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最愛の夫だった義理の兄に再び溺愛される 2
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しばらく二人で抱き締めて号泣して義理の兄に生まれ変わったブラッカに似た相手は、まだ泣きながらオレを抱き締めてまた会えるなんて。夢みたいだって言ってきてくれた。なんだか胸が色んな感情でいっぱいになって。オレもって答えてギュッて抱き締めたらスーツのジャケットとシャツの胸元がオレの涙で濡れてるのに今さら気付いて
「ゴメン!!スススススス!スーツを濡らしてごめんなさい!気持ち悪くない!?」
と慌てて謝る。少し黙るとハハと優しく笑ってくれて
「気にするな、また洗えばいいしその内乾くだろ。」
「だけど……っ!」
するとまた視線感じて顔を上げたら優しく泣きすぎてヒリヒリした目元をハンカチで押さえてくれて
「泣きすぎて目元が痛いだろ。それと前も今もそういう所は何も変わらないんだな。」
「………………そ」
そっちは変わりすぎ!と赤くなった顔して叫んでた。なんなの?これカッコ良すぎじゃないの?前世でもカッコ良かったのにレベルアップしてるし。顔が見れなくて顔を父さんたちに向けたらしまったと今さらながらに思った。これは時既に遅しってやつで。父さんと新しい母さんは、オレたちを見てポカンとしてた。あの、父さんさえ。呆けた顔してる父さん見たの、最後は何時だったかな。これ、最初から最後まで見られてたやつ?と気付いたオレたちは固まったらちょっと待った!と言うと部屋の隅に行くと小声で
「(うわああああ!ブラッカと再会できた喜びでどうにかなってた!!どどどどどどーしよ!!ブラッカ!)」
「(お、落ち着けアイン。オレもどうにかなってたから。いや、どうするもこうするも。最初からさっきのやり取りまで見てたと思うから。上手く誤魔化しはきかないだろう。もう正直に話すか?)」
「(いやでも、前世だとか。それはまだ良いとして。仮に前世で夫婦だったオレたちは男同士なのも。)」
「(ううーん、聞かれたら。どうするかだな。もう包み隠さず話すか?母さんは前世だとか、同性婚に否定的では無いから。アインのお父さんは?)」
「(ううーん、オレ父さんとあまり話さないんだ。父さん仕事忙しいからさ。まあ同性婚は否定的では無かった、筈だけど。前世とかビミョー。そういうの信じないっぽい。)」
言うだけ言ってみるか?やら、こんな作り話みたいな話を信じるのかなあやら聞こえてきたそれぞれの両親は。小さくため息付いて手招きする。仕方ないなあというかんじの顔して。
「アイン。こちらに来なさい。」
「羅漢。何か事情があるんでしょう?話してみてちょうだいよ。」
そう言ってくれた事だからとりあえず話してみないかと言われて。確かに何か事情があるんでしょうと言ってくれたんだし、父さんも来なさいと言ってるし。それに話しもしないで決めつけるのも何だからと納得して席に戻ると椅子を直して座ったら。
「先ずは事情を話す前に自己紹介を。復沢羅漢と申します。よろしくお願いいたします。」
なんか、ニコヤカだなあと思いつつ。羅漢って名前もカッコいいなと内心ときめいていた。コース料理もきて食事を楽しむ。こんな美味しいの食べたこと無いって噛みしめながら。飲み物きて
「ん?」
「どしたの?」
「いや、酒を飲まないんだなと。」
その一言でアインはあ、そうだったと思い出す。今の自分は高校生で未成年だと言っていなかった事を。
「えと。オレ今高校生でして。」
「……。そ、うか。………………。」
そうだった。元々前世のオレたちって同世代だったんだ。年は離れていなかったし。いや、2つ3つ違いは大差無いから大丈夫!うん!今のブラッカならぬ羅漢って二十歳、だったよね。
そーっとメインのパスタ食べながらワイン飲む羅漢見るんだけど。カッコいい!これぞ大人の男ってかんじする!!だけど、大学生じゃないんだなあ。なんでだろ。後で聞いてみよ!食事もデザート食べ終えて落ち着いた頃父さんたちから聞いてきた。
