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夕日と先輩
夕日と先輩1
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夕日が綺麗だと先輩が笑ったことがある。それを見て胸がトクトクと速く脈打ったあの感触が未だ忘れられない。
それから、私は先輩のことが、夕日のことが、大好きになった。
私は写真部だった。部員は5人。実際に参加しているのは私と先輩だけ。先輩はいつも遅れてくるけど、来ると必ず隣に座ってくれた。
「今日はなにを撮ろうか。」
先輩の声は優しい。いつも変わらず優しい。触れたいけど触れられないもどかしさに、鼓動は速くなる。
「ねえ、私は先輩のことを撮りたいです。」
そう言うと、先輩は悲しそうな顔をする。私も思わず出てしまった言葉にハッとする。ごめんなさい、と言うといいんだよ、といつもの笑顔を見せてくれる。
嗚呼、優しい先輩が大好きだ。
「もうすぐ夕日が出るね。屋上から撮ってみようよ。」
先輩の提案に、私はすぐに賛同した。そして屋上へ出るための許可を先生に貰いにいく。先輩もついてこようとしていたが、それを私はとめた。
職員室に入ると、先生の数は少なかった。部活の指導に出ているのだろう。いちばんに近くにいた先生に声をかける。
「先生、屋上から夕日の写真が撮りたいんです。屋上に入ってもいいですか?」
「あなた、いつも熱心に写真部の活動をしてるわね。素晴らしいことだわ。屋上での活動を許可します。」
そう言って、先生から鍵を手に入れる。
「帰るとき、鍵を締めてまた先生に返してね。」
「わかりました。ありがとうございます。」
屋上の鍵をカチャカチャと鳴らしながら、部室へ向かう。足取りは軽い。嗚呼、なんていい日なの。
夕日を撮りながら、先輩のことも撮りたい。先輩と一緒にいたい。
先輩と、一緒に、いたい。
写真部の部室を開けると、先輩は先ほどと同じ状態で待っていてくれた。今度は私が隣に腰掛ける。
「早く、落ちてほしいな。」
先輩がそんなことを言うので、私も同じ気持ちであることを胸の中で強く思った。
サッカー部の声が、テニス部の声が、たくさんの声が一同に集まるこの場所。先輩と私の2人だけの場所。何もかもが愛しくなってきて、写真を撮る。
隅々まで、くまなく。撮り逃さないように、迷子にならないように。
「そろそろ、屋上に行こうか。」
先輩からの合図。いよいよ、夕日を撮る。
先生から預かった鍵を持ち、屋上に登る。先輩も隣に並ぶ。
恋人になりたかった訳じゃないの。ただ、先輩のことを好きでいるだけで良かったの。それなのに、それなのに。
屋上へ着く。夕日が綺麗に光っているので、シャッターを何度も押す。
私も先輩も、無言のまま、シャッターを切る音だけが木霊していた。
「先輩、ありがとうございました。」
「なにが?」
「許して、くれて。」
先輩は困ったように笑う。
「全て、許せている訳ではないんだ。」
「私、許されないことをしました。」
「いいんだ、これで全部終わるからさ。」
最後に、先輩と夕日が一緒にうつるよう、カメラを向ける。
カシャ
音がして、写真を確認する。先輩の姿はそこにはうつっていない。
それを見て、悲しくて悲しくて堪らなかった。なんてことをしてしまったのだろう、なんてことを。先輩と一緒にいたいと考えたあまりにも幼稚すぎる方法。
「許して、先輩。」
ギュッと先輩の制服の裾を掴もうとするが、スルリと通り抜ける。何もかも、全てが、ごめんなさい。
フェンスを乗り越えると、先輩も隣に来てくれた。
「本当に飛び降りるの?」
先輩のいつも通りの優しい声が今は辛かった。
「夕日と共に落ちるなんて、ロマンチックですよね。」
「僕は、生きているだけでロマンチックだと思うけど。」
