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2章
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しおりを挟む腹が減ったという東条とノエルの意見によって、適当な店に入ることになった。
二人共例の服は脱ぎ捨て、元の白黒に戻っている。
「こんな風にちゃんと店で食べるの、久しぶりです。あ、私は光明院 新と申します」
「姫野 胡桃です」
「春谷 嶺二っす」
ソワソワした三人が自己紹介を始める。
「ノエル」
「歩き回っている身としては、色んな店で勝手に飯食えるの楽しいんですよ。
私はまさです。呼び方はカオナシでもまさでも、どっちでもいいですよ」
「動画ではモザイクかけてますけど、いいんですか?」
「一応ってだけなんで、構いませんよ」
席の土埃を払い、厨房を確認する。
「とりあえずあるもの温めてきますわ」
「俺も手伝います」
「私も」
「じゃあ俺も」
「早めによろ」
さも当然かのようにパソコンを弄るノエルを置いて、彼等は各々食べられそうな物を物色し始めた。
用意した食事を囲み、今までのお互いの経緯や雑談を交わしていく。
「まさか新さんが次の目的地の代表だったとは、驚きました」
「ではやはり、明海大学に向かっている途中だったのですね!」
「え、えぇ」
嬉しそうに笑顔を作る彼に、東条は引き気味に頷く。
「藜組の方々に聞いて、向かっている最中でした」
「……藜組の」
その名前を聞いた途端、見るからに笑顔が曇った。表情豊かなことだ。
(……なるほどね)
東条は察する。
わざと藜組の名前を出してみたが、聞いただけでこれだ。相当な善人さんのようだ。
別にその点は何とも思わない。ヤクザを嫌う人間は多いだろうし、自分だって利益と安全が無い限り出来れば付き合いたくはない。
ただ、善人は得てして自らの優しさを押し付ける。それが万人の為になると信じて。
目の前の男が善なのか偽善なのか、自分はそれが知りたい。
(……まぁ、会って数十分で分かれば苦労ないわな)
自分に藜のような洞察力はない。適当に見極めていこうと決めた。
「彼等とは価値観が合いませんでしたが、そうですか……。私達のことをまささん方に教えてくれたのには、感謝しなければいけませんね」
納得した新は、東条の目を見つめる。
「俺は、他人の為にこの危険地帯を歩くあなた方を尊敬しています。動画も見させてもらいました。
皆が触れ易い媒体で現状の説明をし、被害にあっていない地域との協力を惜しまない。短期間でここまでの行動を起こせるのには、流石の一言です。
世間にはまささん達の動画を非難する人もいますが、俺は彼等の方こそ今の世界を直視するべきだと思っています」
(……俺非難されてたんだ)
「改めてお願いします。今避難している方達がもっと安心して過ごせるように、お腹いっぱい食べられるように、どうか協力をお願いします」
新に続き、三人が頭を下げる。
その綺麗な信条を、東条は冷めた瞳で見下ろした。
(あーー、勘違い系主人公だ)
手段と目的を入れ替え、自分風にアレンジして突き付けてきた。
やめるんだノエル、そんな顔をすると好感度が下がるぞ。
自分も、はいそうですね、と流したいところではあるが、正直ここまで清々しい善意には少し懐かしさすら感じてしまう。
……嘗ての眼鏡な店員も、人の笑顔を至上の喜びとしている変態だった。
「頭下げるとかやめて下さい。俺はそんな高尚な人間じゃないですけど、食料持ってく程度なら喜んでさせてもらいますよ」
「ありがとうございます!」
新の笑みが眩しい。
「あと年も近そうですし、タメでいいですよ。俺もそっちの方が楽なんで」
「……分かった。宜しく頼むよ」
二人の手が交差した。
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