから、彼らの代わりに感謝を」
ぎゅっと力を入れて手を握られ、頭を下げられて、更にどうしたら良いか分からなくなる。確かに、ゲームではディゾルの領民達のことは書かれていないから、雪を見る機会は無かったかもしれない。けれど、俺が知らないだけかも知れないし。喜んでくれたのは俺のお陰?そんなわけない。もしかしたら、ゲームの中のリラさんだって、事情を知れば雪なんてすぐに見せてくれたはずだ。
何かを言わなきゃ、しかし、声は出せない。理由は分かっている。最近になって思ったことだ。もし、リラさんとルダン様が会ってしまったら、俺なんて見向きもしなくなるんじゃないか、そう思い始めた。うんめいだって、おれじゃなくても、おれがいなくても、きっとメルさまならかえられる。それなら、おれがいきているりゆうってなに?
更にルダン様は話を続ける。
「ウェイン、ご褒美は何が良い?」
ごほうび?
理解出来ない状況が続き、その言葉がグルグルと回り始めた。
ごほうび、ごほうびって何だっけ?何が良いっどういう事?
「ウェイン?」
ルダン様がせっかく声をかけてくれたのに、俺は固まったままだった。
12
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる