Real~Beginning of the unreal〜

美味いもん食いてぇ

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2章

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「入れ」

「失礼いたします」

 その二十人の内の一人である彼が、隊服に身を包み姿勢を正した。

「亜門 誠一郎一等陸佐であります」

「あぁ、崩して構わないぞ。お前とも随分顔なじみになってしまったな」

「はい、ですが私はこのままで」

 二人は帰って来てからも同じ場所で過ごしている為、顔を合わせることも多くなっていた。

「相変わらず固い奴だな……。見たぞ?また世界記録を塗り替えたな。おめでとう」

 用紙を叩いて笑う岩国に、亜門は苦笑する。

「私のはそういう能力ですから。他の発現者の方々はどうでしたか?」

「魔法の精度は上がっているようだが、身体能力は以前とあまり変わらんな。肉体の強度が上がっているわけでもないし、怪我もする」

 超常の力を手に入れても、超人になれるわけではない。岩国は例のビデオで見た青年を思い浮かべる。

「……やはりモンスターを殺した数でしょうか?」

「殺した数なら我々も相当数いってるぞ?何か別のカラクリがあるのだろうよ」

 今話題になっている二人の存在は、勿論彼等の耳にも入っている。

「彼等に連絡を試みたと伺ったのですが、その件はどうなったのでしょうか?」

「とりあえず銀行の口座を作れ、と一方的に切られたらしいぞ。なぁ?」

「……はい。申し訳ありません」

 爆笑する岩国に秘書が頭を下げる。

「それはまた……、随分と強気ですね」

「まぁ当然だろう。今一番深淵に近いのは彼等で間違いない。その優位性を捨てるなんて猿でもしないさ。
 それに理由はどうあれ、残された市民の為に食事を配り歩いているんだ。
 我々が彼等に感謝以外の感情を向けることは許されない」

「……重々承知しています」

「……」

 あの日の事を各々が思い出す中、岩国が手を鳴らし空気を切り替えた。

「もうすぐ口座も用意できる。そうすれば我々の知らない情報も沢山入ってくるだろう」

「……では、」

「ああ。ようやく特区に残された市民を救出できる」

 亜門の拳が強く握られる。
 あの日助けられなかった命を、再び掬えるチャンスが来る。

「その為に近場から部隊も集めている。内二人はお前と同じ能力者だぞ。
 能力は……何だったか?」


「はい。一人目が三等陸曹 千軸 楓せんじく かえで(男) 

 能力系統はbirther物体創造系能力名『異世界』。

 二人目が一等空曹 彦根 空太郎ひこね そらたろう(男) 

 能力系統はruler支配系能力名『小さな硝子細工』。

 二人共それぞれ千葉と群馬にて、最前線で戦い続けた英雄です。

 彦根一等空曹に於きましては、一人で群馬の緑化地帯を半壊させた実力者です」

 亜門はまだ見ぬ同僚の暴れっぷりに瞠目する。

「……それは、凄いな」

「と言いましても、特区とそれ以外とでは緑化の規模からモンスターの強さまで、何もかもが違うという調査結果が出ています」

 岩国が頷く。

「そういうことだ。一騎当千の力を持っていても、あの地獄を知っているのはお前だけだ。
 突っ込む時はお前に隊を任せる。頼んだぞ」

「はッ!」

 力強く敬礼する亜門に、彼は満足気に笑う。

「そうだ、この後一緒に飯でも食うか?」

「いえ、残念ですがお断りさせていただきます。家族が待っていますので」

 多忙な亜門は、今は一週間に一度しか家に帰ることが出来ない。その間は愛犬とも会うことが出来ない為、世話はお手伝いさんにまかせっきりの状態。

 久しぶりの帰省日に、上司と飯など行っていられるか。

「そうかそうか。ならさっさと帰ってやりな」

「はっ。感謝します」

 風の様な速さで部屋を出ていく彼に、岩国は苦笑する。

「……あいつ最近俺に冷たくないか?」

「仲間意識とか、帰巣本能の強化によるものじゃないでしょうか?」

 岩国はもう一度、亜門の測定用紙に目を向ける。

 亜門 誠一郎 beaster獣化系 モデル『狼犬』

「そういうことも分かるのか?」

「いえ。私の能力はあくまで、対象の能力を見て勝手に名前をつけるだけですから」

 そう彼女は、

 seeker精神干渉系 『命名権』 我道 見美みみ

 は微笑んだ。


 §


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