Real~Beginning of the unreal〜

美味いもん食いてぇ

文字の大きさ
68 / 218
終章 適応と成長

20話

しおりを挟む

 貌だけでなく全身黒に包まれる彼の両腕は、歪な程に肥大化している。


 一瞬の内の急変にキングが動揺し、笑みを止めた。

 握り潰そうと力むも、全く力が入らない。

「グゲァッ!!ゲァッ!!ゲァッ!!――」

 気持ちの悪い感覚に雄叫びを上げ、黒い人型の何かを、これでもかと地面に叩きつける。

 しかし、

 感触がない。

 壊れない。

 音がならない。


 変化のない世界に怖気を感じ、そのままぶん投げた。


「……ゴルルㇽㇽㇽ」

 キングはむくりと立ち上がる『それ』に大戦斧を構え、

「ゴルァアッ!!」

 大跳躍。
 全力で振り下ろした一撃は、

 しかし、『それ』に当たってピタリと止まってしまう。

「――ッゴア!!」

 瞬間、驚愕に硬直した身体を、ガバりと肥大化した両手で掴まれる。

 同時に、纏っていた魔力が一瞬で消え去った。

 いや、吸われた。

 焦りと恐怖に、キングの額から汗が噴き出る。

 全魔力を集め抜け出そうとするも、全く力が入らない。

 跳ねる様に顔を上げるキングが最後に見た光景は、






 敵にべったりと張り付いた、獰猛な笑みだった。






 ――両側からの尋常でない衝撃にプレスされたキングは、下半身を残して肉片の雨と化す。

「あはははははははっおぼぇっひっあはははははははっばふぁッ」

 再び貌を黒く染めた東条は、血を吐きながらその中を笑い転げていた。

 何を思って笑うのか、何を嘆いて嗤うのか、それは彼にすら分からない。

 ただ止めどなく溢れてくる感情に、彼は身を委ねているだけだ。


「…………」

 凄惨な雨が止むと同時に笑い声は止み、今度は目に入った下半身を蹴り飛ばす。



 ――殴り、蹴り、引き千切り、ぶん投げる。

「…………」

 肉片しか残らなくなると、彼はまた止まった。





 ――ゆらりゆらりと歩いては止まり、歩いては止まる。





 ――と笑った場所。






 ――と食事した場所。






 ――と遊んだ場所。






 ――と暮らした場所。






 何か目的があるわけでもなく、ただ歩き、ただ止まる。



 そこに理由は無いし、当然意味もない。






 cellというのは、本当の自分であり、もう一つの自分である。

 今の彼は、己のcellに呑み込まれた結果。


 言わば、彼を形作る概念そのものだ。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...