聞こえない振りをした。先輩に対してそうするのは、2度目だ。さて、下を見る。予想以上に高い。
だけど私は見たいのだ。夕日と共に落ちる私を見てくれる先輩を。
それから、私は先輩のことが、夕日のことが、大好きになった。
私は写真部だった。部員は5人。実際に参加しているのは私と先輩だけ。先輩はいつも遅れてくるけど、来ると必ず隣に座ってくれた。
「今日はなにを撮ろうか。」
先輩の声は優しい。いつも変わらず優しい。触れたいけど触れられないもどかしさに、鼓動は速くなる。
「ねえ、私は先輩のことを撮りたいです。」
そう言うと、先輩は悲しそうな顔をする。私も思わず出てしまった言葉にハッとする。ごめんなさい、と言うといいんだよ、といつもの笑顔を見せてくれる。
嗚呼、優しい先輩が大好きだ。
「もうすぐ夕日が出るね。屋上から撮ってみようよ。」
先輩の提案に、私はすぐに賛同した。そして屋上へ出るための許可を先生に貰いにいく。先輩もついてこようとしていたが、それを私はとめた。
職員室に入ると、先生の数は少なかった。部活の指導に出ているのだろう。いちばんに近くにいた先生に声をかける。
「先生、屋上から夕日の写真が撮りたいんです。屋上に入ってもいいですか?」
「あなた、いつも熱心に写真部の活動をしてるわね。素晴らしいことだわ。屋上での活動を許可します。」
そう言って、先生から鍵を手に入れる。
「帰るとき、鍵を締めてまた先生に返してね。」
「わかりました。ありがとうございます。」
屋上の鍵をカチャカチャと鳴らしながら、部室へ向かう。足取りは軽い。嗚呼、なんていい日なの。
夕日を撮りながら、先輩のことも撮りたい。先輩と一緒にいたい。
先輩と、一緒に、いたい。
写真部の部室を開けると、先輩は先ほどと同じ状態で待っていてくれた。今度は私が隣に腰掛ける。
「早く、落ちてほしいな。」
先輩がそんなことを言うので、私も同じ気持ちであることを胸の中で強く思った。
サッカー部の声が、テニス部の声が、たくさんの声が一同に集まるこの場所。先輩と私の2人だけの場所。何もかもが愛しくなってきて、写真を撮る。
隅々まで、くまなく。撮り逃さないように、迷子にならないように。
「そろそろ、屋上に行こうか。」
先輩からの合図。いよいよ、夕日を撮る。
先生から預かった鍵を持ち、屋上に登る。先輩も隣に並ぶ。
恋人になりたかった訳じゃないの。ただ、先輩のことを好きでいるだけで良かったの。それなのに、それなのに。
屋上へ着く。夕日が綺麗に光っているので、シャッターを何度も押す。
私も先輩も、無言のまま、シャッターを切る音だけが木霊していた。
「先輩、ありがとうございました。」
「なにが?」
「許して、くれて。」
先輩は困ったように笑う。
「全て、許せている訳ではないんだ。」
「私、許されないことをしました。」
「いいんだ、これで全部終わるからさ。」
最後に、先輩と夕日が一緒にうつるよう、カメラを向ける。
カシャ
音がして、写真を確認する。先輩の姿はそこにはうつっていない。
それを見て、悲しくて悲しくて堪らなかった。なんてことをしてしまったのだろう、なんてことを。先輩と一緒にいたいと考えたあまりにも幼稚すぎる方法。
「許して、先輩。」
ギュッと先輩の制服の裾を掴もうとするが、スルリと通り抜ける。何もかも、全てが、ごめんなさい。
フェンスを乗り越えると、先輩も隣に来てくれた。
「本当に飛び降りるの?」
先輩のいつも通りの優しい声が今は辛かった。
「夕日と共に落ちるなんて、ロマンチックですよね。」
「僕は、生きているだけでロマンチックだと思うけど。」
聞こえない振りをした。先輩に対してそうするのは、2度目だ。さて、下を見る。予想以上に高い。
だけど私は見たいのだ。夕日と共に落ちる私を見てくれる先輩を。
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