「聞きにくいけど。羅漢の事、ブラッカと呼んだわよね?」
「それに何故息子の名前を知っていたのかも気になってね。」
まあ、そうですよね。話題、ふっかけてくれて本当にありがとう。何時言おうか迷ってましたから。羅漢も
「聞きにくいのに聞いてきてくれてありがとう母さん。これから話すことの全部を信じてほしいとは言わない。だけど嘘は言わないと約束する。」
するとお母さんは頷いてくれて。穏やかな笑顔をしたら
「あなたは嘘は言わないもの。信じるわよ。」
「ありがとう母さん。」
今度はオレが、父さんに言わなきゃ。よし、言うぞ。内心気合いを入れて
「父さん。」
何も言わないで黙って聞いてる父さんにオレは
「オレも。全部これから言うこと信じてとは言わないけど。だけどこれから話すことは作り話だとか嘘じゃないから!それだけは信じて!」
そしたら父さんは何を言うかと思えばって言ったら頭を撫でて
「何時も嘘を付かないお前が、誰かの為に人助けするお前が。作り話だとか嘘だとか言うわけ無いだろう。話してみなさい。」
「っ。……ありがと。」
羅漢のお母さんも、父さんも。信じるって言ってくれた。
「話をする前に、聞きたいけど父さんたちは。自分に前世があるって、前世の記憶があるって信じる?」
アインの質問に羅漢のお母さんはあると思うし信じるわね。と答えてくれた。父さんはありはすると思うな。父さんには前世の記憶は無いがと答えてくれた。
「ほ……。そっか……。」
「否定的では無かったから良かったなアイン。母さん、それからアインのお父さん。実はオレたちは。」
前世ではオレたちは男同士だけど夫婦だったんです。と羅漢は話した。
前世で自分たちはある星で起きた危機を戦った仲間だった。アインは旅人、羅漢ことブラッカは金さえ払うなら護衛でも暗殺でも何でもやる何でも屋をしていた。住んでいた星は地球に似ていて
農業したり漁師になったりとその町や集落で人は暮らしていた。前世のアインは両親に早くに先立たれ、受け継いだ農地と家で暮らしていたらしい。
ブラッカも山に囲まれた小さな集落で薬草を売ったりしながら暮らしていたと言う。しかし地球と違うところもあり、その星には魔物がいて。その魔物を狩ったりして食料にしていたり家畜として飼っていたらしい。そこまで聞いて二人は
「なるほど。だが、何故。」
「ええ。旅人だとか、何でも屋だとかしてたの?」
「終わったんだよ、それぞれの。ううん、オレたちだけじゃない。星に住んでたみんなの生活が変わったんだ。」
「ああ。あの日になるまで今の生活が続くと。オレもアインも。仲間みんな思ってたんだ。人が、突然魔物になるというこれまで無かった異常気象が起きるまでは。」
これまで起きなかった異常気象。しかも人が魔物になったと聞いて息を飲んでいる。しかも魔物は魔物でも異質な物で強力だったらしい。
「ここから長くなるから割愛になるけど、ゴメン。何時ものように畑仕事してたら何時も種とかくれて良くしてくれるおじさんがきて、いきなり苦しんで見たこと無い魔物になってさ。オレに襲ってきて。それでこのままだと助からないって思って。それで、逃げてるオレの前にいきなり武器が現れたんだよ。仲間になったみんなは魔物にいきなり襲われて、で。逃げてる時に武器が現れたって言ってたんだ。それで武器を得て戦ったオレたちだけが、何故か魔物にならなかったんだ。とにかくもう前の日常では無かったし、オレは前の毎日に戻るまで家に戻らないで旅に出たんだ。自分以外に助かってる人はいないのかって、なんで突然人が魔物になるようになったのか調べたんだ。その旅の途中で出会ったのが何でも屋をしてたブラッカなんだ。猟も出来るし、戦いにかなり慣れてたし。」
「まあ、それで。また割愛になって悪いけど。人が魔物になる原因を突き止めて、魔物になった人たちを助けて。原因の強敵を倒して、元の日常に戻ったんだ。まあ、結果的には人知れず星を救った事になってるんだ。」
そこまで聞くとよくあるゲームのような話だなとは思うが。今一つあの涙の再会に結び付かないため
「あの涙の再会は……。」
「何が理由だったんだ?」
すると羅漢は黙り込み少し俯いた。その顔は辛そうにしていた。アインは涙ぐんで必死に泣くのを堪えてるが今にも泣きそうだ。二人の顔を見てこれには何かあると思い
「辛いなら言わなくていいのよ?」
「そうだぞ、二人とも。」
再びハンカチで涙を拭き取るとアインも羅漢も口を開いた。
「ううん。今日やっと会えたから。」
「ああ。まさか母さんと再婚する相手の連れ子が。義理の弟がオレの最愛の妻の生まれ変わりと欠片も思わなかったから。オレもアインも。言ってしまえばあの異常気象がなければ一生出会わなかった。暮らしていた場所からかなり離れてたしな。戦いが終わって、パートナーとして死ぬまでいてくれないかとオレから申し出て。一緒にアインが住んでいた家で暮らす事になったんだ。子供はいなかったけどアインがいて、平穏な毎日が続いて。お互いじいさんになるまでいようと約束した。してたんだ。アインが不治の病で倒れるまでは。」
前世のアインは不治の病で倒れたと聞いて目を見開いた両親たち。特に愛美は現役の看護師だ。患者の家族の気持ちは痛いほど分かる。アインは
「結局星を救った英雄でも、ただの人に過ぎなかったんだよ。ブラッカは直ぐに近くの町の医者に見せたよ。治らないって、手の施しようが無いって。それでもブラッカは諦めなかったんだよ。医療が進んだ国まで行って見せても。医者から治療しても、オレの身体が耐えられない。どのみち治療しても僅かな延命しか出来ないって。そこまで悪かったんだよ。」
「今で言う、癌だったと思う。身体を蝕んでる部分を切らないと治らないって。けど麻酔だとかそんなの無いんだよ。いくら金があってもそんなのは無意味だって。どうやってもオレはアインを助けられないと思い知ってから毎日泣いた。」
「うん。オレも、死ぬのが怖いより。ブラッカを置いていくのが辛かった。1人にさせて逝きたく無いって。これから、2人で。幸せに暮らしてくつもりだったのに約束破ってゴメン。1人残していくからゴメンって泣いたよ。段々弱っていって、それでも世界を一緒に救ったみんなは家にしかいられないオレに本を置いていったりしてくれたよ。オレとブラッカに一筋の希望が見えたのは。オレの最初の仲間のアリカが生まれ変わりの存在を教えてくれた事だったんだ。生まれ変わりが分からなかったオレたちに。人って何時か遅かれ早かれ死ぬけれど、また別の場所で。また別の人として出会える事があるって。何時か出会えるって信じてみないって、言われたんだ。」
今の生が、今のアインとしての人生がもうすぐ終わるなら。今度もまた別の場所で別の人として出会えると信じたらいい。そう考えるようになってから毎晩星に願った。
またブラッカと出会って。今度こそブラッカと幸せになりたいと。弱っていく身体で終わりがくるまで願った。だが生まれ変わりの事を教えてくれて数日後別れがやってきたと言う。
「だけど、そう長く願わせてもくれなかったんだ。」
「ああ。生まれ変わりというものを教えてくれて間もない時に一気に悪くなったんだ。自分は長くないと分かってたんだろな。アインの最後の願いはこうだった。喋るのも辛い筈なのにオレに。
なあ、ブラッカ。またオレはな。一緒に暮らして、穏やかな毎日送りたい。生まれ変わりってものがあるなら。またブラッカに出会いたい。って。」
もうそこまで聞いていた父さんたちは涙ぐんでいた。あの父さんさえ泣くのを我慢してるくらい。
「そう願ったアインに。またオレと、最後までいてくれアイン。と言ったら約束、だからなって言って。オレの腕の中で死んだ。という、よくある映画みたいな話なんだ。オレたちの前世の記憶の話は。って、母さん。ほら、化粧落ちるから。」
化粧なんて。こんなの、いくらでも直しようがあるわよと答えたら
「辛かったわよね……、あなた。」
そう言うと羅漢の肩を泣きながらポンポンと叩く。羅漢は苦笑いしてハンカチ出してる。父さんは父さんで限界だったみたいで泣きながら
「そうか。あの再会はそういう理由があったのか。良かったなぁ。」
「えと……。ありがと……?」
父さん、こんなキャラだったんだ。なんか、父さんの事勘違いしてたかも。
まさか信じてくれるとは思わなかった羅漢とアイン。それぞれの親が泣き止むまで一緒に付き添った。
「ゴメン!!スススススス!スーツを濡らしてごめんなさい!気持ち悪くない!?」
と慌てて謝る。少し黙るとハハと優しく笑ってくれて
「気にするな、また洗えばいいしその内乾くだろ。」
「だけど……っ!」
するとまた視線感じて顔を上げたら優しく泣きすぎてヒリヒリした目元をハンカチで押さえてくれて
「泣きすぎて目元が痛いだろ。それと前も今もそういう所は何も変わらないんだな。」
「………………そ」
そっちは変わりすぎ!と赤くなった顔して叫んでた。なんなの?これカッコ良すぎじゃないの?前世でもカッコ良かったのにレベルアップしてるし。顔が見れなくて顔を父さんたちに向けたらしまったと今さらながらに思った。これは時既に遅しってやつで。父さんと新しい母さんは、オレたちを見てポカンとしてた。あの、父さんさえ。呆けた顔してる父さん見たの、最後は何時だったかな。これ、最初から最後まで見られてたやつ?と気付いたオレたちは固まったらちょっと待った!と言うと部屋の隅に行くと小声で
「(うわああああ!ブラッカと再会できた喜びでどうにかなってた!!どどどどどどーしよ!!ブラッカ!)」
「(お、落ち着けアイン。オレもどうにかなってたから。いや、どうするもこうするも。最初からさっきのやり取りまで見てたと思うから。上手く誤魔化しはきかないだろう。もう正直に話すか?)」
「(いやでも、前世だとか。それはまだ良いとして。仮に前世で夫婦だったオレたちは男同士なのも。)」
「(ううーん、聞かれたら。どうするかだな。もう包み隠さず話すか?母さんは前世だとか、同性婚に否定的では無いから。アインのお父さんは?)」
「(ううーん、オレ父さんとあまり話さないんだ。父さん仕事忙しいからさ。まあ同性婚は否定的では無かった、筈だけど。前世とかビミョー。そういうの信じないっぽい。)」
言うだけ言ってみるか?やら、こんな作り話みたいな話を信じるのかなあやら聞こえてきたそれぞれの両親は。小さくため息付いて手招きする。仕方ないなあというかんじの顔して。
「アイン。こちらに来なさい。」
「羅漢。何か事情があるんでしょう?話してみてちょうだいよ。」
そう言ってくれた事だからとりあえず話してみないかと言われて。確かに何か事情があるんでしょうと言ってくれたんだし、父さんも来なさいと言ってるし。それに話しもしないで決めつけるのも何だからと納得して席に戻ると椅子を直して座ったら。
「先ずは事情を話す前に自己紹介を。復沢羅漢と申します。よろしくお願いいたします。」
なんか、ニコヤカだなあと思いつつ。羅漢って名前もカッコいいなと内心ときめいていた。コース料理もきて食事を楽しむ。こんな美味しいの食べたこと無いって噛みしめながら。飲み物きて
「ん?」
「どしたの?」
「いや、酒を飲まないんだなと。」
その一言でアインはあ、そうだったと思い出す。今の自分は高校生で未成年だと言っていなかった事を。
「えと。オレ今高校生でして。」
「……。そ、うか。………………。」
そうだった。元々前世のオレたちって同世代だったんだ。年は離れていなかったし。いや、2つ3つ違いは大差無いから大丈夫!うん!今のブラッカならぬ羅漢って二十歳、だったよね。
そーっとメインのパスタ食べながらワイン飲む羅漢見るんだけど。カッコいい!これぞ大人の男ってかんじする!!だけど、大学生じゃないんだなあ。なんでだろ。後で聞いてみよ!食事もデザート食べ終えて落ち着いた頃父さんたちから聞いてきた。
「聞きにくいけど。羅漢の事、ブラッカと呼んだわよね?」
「それに何故息子の名前を知っていたのかも気になってね。」
まあ、そうですよね。話題、ふっかけてくれて本当にありがとう。何時言おうか迷ってましたから。羅漢も
「聞きにくいのに聞いてきてくれてありがとう母さん。これから話すことの全部を信じてほしいとは言わない。だけど嘘は言わないと約束する。」
するとお母さんは頷いてくれて。穏やかな笑顔をしたら
「あなたは嘘は言わないもの。信じるわよ。」
「ありがとう母さん。」
今度はオレが、父さんに言わなきゃ。よし、言うぞ。内心気合いを入れて
「父さん。」
何も言わないで黙って聞いてる父さんにオレは
「オレも。全部これから言うこと信じてとは言わないけど。だけどこれから話すことは作り話だとか嘘じゃないから!それだけは信じて!」
そしたら父さんは何を言うかと思えばって言ったら頭を撫でて
「何時も嘘を付かないお前が、誰かの為に人助けするお前が。作り話だとか嘘だとか言うわけ無いだろう。話してみなさい。」
「っ。……ありがと。」
羅漢のお母さんも、父さんも。信じるって言ってくれた。
「話をする前に、聞きたいけど父さんたちは。自分に前世があるって、前世の記憶があるって信じる?」
アインの質問に羅漢のお母さんはあると思うし信じるわね。と答えてくれた。父さんはありはすると思うな。父さんには前世の記憶は無いがと答えてくれた。
「ほ……。そっか……。」
「否定的では無かったから良かったなアイン。母さん、それからアインのお父さん。実はオレたちは。」
前世ではオレたちは男同士だけど夫婦だったんです。と羅漢は話した。
前世で自分たちはある星で起きた危機を戦った仲間だった。アインは旅人、羅漢ことブラッカは金さえ払うなら護衛でも暗殺でも何でもやる何でも屋をしていた。住んでいた星は地球に似ていて
農業したり漁師になったりとその町や集落で人は暮らしていた。前世のアインは両親に早くに先立たれ、受け継いだ農地と家で暮らしていたらしい。
ブラッカも山に囲まれた小さな集落で薬草を売ったりしながら暮らしていたと言う。しかし地球と違うところもあり、その星には魔物がいて。その魔物を狩ったりして食料にしていたり家畜として飼っていたらしい。そこまで聞いて二人は
「なるほど。だが、何故。」
「ええ。旅人だとか、何でも屋だとかしてたの?」
「終わったんだよ、それぞれの。ううん、オレたちだけじゃない。星に住んでたみんなの生活が変わったんだ。」
「ああ。あの日になるまで今の生活が続くと。オレもアインも。仲間みんな思ってたんだ。人が、突然魔物になるというこれまで無かった異常気象が起きるまでは。」
これまで起きなかった異常気象。しかも人が魔物になったと聞いて息を飲んでいる。しかも魔物は魔物でも異質な物で強力だったらしい。
「ここから長くなるから割愛になるけど、ゴメン。何時ものように畑仕事してたら何時も種とかくれて良くしてくれるおじさんがきて、いきなり苦しんで見たこと無い魔物になってさ。オレに襲ってきて。それでこのままだと助からないって思って。それで、逃げてるオレの前にいきなり武器が現れたんだよ。仲間になったみんなは魔物にいきなり襲われて、で。逃げてる時に武器が現れたって言ってたんだ。それで武器を得て戦ったオレたちだけが、何故か魔物にならなかったんだ。とにかくもう前の日常では無かったし、オレは前の毎日に戻るまで家に戻らないで旅に出たんだ。自分以外に助かってる人はいないのかって、なんで突然人が魔物になるようになったのか調べたんだ。その旅の途中で出会ったのが何でも屋をしてたブラッカなんだ。猟も出来るし、戦いにかなり慣れてたし。」
「まあ、それで。また割愛になって悪いけど。人が魔物になる原因を突き止めて、魔物になった人たちを助けて。原因の強敵を倒して、元の日常に戻ったんだ。まあ、結果的には人知れず星を救った事になってるんだ。」
そこまで聞くとよくあるゲームのような話だなとは思うが。今一つあの涙の再会に結び付かないため
「あの涙の再会は……。」
「何が理由だったんだ?」
すると羅漢は黙り込み少し俯いた。その顔は辛そうにしていた。アインは涙ぐんで必死に泣くのを堪えてるが今にも泣きそうだ。二人の顔を見てこれには何かあると思い
「辛いなら言わなくていいのよ?」
「そうだぞ、二人とも。」
再びハンカチで涙を拭き取るとアインも羅漢も口を開いた。
「ううん。今日やっと会えたから。」
「ああ。まさか母さんと再婚する相手の連れ子が。義理の弟がオレの最愛の妻の生まれ変わりと欠片も思わなかったから。オレもアインも。言ってしまえばあの異常気象がなければ一生出会わなかった。暮らしていた場所からかなり離れてたしな。戦いが終わって、パートナーとして死ぬまでいてくれないかとオレから申し出て。一緒にアインが住んでいた家で暮らす事になったんだ。子供はいなかったけどアインがいて、平穏な毎日が続いて。お互いじいさんになるまでいようと約束した。してたんだ。アインが不治の病で倒れるまでは。」
前世のアインは不治の病で倒れたと聞いて目を見開いた両親たち。特に愛美は現役の看護師だ。患者の家族の気持ちは痛いほど分かる。アインは
「結局星を救った英雄でも、ただの人に過ぎなかったんだよ。ブラッカは直ぐに近くの町の医者に見せたよ。治らないって、手の施しようが無いって。それでもブラッカは諦めなかったんだよ。医療が進んだ国まで行って見せても。医者から治療しても、オレの身体が耐えられない。どのみち治療しても僅かな延命しか出来ないって。そこまで悪かったんだよ。」
「今で言う、癌だったと思う。身体を蝕んでる部分を切らないと治らないって。けど麻酔だとかそんなの無いんだよ。いくら金があってもそんなのは無意味だって。どうやってもオレはアインを助けられないと思い知ってから毎日泣いた。」
「うん。オレも、死ぬのが怖いより。ブラッカを置いていくのが辛かった。1人にさせて逝きたく無いって。これから、2人で。幸せに暮らしてくつもりだったのに約束破ってゴメン。1人残していくからゴメンって泣いたよ。段々弱っていって、それでも世界を一緒に救ったみんなは家にしかいられないオレに本を置いていったりしてくれたよ。オレとブラッカに一筋の希望が見えたのは。オレの最初の仲間のアリカが生まれ変わりの存在を教えてくれた事だったんだ。生まれ変わりが分からなかったオレたちに。人って何時か遅かれ早かれ死ぬけれど、また別の場所で。また別の人として出会える事があるって。何時か出会えるって信じてみないって、言われたんだ。」
今の生が、今のアインとしての人生がもうすぐ終わるなら。今度もまた別の場所で別の人として出会えると信じたらいい。そう考えるようになってから毎晩星に願った。
またブラッカと出会って。今度こそブラッカと幸せになりたいと。弱っていく身体で終わりがくるまで願った。だが生まれ変わりの事を教えてくれて数日後別れがやってきたと言う。
「だけど、そう長く願わせてもくれなかったんだ。」
「ああ。生まれ変わりというものを教えてくれて間もない時に一気に悪くなったんだ。自分は長くないと分かってたんだろな。アインの最後の願いはこうだった。喋るのも辛い筈なのにオレに。
なあ、ブラッカ。またオレはな。一緒に暮らして、穏やかな毎日送りたい。生まれ変わりってものがあるなら。またブラッカに出会いたい。って。」
もうそこまで聞いていた父さんたちは涙ぐんでいた。あの父さんさえ泣くのを我慢してるくらい。
「そう願ったアインに。またオレと、最後までいてくれアイン。と言ったら約束、だからなって言って。オレの腕の中で死んだ。という、よくある映画みたいな話なんだ。オレたちの前世の記憶の話は。って、母さん。ほら、化粧落ちるから。」
化粧なんて。こんなの、いくらでも直しようがあるわよと答えたら
「辛かったわよね……、あなた。」
そう言うと羅漢の肩を泣きながらポンポンと叩く。羅漢は苦笑いしてハンカチ出してる。父さんは父さんで限界だったみたいで泣きながら
「そうか。あの再会はそういう理由があったのか。良かったなぁ。」
「えと……。ありがと……?」
父さん、こんなキャラだったんだ。なんか、父さんの事勘違いしてたかも。
まさか信じてくれるとは思わなかった羅漢とアイン。それぞれの親が泣き止むまで一緒に付き添った。
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